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第四章『この私が狼の牙をへし折ってご覧にいれますわ』
花売り駆除人のやり直し
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シャルルにとって寝耳に水であったのは自身の片腕を務めていたオークス・ドレイジアが仕留められたという報告であった。
「何ぃ、あの野郎がやられただと?」
シャルルは白色のワインが入ったギヤマンのグラスを片手に報告へと訪れた部下の言葉を聞いていた。
「は、はい。話によれば裏通りで剣を受けたと……」
「ンなことを聞いているんじゃあないッ!いいか、オークスは“繋ぎ役”だったんだぞッ!繋ぎ役だッ!王位簒奪計画のなッ!そいつが仕留められたとあっちゃあこの先の計画も台無しだろうがッ!」
シャルルの怒りは頂点に達していたといってもいい。眉間に皺を寄せ、小刻みに震えながら今後の計画を憂いていたのである。
オークスが冥界王の元へと旅立ってしまったので、計画は中止……。
というわけにもいくまい。オークスの報告を聞くに計画に乗った貴族は既にやる気満々だ。今更止めたところで王位簒奪計画は止まらないだろう。
流石に計画を中止し、国にでも帰れば貴族たちは憧れるであろうが、他の執行官たちは大勢の仲間を駆除人との抗争で失っている。最高執行官の命令であったとしてもその命令を受諾する可能性は低い。第一、反対を押し切って里帰りを実行すれば自分が国王から不評を買い、粛清されることは間違いない。
それだけは避けなくてはなるまい。だが、繋ぎ役を失った以上は貴族たちを上手く操る手立ては皆無。
せめて、新しい繋ぎ役が見つかればいいのだが……。
シャルルが頭を悩ませていた時だ。生前オークスが報告に訪れた際に駆除人を一人仲間に引き入れたという話を思い返していく。
オークスから顔や表の稼業として花売りをしているという元駆除人だ。忘れるはずがない。そのことを部下に伝えれてその元駆除人を見つけ出し、繋ぎ役として用いるという妙案を思いついた。
妙案を思い付いた以上は実行せなばなるまい。シャルルは報告に訪れた部下にその若い女性を連れてくるように命じた。
その女性がシャルルの前に引き出されたのは命令が下された日の夕刻になってからであった。
何でも駆除人ギルドを裏切った以上は自宅として使っていた場所に戻ることもできなかったので、どこか適当な宿に身を隠していたのだという。
シャルルはギヤマンのグラスを片手に自分たちの元へと寝返ったとされる駆除人を一瞥していく。
裏切り者という称号を得ることになった彼女はこの世に一人いるかいないかと称してもいいほどの美しい容姿をしていた。
そればかりではなく、駆除人を務めていたというだけのこともあり、体型も引き締まっていて魅力を感じた。
それは妖艶や艶麗という言葉で言い表すようなものではなく、優れた彫刻品を見る時に感じる純粋な憧れにも似た感情であった。
思わずその美しさに見惚れていると連れて来られた女性は膝を折って頭を下げシャルルを相手に忠誠を誓ったのである。
忠誠を誓う様を見ていると、彼女の思いが嘘や偽りとは言い難い。シャルルは素直に彼女を『ジャッカル』の一員として登用することに決めた。
まずは顔を上げるように指示を出し、オークスの後任を任せたのである。いや、そればかりではない。
反国王の貴族たちをまとめ上げる繋ぎ役というオークスでさえ成し遂げることができなかった役割を与えようとさえ考えた。彼女の絵画に記されているような美しい容姿があればそれは可能だ。
完璧な計画に鮮やかな一筆が加わったことを喜んだシャルルはいつになく上機嫌な様子でマルリアを手招きした。
近寄ってきたマルリアに引き継ぎ事項を教えた後に貴族たちと接触させるために宮廷作法を覚えるように命令を下す。
講師役は自らもオルレアンス王国の大貴族であるシャルル自身が買って出た。
一対一の集中講習で一人前のレディとしての作法を教える間、シャルルは宮中に潜り込むのに必要な貴族の爵位を購入するため奔走していた。
熱心に探した末にたくさんの称号を持っているというさる高名な貴族が家計が逼迫し、そのうちの一つを手放すという話を聞き付け、その貴族から高値で爵位を買い取って、それをマルリアに与えた。
