魔法刑事たちの事件簿R(リターンズ)

アンジェロ岩井

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満月の夜の殺人鬼編

困難に敷き詰められし道ーその11

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二階堂は撃たれた右脚を抑えながら、目の上から自分を見下ろす孝太郎を鋭い視線で睨む。
だが、孝太郎は二階堂の脅しにも眉一つ動かそうとはしない。孝太郎は二階が抵抗する素振りを見せたのならば、直ぐにでも拳銃から銃を発射するだろう。
二階堂は絶望を感じながら、孝太郎を睨み付けた。
「……。参ったな、私が追い詰められてしまうとは」
「今度こそお縄に着く時だな?お前には冷たい牢獄の中でベッドに横たわっているのが、一番似合うと思うぜ」
孝太郎の冷たい言葉にも二階堂は動じる様子は見せない。二階堂は黙って唇を噛み締め、この場における打開策を模索していく。
二階堂は先程、十人を相手に圧倒的なパワーを見せ付けた擬似惑星の事を思い返す。
二階堂は同時に惑星の中に核と言うものがある事を思い返す。地球におけるマグマは核の先っぽの部分が露出したと物だと思い出す。二階堂自身は理系ではなかったので、惑星の知識自体には殆ど自信が無かったのだが、二階堂はもし擬似惑星をもう少し惑星として意識して作ったのならば、大きな刃の中にと考え、孝太郎と自分の目の前にもう一度擬似惑星を作り出す。
孝太郎が右手を振り下ろそうとして惑星を破壊しようとするが、それよりも前に二階堂が一本の刃を空中に繰り出し、自らの擬似惑星を粉々に砕く。
すると、どうだろう。二階堂の読みは当たっていた。二階堂の作り出した偽の小さな惑星もどきから本当に核が出て、レーザーのように孝太郎に襲い掛かったのだった。
孝太郎は右手を目の前に構え、レーザーを破壊する。
孝太郎は荒い息を吐きながら、目の前で起きた事を再確認する。
二階堂はもう一度逆転を繰り返そうと言うのだろうか。彼の魔法には限界というものがないのだろうか。
孝太郎は自分自身がこれまでに無い程、浅い呼吸をしている事に気付く。
孝太郎は恐れたのだ。これまでのどの魔法師よりも強力な魔法を使用する二階堂という男の恐ろしさに。
二階堂は右脚を孝太郎によって撃ち抜かれているにも関わらず、自ら小さな刃を作り出し、自分自身の中に固まる弾丸を自らの手で摘出し、そして着ていた黒色の背広の糸のほつれを利用し、自らの魔法で脚を縫っていく。
応急処置が功を奏したのだろう。二階堂は脚を抑えながらも、ヨロヨロと体を動かしながら立ち上がっていく。
孝太郎は二階堂を見て更なる震えを起こしていく。
勝てる像が思い浮かばないのだ。二階堂はどれ程追い詰めたとしても、必ず何かしらの魔法を覚醒させ、向かって来る。
最早、人間では無いのかもしれない。
かつて、過去の世界にして異世界で相手をした竜王スメウルグにしてもこれ程の強度を見せはしなかっただろう。
トマホーク・コープのジョニー・タリスマンも『分裂』と言う強力な魔法を有していたが、二階堂のような何度も何度も覚醒し、力関係を逆転する魔法など持ってはいなかった。
二階堂は両腕をドラキュラ伯爵のように下げながら、不気味に笑う。
孝太郎は手を震わせながらも、拳銃を構え続ける。
孝太郎が震える手で拳銃を操作しているのを感じたのだろう。二階堂は更に多くの擬似惑星を作り出し、孝太郎に向かわせていく。
孝太郎は慌てて拳銃で二階堂の作り出した小さな惑星を破壊していくが、そこからレーザー光線が出ていけば、孝太郎としても銃を異空間の武器庫に戻し、それに対処せざるを得ない。
孝太郎は全てのレーザーを破壊した後に震える手を額に置く。
その様子を見兼ねたのか、二階堂が哀れむような小さな声で囁く。
「フフフフフ、キミの限界はどうやらそこまでみたいだね?キミは私が知る中でもよく戦った方だと言っておくよ。私をここまで手こずらせるとはね。お陰で礼を言っておこう」
丁寧に頭を下げる二階堂の態度が孝太郎の怒りを刺激していく。
「あいつッ!」
聡子は孝太郎の気持ちを察してか、二階堂に向かって異空間の武器庫から取り出した日本刀を振りかざし、切り掛かっていったが、二階堂は例の突風を発生させ、聡子ごと日本刀の攻撃を背後に吹き飛ばす。
二階堂の作り出した無数の刃と風に襲われ、多くの傷を負った聡子を浩輔が起き上がらせる。
聡子は何万匹もの苦虫をすり潰しているらしい。歯をギリギリと噛む音が浩輔の耳に響く。
「チクショー!どうして、どうして、あいつに勝てねーんだよ!三人がかりだって言うのによォォォ~!!」
聡子の愚痴とも言える叫び声に二階堂は微笑を見せながら答えた。
「何事にも不可能という事はあるんだよ。想像したまえ、キミがどれ程寄付や募金を行ったとしても、世界中から貧困は無くならないし、キミがいくら反戦平和を叫ぼうとも世界中から戦争は無くならないんだ。同様に、キミたちが私に勝つ事は絶対に不可能だと言っても良いだろうね」
二階堂はワイヤーのような固い糸を使い、もう一度例の剣を作り出す。
二階堂は剣を試し振りするかのように大きく振り回してから、聡子にその剣先を見せる。
「では、キミ達二人の公開処刑を行うとするか……あの世での幸せを祈るよ。お二人さん。幸運をグッドラック!!」
二階堂が剣を振り下ろすよりも前に、日本刀が二階堂の剣にぶつかる。
聡子が疲労を抑えて、何とか二階堂の剣を防いだのかと思ったが、二階堂は剣が先程よりも震えるている点から聡子ではなく、浩輔が剣を握っているという事に気付く。
二階堂は大きな声で笑いながら、
「無駄だよ!キミにそんな刀が操れる訳がないッ!無駄な抵抗はやめたまえ!早く私に斬られた方が楽になるぞ!」
「ぼ、ぼくだって、学校で剣道くらいやってるんだッ!お前の剣くらい簡単に破ってみせるさッ!」
二階堂は浩輔の勇敢さに小さく笑い、彼自身の勇気を褒め称えた。
「アッハッハッ、そんな程度で私に挑むとは私も舐められたものだッ!」
二階堂はそう言って剣を握る手を強め、浩輔と浩輔が握っていた日本刀を同時に目の前から弾き飛ばす。
浩輔は悲鳴を上げ、地面に横たわる。
浩輔は廊下から立ち上がると、側に落ちていた日本刀を拾い直し、二階堂に向けてもう一度刃を向ける。
「どうしても、キミがやりたいのなら、しょうがないね」
二階堂は不適に笑い、剣を構え直す。
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