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第四章『この私が狼の牙をへし折ってご覧にいれますわ』
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「どうするんだい!?まさか、シルベスターの旦那が殺されちまうなんて……」
「落ち着け、倅よ。ここはじっくりと様子を窺ってみようではないか」
「ぱ、パパは呑気すぎるよッ!このままだとオレたちシルベスターを倒した駆除人たちに始末されちまうかもしれないんだよッ!」
ウォレンは拳と熱弁の両方を奮いながらどこかしぶりがちな父親を説得しようとしていた。
ウォレンは怯えていたのだ。自分たちに迫り来るであろう闇の駆除人たちの存在を。シルベスターが外れの林で死体となって見つけられたのは一週間前のことである。
一週間の間、この世に取り残されたジョージとウォレンは常に駆除人の陰に怯えていた。
自分たちの稼業は合法。すなわち警備隊や自警団が手を出せない相手であるのだ。裏を返せば害虫駆除人にとって最適の標的であったともいえるであろう。
これまで駆除人たちが来なかったのは奇跡であったといってもいい。
しかし、その奇跡もここで終わりかもしれない。シルベスターと関わってしまったことによりその奇跡が終わりを告げるというのならば初めから外国の殺し屋などと関わるべきではなかったのだ。
悔やんでも悔やみきれないが、これは全て父親の判断である。
全て父親が悪いのだ。だが、『ヘリオス』の店主である父親を責めることなどできるはずがない。ウォレンに出来ることは鼠らしく惨めに辺りを徘徊することだけであった。
その時であった。二人が話を行っていた部屋の扉を叩く音が聞こえたのだ。ウォレンが入室を許可するとクイントンという男の姿が見えた。
クイントンは生前シルベスターが断った人物である。その理由というのが彼は害虫駆除人であるというものであった。
だが、物腰は柔らかであるし、仕事は丁寧であるし、何よりも『ヘリオス』に忠誠を誓っている。
『ヘリオス』というのは一般の商店とは異なり、従業員には仕事の技術よりも社長親子への忠誠心が優先されるのだ。
クイントンはそこをウォレンに見込まれ、使用人として採用されたのだった。
「遅いぞッ!クソッタレッ!」
本当は遅くなどない。むしろ、早い方であるが、ウォレンはやり場のない怒りをクイントンにぶつけたかったのだ。クイントンはひたすら平身低頭で謝罪の言葉を述べていた。
それでも怒りの収まらないウォレンはクイントンが頭を下げているところへと平手打ちを喰らわせ、彼を転倒へと追い込んだのである。
そして転がったところを続けざまに足蹴にしていく。
これで少しでも怒りが収まるはずであった。しかし、今回の場合は違った。怒りは収まるどころかむしろ激しくなっていく。
まるで、時間が経てば経つほどにマグマが沸騰していく活火山のようだ。
ウォレンの執拗な蹴りは父親の手によってようやく止められた。
「よさんか、馬鹿者がッ!今はこんなことをしている場合ではなかろうがッ!」
「す、すまない。パパ。ついカッとなって……」
父親に窘められたことでウォレンは足をようやく離し、クイントンに転がり落ちたお茶を片付けて新しいお茶を淹れるように指示を出す。
クイントンは頭を下げて掃除用具を取りに向かう。
二人はその後ろ姿を黙って見つめていたが、やがてジョージが険しい口調でウォレンを問い詰めた。
「この馬鹿者が……クイントンに出て行かれて、先程のことを流されたらどうするつもりだ?」
「ごめん、パパ。オレが冷静じゃなかったよ、うん。今度から気を付ける」
流石のウォレンも萎縮してしまったらしい。肩をすくめてひたすらに謝罪の言葉を述べていた。
その姿を見てジョージは溜息を吐いた。小鼠のような顔をしたウォレンは今年で三十七になるはずだ。だが、ジョージから見ればウォレンはまだ五つの子供に過ぎないのだ。
勝手に不始末をしでかしておいてその後始末もせずに親へと押し付ける無責任な幼子。それがジョージにとってのウォレンであった。
ジョージからすればそんなウォレンが可愛くて仕方がないのだ。
