魔法刑事たちの事件簿R(リターンズ)

アンジェロ岩井

文字の大きさ
上 下
137 / 365
フレンチ・ファンタジア編

フランス幻想をめぐる争いーその④

しおりを挟む
ダニーは孝太郎が何かしらのアクションを打つ前に、この事態を打開しようと目論んだに違いない。
彼はマシンガンを取り出し、孝太郎に何十発もの弾丸を当てようとしたが、孝太郎は自身の魔法鋼鉄の将軍ジェネラル・オブ・スティールを使用し、ダニーの弾を弾いていく。
ダニーは次に右手を空中に掲げ、キノコの胞子を駐車場へと降らせていく。
孝太郎は自分の右手を空中に掲げ、空中から降り注ぐ白い粉を破壊していったが、他で待機していた仲間達は防げなかったらしい。
体のあちらこちらに胞子が寄生し、そこから一本のキノコが体から出ていく。
明美は耐えきれずに膝から突出したキノコを抜いてしまったらしいが、その時に何枚もの絹を裂くような声が響き渡る。
孝太郎が背後を振り向くと、そこにはキノコを抜いた場所から夥しい量の血を流している明美の姿が残っていた。
孝太郎があまりの叫び声に孝太郎は胃が鎖で締め上げられたかのような感覚に陥ってしまう。
これは罪悪感という名の容赦のない鎖は孝太郎の心臓を容赦なく引っ張っていく。
孝太郎はズキズキと痛む胸を押さえながら、目の前の相手を睨む。
ダニーは口元を大きく歪めながら、
「これがオレの魔法だよ。オレの魔法はキノコを意のままに操り、相手を絶望の淵へと叩き落とすのが味でね。お気に召していただけたかな?オレのキノコは?」
「最高の味だぜ、この味をあんたにも味合わせる事が出来んたんだったら、最高だろうなぁ~」
孝太郎は視線を上げて、目の前の相手を凝視しようとしたが、その途端に彼の目は怒りの炎を消し、次には絶望に悲観した瞳が映し出されていく。
何故ならば、地面に落ちた胞子から何人ものダニー・ジョーンズが生まれていたのだから。
ダニーは新たに生まれた分身達に武器保存ウェポン・セーブから取り出したと思われる武器を次々に投げていく。
投げ渡される武器は殆どがマシンガンやらショットガン。弱い武器でさえハンドガンという始末である。
孝太郎は目の前の男が人海戦術により、自分達を殺そうてしているのだと目論む。
孝太郎は手に持っていた拳銃を人の形をしたキノコへと向けて銃を放つ。すると、キノコは血を流してその場に倒れてしまう。
目を丸くする孝太郎の姿を見て、孝太郎の右横に構えていたダニーが冷たく光るショットガンの銃口を孝太郎に向けて構えたが、孝太郎はキノコのダニーが引き金を引くよりも前に、引き金を引く。
孝太郎の銃に倒れたダニーは先程のキノコと同様に血を流して倒れてしまう。そして、元の胞子に分解されていき、花粉か何かのように風に飛ばされていく。
孝太郎は他のキノコ達が引き金を引くよりも前に、他のキノコ達を撃ち抜いていく。
孝太郎は自分達の車が無事なのを確認し、姉に明美を連れて逃げるように指示を出す。
激しい声を出して指示を出す弟の姿に姉は逆らえずに、負傷した明美を車に乗せ、病院へと向かっていく。
一体のダニーが車を阻止するために、発車しようとする車に向けてマシンガンを向けたが、そのマシンガンを向けたダニーを聡子が撃ち殺す。
聡子は手に持っていた軽機関銃の銃口を向けながら、ダニーに向かって問う。
「テメェ、どうしてキノコを人に生やす事が出来るんだ!?そして、キノコを抜いたら、どうして血が出てくるんだッ!答えやがれッ!」
聡子は軽機関銃の銃口を突き付け、乗っていた黒塗りのベンツの前でマシンガンを構えるオリジナルのダニーに突き付けるが、ダニーは相変わらずの勝者のような笑みを浮かべるばかり。
ダニーは無言でもう一度右手を宙に掲げ、胞子を呼び出し、駐車場の中に撒き散らす。
現れたダニー・ジョーンズの分身達はかつて同じ分身達が落とした武器を拾い上げていく。
その経過の際に孝太郎や聡子に何人かが撃ち殺されたが、それでもダニー・ジョーンズの分身達は集まっていき、孝太郎達を円の形で取り囲む。
オリジナルのダニー・ジョーンズはこの状況を垣間見て、不敵な笑いを浮かべながら懐から手にしたタバコを吸っていた。
そして、取り囲まれた孝太郎達を眺めながら、ダニーはタバコを口から離して問い掛ける。
「どうだ?お巡りさんよぉ~あんたがここで降伏してくれれば、オレはあんたに何にもしねぇ、ただ『フレンチ・ファンタジア』の件を誤魔化してくれれば良いんだ」
ダニーの問い掛けに孝太郎は笑顔を浮かべて返す。
「ふざけるのはお前の方だぜ、オレが麻薬を売り捌こうとするのをむざむざと見過ごすと思うか?」
「残念だが、我々コーサ・ノストラは『フレンチ・ファンタジア』を日本で売り捌く気は無いぞ、ただ貴族気取りのボルジア家に痛い目を見せたいだけなんだ。つまり、あんたと我々には共通の敵が存在するって事だよ」
「だからと言って、オレが麻薬を見過ごす理由にはならん」
ダニーは孝太郎の揺るぎのない視線を眺め、一瞥するとそっぽを向き、何の躊躇いもない声で言った。
「そうか、ならば、お前達二人にはここで死んでもらおうか」
ダニーが指を鳴らすのと同時に、一斉に銃の音が鳴り響く。
ダニーは自分の勝利を確信したが、次の瞬間には堪らずに唇を一文字に結ばずにはいられない。
多くの自分自身の分身がショットガンやらマシンガンの傷を帯びて倒れてしまっていたのだから。
そして、血を流して倒れる分身の中から短い青い髪の小柄な女性がノリノリでマイケル・ジャクソンの『ビリージーン』を歌いながら、自分の分身を撃ち抜いていっているのだった。
耳障りなビリージーンを熱唱する声が車の前で待機しているダニーの耳にも響いていく。
堪らずに耳を塞いだダニーとは対照的に、聡子と共にビリージーンを歌いながら、分身を撃ち抜いていく。
聡子はビリージーンを歌う手を一度止める、孝太郎に向けて満面の笑みを見せながら、
「しかし、作戦がこんなに上手くいくなんて思ってもみなかったよなぁ~まさか、一斉に撃つのを見越して、その場で下がるなんてよぉ~」
満面の笑みの聡子に向かって孝太郎は同じように笑いながら、引き金を引いて答える。
「この前にテレビで観てた西部劇の映画を見て思い付いたのさッ!オレは小説なら時代小説とミステリーの二択だけれど、テレビは例外なんだ。ジャンルに拘らずに色々と観ているんだ」
孝太郎は満面の笑顔で囲んでいた最後の一体の心臓を撃ち抜く。
孝太郎の瞳には迷いは無いと言っても良いだろう。
慌てふためくダニーとは対照的に、彼は余裕の笑みを浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

