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第三章『私がこの国に巣食う病原菌を排除してご覧にいれますわ!』
決戦への下準備をさせていただきまして
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「ねぇ、ジョンさん」
カーラがふと思い出したようにジョンという名前の患者に向かって声を掛けた。
「なんだい?カーラ」
ジョンは日頃から好いているカーラから声を掛けられて嬉しかったのか、機嫌の良さそうな声で答えた。
「私事で相談したいのですが、構いませんか?」
「あぁ、いいよ。なんだい?」
「実は私、新しい飾り紐と櫛が欲しいんですの。どこかでその二点を揃えている業者の方などをご存知ありません?」
「その二点を揃えている業者か……難しいな。どちらかだけの販売ならば心当たりがないことはないんだが」
先程とは打って変わり、ジョンは考え込む素振りを見せながら答えた。
いくらカーラからの頼みと言っても二点を揃えた業者というのはあまり聞かないからだ。
「私、どうしても一気に手に入れたいんですの。よろしければ、どこかで伝手がありましたらよろしくお願いしますわ」
カーラはジョンに薬を直接手渡しながら懇願するかのように言った。ジョンはカーラに手を触れられたことで嬉しくなったのか、顔に微笑を浮かべながら上機嫌な様子で診療所を去っていく。
カーラはジョンという男性が過ぎ去った後はジェーンという同じく馴染みである中年の女性に櫛と飾り紐を売る業者について尋ねていったのである。
昨日の会議で二人組の殺し屋を誘き寄せるため、診療所を訪れるほとんど全ての人々に尋ねているので、効果のほどは期待できるだろう。
少なくとも一週間以内には例の赤ずきんたちが接触してくるはずだ。
カーラは赤ずきんを仕留めるために積極的に飾り紐と櫛のことを話していくのであった。
仕事の合間に話し、休憩の時間にもいつもの店で喋っているのだからなるべく早く動いて欲しい。カーラは切実に願った。
すると、カーラの祈りが天井にいる神々に通じたのか、この三日ほど後にはようやく例の赤ずきんたちが接触を図ってきたのである。
二人は怪しまれないためか、女装ではない姿で大胆にも診療所の前に姿を現し、カーラに櫛と飾り紐を渡したいと言ってきたのである。
三者とも互いに面識があったはずであるのだが、何食わぬ顔で会話を交わし、飾り紐と櫛を売る相談を取り付けたのである。カーラはこのやり取りを聞いた際に人々に怪しまれないかと危惧していたが、お互いがお互いにこれが敵を葬る絶好の機会だと感じたためもあり、診療所にいる人々や街を通る人々に怪しまれないように自然な会話を行なっていたために、街行く人々に怪しまれることはなかった。
「では、これより二日の後に郊外の旧ネオドラビア教の教会跡にて代金はお支払い致しますわ」
「では、それでお願いします。その時にぼくらも商品を持って行きますんで」
二人の少年は笑みを浮かべながらその場を去っていく。
それを見届けたレキシーはカーラへと耳打ちし、赤ずきんたちとの決着の準備ができたということを告げていく。
「なるほどねぇ、ようやく決戦のための準備ができたというわけかい」
「えぇ、ようやく決戦ということになりますわ」
「わかった。今日の仕事終わりに二人でマスターへと伝えに行こう」
二人は仕事終わりにギルドマスターへと伝えに向ったのである。
二人の話を聞いたギルドマスターはヒューゴとギークの両名に声を掛け、急遽城下町にいる全ての駆除人たちを招集し、二日後の決戦に向けての最終的な打ち合わせを行なっていく。
ギルドマスターはカーラに囮になる危険性やそれに際しての覚悟を改め問い掛け、カーラの護衛を務めることになる七人の駆除人たちには改めてその任務の重要性を押す。
この任務を受けるにあたり、カーラの護衛にあたる駆除人の中で一番責任を感じていたのはヒューゴであった。
ヒューゴはギルドマスターからの話を聞きながら、拳を握り締め、何がなんでもカーラを守るのだという決意を固めていくのであった。