これによって、マルリアは平民から貴族へと生まれ変わることになった。
新たに子爵夫人としての地位を与えられた際に彼女はシャルルによって新しい名前を与えられた。その名はフレア。そしてジオラーデ子爵夫人の地位を加えて、フレア・ジオラーデというのが彼女の新たな名前となった。
新しい名前が与えられた以上これ以後は筆者も「マルリア」ではなく「フレア」と記すことにする。
いずれにしろ、フレアはオークスに取って代わる存在として充分な社会的地位と作法とを教え込まれた。三週間という長い時間を消耗することになったが、それでもその手間と金に見合う働きを彼女はオルレアンス王国にもたらしてくれるはずだ。
問題は駆除人による妨害であったが、それに関する心配は無能だ。というのも、礼儀作法の講師役であったシャルルが左方の練習の合間に新たな戦闘技術を教え込み、今後駆除人と交戦になった際に用いるようにもさせたからだ。
シャルル直伝の技があればカーラにも引けを取らないはずだ。少なくとも、防戦一方などという惨めな結果には陥らないだろう。
シャルルがこれまでの成果を思い返し、部屋で笑っていると、フレアが早速その技を使って自分を嗅ぎ回っていた駆除人を始末したという話を聞いた。
フレアは自分の技に自信が持てて嬉しいようだ。シャルルも満更ではない表情を浮かべる。
クライン王国を国王に献上した後にはフレアを自身の愛人に据えるのも悪くないかもしれない。
屈託のない顔で笑うフレアを見て、シャルルは内に下衆な思いを抱きながらも愛想の良い笑みを微笑み返したのであった。
金色に光るシャンデリアの下で公爵家嫡男クリストフ・ホワインセアムとエミリー・リバリーの両名は婚約者として踊りを踊っていた。
完璧なダンスを見て舞踏会に参加していた紳士淑女の面々は二人に注目せざるを得なかった。
大勢の視線が降り注いでおり、舞踏会の主演は若く美しい美男美女の二人であることは誰の目から見ても明らかであった。
だが、扉が開いた時に主役はこの時に初めて社交界に足を踏み入れた若き婦人へと変わっていく。
はっきりとした目鼻に線の細い顔立ち。細い眉。紅を指していないのにも関わらず美しく輝くピンク色の唇。
御伽話に出てくるお姫様。舞台の上でしか見ることができない美人。腕利きの絵師が気合を入れた絵画に描かれるようなモデル。そのような言葉が参加者たちの頭の中に次々と浮かんでいく。
初めて社交界に足を踏み入れたという若き婦人は全員の注目を浴びながら舞踏会の会場を歩んでいく。
純潔を象徴するかのような白色のロングドレスに胸元に飾られたシンプルな金色の首飾りが目を引いていた。
簡素なものであったが、それだけに美しさを引き立てていた。
それ故に紳士はもちろんのこと婦人たちさえ彼女が歩いている姿を凝視していた。
大勢の注目を浴びた婦人はあろうことか、舞踏会の壁で飲み物を飲んでいたジェームズ・アンブリッジ伯に声を掛けたのであった。
ジェームズは信じられないと言わんばかりに口を大きく開けていた。
だが、手は確実にこちらに差し伸ばされている。これは現実なのだ。
冴えないはずのジェームスが若く美しい婦人のおかげで今日だけは輝いて見えた。それは太陽の輝きによってのみ光る月のようであった。
全員が一瞬のうちに生じた眩い光に夢中になってしまっていたが、ただ一人それを面白くなさげに見つめていた人物がいる。
主役の座を新参の婦人によって無理矢理に奪い取られたクリストフであった。
それどころか、婚約者のエミリーもダンス止めると断りを入れてからはずっと新たに訪れた婦人を夢中になって見つめていた。
激怒したクリストフは執事を呼び出し、突然現れた婦人が何者であるのかを問い掛けていく。
これまでにないような恐ろしい形相で尋ねたはずであったが、執事は困った顔を浮かべるばかりであった。
どうも今日新たに現れた新顔の情報はほとんど出回っていないらしく、ホワインセアム家という大貴族に仕える一流の執事をもってしても回答に窮する羽目になってしまったのである。
嫉妬の炎で心を焼き尽くしたクリストフが怒りで拳を震わせながら婦人を見つめていると、ふと婦人がジェームズの耳元で囁いている姿が見えた。