例え息子がどんなことをしでかそうとも絶対に自分だけは味方でありたい。
そんな思いがジョージの中には燻っていたのだった。
その証拠にあれ程までに怒っていたというのに、ジョージはもう柔和な顔を浮かべている。その姿は慈父と評してもいいかもしれない。
慈父は席を立った後に息子を守るための傭兵を集めに行くつもりであった。
王都の裏社会にはごろつきや傭兵といったいわゆる暴力団からもあぶれてしまった“ろくでなし”が大勢いる。
『ヘリオス』の金蔵にうなっている大金を扱えば用心棒を集めることなど造作もないことであった。
ジョージが悪魔のような笑みを浮かべる一方でクイントンはというとそんな親子の姿を見て拳を振るわせていた。
父親も息子も人でなしという以外に言い表すことができない。
この二人は自分たちの楽園を守るためならば平気で他者を踏み台にするのだ。
やはり許してはおけない。クイントンは駆除人ギルドへと戻り、この親子のことを報告することにした。
報告を聞いたギルドマスターは難しい顔を浮かべていた。
現在は『ジャッカル』との抗争を控えている身である。そのため不用意に戦力を割くことは避けたいのだが、やはりこういった人種を生かしておくというのはためにならない。
ようやく駆除の準備ができたということを伝えにヒューゴを迎えさせたのであった。ヒューゴからの話を聞いた二人は二つ返事で引き受けたのであった。
駆除人ギルドへと二人はギルドへと集う。
ギルドマスターは二人を出迎えると、応接室へと連れ出す。
机の上に屋敷の見取り図を置き、二人分のメイド服を準備する。
「……やってくれるね?」
ギルドマスターは両目を鋭く尖らせながら言った。両目には白い光が宿っている。
二人は首を縦に動かす。その目に迷いは見えない。どうやらシルベスターを駆除した時にはもうあの親子も共に始末しようと目論んでいたらしい。
エプロンドレスに身を包んだ二人は夜の闇の中へと消えた。
『ヘリオス』を壊滅させるために。
家屋と商社を兼ねる家はやはり大きかった。あらかじめクイントンが用意した侵入口を用いて侵入し、頭に刻み込んだ図表の通りに動いていく。そのお陰で『ヘリオス』が集めているごろつきや傭兵などとは極力顔を合わすことなく二人の元へと辿り着くことができたのだった。
カーラとレキシーが部屋の前に着き、準備を行っているとウォレンの罵声が飛び交っているのを耳にした。
「この野郎ッ!テメェ!死ねッ!つーか、お前死刑にしてやるわ。くたばれこの野郎」
従業員を蹴りつける音までもが聞こえた。どうやら哀れな従業員が生贄に捧げられているらしい。
カーラは哀れに思いつつも今すぐに救ってやることはできなかった。もし、怒りに身を任せたまま針を握って部屋の中に飛び込めば全てが台無しになってしまう。
従業員への怒りが収まるのを待つしかないのだ。ようやく満足がいったのだろう。あちこちに傷を負った従業員がよろめきながら部屋を後にした。
夜の闇と扉の陰とが二人の姿を隠したので先ほどの哀れな男性従業員に顔を見られずに済んだ。
あとは乗り込んで仕留めるだけである。カーラはこっそりと袖の下に仕込んでいた針に手を当てる。
準備は万端だ。カーラは意を決して扉を開けた。
ありがたいことに部屋の中に居たのはウォレンのみではなかった。なんと父親のジョージも居たのだ。声を顰めていたので気が付かなかった。父親のジョージは部屋の中央に用意された長椅子のうち片方に腰を掛けている。
長椅子の背後には父親か、息子のものかと思われる立派な剣が飾られている。派手な黄色の鞘に納められた宝剣である。
そんな立派な宝剣の下で腕を組みながらピリピリとした表情で息子を睨んでいた。
これで探す手間が省けた。カーラは常に苛立っているような姿をしたジョージとは対照的に口角を緩めて勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
カーラの背後に隠れていたレキシーも同じ反応であったらしい。ホッとしたような顔を浮かべている。
これで一安心だ。
カーラは顔に偽りの笑顔を浮かべながら言った。
「失礼致しますわ。旦那様少し御用がございますの」
「用だと?メイド如きがオレに何の用があるのだ?」
