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第四部『キャンドール・コーブ』
パート8 そして計画は始まる
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「アッハッハッ、今のあたしそんなに怖かったかな?孝太郎くんビビリ過ぎじゃあないかしら?」
葵はそう言ってナイフを引っ込め、孝太郎に向けてもう一度笑う。
「そうだわ、また三年前みたいにゲームをしましょうよ?最も難易度は今回の方が格段に上だけれどね」
葵はそう言って孝太郎から離れていき、ビッグ・トーキョーの闇の中に姿を消す。
孝太郎は暫くの間、呆然していたが、一度大きく息を吐いて心を落ち着かせると、飲み物を買い、自分のために買ったブラックコーヒーを一気に飲み干す。
孝太郎は口の周りに付着した水滴を右手で拭ってから、夜の闇に消えた石川葵に向かって叫ぶ。
「石川葵ッ!お前がこの先にどんな事を考えようといようとオレはお前を逃さないッ!ガラガラ蛇のようにお前にくっ付いてお前を追いかけ回し、必ずお前を牢獄に送り込んでやるッ!」
孝太郎の怒りに満ちた声が彼女の耳元に届いたのだろうか、何処からかクスクスと笑う音が聞こえる。
孝太郎は顔をしかめながら、夜の闇を睨む。
首都圏の星の見えない夜の闇が孝太郎の両目に映っていた。
まるで、今の行き詰まった自分達の捜査を嘲笑っているかのように。
「お前は何を考えている?」
シリウスの言葉に震えるのはユニオン帝国竜騎兵隊の隊員。
彼は入ったばかりの新人であったために、咄嗟の任務に対処できずに失敗してしまったのだ。
そのために、シリウス達竜騎兵隊は今の拠点を勘付かれてしまっていると言っていいだろう。
スポーツ刈りの金髪をした男はシリウスの足元に平伏し、柵も何も無い屋上で体全体に寒さを感じていた。
シリウスは男の胸ぐらを掴み上げ、パトカーの集まるビルの下へと持ち上げる。
男は自分の胸ぐらを掴むシリウスの腕を何度も何度も叩くが、そんな事は無駄だと言っても良いだろう。
シリウスは暴れ回る男を何の躊躇いもなく階下へと突き落とす。
男は悲鳴を上げながら、パトカーの上にめり込む。
シリウスはその姿を険しい視線で見下ろしてから、ビルの中へと戻っていく。
シリウスは着ていたスーツのポケットに手を突っ込みながら、出迎えに現れていた他の隊員達を睨む。
男女問わずに容赦の無い処分を下すシリウスの噂を聞いていたのだろう。ユニオン帝国から到着したばかりだと言うのに誰もが縮み上がっていた。
だが、そんな中で一人の長い金髪の女性が恐れを成す隊員達を嗅ぎ分けて、兄の元を訪れる。
「お兄様、知られてしまいましたの?」
「ああ、困った事にな、ロバートの奴が尾けられたらしい」
シャーロットは「まぁ!」と困ったような叫び声を上げてから、体を揺り動かし、
「怖いですわ、何とかしないといけませんわね。何とか……」
シャーロットの両眼が映画『ジョーズ』に登場するサメのように鋭くなっていく。
シリウスは口元の右端を吊り上げ、
「流石はオレの妹だな、ならば、役立たずの隊員達の代わりに、あいつらを始末しに向かうぞ」
「了解です。お兄様」
シャーロットは満面の笑顔で兄についていく。
屋上から入り口に向かうのは大変であったが、兄妹は眉一つ動かす事なく、14名程の警察官と七台程のパトカーの前に姿を表す。
兄のシリウスは着ていた黒色の背広を脱ぎ捨て、黒色のベストと緑色のシャツと言う姿に変わった。
シャーロットは自分も兄のように背広を投げ捨てたいと考えたが、自分のシャツが透けてしまわないと危惧し、兄の行動には同意しないでおく。
シャーロットは心の中に湧いた物足りなさを埋めるために、武器保存から一本の筒を取り出す。
シャーロットが筒を両手に握ると、何と筒から雷のように鋭い光が出てきた。
警察官達がザワ付き始める中で、シャーロットは自分の得意魔法を使用して姿を消し、あっという間に自分の持っているライトセイバーで警察官達を六人程斬り捨てていく。
シャーロットは敵のど真ん中で姿を表し、たまたま目の前にいた警察官の男性にライトセイバーの先を突きつけながら、心底楽しんでいるような顔を浮かべて、