その時だ。ダンスの最中だというのにジェームズが不意に倒れ込み、地面の上に手を突いてしまった。
舞踏会にてダンスの途中で何の説明もなく手を離すということは婦人とのダンスを放棄したということになり、社交界では忌み嫌われる行為であった。
当然周りからは紳士も淑女も関係のない罵声が飛び交っていく。
礼を失した者に対する罰は重かった。このままジェームズは面目を失うことになるかと思われたのだが、それは意外な形で終結することになった。
新顔の婦人が倒れたジェームズに手を差し伸べ、彼を外の休憩室へと連れて行ったのである。
このような行動を見せられた以上は周りの貴族たちもジェームズを許さざるを得ない。
なかなかの采配だ。クリストフは彼女の名判事を思わせる裁き方を見て、すっかりと嫉妬の炎を鎮めて感心したように婦人を見つめていたのである。
だが、一方で情けないのはジェームズである。よもや舞踏会の中であのような醜態を見せるとは思いもしなかった。
長年の剣術の好敵手を揶揄うため休憩室の扉を開いた時だ。
ジェームズが頭を抱えている姿が見えた。ただならぬ様子に思わず両肩を強張らせてしまった。
そんなクリストフを横で介抱していた婦人が小さく頭を下げる。
頭を上げた後は愛らしい笑みを浮かべながらクリストフの元へと近付いていく。
嫉妬の炎が消えてからというものの、クリストフはすっかりとこの婦人に夢中になってしまっていた。
愛らしい笑顔を浮かべる様を見て胸の高鳴りが止まらなくなっていた時だ。
不意にその女性が声を掛けてきた。
「お初にお目に掛かります。私の名前はフレア。フレア・ジオラーデと申します。以後お見知り置きを」
「そ、そうか、こちらこそよろしく頼む」
「ありがとうございます。オークスさんの代わりになれるかは不安ですが、卿のお力になれるよう努力していきたいと思います」
フレアは丁寧な一礼を行なった。素晴らしい所作も行き届いている。
まさしく令嬢という佇まいだ。オークスが仕留められたという話を聞いて以来、音沙汰がなかった『ジャッカル』であったが、彼女を育成していたというのならば許そうではないか。
クリストフが感心したような表情でフレアを見つめていると、ジェームズが不意に椅子の上から立ち上がって、生気を失った様な表情であったが、そんな表情には似合わないような大きな声で叫んでいく。
「クリストフ卿ッ!オレはフレアから聞きました。オレの家族は駆除人に殺されたんですよッ!オレだけを残してッ!」
ジェームズはそのままクリストフの胸に擦り寄ると、両目から涙を流しながら崩れ落ちていく。
その様をフレアは冷笑を浮かべながら見つめていた。
が、すぐにその背中を優しく摩り、慰めの言葉を掛けていく。
絶世の美女からかけられた言葉を聞いてジェームズは地面の上から立ち上がり、クリストフの手を強く握り締めていく。
「クリストフ卿ッ!風の噂によればあなたは駆除人たちをこの世から消し去りたいと仰られておりましたッ!その言葉に私も同意致しますッ!どうか、アンブリッジ家を我々の陣営にお加えくださいませッ!」
情けなく泣きべそをかく姿にはこれまでの好敵手としての面影は全くといっていいほど見受けられなかった。
その姿を見たクリストフは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら男泣きを続けるジェームズの肩に手を置いて、ジェームズを自身の陣営へと加えたのであった。
ジェームズは生前家族と折りが悪かったと聞くが、それでも情が残っていたのだろう。
どのような理由であったとしても、クリストフからすれば思いもよらぬ大きな収穫であった。
翌日甘い夢から目覚めたクリストフはガーネットのノックで目を覚まし、目覚めの一杯を啜っていく。
いつもは何とも感じないワインが今日はいつにも増して美味く感じられた。
クリストフが目覚めのワインを片手に朝の読書を行っていた時だ。
別のメイドが来客を告げた。朝の読書を邪魔させられて一気に機嫌を悪くしたクリストフは朝食のまま朝食のままなら会うと答え、ガーネットや報告に訪れたメイドに朝食を持って来させた。
ベッドの上で豪勢な朝食を口にしていると、昨日に会ったフレアがクリストフの元を訪れた。