ウォレンは尋ねてきたメイドを訝しげな目で見つめた。用があるという割には両手に荷物を持っているわけでもなければ書類を掲げているわけでもない。
こちらを馬鹿にしているようにしか思えない。
ウォレンは憤怒の念に駆られた。眉間に皺を寄せ、メイドに詰め寄っていく。
「この馬鹿野郎がッ!オレを舐めてんのか?オレの手で死刑にしてやろうか!?え!?」
ウォレンがメイドの胸ぐらを掴み上げた時だ。ウォレンの眉間に何かが刺さった。いや、何かではない。針だ。服を縫う際に用いる裁縫針だ。
ウォレンは悲鳴を上げようとしたが、それはメイドが許さなかった。はっきりとその口を手で押さえ、額に刺さった針を勢いよく引き抜いたのである。
息子の異変に気が付き、ジョージが声を荒げた。
「う、ウォレンッ!おのれッ!下郎がッ!」
ジョージは最愛の息子を殺された怒りから部屋に飾られた剣を掴み、息子を殺したメイドへと襲い掛かっていく。
メイドはジョージの手によって叩き切られるはずであった。
だが、メイドの背後に隠れていた中年の女性によってその腹へと短剣を突き刺されてしまう。
ジョージは悲鳴を上げながら地面の上へと倒れ込む。
どうやらあのメイドの背後に隠れていたらしい。気がつく事ができなかった。
ジョージは呻めき声を上げながら倒れ込む。息子と同様に即死であった。
既に事切れたジョージとウォレンの親子を見下ろしながら二人は屋敷を後にしたのであった。
屋敷にあった死体は翌日の朝屋敷に勤める本物のメイドによって発見された。
至急警備隊と自警団に連絡が入れられたが、評判の悪い『ヘリオス』のことである。本腰を上げての捜査に乗り出すことなどあるはずがない。
こうして事件は迷宮入りとなった。わざわざこの事件を明らかにしようとする人物もいないだろう。一先ずは安全である。
加えて元従業員からの告発もあり、『ヘリオス』は解散の動きに入っていくだろう。これで従業員たちも大丈夫だろう。
その代償として受け取った報酬は駆除人ギルドより出た僅かな金額でしかなかったが、満足であった。
マチルダ・バロウズが再び駆除人ギルドを尋ねたのは駆除人ギルドに張り詰めていた緊張の空気が切れ、ひと息を入れようとした矢先のことであった。
扉を開けたヒューゴの前に切羽詰まった様子で現れたかと思うと、勢いよく店の中を走っていく。それから開店前かつ今後の抗争のための対策会議の一環として中に駆除人しかいないという状況を利用してバーカウンターの上にギルドマスターへと金貨の入った袋を押し付けたのである。
「お願い致します。このお金でホワインセアム公爵家の嫡男クリストフを始末していただけないでしょうか?」
「それはまたなぜだい?」
ギルドマスターは難しい顔を浮かべながら尋ねた。
「……この男を放っておけば国が乱れます。またこの男の婚約者も危険な人物です。生かしておいてはためになりません」
「それは理由にはならない。言っただろう?うちは政治的な理由には介在しないとな」
「知ってます。そういうと思って真っ当な理由を用意してきましたよ」
マチルダはクリストフを生かしておいてはならない理由をギルドマスターとヴァイオレット相手に語っていく。曰く、マチルダがクリストフを狙うのは政治的な目的ばかりではないのだ。
マチルダによればクリストフは過去に殺人を隠蔽させた事があるのだという。
マチルダの手によって調べたところによると、問題は3年ほど前に当時寵愛を受けていたクリストフのメイドが殺人を犯したのだ。
大した理由ではない。相手の足を踏んだ踏まないという理由での殺人だ。
それ故本来であるのならば警備隊の手にかかって拿捕されねばならなかった。
だが、その事件をもみ消したのがクリストフであったとされている。クリストフは自身が公爵家の嫡男であり、門閥貴族の中においても格の高い公爵家であることから簡単に消すことができたのだ。
お陰で事件は“事故”として処理された。
もちろんマチルダにとってこの動機は駆除人ギルド動かすための私的なものに過ぎない。
だが、逆に駆除人ギルドを動かすのには十分過ぎる動機であるといえるだろう。
また、そればかりではなく、マチルダは駆除人ギルドにとっても有意義な情報を持って現れたのだ。
