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トマホーク・ターヴェラント編
双子座の惨劇ーその④
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孝太郎は苦しい事だが、自分は大した魔法は使わないと犯人の青年に釈明した。青年は武器保存から取り出したと思われる銃を見せて、孝太郎を脅していたが、孝太郎は眉一つ動かす事なく、使えないという言い分を貫き通した。
その堂々たる様子に、青年は感心したらしく、寛大な笑みを見せて孝太郎を褒め称えていた。
そして、電車の中に彼の掌から、巨大なカマキリの形をした怪物を生み出し、自身の視線の向く方向の車両に見廻りに向かわせた。
どうやら、虫の形をした怪物を生み出すのが彼の使える魔法らしい。
彼は加藤なる女の見張りのために、この車両に残るらしい。
彼は加藤という女に銃口を突きつけて、小学生が地元の頭のおかしい人をからかうかのような笑みを浮かべていた。
勿論、それに黙っている程、加藤という女は弱い人間でない事は孝太郎も短いやり取りの間で悟っていた。
彼は共産主義者が金持ちを睨み付けるかのような憎悪に燃えた炎を彼女の黒い瞳に宿していた。
その炎はいかにも爆発しそうなくらい強力には違いない。
孝太郎はそんな事を考えながら、二人のこれまでの手口の事についての経緯を纏めていた。
経緯とすれば、二人の同級生と思われる男性女性を無差別に狙った事件の被害者は学生であろうと働いていようと、全て深夜の遅い時間に拉致されて、殺されたと言う事らしい。
無論、殺人課の刑事たちは事件当初から双子を有力な容疑者として見なしていたらしいが、二人には確固たるアリバイがあったために、裁判所の令状が取れなかったらしい。
孝太郎は東海林会の壊滅を狙う中で、東海林会関連の殺人事件の柿情報を柿谷淳一に聞きに行った時に、酷く苛ついていた調子だった事を覚えている。
何でも、有力な容疑者を逮捕できないために、全員の士気が上がらない、と。
その容疑者は双子で、犠牲者たちを殺す動機も十分にあるのに、毎日のうちのどちらかが必ず玄関を開けて、先に帰っていた双子を迎え入れている姿を近所の人間が目撃しているために、手出しが出来なかったと言う。
他にも、まるでヤクザが対抗勢力の幹部を見せしめに大衆の目の付くように遺体を放置しているかのような状況にも関わらずに確固たる物的証拠が見つからずに右往左往しているらしい。
だが、有力容疑者にして、現在のハイジャック事件の犯人の園田姉弟は双子だ。古くからのミステリーにもあるように、入れ替わる事が可能ではないかと孝太郎は考え始めた。
孝太郎はその事を考えている時に、ある一つの考えが思い浮かぶ。
孝太郎はかつて、ミュージシャンが曲を考えていると、ある時に神が降りてきて、その際に素晴らしい音楽が思い付くという話を聞いた事があったが、今の孝太郎はその人の気持ちを完全に理解する事ができるかもしれない。
孝太郎は隣の席の気の強そうな女性に唇を舐めながら、銃を突きつけている男性に向かって話しかけた。
「何なの?お巡りさん。悪いけれど、ぼくは忙しくて、この女を見張ってなくちゃあいけないの。暇で仕方ないのは分かるけれど、雑談をしたいんだったら、後で話をしてあげるよ」
男は鋭い視線を向けて言った。
「いいや、話は直ぐに済むんだ。話を少しだけ聞いてくれれば、済むから」
孝太郎は淡々とした調子で言った。
「しょうがないなぁ~一体何なの?」
「なあに、簡単な話だよ。キミらが忌々しい連中をこの世から、消し去るためにキミたちが活用した方法の事だよ。それをオレが教えようと思ってね」
孝太郎は得意げな表情を浮かべるが、反対に男は目を細めていた。
「まず、難攻不落と言われたアリバイの件だが、これはキミたちが双子だと言う事を考えれば、オレには直ぐに分かった。事件の起きた場所と被害者が拉致された時間を警察が導き出した所、平日の深夜と日曜日の夕方にかけて行われていた事が分かった。鉄道乗務員は殆ど休日が無いんだね。同情するよ」
孝太郎は腕を組んで、自慢の白い歯を見せて笑っていたが、車掌の制服を着た男は面白くなさそうに、視線を逸らしていた。
「さてと、トリックの解明だがね、実に初歩的な事だよ。ワトソン君」