「な、ら、来客というのは貴君のことであったのか!?」
てっきり昨晩の対応に不満を持ったエミリーかもしくは自身の派閥の下にいるつまらぬ家からの使者だとばかり思っていたクリストフは呆気に取られた。
すぐにガーネットに朝食を片付け、客人にお茶を運ぶように指示を出したが、フレアはにっこりと微笑みながら、
「お気遣いなく。こんな早い時間に訪れた私も悪いのですから」
と、謙遜してみせたのである。何と健気なのだろう。クリストフは胸を打たれた。
代わりにクリストフはガーネットにお茶ばかりではなく、食事も運ぶように指示を出す。
これならば対等な関係になるはずだ。クリストフの思惑を読んだのか、今度はフレアも拒否することなく運ばれてきた朝食に口をつけたのである。
メニューは焼きたてのパンに目玉焼き、ハム、メインディッシュとなる大きなステーキとなっている。だが、いちばんの見どころは新鮮な野菜を使ったサラダに季節の果物を加工して作ったコンポートである。
フレアは思わず生唾を飲み込みそうになったが、我慢してレディに相応しい上品な仕草で食事を進めていく。そして残るはデザートのみとなったところでようやく口を開いたのであった。
「実は私、クリストフ卿に告白しておきたいことがあってここに参りましたの」
「告白?それは何かな?」
愛の告白であったのならば困る。これでも婚約者がいる身なのだ。自身がエミリーにどう思っているのかは別として今はエミリーと繋がっておかなくては困ってしまう。
柄にも似ないような邪なことを考えていた時だ。フレアが思いもよらぬことを口にした。
「私、実は害虫駆除人でしたの」
予想外の言葉を聞いてクリストフの朝食のステーキを運ぶ手が止まってしまった。
フレア嬢が発した言葉が信じられなかったのだ。このような可憐で上品な令嬢ともいうべき美しい女性が駆除人であったなどという言葉はどうしても信じられずにいた。
クリストフは堪らなくなって聞き返したが、どうもそれは事実であるらしい。
駆除人の駆除現場を目撃したというガーネットも聞き返したが、同じように首を縦に振るばかりであった。
クリストフが堪らなくなり、頭を抱えていたのとは対照的にガーネットはフレアへと詰め寄りながら自身が目撃した事件の犯人について問い掛けた。
ガーネットの話を聞いた瞬間にフレアはその犯人が医師のレキシーであるということを看破した。
毒殺などという手段を用いるのは駆除人ギルドにおいても少人数。ましてや王宮という場所でそのような大胆な行動に出られるような駆除人はレキシーをおいて他にいない。
無論、直接の現場を見たわけではないので断定はできないが、亡きベクター王による即位式の前後は駆除人ギルドが妙に慌しく、一部の駆除人たちしかギルドに入ることができなかったことや事件の少し後に逃レキシーとカーラが西の温泉へと旅立ったことも覚えている。
それらの事実から十中八九犯人はレキシーで間違いない。
自身の考えを伝えると、二人は驚きを隠しきれなかった。
それもそのはずだ。表向きは街の名士として名を馳せている他に国王フィンのかかりつけ医としても名を馳せている。
普通の人たちはそのような立派な人物が駆除人であるなどとは思いもしないだろう。
フレアは慌てふためく二人を見ながら出されたお茶を啜っていく。
これでフレアは完全に仲間を裏切ることになったのだが、既に駆除人ギルドを裏切り、命を狙われている彼女の中に躊躇いなどなかった。
どうせ殺されてしまうのならば全てぶち撒けた上で死んでやろうではないか。
フレアは黒い笑みを浮かべていた。その笑顔からは既に害虫駆除人であった「マルリア」は消え、『ジャッカル』の力によって「フレア・ジオラーデ子爵夫人」という駆除人に消されるべき悪女が生まれていた。
駆除人ギルドにとって厄介な敵が生まれ、その牙を剥くことになった決定的な瞬間であった。
あとがき
本日も投稿が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。本日は体調不良などが重なってしまい、手を付けることが遅くなってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。なるべ早くとは思っているのですが、最近は私の方も忙しくてなかなか手がつけられません。