樹海暮らしの薬屋リヒト

高崎閏
ファンタジー
人里離れた広大な樹海でひっそりと暮らすリヒトは薬の知識がある。 薬草や薬木などを育てて薬を精製したり、はたまた貴重な草花などを採取しては商人に卸し、隠居生活を満喫していた。そんなある日、樹海の中で竜人族の子どもと出会う。 そこからリヒトの生活は一変してしまった。 ※他投稿サイトにも掲載済みです

日本が日露戦争後大陸利権を売却していたら? ~ノートが繋ぐ歴史改変~

うみ
SF
ロシアと戦争がはじまる。 突如、現代日本の少年のノートにこのような落書きが成された。少年はいたずらと思いつつ、ノートに冗談で返信を書き込むと、また相手から書き込みが成される。 なんとノートに書き込んだ人物は日露戦争中だということだったのだ! ずっと冗談と思っている少年は、日露戦争の経緯を書き込んだ結果、相手から今後の日本について助言を求められる。こうして少年による思わぬ歴史改変がはじまったのだった。 ※地名、話し方など全て現代基準で記載しています。違和感があることと思いますが、なるべく分かりやすくをテーマとしているため、ご了承ください。 ※この小説はなろうとカクヨムへも投稿しております。

【完結】マギアアームド・ファンタジア

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
ハイファンタジーの広大な世界を、魔法装具『マギアアームド』で自由自在に駆け巡る、世界的アクションVRゲーム『マギアアームド・ファンタジア』。  高校に入学し、ゲーム解禁を許された織原徹矢は、中学時代からの友人の水城菜々花と共に、マギアアームド・ファンタジアの世界へと冒険する。  待ち受けるは圧倒的な自然、強大なエネミー、予期せぬハーレム、そして――この世界に花咲く、小さな奇跡。  王道を以て王道を征す、近未来風VRMMOファンタジー、ここに開幕!

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。 2025/3/8:『いま』の章を追加。2025/3/15の朝8時頃より公開開始予定。 2025/3/7:『しんれいしゃしん』の章を追加。2025/3/14の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/6:『よふかし』の章を追加。2025/3/13の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/5:『つくえのしたのて』の章を追加。2025/3/12の朝4時頃より公開開始予定。

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~

阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。 転生した先は俺がやっていたゲームの世界。 前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。 だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……! そんなとき、街が魔獣に襲撃される。 迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。 だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。 平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。 だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。 隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

処理中です...