「あの、エミリーが爵位を持って戻ってきたんですよ。ホワインセアム公爵家の正式な婚約者になるというのでね」
その名前を聞いてヴァイオレットを除く全員に衝撃が走った。
エミリー・ハンセン。それはかつて本人の素知らぬところでネオドラビア教の後押しを受けてフィンの婚約者になろうと画策した人物の名前であった。
しかし、その目論見は失敗に終わり、ハンセン公爵家は駆除人による仕置きを受け、プラフティー公爵家は王家による直々のお取調べによって家を潰されている。
そして、彼女はハンセン公爵家の中で唯一カーラの温情。実際のところは貴族の地位を剥奪された後の生き地獄を味合わせるという目的のために生かされた。
だが、今回はその生き地獄が仇となってしまったらしい。
カーラは悔やんでも悔やみきれないという思いを抱いていた。
それ故にカーラは自らの手でエミリーを仕留める算段にあった。
既に血の繋がった従兄弟である彼女の兄ロバートを仕置きした身なのだ。
今更躊躇うことなどあるはずがなかった。
カーラはマチルダの申し出を受け、どれだけの時間がかかろうとも自らの手で始末することを約束したのであった。
一方で問題になったのはクリストフ。この男は『ヘリオス』のジョージとウォレン親子のように簡単にはいかないだろう。
相手は王家に血の繋がる公爵家の嫡男。同じ公爵でも先祖が手柄を立ててその爵位を引き継いだプラフティー家やハンセン家、エバンズ家などとは格が異なるのである。
まさしく第二の王家といっても差し支えのない相手。そんな相手を上手く仕留められるだろうか。
全員の身に緊張が走る。その時だ。誰かが勢いよく椅子の上から立ち上がった。
ギルドマスターが椅子の上から立ち上がった男を思わず凝視する。
男の名はゲイシー。かつて『ジャッカル』との抗争に及び腰であった男である。
彼は己の得物である剣を携えながら叫ぶ。駆除人ギルド全体に聞こえかねないほどの大きな声であったが、この男以上に相応しい男などいないだろう。
ギルドマスターはゲイシーに駆除を一任し、彼の手に前金を握らせたのである。
駆除人とギルドマスターによる契約がここに成立したことになる。
前金を受け取ったゲイシーはそれを懐の中に収めると、剣を手に取って駆除人ギルドを後にしたのであった。
エミリーはカーラに、クリストフはゲイシーに身を任せれば安全だろう。
ギルドマスターはそう見ていた。だが、不安に思っていたのはヴァイオレットである。彼女は見抜いていたのだ。ゲイシーの中にある義憤ともいうべき感情を。
害虫駆除人というのは怒りに身を任せればその身は必ず破滅へと追い込まれる。
その場合その人物に残るのは死のみである。味方に口封じで殺されるか、それをしくじったとしても絞首台の上で縄を巻かれる羽目になる。
それだけは避けなくてはならない。ヴァイオレットはヒューゴにゲイシーを呼び戻すように指示を出す。
酒を一杯ゆっくりと啜るほどの時間が経過してからヒューゴに連れられたゲイシーが戻ってきた。
ゲイシーは不満げな様子であった。それもそうだろう。自分と付き合いの深いギルドマスターから信頼されて送り出されたのだと思ったら見習いである姪に呼び戻されたのだから。
それ故に険しい表情でゲイシーはヴァイオレットを睨んだ。
ヴァイオレットは当初こそゲイシーに怯んだものの、怯えることなく自身が呼び戻した理由を冷静に語っていく。
話を聞くうちにゲイシーも納得したようで一安心である。
といっても、ゲイシーの面子を潰したことには変わらない。
それ故にヴァイオレットは対案を出すことにした。
彼女は人差し指を立てながら、
「では、こうしましょう。ゲイシーさんのお供にギークさんを付けるということで」
と、子どもを諭すような口調で告げたのである。
ヴァイオレットがギークの方を振り向くと、ギークは納得できていたらしく小さく首を縦に動かしていた。
どうやら準備は万端のようである。
ヴァイオレットは己の初めての仕事に満足して得意げな笑みを浮かべていた。
あとがき
何度も何度も時間をオーバーしてしまうことになってしまい申し訳ありません。
本日もなるべく早くとは思っておりましたが、何の因果かまたしてもこのような時間になってしまいました。