同じ頃、診療所の友人からカーラとその赤ずきんたちが接触するという話を聞いたネオドラビア教の戦士がとある宿屋を根城とするネオドラビア教の提督、ピーター・アニマに報告を行い、そのまま両者を共に殲滅するための入念な計画を立てていた。
とりわけ、ピーターは教団にとっての宿敵と化した駆除人の始末、それから彼らの雇い主と提携を結んでいたのにも関わらず、大勢の戦士を殺した赤ずきんに激しい憎悪の念を燃やしており、机を叩きつけながら大規模な包囲殲滅作戦を打ち出していたのである。
「……待っていろ、駆除人ども……忌々しい赤ずきんども……貴様らは必ず地獄へと叩き落としてやる」
ピーターは拳と声の両方を震わせながら
決意を改めていく。
一方で赤ずきんたちもカーラ一人で来るわけがないのだという計算は立てていた他に、自分たちと敵対関係にあるネオドラビア教もどこからか話を聞き出して、やって来るという想定の元、二人で入念な対策を練っていたのである。
とある宿屋の一室、蝋燭の光のみで照らされた部屋の中で二人は向かい合って座り、長い時間、お茶だけをお供に食事も摂らずに対策を行なっていたのだが、ようやく結論が出たらしい。ロビンが椅子の上から立ち上がって、
「じゃあ、カーラと対峙するのはぼくだけでいいかな?」
と、問い掛けた。エイブリーは異論がなかったのか、その問い掛けに黙って首を縦に動かす。
それから口元に優しそうな笑みを浮かべて言った。
「そう。で、ぼくは伏兵に気を付ける役をやる。キミの背中を必ずぼくが守ってあげるから」
「ありがとう。エイブリー。けど、ぼくは一方的に守られるって言い方は嫌かな」
ロビンは身を乗り出し、エイブリーの額に口付けを落とす。それから椅子の上から降り、改めてロビンと強い抱擁を行なっていく。
「ぼくたち二人は互いに互いの背中を守り合うんだ。これはお互いに深く愛し合っているぼくらにしかできないことだし、ぼくら二人が対等な関係でいられる条件とも思うんだ」
エイブリーはその言葉を聞き、嬉しくなったのか、目の奥が輝きに包まれた、柔らかい眼差しでロビンを見つめる。
ロビンとエイブリー。この二名は深い友情とそして初恋にも似た愛情で強い絆を育んでいたのである。
二人はそのまま愛に満ちた口付けを交わし合いながらお互いの頭を優しく撫でていく。
しばらくの間、二人は幼い子どもが家で戯れ合うかのように楽しげに戯れあっていたのだが、やがて、何かを思い立ったのか、ゆっくりと二人名残惜しそうに離れ、それぞれのベッドの上へと戻っていく。
「おやすみ、ロビン」
「おやすみ、エイブリー」
二人はそのまま目を閉じ、夢の世界へと旅立つつもりでいた。
その予定ではいたのだが、二人とも思ったよりも目が冴えてしまい眠れなかった。
だからこそ、二人は仲の良い兄弟が親の目を盗んで、同じ部屋で声を潜めて話し合うかのように小さな声で囁き合っていくのであった。
「ねぇ、エイブリー」
「なんだい?」
「ぼく、エイブリーが好きだよ。だからーー」
「わかってる。その先は言わないでもわかるさ」
エイブリーはベッドの上から立ち上がり、そのままロビンの頬へと優しく唇を落とす。
それはまるで、眠れない子どもに母親が安心させるために行うキスのようだ。
この時、ロビンは胸が高鳴り、しばらくは喜びで寝付けなかったのだが、それでも疲れの方が勝ったのか、少し時間が経ってからは元気の良い寝息を立てていた。
エイブリーはそんな相棒の寝息を黙って笑顔で聞いていた。
こうして三者三様とも接触の日には計画を練り、その翌日に準備を行い、来るべき決戦へと臨んでいったのである。
ネオドラビア教の教会跡。そこに見えたのはカーラとそれから二人の赤い頭巾を被った二人の美少年のみである。
教会の近くには木が生い茂っているので、その中に七人の駆除人が姿が身を隠すのは容易いことであった。
七人が緊張しているのをよそに、カーラと赤ずきんたちは距離を縮めていく。
そして目と鼻の先まで訪れたところでカーラが丁寧な一礼を行ったのである。
「この度はご足労いただき誠に感謝致しますわ。私の名前はカーラと申します。あなた方が標的にしている人そのものですわ。間違っていたのならば謝らせていただきますけれど、どうかしら?」
「合っているよ。ねぇ、ロビン」
「あぁ、エイブリー。彼女で間違いない」
二人は顔を見合わせながら言った。
