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外伝・少年と雷神編
負け組倶楽部(ザ・イレギュラーズ)ーその②
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どのくらい時間が経ったのだろう。浩輔の身体感覚ではもう十時間以上経ったような気がしていた。浩輔はリンチされて弱っていた体をゆっくりと、砂だらけの校庭から起こす。
ふと、浩輔は喉の奥から生暖かいものがこみ上げてくる事に気がつく。
浩輔は慌ててそれを地面に吐き出す。土色の地面が浩輔の吐いた部分だけ、赤く染まっていく。
ここが、雪国だったのなら、日の丸を描けたのかなと、考えていると、二人の少年少女が立ち上がっていた事に気がつく。
浩輔は二人がセーラー服のスカートと学ランとセットの黒のズボンに付いていたと思われる、土埃を払っている事に気が付く。
浩輔は同情の色を浮かべてから、二人に向かって手を差し出し、
「ぼ、ぼくは刈谷浩輔……あの、今日は大変だったね、あいつら容赦なくてさ……ぼくもよく殴られてるよ」
浩輔は軽く笑ってみせたが、二人は頑なに口を閉ざしたままである。
恐らく、今日の事を語りたくないのだろうか。それとも、この二人でさえ刈谷阿里耶の弟である、自分を避けてしまうのだろうか。
浩輔がもしかしたらという思いで目を輝かせているのを二人は申し訳なさそうに視線を地面へと逸らす。
浩輔はその二人の態度に失望のような表情を浮かべてしまう。
すると、その様子を二人も流石に哀れに感じたのだろうか。
弱々しい微笑を浮かべて、男子の方が浩輔の右手を握り返す。
「あ、ごめんな……オレは阿久津孝弘……孝弘って呼んで欲しいな……ほ、ほらお前も自己紹介くらいしろよ、な?」
言葉の裏の熱意に絆されたのだろうか。或いはここでお互い名乗り合って、今後は協力していく事が最適だと考えたのだろうか。
聞こえるか、聞こえないかくらいの小さな声で、
「火野陽子……」
と、名乗った。
浩輔は二人に微笑み返して、
「そうかぁ、ぼくの名前は刈谷浩輔!浩輔って呼んでよ!ぼくの保護者もただ一人の友達もそう呼んでる……」
「友達って?」
声変わりを果たした青年の声が聞こえる。こんな出来事が無ければ、運動部でも大きく掛け声を発していそうなくらいの気持ちの良さそうな声だ。
浩輔はこれに対抗する訳ではないが、いつもより大きな声で、
「柿谷淳太って言うんだッ!昨日友達になったばかりで……」
「柿谷淳太?嘘だろ?あいつがオレらのような奴に声を掛ける事なんてーー」
「浩輔くん、今日も良かったら、帰らない?」
可愛らしい顔の美少年の天使のような声によって孝弘の言葉はかき消された。
浩輔は満面の笑みを浮かべて、大きくを手を左右に振る。
「いいよ!柿谷くん!!今日も帰ろうよ!」
その様子を見ていた、孝弘は何故か大きく手を震わせている。
そして、親の仇でも見るかのような目付きで、淳太を睨み付け、
「おい、偽善者野郎!!テメェ、オレらが虐められるのを黙って見てただろ!?このクソ野郎がッ!」
孝弘は淳太に向かうなり、右手を振り上げたが、その右手は淳太の頬に直撃するよりも前に、火野陽子の手によって止められる。
「くそッ」
孝弘は舌打ちをしてから、陽子の手を引いて校舎裏から出て行く。
淳太は孝弘を見送りながら、耳を赤く染めていた。
浩輔はそんな淳太の気持ちが分かるとばかりに、黙って彼が何かを考えている様子を眺めていた。
そして、2分ほどの時間が経ってから、淳太は浩輔の手を引いて、
「ごめんね、こんな顔見せちゃって……でも、ぼくは卑怯だからさ……あんな事言われてもしょうがないよね、キミと仲良くなりたいと思ったのだって、昨日からなんだし……」
浩輔は黙って淳太の手を握り返す。
「ありがとう、そうだッ!今日は家で夕飯食べない?兄さん、今晩も帰りが遅くなるって言っててさ、今日はキミのリクエストに答えて、食事を作るよ」
浩輔は淳太の思いが分かるとばかりに、優しい微笑みを見せた。
二人は登校鞄を取ってから、手を握りながら、校門へと向かって行く。