そのためもう一話は最悪翌日ということになってしまいます。
このような事態に陥ってしまい改めてお詫びを申し上げます。
「落ち着け、倅よ。ここはじっくりと様子を窺ってみようではないか」
「ぱ、パパは呑気すぎるよッ!このままだとオレたちシルベスターを倒した駆除人たちに始末されちまうかもしれないんだよッ!」
ウォレンは拳と熱弁の両方を奮いながらどこかしぶりがちな父親を説得しようとしていた。
ウォレンは怯えていたのだ。自分たちに迫り来るであろう闇の駆除人たちの存在を。シルベスターが外れの林で死体となって見つけられたのは一週間前のことである。
一週間の間、この世に取り残されたジョージとウォレンは常に駆除人の陰に怯えていた。
自分たちの稼業は合法。すなわち警備隊や自警団が手を出せない相手であるのだ。裏を返せば害虫駆除人にとって最適の標的であったともいえるであろう。
これまで駆除人たちが来なかったのは奇跡であったといってもいい。
しかし、その奇跡もここで終わりかもしれない。シルベスターと関わってしまったことによりその奇跡が終わりを告げるというのならば初めから外国の殺し屋などと関わるべきではなかったのだ。
悔やんでも悔やみきれないが、これは全て父親の判断である。
全て父親が悪いのだ。だが、『ヘリオス』の店主である父親を責めることなどできるはずがない。ウォレンに出来ることは鼠らしく惨めに辺りを徘徊することだけであった。
その時であった。二人が話を行っていた部屋の扉を叩く音が聞こえたのだ。ウォレンが入室を許可するとクイントンという男の姿が見えた。
クイントンは生前シルベスターが断った人物である。その理由というのが彼は害虫駆除人であるというものであった。
だが、物腰は柔らかであるし、仕事は丁寧であるし、何よりも『ヘリオス』に忠誠を誓っている。
『ヘリオス』というのは一般の商店とは異なり、従業員には仕事の技術よりも社長親子への忠誠心が優先されるのだ。
クイントンはそこをウォレンに見込まれ、使用人として採用されたのだった。
「遅いぞッ!クソッタレッ!」
本当は遅くなどない。むしろ、早い方であるが、ウォレンはやり場のない怒りをクイントンにぶつけたかったのだ。クイントンはひたすら平身低頭で謝罪の言葉を述べていた。
それでも怒りの収まらないウォレンはクイントンが頭を下げているところへと平手打ちを喰らわせ、彼を転倒へと追い込んだのである。
そして転がったところを続けざまに足蹴にしていく。
これで少しでも怒りが収まるはずであった。しかし、今回の場合は違った。怒りは収まるどころかむしろ激しくなっていく。
まるで、時間が経てば経つほどにマグマが沸騰していく活火山のようだ。
ウォレンの執拗な蹴りは父親の手によってようやく止められた。
「よさんか、馬鹿者がッ!今はこんなことをしている場合ではなかろうがッ!」
「す、すまない。パパ。ついカッとなって……」
父親に窘められたことでウォレンは足をようやく離し、クイントンに転がり落ちたお茶を片付けて新しいお茶を淹れるように指示を出す。
クイントンは頭を下げて掃除用具を取りに向かう。
二人はその後ろ姿を黙って見つめていたが、やがてジョージが険しい口調でウォレンを問い詰めた。
「この馬鹿者が……クイントンに出て行かれて、先程のことを流されたらどうするつもりだ?」
「ごめん、パパ。オレが冷静じゃなかったよ、うん。今度から気を付ける」
流石のウォレンも萎縮してしまったらしい。肩をすくめてひたすらに謝罪の言葉を述べていた。
その姿を見てジョージは溜息を吐いた。小鼠のような顔をしたウォレンは今年で三十七になるはずだ。だが、ジョージから見ればウォレンはまだ五つの子供に過ぎないのだ。
勝手に不始末をしでかしておいてその後始末もせずに親へと押し付ける無責任な幼子。それがジョージにとってのウォレンであった。
ジョージからすればそんなウォレンが可愛くて仕方がないのだ。
例え息子がどんなことをしでかそうとも絶対に自分だけは味方でありたい。
そんな思いがジョージの中には燻っていたのだった。
その証拠にあれ程までに怒っていたというのに、ジョージはもう柔和な顔を浮かべている。その姿は慈父と評してもいいかもしれない。