「冥土の土産とやらに解説しておきますと、これがわたしの魔法『透明人間の進撃と言います。物体やわたし自身を透明にしたりする事ができる、ちょっとすごい魔法なんです」
シャーロットは怯える警察官をそう言ってライトセイバーで真っ二つに切り裂く。
同僚が死亡するなり、残った七人程の警察官が銃を構えたり、魔法を発動させようとしたが、その前に彼ら全員が急所に銃弾を受けたような傷を受けて地面に倒れていく。
シリウスは手元に持っていた7連発式のリボルバーをビリー・ザ・キッドのように人差し指でぐるぐると回しながら、倒れた警察官達に向かって言った。
「馬鹿者めが、貴様らの動きなど10秒も前に把握しておる……」
シリウスはそう言って亜空間の武器庫の中に愛用のリボルバーを仕舞う。
敵が全滅したのを確認するとシリウスの元にシャーロットは駆け寄り、手放しに兄の功績を賛美していく。
「流石はお兄様です!あの魔法を使って七人もの敵を一気に全滅させる鮮やかなお手並!わたしは感服致しました!」
シリウスはシャーロットの髪を優しく撫でながら、
「ありがとう。シャーロット。お前のお陰でオレは戦える。お前がいるからこそ、この計画を成功させ、皇帝を倒そうと考えているんだ」
「お兄様……」
麗しき兄妹は死体の前で互いの体を求め合い強く体を抱き締め合う。
シャーロットはもう一度兄に魔法の事を問い掛ける。
「お兄様の魔法征服王の計測はどのようなお方でも紙屑に等しくなってしまう訳ですね!」
シリウスはシャーロットの手を優しく握り締め、隊員たちの元へと帰還する。
呆然とする隊員達の前でシリウスは左腕を振り上げて強い口調で言った。
「これから、我々は新たなる場所を見つけて移動する!我々は帝国一の部隊、竜騎兵隊である!我々が派遣された目的は何なのかを忘れたか!?それは帝国の『キャンドール・コーブ』計画を成功させるためである!これは国の威信を上げたプロジェクトであり、失敗は許されん……そこでッ!」
シリウスは指を鳴らし、暫しの沈黙を集まった隊員達に与えた。
そして、5秒の時間が経過してから、一人の隊員が額から血を流して死んでいく。
シリウスは哀れな屍を指差し、
「失敗すれば、貴様らもこうなる。分かったな?」
シリウスの言葉に全員が縮み上がっていく。
この部隊を縛るのは一部の隊員の恋慕を除けば、完全なる恐怖という感情だけだろう。
葵はそう言ってナイフを引っ込め、孝太郎に向けてもう一度笑う。
「そうだわ、また三年前みたいにゲームをしましょうよ?最も難易度は今回の方が格段に上だけれどね」
葵はそう言って孝太郎から離れていき、ビッグ・トーキョーの闇の中に姿を消す。
孝太郎は暫くの間、呆然していたが、一度大きく息を吐いて心を落ち着かせると、飲み物を買い、自分のために買ったブラックコーヒーを一気に飲み干す。
孝太郎は口の周りに付着した水滴を右手で拭ってから、夜の闇に消えた石川葵に向かって叫ぶ。
「石川葵ッ!お前がこの先にどんな事を考えようといようとオレはお前を逃さないッ!ガラガラ蛇のようにお前にくっ付いてお前を追いかけ回し、必ずお前を牢獄に送り込んでやるッ!」
孝太郎の怒りに満ちた声が彼女の耳元に届いたのだろうか、何処からかクスクスと笑う音が聞こえる。
孝太郎は顔をしかめながら、夜の闇を睨む。
首都圏の星の見えない夜の闇が孝太郎の両目に映っていた。
まるで、今の行き詰まった自分達の捜査を嘲笑っているかのように。
「お前は何を考えている?」
シリウスの言葉に震えるのはユニオン帝国竜騎兵隊の隊員。
彼は入ったばかりの新人であったために、咄嗟の任務に対処できずに失敗してしまったのだ。
そのために、シリウス達竜騎兵隊は今の拠点を勘付かれてしまっていると言っていいだろう。
スポーツ刈りの金髪をした男はシリウスの足元に平伏し、柵も何も無い屋上で体全体に寒さを感じていた。
シリウスは男の胸ぐらを掴み上げ、パトカーの集まるビルの下へと持ち上げる。
男は自分の胸ぐらを掴むシリウスの腕を何度も何度も叩くが、そんな事は無駄だと言っても良いだろう。
シリウスは暴れ回る男を何の躊躇いもなく階下へと突き落とす。
男は悲鳴を上げながら、パトカーの上にめり込む。
シリウスはその姿を険しい視線で見下ろしてから、ビルの中へと戻っていく。