浩輔は温かな温もりを感じていた。今日だけはこの友人と最高の思い出を作り上げたい、と考えた。
「おい、今日の放課後も時間を空けとけよ?今日はお前らに喝を入れてからゲーセンに行くからな」
リーダー格の禿頭の男はそう言って、背後の掃除用具を入れたロッカーを殴る。
ロッカーがボコンと凹む音が聞こえる。余程、強く殴ったのだろう。
周りにもその音が聞こえたが、無視するばかり。
僕は大衆の敵なのだ。仕方がない。浩輔は全てを悟った釈迦のような気分だった。
だが、もう一つの自分は八百万の神がいるならば、助けて欲しいと願っている。
どうしようもない。楽しい時間は直ぐに過ぎるのだ。
浩輔は自分を中傷する落書きが書かれている机に座る。
幸いにも、椅子の上には画鋲が置かれていなかった。
浩輔はホッと溜息を吐いてから、教師の到着を待った。
単調な授業が始まる。浩輔は数学の教科書を取り出して、黒板に書かれる内容を必死に写していく。
黒板に書かれた、二つ目の数式を写し取った所で、突然耳をつん裂くような凄まじい音が聞こえた。
そして、教室の扉が蹴破られ、教室の中に機関銃を持った男が現れた。
浩輔は慌てて机をひっくり返して、その下に隠れた。半ば反射的な行動だったが、その行動は功を奏したらしい。
何故ならば、他の生徒たちが次々と機関銃の餌食になっていたから……。
浩輔は机の下で倒れた振りをしながら、男が教室から通り過ぎるのを待った。
柿谷淳太や阿久津孝弘。火野陽子の安否が気になったが、今はそれどころではない。
浩輔は死体の振りをしながら、必死に男が教室から立ち去って行くのを待った。
(あいつらは誰なんだ?どうして、こんな事を……?)
だが、浩輔は直ぐ様その考えを頭から振り払う。
今は死体の振りをする事こそが、大事だ。
浩輔が五分ばかり死体の振りをしていると、ようやく銃を乱射した男が立ち去って行く。
浩輔はやっと、自由を得た。芋虫のように這いながら、クラスの中で無事な人間を確認する。
浩輔にとっての幸運は自分の友達は全員生き残っていた事だった。
柿谷淳太も阿久津孝弘も火野陽子も無事だった。何故ならば、三人とも首をキョロキョロと動かしている事を確認したからだ。
浩輔はホッと溜息を吐く。
それはともかく、さっきは何だったのだろう。浩輔は殆ど人の居なくなった教室で考え始めた。
ふと、浩輔は喉の奥から生暖かいものがこみ上げてくる事に気がつく。
浩輔は慌ててそれを地面に吐き出す。土色の地面が浩輔の吐いた部分だけ、赤く染まっていく。
ここが、雪国だったのなら、日の丸を描けたのかなと、考えていると、二人の少年少女が立ち上がっていた事に気がつく。
浩輔は二人がセーラー服のスカートと学ランとセットの黒のズボンに付いていたと思われる、土埃を払っている事に気が付く。
浩輔は同情の色を浮かべてから、二人に向かって手を差し出し、
「ぼ、ぼくは刈谷浩輔……あの、今日は大変だったね、あいつら容赦なくてさ……ぼくもよく殴られてるよ」
浩輔は軽く笑ってみせたが、二人は頑なに口を閉ざしたままである。
恐らく、今日の事を語りたくないのだろうか。それとも、この二人でさえ刈谷阿里耶の弟である、自分を避けてしまうのだろうか。
浩輔がもしかしたらという思いで目を輝かせているのを二人は申し訳なさそうに視線を地面へと逸らす。
浩輔はその二人の態度に失望のような表情を浮かべてしまう。
すると、その様子を二人も流石に哀れに感じたのだろうか。
弱々しい微笑を浮かべて、男子の方が浩輔の右手を握り返す。
「あ、ごめんな……オレは阿久津孝弘……孝弘って呼んで欲しいな……ほ、ほらお前も自己紹介くらいしろよ、な?」
言葉の裏の熱意に絆されたのだろうか。或いはここでお互い名乗り合って、今後は協力していく事が最適だと考えたのだろうか。
聞こえるか、聞こえないかくらいの小さな声で、
「火野陽子……」
と、名乗った。
浩輔は二人に微笑み返して、
「そうかぁ、ぼくの名前は刈谷浩輔!浩輔って呼んでよ!ぼくの保護者もただ一人の友達もそう呼んでる……」
「友達って?」
声変わりを果たした青年の声が聞こえる。こんな出来事が無ければ、運動部でも大きく掛け声を発していそうなくらいの気持ちの良さそうな声だ。