以後は私の方でも体調を整え、もう少し早く取り組めるように努力していきたいと思います。
「何ぃ、あの野郎がやられただと?」
シャルルは白色のワインが入ったギヤマンのグラスを片手に報告へと訪れた部下の言葉を聞いていた。
「は、はい。話によれば裏通りで剣を受けたと……」
「ンなことを聞いているんじゃあないッ!いいか、オークスは“繋ぎ役”だったんだぞッ!繋ぎ役だッ!王位簒奪計画のなッ!そいつが仕留められたとあっちゃあこの先の計画も台無しだろうがッ!」
シャルルの怒りは頂点に達していたといってもいい。眉間に皺を寄せ、小刻みに震えながら今後の計画を憂いていたのである。
オークスが冥界王の元へと旅立ってしまったので、計画は中止……。
というわけにもいくまい。オークスの報告を聞くに計画に乗った貴族は既にやる気満々だ。今更止めたところで王位簒奪計画は止まらないだろう。
流石に計画を中止し、国にでも帰れば貴族たちは憧れるであろうが、他の執行官たちは大勢の仲間を駆除人との抗争で失っている。最高執行官の命令であったとしてもその命令を受諾する可能性は低い。第一、反対を押し切って里帰りを実行すれば自分が国王から不評を買い、粛清されることは間違いない。
それだけは避けなくてはなるまい。だが、繋ぎ役を失った以上は貴族たちを上手く操る手立ては皆無。
せめて、新しい繋ぎ役が見つかればいいのだが……。
シャルルが頭を悩ませていた時だ。生前オークスが報告に訪れた際に駆除人を一人仲間に引き入れたという話を思い返していく。
オークスから顔や表の稼業として花売りをしているという元駆除人だ。忘れるはずがない。そのことを部下に伝えれてその元駆除人を見つけ出し、繋ぎ役として用いるという妙案を思いついた。
妙案を思い付いた以上は実行せなばなるまい。シャルルは報告に訪れた部下にその若い女性を連れてくるように命じた。
その女性がシャルルの前に引き出されたのは命令が下された日の夕刻になってからであった。
何でも駆除人ギルドを裏切った以上は自宅として使っていた場所に戻ることもできなかったので、どこか適当な宿に身を隠していたのだという。
シャルルはギヤマンのグラスを片手に自分たちの元へと寝返ったとされる駆除人を一瞥していく。
裏切り者という称号を得ることになった彼女はこの世に一人いるかいないかと称してもいいほどの美しい容姿をしていた。
そればかりではなく、駆除人を務めていたというだけのこともあり、体型も引き締まっていて魅力を感じた。
それは妖艶や艶麗という言葉で言い表すようなものではなく、優れた彫刻品を見る時に感じる純粋な憧れにも似た感情であった。
思わずその美しさに見惚れていると連れて来られた女性は膝を折って頭を下げシャルルを相手に忠誠を誓ったのである。
忠誠を誓う様を見ていると、彼女の思いが嘘や偽りとは言い難い。シャルルは素直に彼女を『ジャッカル』の一員として登用することに決めた。
まずは顔を上げるように指示を出し、オークスの後任を任せたのである。いや、そればかりではない。
反国王の貴族たちをまとめ上げる繋ぎ役というオークスでさえ成し遂げることができなかった役割を与えようとさえ考えた。彼女の絵画に記されているような美しい容姿があればそれは可能だ。
完璧な計画に鮮やかな一筆が加わったことを喜んだシャルルはいつになく上機嫌な様子でマルリアを手招きした。
近寄ってきたマルリアに引き継ぎ事項を教えた後に貴族たちと接触させるために宮廷作法を覚えるように命令を下す。
講師役は自らもオルレアンス王国の大貴族であるシャルル自身が買って出た。
一対一の集中講習で一人前のレディとしての作法を教える間、シャルルは宮中に潜り込むのに必要な貴族の爵位を購入するため奔走していた。
熱心に探した末にたくさんの称号を持っているというさる高名な貴族が家計が逼迫し、そのうちの一つを手放すという話を聞き付け、その貴族から高値で爵位を買い取って、それをマルリアに与えた。
これによって、マルリアは平民から貴族へと生まれ変わることになった。
新たに子爵夫人としての地位を与えられた際に彼女はシャルルによって新しい名前を与えられた。その名はフレア。そしてジオラーデ子爵夫人の地位を加えて、フレア・ジオラーデというのが彼女の新たな名前となった。