「よかった。作戦に狂いはありませんでしたわ」
カーラは安堵した表情を浮かべて言った。それから二人を見据えながら深刻な顔で問い掛けた。
「よろしければどうして、お二方が私を狙うのかをお教え願えません?」
「それは駄目だよ。ぼくらの流儀に反するからね」
ロビンが飾り紐を取り出しながら言った。既に戦闘の準備は整っているらしい。それを見たカーラは小さく溜息を吐いてから、
「仕方がありませんわね」
と、残念そうな表情を浮かべながら袖の中に仕込んでいた針を取り出す。
カーラはそのまま針を突き付けながらロビンに向かって言った。
「あなた様のお名前は存じ上げませんけれども」
「ロビンだよ」
「失礼しました。ロビンさん。では、正々堂々と戦わせていただきましょう」
カーラが頭を上げるのと同時にロビンが飾り紐を飛ばす。
カーラは目の前から飛んできた飾り紐を針で叩き飛ばすものの、すぐに二度目の紐がカーラの首元へと飛ぶ。
慌てて片方の手で飾り紐を握るものの、ロビンはそのままカーラの片手を強く締め上げていく。
「し、しまった……」
「終わりだね」
ロビンは得意げな表情を浮かべながらカーラの手首を締め上げていく。
カーラが苦痛に顔を歪めるのを見て、ヒューゴは居ても立っても居られなくなったのだろう。
隠れていた場所から姿を現し、剣を振り上げながらロビンに向かって斬りかかっていく。
だが、ヒューゴの剣はロビンではなくロビンの相棒であるエイブリーが受け止めた。鋭利な刃物がヒューゴの剣身の上を滑り、ヒューゴの顔を串刺しにせんばかりに時折、剣身の間を抜け、ヒューゴの顔を掠める。
ヒューゴは目の前にいる赤い頭巾の少年の強さに驚いた。
どうして、ここまで強いのだろう、と。
それでも、ヒューゴは足を踏ん張り、なんとしてでも目の前にいる少年を叩き斬り、飾り紐を扱う少年からカーラを救わねばならないのだ。
ヒューゴは大きな声を振り上げ、少年を得物である飾り櫛ごと背後へと放り、そのままカーラの元へと駆けていく。
それを見た少年は危機を感じ、カーラの手首から飾り紐を外す。
窮地を脱したカーラはそのまま少年の元へと駆けていくのであった。
あとがき
本日は投稿が大幅に遅れて申し訳ありませんでした。本日はなかなか気乗りがしなかったのと、どうしても外せない用事のために投稿時間が大きく遅れてしまいました。
改めてここにお詫びするのと同時に、今後はこのようなことがないように気を付けたいと思います。
カーラがふと思い出したようにジョンという名前の患者に向かって声を掛けた。
「なんだい?カーラ」
ジョンは日頃から好いているカーラから声を掛けられて嬉しかったのか、機嫌の良さそうな声で答えた。
「私事で相談したいのですが、構いませんか?」
「あぁ、いいよ。なんだい?」
「実は私、新しい飾り紐と櫛が欲しいんですの。どこかでその二点を揃えている業者の方などをご存知ありません?」
「その二点を揃えている業者か……難しいな。どちらかだけの販売ならば心当たりがないことはないんだが」
先程とは打って変わり、ジョンは考え込む素振りを見せながら答えた。
いくらカーラからの頼みと言っても二点を揃えた業者というのはあまり聞かないからだ。
「私、どうしても一気に手に入れたいんですの。よろしければ、どこかで伝手がありましたらよろしくお願いしますわ」
カーラはジョンに薬を直接手渡しながら懇願するかのように言った。ジョンはカーラに手を触れられたことで嬉しくなったのか、顔に微笑を浮かべながら上機嫌な様子で診療所を去っていく。
カーラはジョンという男性が過ぎ去った後はジェーンという同じく馴染みである中年の女性に櫛と飾り紐を売る業者について尋ねていったのである。
昨日の会議で二人組の殺し屋を誘き寄せるため、診療所を訪れるほとんど全ての人々に尋ねているので、効果のほどは期待できるだろう。
少なくとも一週間以内には例の赤ずきんたちが接触してくるはずだ。
カーラは赤ずきんを仕留めるために積極的に飾り紐と櫛のことを話していくのであった。
仕事の合間に話し、休憩の時間にもいつもの店で喋っているのだからなるべく早く動いて欲しい。カーラは切実に願った。
すると、カーラの祈りが天井にいる神々に通じたのか、この三日ほど後にはようやく例の赤ずきんたちが接触を図ってきたのである。