慈父は席を立った後に息子を守るための傭兵を集めに行くつもりであった。
王都の裏社会にはごろつきや傭兵といったいわゆる暴力団からもあぶれてしまった“ろくでなし”が大勢いる。
『ヘリオス』の金蔵にうなっている大金を扱えば用心棒を集めることなど造作もないことであった。
ジョージが悪魔のような笑みを浮かべる一方でクイントンはというとそんな親子の姿を見て拳を振るわせていた。
父親も息子も人でなしという以外に言い表すことができない。
この二人は自分たちの楽園を守るためならば平気で他者を踏み台にするのだ。
やはり許してはおけない。クイントンは駆除人ギルドへと戻り、この親子のことを報告することにした。
報告を聞いたギルドマスターは難しい顔を浮かべていた。
現在は『ジャッカル』との抗争を控えている身である。そのため不用意に戦力を割くことは避けたいのだが、やはりこういった人種を生かしておくというのはためにならない。
ようやく駆除の準備ができたということを伝えにヒューゴを迎えさせたのであった。ヒューゴからの話を聞いた二人は二つ返事で引き受けたのであった。
駆除人ギルドへと二人はギルドへと集う。
ギルドマスターは二人を出迎えると、応接室へと連れ出す。
机の上に屋敷の見取り図を置き、二人分のメイド服を準備する。
「……やってくれるね?」
ギルドマスターは両目を鋭く尖らせながら言った。両目には白い光が宿っている。
二人は首を縦に動かす。その目に迷いは見えない。どうやらシルベスターを駆除した時にはもうあの親子も共に始末しようと目論んでいたらしい。
エプロンドレスに身を包んだ二人は夜の闇の中へと消えた。
『ヘリオス』を壊滅させるために。
家屋と商社を兼ねる家はやはり大きかった。あらかじめクイントンが用意した侵入口を用いて侵入し、頭に刻み込んだ図表の通りに動いていく。そのお陰で『ヘリオス』が集めているごろつきや傭兵などとは極力顔を合わすことなく二人の元へと辿り着くことができたのだった。
カーラとレキシーが部屋の前に着き、準備を行っているとウォレンの罵声が飛び交っているのを耳にした。
「この野郎ッ!テメェ!死ねッ!つーか、お前死刑にしてやるわ。くたばれこの野郎」
従業員を蹴りつける音までもが聞こえた。どうやら哀れな従業員が生贄に捧げられているらしい。
カーラは哀れに思いつつも今すぐに救ってやることはできなかった。もし、怒りに身を任せたまま針を握って部屋の中に飛び込めば全てが台無しになってしまう。
従業員への怒りが収まるのを待つしかないのだ。ようやく満足がいったのだろう。あちこちに傷を負った従業員がよろめきながら部屋を後にした。
夜の闇と扉の陰とが二人の姿を隠したので先ほどの哀れな男性従業員に顔を見られずに済んだ。
あとは乗り込んで仕留めるだけである。カーラはこっそりと袖の下に仕込んでいた針に手を当てる。
準備は万端だ。カーラは意を決して扉を開けた。
ありがたいことに部屋の中に居たのはウォレンのみではなかった。なんと父親のジョージも居たのだ。声を顰めていたので気が付かなかった。父親のジョージは部屋の中央に用意された長椅子のうち片方に腰を掛けている。
長椅子の背後には父親か、息子のものかと思われる立派な剣が飾られている。派手な黄色の鞘に納められた宝剣である。
そんな立派な宝剣の下で腕を組みながらピリピリとした表情で息子を睨んでいた。
これで探す手間が省けた。カーラは常に苛立っているような姿をしたジョージとは対照的に口角を緩めて勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
カーラの背後に隠れていたレキシーも同じ反応であったらしい。ホッとしたような顔を浮かべている。
これで一安心だ。
カーラは顔に偽りの笑顔を浮かべながら言った。
「失礼致しますわ。旦那様少し御用がございますの」
「用だと?メイド如きがオレに何の用があるのだ?」
ウォレンは尋ねてきたメイドを訝しげな目で見つめた。用があるという割には両手に荷物を持っているわけでもなければ書類を掲げているわけでもない。
こちらを馬鹿にしているようにしか思えない。
ウォレンは憤怒の念に駆られた。眉間に皺を寄せ、メイドに詰め寄っていく。