新しい名前が与えられた以上これ以後は筆者も「マルリア」ではなく「フレア」と記すことにする。
いずれにしろ、フレアはオークスに取って代わる存在として充分な社会的地位と作法とを教え込まれた。三週間という長い時間を消耗することになったが、それでもその手間と金に見合う働きを彼女はオルレアンス王国にもたらしてくれるはずだ。
問題は駆除人による妨害であったが、それに関する心配は無能だ。というのも、礼儀作法の講師役であったシャルルが左方の練習の合間に新たな戦闘技術を教え込み、今後駆除人と交戦になった際に用いるようにもさせたからだ。
シャルル直伝の技があればカーラにも引けを取らないはずだ。少なくとも、防戦一方などという惨めな結果には陥らないだろう。
シャルルがこれまでの成果を思い返し、部屋で笑っていると、フレアが早速その技を使って自分を嗅ぎ回っていた駆除人を始末したという話を聞いた。
フレアは自分の技に自信が持てて嬉しいようだ。シャルルも満更ではない表情を浮かべる。
クライン王国を国王に献上した後にはフレアを自身の愛人に据えるのも悪くないかもしれない。
屈託のない顔で笑うフレアを見て、シャルルは内に下衆な思いを抱きながらも愛想の良い笑みを微笑み返したのであった。
金色に光るシャンデリアの下で公爵家嫡男クリストフ・ホワインセアムとエミリー・リバリーの両名は婚約者として踊りを踊っていた。
完璧なダンスを見て舞踏会に参加していた紳士淑女の面々は二人に注目せざるを得なかった。
大勢の視線が降り注いでおり、舞踏会の主演は若く美しい美男美女の二人であることは誰の目から見ても明らかであった。
だが、扉が開いた時に主役はこの時に初めて社交界に足を踏み入れた若き婦人へと変わっていく。
はっきりとした目鼻に線の細い顔立ち。細い眉。紅を指していないのにも関わらず美しく輝くピンク色の唇。
御伽話に出てくるお姫様。舞台の上でしか見ることができない美人。腕利きの絵師が気合を入れた絵画に描かれるようなモデル。そのような言葉が参加者たちの頭の中に次々と浮かんでいく。
初めて社交界に足を踏み入れたという若き婦人は全員の注目を浴びながら舞踏会の会場を歩んでいく。
純潔を象徴するかのような白色のロングドレスに胸元に飾られたシンプルな金色の首飾りが目を引いていた。
簡素なものであったが、それだけに美しさを引き立てていた。
それ故に紳士はもちろんのこと婦人たちさえ彼女が歩いている姿を凝視していた。
大勢の注目を浴びた婦人はあろうことか、舞踏会の壁で飲み物を飲んでいたジェームズ・アンブリッジ伯に声を掛けたのであった。
ジェームズは信じられないと言わんばかりに口を大きく開けていた。
だが、手は確実にこちらに差し伸ばされている。これは現実なのだ。
冴えないはずのジェームスが若く美しい婦人のおかげで今日だけは輝いて見えた。それは太陽の輝きによってのみ光る月のようであった。
全員が一瞬のうちに生じた眩い光に夢中になってしまっていたが、ただ一人それを面白くなさげに見つめていた人物がいる。
主役の座を新参の婦人によって無理矢理に奪い取られたクリストフであった。
それどころか、婚約者のエミリーもダンス止めると断りを入れてからはずっと新たに訪れた婦人を夢中になって見つめていた。
激怒したクリストフは執事を呼び出し、突然現れた婦人が何者であるのかを問い掛けていく。
これまでにないような恐ろしい形相で尋ねたはずであったが、執事は困った顔を浮かべるばかりであった。
どうも今日新たに現れた新顔の情報はほとんど出回っていないらしく、ホワインセアム家という大貴族に仕える一流の執事をもってしても回答に窮する羽目になってしまったのである。
嫉妬の炎で心を焼き尽くしたクリストフが怒りで拳を震わせながら婦人を見つめていると、ふと婦人がジェームズの耳元で囁いている姿が見えた。
その時だ。ダンスの最中だというのにジェームズが不意に倒れ込み、地面の上に手を突いてしまった。
舞踏会にてダンスの途中で何の説明もなく手を離すということは婦人とのダンスを放棄したということになり、社交界では忌み嫌われる行為であった。