浩輔はこれに対抗する訳ではないが、いつもより大きな声で、
「柿谷淳太って言うんだッ!昨日友達になったばかりで……」
「柿谷淳太?嘘だろ?あいつがオレらのような奴に声を掛ける事なんてーー」
「浩輔くん、今日も良かったら、帰らない?」
可愛らしい顔の美少年の天使のような声によって孝弘の言葉はかき消された。
浩輔は満面の笑みを浮かべて、大きくを手を左右に振る。
「いいよ!柿谷くん!!今日も帰ろうよ!」
その様子を見ていた、孝弘は何故か大きく手を震わせている。
そして、親の仇でも見るかのような目付きで、淳太を睨み付け、
「おい、偽善者野郎!!テメェ、オレらが虐められるのを黙って見てただろ!?このクソ野郎がッ!」
孝弘は淳太に向かうなり、右手を振り上げたが、その右手は淳太の頬に直撃するよりも前に、火野陽子の手によって止められる。
「くそッ」
孝弘は舌打ちをしてから、陽子の手を引いて校舎裏から出て行く。
淳太は孝弘を見送りながら、耳を赤く染めていた。
浩輔はそんな淳太の気持ちが分かるとばかりに、黙って彼が何かを考えている様子を眺めていた。
そして、2分ほどの時間が経ってから、淳太は浩輔の手を引いて、
「ごめんね、こんな顔見せちゃって……でも、ぼくは卑怯だからさ……あんな事言われてもしょうがないよね、キミと仲良くなりたいと思ったのだって、昨日からなんだし……」
浩輔は黙って淳太の手を握り返す。
「ありがとう、そうだッ!今日は家で夕飯食べない?兄さん、今晩も帰りが遅くなるって言っててさ、今日はキミのリクエストに答えて、食事を作るよ」
浩輔は淳太の思いが分かるとばかりに、優しい微笑みを見せた。
二人は登校鞄を取ってから、手を握りながら、校門へと向かって行く。
浩輔は温かな温もりを感じていた。今日だけはこの友人と最高の思い出を作り上げたい、と考えた。
「おい、今日の放課後も時間を空けとけよ?今日はお前らに喝を入れてからゲーセンに行くからな」
リーダー格の禿頭の男はそう言って、背後の掃除用具を入れたロッカーを殴る。
ロッカーがボコンと凹む音が聞こえる。余程、強く殴ったのだろう。
周りにもその音が聞こえたが、無視するばかり。
僕は大衆の敵なのだ。仕方がない。浩輔は全てを悟った釈迦のような気分だった。
だが、もう一つの自分は八百万の神がいるならば、助けて欲しいと願っている。
どうしようもない。楽しい時間は直ぐに過ぎるのだ。
浩輔は自分を中傷する落書きが書かれている机に座る。
幸いにも、椅子の上には画鋲が置かれていなかった。
浩輔はホッと溜息を吐いてから、教師の到着を待った。
単調な授業が始まる。浩輔は数学の教科書を取り出して、黒板に書かれる内容を必死に写していく。
黒板に書かれた、二つ目の数式を写し取った所で、突然耳をつん裂くような凄まじい音が聞こえた。
そして、教室の扉が蹴破られ、教室の中に機関銃を持った男が現れた。
浩輔は慌てて机をひっくり返して、その下に隠れた。半ば反射的な行動だったが、その行動は功を奏したらしい。
何故ならば、他の生徒たちが次々と機関銃の餌食になっていたから……。
浩輔は机の下で倒れた振りをしながら、男が教室から通り過ぎるのを待った。
柿谷淳太や阿久津孝弘。火野陽子の安否が気になったが、今はそれどころではない。
浩輔は死体の振りをしながら、必死に男が教室から立ち去って行くのを待った。
(あいつらは誰なんだ?どうして、こんな事を……?)
だが、浩輔は直ぐ様その考えを頭から振り払う。
今は死体の振りをする事こそが、大事だ。
浩輔が五分ばかり死体の振りをしていると、ようやく銃を乱射した男が立ち去って行く。
浩輔はやっと、自由を得た。芋虫のように這いながら、クラスの中で無事な人間を確認する。
浩輔にとっての幸運は自分の友達は全員生き残っていた事だった。
柿谷淳太も阿久津孝弘も火野陽子も無事だった。何故ならば、三人とも首をキョロキョロと動かしている事を確認したからだ。
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