「この馬鹿野郎がッ!オレを舐めてんのか?オレの手で死刑にしてやろうか!?え!?」
ウォレンがメイドの胸ぐらを掴み上げた時だ。ウォレンの眉間に何かが刺さった。いや、何かではない。針だ。服を縫う際に用いる裁縫針だ。
ウォレンは悲鳴を上げようとしたが、それはメイドが許さなかった。はっきりとその口を手で押さえ、額に刺さった針を勢いよく引き抜いたのである。
息子の異変に気が付き、ジョージが声を荒げた。
「う、ウォレンッ!おのれッ!下郎がッ!」
ジョージは最愛の息子を殺された怒りから部屋に飾られた剣を掴み、息子を殺したメイドへと襲い掛かっていく。
メイドはジョージの手によって叩き切られるはずであった。
だが、メイドの背後に隠れていた中年の女性によってその腹へと短剣を突き刺されてしまう。
ジョージは悲鳴を上げながら地面の上へと倒れ込む。
どうやらあのメイドの背後に隠れていたらしい。気がつく事ができなかった。
ジョージは呻めき声を上げながら倒れ込む。息子と同様に即死であった。
既に事切れたジョージとウォレンの親子を見下ろしながら二人は屋敷を後にしたのであった。
屋敷にあった死体は翌日の朝屋敷に勤める本物のメイドによって発見された。
至急警備隊と自警団に連絡が入れられたが、評判の悪い『ヘリオス』のことである。本腰を上げての捜査に乗り出すことなどあるはずがない。
こうして事件は迷宮入りとなった。わざわざこの事件を明らかにしようとする人物もいないだろう。一先ずは安全である。
加えて元従業員からの告発もあり、『ヘリオス』は解散の動きに入っていくだろう。これで従業員たちも大丈夫だろう。
その代償として受け取った報酬は駆除人ギルドより出た僅かな金額でしかなかったが、満足であった。
マチルダ・バロウズが再び駆除人ギルドを尋ねたのは駆除人ギルドに張り詰めていた緊張の空気が切れ、ひと息を入れようとした矢先のことであった。
扉を開けたヒューゴの前に切羽詰まった様子で現れたかと思うと、勢いよく店の中を走っていく。それから開店前かつ今後の抗争のための対策会議の一環として中に駆除人しかいないという状況を利用してバーカウンターの上にギルドマスターへと金貨の入った袋を押し付けたのである。
「お願い致します。このお金でホワインセアム公爵家の嫡男クリストフを始末していただけないでしょうか?」
「それはまたなぜだい?」
ギルドマスターは難しい顔を浮かべながら尋ねた。
「……この男を放っておけば国が乱れます。またこの男の婚約者も危険な人物です。生かしておいてはためになりません」
「それは理由にはならない。言っただろう?うちは政治的な理由には介在しないとな」
「知ってます。そういうと思って真っ当な理由を用意してきましたよ」
マチルダはクリストフを生かしておいてはならない理由をギルドマスターとヴァイオレット相手に語っていく。曰く、マチルダがクリストフを狙うのは政治的な目的ばかりではないのだ。
マチルダによればクリストフは過去に殺人を隠蔽させた事があるのだという。
マチルダの手によって調べたところによると、問題は3年ほど前に当時寵愛を受けていたクリストフのメイドが殺人を犯したのだ。
大した理由ではない。相手の足を踏んだ踏まないという理由での殺人だ。
それ故本来であるのならば警備隊の手にかかって拿捕されねばならなかった。
だが、その事件をもみ消したのがクリストフであったとされている。クリストフは自身が公爵家の嫡男であり、門閥貴族の中においても格の高い公爵家であることから簡単に消すことができたのだ。
お陰で事件は“事故”として処理された。
もちろんマチルダにとってこの動機は駆除人ギルド動かすための私的なものに過ぎない。
だが、逆に駆除人ギルドを動かすのには十分過ぎる動機であるといえるだろう。
また、そればかりではなく、マチルダは駆除人ギルドにとっても有意義な情報を持って現れたのだ。
「あの、エミリーが爵位を持って戻ってきたんですよ。ホワインセアム公爵家の正式な婚約者になるというのでね」
その名前を聞いてヴァイオレットを除く全員に衝撃が走った。