当然周りからは紳士も淑女も関係のない罵声が飛び交っていく。
礼を失した者に対する罰は重かった。このままジェームズは面目を失うことになるかと思われたのだが、それは意外な形で終結することになった。
新顔の婦人が倒れたジェームズに手を差し伸べ、彼を外の休憩室へと連れて行ったのである。
このような行動を見せられた以上は周りの貴族たちもジェームズを許さざるを得ない。
なかなかの采配だ。クリストフは彼女の名判事を思わせる裁き方を見て、すっかりと嫉妬の炎を鎮めて感心したように婦人を見つめていたのである。
だが、一方で情けないのはジェームズである。よもや舞踏会の中であのような醜態を見せるとは思いもしなかった。
長年の剣術の好敵手を揶揄うため休憩室の扉を開いた時だ。
ジェームズが頭を抱えている姿が見えた。ただならぬ様子に思わず両肩を強張らせてしまった。
そんなクリストフを横で介抱していた婦人が小さく頭を下げる。
頭を上げた後は愛らしい笑みを浮かべながらクリストフの元へと近付いていく。
嫉妬の炎が消えてからというものの、クリストフはすっかりとこの婦人に夢中になってしまっていた。
愛らしい笑顔を浮かべる様を見て胸の高鳴りが止まらなくなっていた時だ。
不意にその女性が声を掛けてきた。
「お初にお目に掛かります。私の名前はフレア。フレア・ジオラーデと申します。以後お見知り置きを」
「そ、そうか、こちらこそよろしく頼む」
「ありがとうございます。オークスさんの代わりになれるかは不安ですが、卿のお力になれるよう努力していきたいと思います」
フレアは丁寧な一礼を行なった。素晴らしい所作も行き届いている。
まさしく令嬢という佇まいだ。オークスが仕留められたという話を聞いて以来、音沙汰がなかった『ジャッカル』であったが、彼女を育成していたというのならば許そうではないか。
クリストフが感心したような表情でフレアを見つめていると、ジェームズが不意に椅子の上から立ち上がって、生気を失った様な表情であったが、そんな表情には似合わないような大きな声で叫んでいく。
「クリストフ卿ッ!オレはフレアから聞きました。オレの家族は駆除人に殺されたんですよッ!オレだけを残してッ!」
ジェームズはそのままクリストフの胸に擦り寄ると、両目から涙を流しながら崩れ落ちていく。
その様をフレアは冷笑を浮かべながら見つめていた。
が、すぐにその背中を優しく摩り、慰めの言葉を掛けていく。
絶世の美女からかけられた言葉を聞いてジェームズは地面の上から立ち上がり、クリストフの手を強く握り締めていく。
「クリストフ卿ッ!風の噂によればあなたは駆除人たちをこの世から消し去りたいと仰られておりましたッ!その言葉に私も同意致しますッ!どうか、アンブリッジ家を我々の陣営にお加えくださいませッ!」
情けなく泣きべそをかく姿にはこれまでの好敵手としての面影は全くといっていいほど見受けられなかった。
その姿を見たクリストフは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら男泣きを続けるジェームズの肩に手を置いて、ジェームズを自身の陣営へと加えたのであった。
ジェームズは生前家族と折りが悪かったと聞くが、それでも情が残っていたのだろう。
どのような理由であったとしても、クリストフからすれば思いもよらぬ大きな収穫であった。
翌日甘い夢から目覚めたクリストフはガーネットのノックで目を覚まし、目覚めの一杯を啜っていく。
いつもは何とも感じないワインが今日はいつにも増して美味く感じられた。
クリストフが目覚めのワインを片手に朝の読書を行っていた時だ。
別のメイドが来客を告げた。朝の読書を邪魔させられて一気に機嫌を悪くしたクリストフは朝食のまま朝食のままなら会うと答え、ガーネットや報告に訪れたメイドに朝食を持って来させた。
ベッドの上で豪勢な朝食を口にしていると、昨日に会ったフレアがクリストフの元を訪れた。
「な、ら、来客というのは貴君のことであったのか!?」
てっきり昨晩の対応に不満を持ったエミリーかもしくは自身の派閥の下にいるつまらぬ家からの使者だとばかり思っていたクリストフは呆気に取られた。
すぐにガーネットに朝食を片付け、客人にお茶を運ぶように指示を出したが、フレアはにっこりと微笑みながら、