シリウスは着ていたスーツのポケットに手を突っ込みながら、出迎えに現れていた他の隊員達を睨む。
男女問わずに容赦の無い処分を下すシリウスの噂を聞いていたのだろう。ユニオン帝国から到着したばかりだと言うのに誰もが縮み上がっていた。
だが、そんな中で一人の長い金髪の女性が恐れを成す隊員達を嗅ぎ分けて、兄の元を訪れる。
「お兄様、知られてしまいましたの?」
「ああ、困った事にな、ロバートの奴が尾けられたらしい」
シャーロットは「まぁ!」と困ったような叫び声を上げてから、体を揺り動かし、
「怖いですわ、何とかしないといけませんわね。何とか……」
シャーロットの両眼が映画『ジョーズ』に登場するサメのように鋭くなっていく。
シリウスは口元の右端を吊り上げ、
「流石はオレの妹だな、ならば、役立たずの隊員達の代わりに、あいつらを始末しに向かうぞ」
「了解です。お兄様」
シャーロットは満面の笑顔で兄についていく。
屋上から入り口に向かうのは大変であったが、兄妹は眉一つ動かす事なく、14名程の警察官と七台程のパトカーの前に姿を表す。
兄のシリウスは着ていた黒色の背広を脱ぎ捨て、黒色のベストと緑色のシャツと言う姿に変わった。
シャーロットは自分も兄のように背広を投げ捨てたいと考えたが、自分のシャツが透けてしまわないと危惧し、兄の行動には同意しないでおく。
シャーロットは心の中に湧いた物足りなさを埋めるために、武器保存から一本の筒を取り出す。
シャーロットが筒を両手に握ると、何と筒から雷のように鋭い光が出てきた。
警察官達がザワ付き始める中で、シャーロットは自分の得意魔法を使用して姿を消し、あっという間に自分の持っているライトセイバーで警察官達を六人程斬り捨てていく。
シャーロットは敵のど真ん中で姿を表し、たまたま目の前にいた警察官の男性にライトセイバーの先を突きつけながら、心底楽しんでいるような顔を浮かべて、
「冥土の土産とやらに解説しておきますと、これがわたしの魔法『透明人間の進撃と言います。物体やわたし自身を透明にしたりする事ができる、ちょっとすごい魔法なんです」
シャーロットは怯える警察官をそう言ってライトセイバーで真っ二つに切り裂く。
同僚が死亡するなり、残った七人程の警察官が銃を構えたり、魔法を発動させようとしたが、その前に彼ら全員が急所に銃弾を受けたような傷を受けて地面に倒れていく。
シリウスは手元に持っていた7連発式のリボルバーをビリー・ザ・キッドのように人差し指でぐるぐると回しながら、倒れた警察官達に向かって言った。
「馬鹿者めが、貴様らの動きなど10秒も前に把握しておる……」
シリウスはそう言って亜空間の武器庫の中に愛用のリボルバーを仕舞う。
敵が全滅したのを確認するとシリウスの元にシャーロットは駆け寄り、手放しに兄の功績を賛美していく。
「流石はお兄様です!あの魔法を使って七人もの敵を一気に全滅させる鮮やかなお手並!わたしは感服致しました!」
シリウスはシャーロットの髪を優しく撫でながら、
「ありがとう。シャーロット。お前のお陰でオレは戦える。お前がいるからこそ、この計画を成功させ、皇帝を倒そうと考えているんだ」
「お兄様……」
麗しき兄妹は死体の前で互いの体を求め合い強く体を抱き締め合う。
シャーロットはもう一度兄に魔法の事を問い掛ける。
「お兄様の魔法征服王の計測はどのようなお方でも紙屑に等しくなってしまう訳ですね!」
シリウスはシャーロットの手を優しく握り締め、隊員たちの元へと帰還する。
呆然とする隊員達の前でシリウスは左腕を振り上げて強い口調で言った。
「これから、我々は新たなる場所を見つけて移動する!我々は帝国一の部隊、竜騎兵隊である!我々が派遣された目的は何なのかを忘れたか!?それは帝国の『キャンドール・コーブ』計画を成功させるためである!これは国の威信を上げたプロジェクトであり、失敗は許されん……そこでッ!」
シリウスは指を鳴らし、暫しの沈黙を集まった隊員達に与えた。
そして、5秒の時間が経過してから、一人の隊員が額から血を流して死んでいく。
シリウスは哀れな屍を指差し、
「失敗すれば、貴様らもこうなる。分かったな?」
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