エミリー・ハンセン。それはかつて本人の素知らぬところでネオドラビア教の後押しを受けてフィンの婚約者になろうと画策した人物の名前であった。
しかし、その目論見は失敗に終わり、ハンセン公爵家は駆除人による仕置きを受け、プラフティー公爵家は王家による直々のお取調べによって家を潰されている。
そして、彼女はハンセン公爵家の中で唯一カーラの温情。実際のところは貴族の地位を剥奪された後の生き地獄を味合わせるという目的のために生かされた。
だが、今回はその生き地獄が仇となってしまったらしい。
カーラは悔やんでも悔やみきれないという思いを抱いていた。
それ故にカーラは自らの手でエミリーを仕留める算段にあった。
既に血の繋がった従兄弟である彼女の兄ロバートを仕置きした身なのだ。
今更躊躇うことなどあるはずがなかった。
カーラはマチルダの申し出を受け、どれだけの時間がかかろうとも自らの手で始末することを約束したのであった。
一方で問題になったのはクリストフ。この男は『ヘリオス』のジョージとウォレン親子のように簡単にはいかないだろう。
相手は王家に血の繋がる公爵家の嫡男。同じ公爵でも先祖が手柄を立ててその爵位を引き継いだプラフティー家やハンセン家、エバンズ家などとは格が異なるのである。
まさしく第二の王家といっても差し支えのない相手。そんな相手を上手く仕留められるだろうか。
全員の身に緊張が走る。その時だ。誰かが勢いよく椅子の上から立ち上がった。
ギルドマスターが椅子の上から立ち上がった男を思わず凝視する。
男の名はゲイシー。かつて『ジャッカル』との抗争に及び腰であった男である。
彼は己の得物である剣を携えながら叫ぶ。駆除人ギルド全体に聞こえかねないほどの大きな声であったが、この男以上に相応しい男などいないだろう。
ギルドマスターはゲイシーに駆除を一任し、彼の手に前金を握らせたのである。
駆除人とギルドマスターによる契約がここに成立したことになる。
前金を受け取ったゲイシーはそれを懐の中に収めると、剣を手に取って駆除人ギルドを後にしたのであった。
エミリーはカーラに、クリストフはゲイシーに身を任せれば安全だろう。
ギルドマスターはそう見ていた。だが、不安に思っていたのはヴァイオレットである。彼女は見抜いていたのだ。ゲイシーの中にある義憤ともいうべき感情を。
害虫駆除人というのは怒りに身を任せればその身は必ず破滅へと追い込まれる。
その場合その人物に残るのは死のみである。味方に口封じで殺されるか、それをしくじったとしても絞首台の上で縄を巻かれる羽目になる。
それだけは避けなくてはならない。ヴァイオレットはヒューゴにゲイシーを呼び戻すように指示を出す。
酒を一杯ゆっくりと啜るほどの時間が経過してからヒューゴに連れられたゲイシーが戻ってきた。
ゲイシーは不満げな様子であった。それもそうだろう。自分と付き合いの深いギルドマスターから信頼されて送り出されたのだと思ったら見習いである姪に呼び戻されたのだから。
それ故に険しい表情でゲイシーはヴァイオレットを睨んだ。
ヴァイオレットは当初こそゲイシーに怯んだものの、怯えることなく自身が呼び戻した理由を冷静に語っていく。
話を聞くうちにゲイシーも納得したようで一安心である。
といっても、ゲイシーの面子を潰したことには変わらない。
それ故にヴァイオレットは対案を出すことにした。
彼女は人差し指を立てながら、
「では、こうしましょう。ゲイシーさんのお供にギークさんを付けるということで」
と、子どもを諭すような口調で告げたのである。
ヴァイオレットがギークの方を振り向くと、ギークは納得できていたらしく小さく首を縦に動かしていた。
どうやら準備は万端のようである。
ヴァイオレットは己の初めての仕事に満足して得意げな笑みを浮かべていた。
あとがき
何度も何度も時間をオーバーしてしまうことになってしまい申し訳ありません。
本日もなるべく早くとは思っておりましたが、何の因果かまたしてもこのような時間になってしまいました。
そのためもう一話は最悪翌日ということになってしまいます。
このような事態に陥ってしまい改めてお詫びを申し上げます。
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