「お気遣いなく。こんな早い時間に訪れた私も悪いのですから」
と、謙遜してみせたのである。何と健気なのだろう。クリストフは胸を打たれた。
代わりにクリストフはガーネットにお茶ばかりではなく、食事も運ぶように指示を出す。
これならば対等な関係になるはずだ。クリストフの思惑を読んだのか、今度はフレアも拒否することなく運ばれてきた朝食に口をつけたのである。
メニューは焼きたてのパンに目玉焼き、ハム、メインディッシュとなる大きなステーキとなっている。だが、いちばんの見どころは新鮮な野菜を使ったサラダに季節の果物を加工して作ったコンポートである。
フレアは思わず生唾を飲み込みそうになったが、我慢してレディに相応しい上品な仕草で食事を進めていく。そして残るはデザートのみとなったところでようやく口を開いたのであった。
「実は私、クリストフ卿に告白しておきたいことがあってここに参りましたの」
「告白?それは何かな?」
愛の告白であったのならば困る。これでも婚約者がいる身なのだ。自身がエミリーにどう思っているのかは別として今はエミリーと繋がっておかなくては困ってしまう。
柄にも似ないような邪なことを考えていた時だ。フレアが思いもよらぬことを口にした。
「私、実は害虫駆除人でしたの」
予想外の言葉を聞いてクリストフの朝食のステーキを運ぶ手が止まってしまった。
フレア嬢が発した言葉が信じられなかったのだ。このような可憐で上品な令嬢ともいうべき美しい女性が駆除人であったなどという言葉はどうしても信じられずにいた。
クリストフは堪らなくなって聞き返したが、どうもそれは事実であるらしい。
駆除人の駆除現場を目撃したというガーネットも聞き返したが、同じように首を縦に振るばかりであった。
クリストフが堪らなくなり、頭を抱えていたのとは対照的にガーネットはフレアへと詰め寄りながら自身が目撃した事件の犯人について問い掛けた。
ガーネットの話を聞いた瞬間にフレアはその犯人が医師のレキシーであるということを看破した。
毒殺などという手段を用いるのは駆除人ギルドにおいても少人数。ましてや王宮という場所でそのような大胆な行動に出られるような駆除人はレキシーをおいて他にいない。
無論、直接の現場を見たわけではないので断定はできないが、亡きベクター王による即位式の前後は駆除人ギルドが妙に慌しく、一部の駆除人たちしかギルドに入ることができなかったことや事件の少し後に逃レキシーとカーラが西の温泉へと旅立ったことも覚えている。
それらの事実から十中八九犯人はレキシーで間違いない。
自身の考えを伝えると、二人は驚きを隠しきれなかった。
それもそのはずだ。表向きは街の名士として名を馳せている他に国王フィンのかかりつけ医としても名を馳せている。
普通の人たちはそのような立派な人物が駆除人であるなどとは思いもしないだろう。
フレアは慌てふためく二人を見ながら出されたお茶を啜っていく。
これでフレアは完全に仲間を裏切ることになったのだが、既に駆除人ギルドを裏切り、命を狙われている彼女の中に躊躇いなどなかった。
どうせ殺されてしまうのならば全てぶち撒けた上で死んでやろうではないか。
フレアは黒い笑みを浮かべていた。その笑顔からは既に害虫駆除人であった「マルリア」は消え、『ジャッカル』の力によって「フレア・ジオラーデ子爵夫人」という駆除人に消されるべき悪女が生まれていた。
駆除人ギルドにとって厄介な敵が生まれ、その牙を剥くことになった決定的な瞬間であった。
あとがき
本日も投稿が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。本日は体調不良などが重なってしまい、手を付けることが遅くなってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。なるべ早くとは思っているのですが、最近は私の方も忙しくてなかなか手がつけられません。
以後は私の方でも体調を整え、もう少し早く取り組めるように努力していきたいと思います。
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