「シャーロック・ホームズ気取りなの?お巡りさん?」
「いいや、オレはエラリー・クイーン派だ。まあ、それはともかく、トリックは簡単だ。お互いの性別を入れ替えていたのさ、キミらのような鉄道乗務員は乗っている電車の都合で、白籠市に着くのが遅れる場合が日常茶飯事なんだよね?まあ、仮に電車が遅れずに、同時に戻ったとしても、どちらかが先に家に帰り、女の方は男になりすまして、窓からアパートを出て、男に成り済ます。男の方は対象の相手を拉致して、殺害現場に持っていく。そのまた逆も然りだ。残っていた方が、再び玄関の前に戻って、携帯端末の録音音声を使用して、あたかも片方が帰ってきたかのように近所の人に見せつけたんだ」
孝太郎の推理には一点の綻びも無いようだ。既に男の顔は何かを達観したかのような悟り切ったような諦めにも似た顔を浮かべていた。
どうやら、これ以上言い逃れを図るのも無駄だと悟ったらしい。
お粗末な推理ショーだったと自分でも思うが、まさか本当に当たるとは思ってもみなかった。
孝太郎は淡々とした口調で続けた。
「つまりだね。古来よりの双子の入れ替わりトリックを応用して、警察を欺いたんだろ?双子の姉弟が男装女装して、玄関の扉を叩いて、携帯端末の録音音声を使い、もう片方が部屋にいるかのように見せかけた。それがお前の手口の真相だッ!」
孝太郎は銃で茶髪の気の強い女性を脅す青年に向かって人差し指を突き付ける。
孝太郎の指摘は当たったに違いない。男は車掌の帽子を深く被ってそのまま俯く。返事はない。
だが、僅かばかりの沈黙は男の笑う空気によって打ち破られてしまった。
「アハハハハハハハ!見事だよ!でも、事件の全貌を暴いたのはいいけれど、この場合あなたはどうするの?ぼくの魔法に勝てるとでも?」
青年は額を銃を持っていない左手で抑えながら叫ぶ。
勝利の笑みとでも言うべき笑みを引っ込めた孝太郎の顔を覗き込む。
孝太郎は沈黙を貫く。と、その様子を見た男は大きな笑いを発し、
「成る程ねぇ~図星なんだ?まあ、ぼくの魔法には勝てないからねぇ~」
男は今度は孝太郎の目線の向いていない方の電車の廊下に昆虫の形をした怪物を生み出す。
まるで、てんとう虫の顔がそのまま凶悪な肉食獣にでもなったかのような強力な虫が廊下を歩いていく。のっそりと歩くてんとう虫の目的は後方の車両の見張りなのだろうか。
孝太郎は人工の虫と目の前の銃をどうやって切り抜ける方法を考えた。
その堂々たる様子に、青年は感心したらしく、寛大な笑みを見せて孝太郎を褒め称えていた。
そして、電車の中に彼の掌から、巨大なカマキリの形をした怪物を生み出し、自身の視線の向く方向の車両に見廻りに向かわせた。
どうやら、虫の形をした怪物を生み出すのが彼の使える魔法らしい。
彼は加藤なる女の見張りのために、この車両に残るらしい。
彼は加藤という女に銃口を突きつけて、小学生が地元の頭のおかしい人をからかうかのような笑みを浮かべていた。
勿論、それに黙っている程、加藤という女は弱い人間でない事は孝太郎も短いやり取りの間で悟っていた。
彼は共産主義者が金持ちを睨み付けるかのような憎悪に燃えた炎を彼女の黒い瞳に宿していた。
その炎はいかにも爆発しそうなくらい強力には違いない。
孝太郎はそんな事を考えながら、二人のこれまでの手口の事についての経緯を纏めていた。
経緯とすれば、二人の同級生と思われる男性女性を無差別に狙った事件の被害者は学生であろうと働いていようと、全て深夜の遅い時間に拉致されて、殺されたと言う事らしい。
無論、殺人課の刑事たちは事件当初から双子を有力な容疑者として見なしていたらしいが、二人には確固たるアリバイがあったために、裁判所の令状が取れなかったらしい。
孝太郎は東海林会の壊滅を狙う中で、東海林会関連の殺人事件の柿情報を柿谷淳一に聞きに行った時に、酷く苛ついていた調子だった事を覚えている。
何でも、有力な容疑者を逮捕できないために、全員の士気が上がらない、と。
その容疑者は双子で、犠牲者たちを殺す動機も十分にあるのに、毎日のうちのどちらかが必ず玄関を開けて、先に帰っていた双子を迎え入れている姿を近所の人間が目撃しているために、手出しが出来なかったと言う。
他にも、まるでヤクザが対抗勢力の幹部を見せしめに大衆の目の付くように遺体を放置しているかのような状況にも関わらずに確固たる物的証拠が見つからずに右往左往しているらしい。
だが、有力容疑者にして、現在のハイジャック事件の犯人の園田姉弟は双子だ。古くからのミステリーにもあるように、入れ替わる事が可能ではないかと孝太郎は考え始めた。
孝太郎はその事を考えている時に、ある一つの考えが思い浮かぶ。
孝太郎はかつて、ミュージシャンが曲を考えていると、ある時に神が降りてきて、その際に素晴らしい音楽が思い付くという話を聞いた事があったが、今の孝太郎はその人の気持ちを完全に理解する事ができるかもしれない。
孝太郎は隣の席の気の強そうな女性に唇を舐めながら、銃を突きつけている男性に向かって話しかけた。
「何なの?お巡りさん。悪いけれど、ぼくは忙しくて、この女を見張ってなくちゃあいけないの。暇で仕方ないのは分かるけれど、雑談をしたいんだったら、後で話をしてあげるよ」
男は鋭い視線を向けて言った。
「いいや、話は直ぐに済むんだ。話を少しだけ聞いてくれれば、済むから」
孝太郎は淡々とした調子で言った。
「しょうがないなぁ~一体何なの?」
「なあに、簡単な話だよ。キミらが忌々しい連中をこの世から、消し去るためにキミたちが活用した方法の事だよ。それをオレが教えようと思ってね」
孝太郎は得意げな表情を浮かべるが、反対に男は目を細めていた。
「まず、難攻不落と言われたアリバイの件だが、これはキミたちが双子だと言う事を考えれば、オレには直ぐに分かった。事件の起きた場所と被害者が拉致された時間を警察が導き出した所、平日の深夜と日曜日の夕方にかけて行われていた事が分かった。鉄道乗務員は殆ど休日が無いんだね。同情するよ」
孝太郎は腕を組んで、自慢の白い歯を見せて笑っていたが、車掌の制服を着た男は面白くなさそうに、視線を逸らしていた。
「さてと、トリックの解明だがね、実に初歩的な事だよ。ワトソン君」
「シャーロック・ホームズ気取りなの?お巡りさん?」
「いいや、オレはエラリー・クイーン派だ。まあ、それはともかく、トリックは簡単だ。お互いの性別を入れ替えていたのさ、キミらのような鉄道乗務員は乗っている電車の都合で、白籠市に着くのが遅れる場合が日常茶飯事なんだよね?まあ、仮に電車が遅れずに、同時に戻ったとしても、どちらかが先に家に帰り、女の方は男になりすまして、窓からアパートを出て、男に成り済ます。男の方は対象の相手を拉致して、殺害現場に持っていく。そのまた逆も然りだ。残っていた方が、再び玄関の前に戻って、携帯端末の録音音声を使用して、あたかも片方が帰ってきたかのように近所の人に見せつけたんだ」
孝太郎の推理には一点の綻びも無いようだ。既に男の顔は何かを達観したかのような悟り切ったような諦めにも似た顔を浮かべていた。
どうやら、これ以上言い逃れを図るのも無駄だと悟ったらしい。
お粗末な推理ショーだったと自分でも思うが、まさか本当に当たるとは思ってもみなかった。
孝太郎は淡々とした口調で続けた。
「つまりだね。古来よりの双子の入れ替わりトリックを応用して、警察を欺いたんだろ?双子の姉弟が男装女装して、玄関の扉を叩いて、携帯端末の録音音声を使い、もう片方が部屋にいるかのように見せかけた。それがお前の手口の真相だッ!」
孝太郎は銃で茶髪の気の強い女性を脅す青年に向かって人差し指を突き付ける。
孝太郎の指摘は当たったに違いない。男は車掌の帽子を深く被ってそのまま俯く。返事はない。
だが、僅かばかりの沈黙は男の笑う空気によって打ち破られてしまった。
「アハハハハハハハ!見事だよ!でも、事件の全貌を暴いたのはいいけれど、この場合あなたはどうするの?ぼくの魔法に勝てるとでも?」
青年は額を銃を持っていない左手で抑えながら叫ぶ。
勝利の笑みとでも言うべき笑みを引っ込めた孝太郎の顔を覗き込む。
孝太郎は沈黙を貫く。と、その様子を見た男は大きな笑いを発し、
「成る程ねぇ~図星なんだ?まあ、ぼくの魔法には勝てないからねぇ~」
男は今度は孝太郎の目線の向いていない方の電車の廊下に昆虫の形をした怪物を生み出す。
まるで、てんとう虫の顔がそのまま凶悪な肉食獣にでもなったかのような強力な虫が廊下を歩いていく。のっそりと歩くてんとう虫の目的は後方の車両の見張りなのだろうか。
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