二人は怪しまれないためか、女装ではない姿で大胆にも診療所の前に姿を現し、カーラに櫛と飾り紐を渡したいと言ってきたのである。
三者とも互いに面識があったはずであるのだが、何食わぬ顔で会話を交わし、飾り紐と櫛を売る相談を取り付けたのである。カーラはこのやり取りを聞いた際に人々に怪しまれないかと危惧していたが、お互いがお互いにこれが敵を葬る絶好の機会だと感じたためもあり、診療所にいる人々や街を通る人々に怪しまれないように自然な会話を行なっていたために、街行く人々に怪しまれることはなかった。
「では、これより二日の後に郊外の旧ネオドラビア教の教会跡にて代金はお支払い致しますわ」
「では、それでお願いします。その時にぼくらも商品を持って行きますんで」
二人の少年は笑みを浮かべながらその場を去っていく。
それを見届けたレキシーはカーラへと耳打ちし、赤ずきんたちとの決着の準備ができたということを告げていく。
「なるほどねぇ、ようやく決戦のための準備ができたというわけかい」
「えぇ、ようやく決戦ということになりますわ」
「わかった。今日の仕事終わりに二人でマスターへと伝えに行こう」
二人は仕事終わりにギルドマスターへと伝えに向ったのである。
二人の話を聞いたギルドマスターはヒューゴとギークの両名に声を掛け、急遽城下町にいる全ての駆除人たちを招集し、二日後の決戦に向けての最終的な打ち合わせを行なっていく。
ギルドマスターはカーラに囮になる危険性やそれに際しての覚悟を改め問い掛け、カーラの護衛を務めることになる七人の駆除人たちには改めてその任務の重要性を押す。
この任務を受けるにあたり、カーラの護衛にあたる駆除人の中で一番責任を感じていたのはヒューゴであった。
ヒューゴはギルドマスターからの話を聞きながら、拳を握り締め、何がなんでもカーラを守るのだという決意を固めていくのであった。
同じ頃、診療所の友人からカーラとその赤ずきんたちが接触するという話を聞いたネオドラビア教の戦士がとある宿屋を根城とするネオドラビア教の提督、ピーター・アニマに報告を行い、そのまま両者を共に殲滅するための入念な計画を立てていた。
とりわけ、ピーターは教団にとっての宿敵と化した駆除人の始末、それから彼らの雇い主と提携を結んでいたのにも関わらず、大勢の戦士を殺した赤ずきんに激しい憎悪の念を燃やしており、机を叩きつけながら大規模な包囲殲滅作戦を打ち出していたのである。
「……待っていろ、駆除人ども……忌々しい赤ずきんども……貴様らは必ず地獄へと叩き落としてやる」
ピーターは拳と声の両方を震わせながら
決意を改めていく。
一方で赤ずきんたちもカーラ一人で来るわけがないのだという計算は立てていた他に、自分たちと敵対関係にあるネオドラビア教もどこからか話を聞き出して、やって来るという想定の元、二人で入念な対策を練っていたのである。
とある宿屋の一室、蝋燭の光のみで照らされた部屋の中で二人は向かい合って座り、長い時間、お茶だけをお供に食事も摂らずに対策を行なっていたのだが、ようやく結論が出たらしい。ロビンが椅子の上から立ち上がって、
「じゃあ、カーラと対峙するのはぼくだけでいいかな?」
と、問い掛けた。エイブリーは異論がなかったのか、その問い掛けに黙って首を縦に動かす。
それから口元に優しそうな笑みを浮かべて言った。
「そう。で、ぼくは伏兵に気を付ける役をやる。キミの背中を必ずぼくが守ってあげるから」
「ありがとう。エイブリー。けど、ぼくは一方的に守られるって言い方は嫌かな」
ロビンは身を乗り出し、エイブリーの額に口付けを落とす。それから椅子の上から降り、改めてロビンと強い抱擁を行なっていく。
「ぼくたち二人は互いに互いの背中を守り合うんだ。これはお互いに深く愛し合っているぼくらにしかできないことだし、ぼくら二人が対等な関係でいられる条件とも思うんだ」
エイブリーはその言葉を聞き、嬉しくなったのか、目の奥が輝きに包まれた、柔らかい眼差しでロビンを見つめる。
ロビンとエイブリー。この二名は深い友情とそして初恋にも似た愛情で強い絆を育んでいたのである。
二人はそのまま愛に満ちた口付けを交わし合いながらお互いの頭を優しく撫でていく。
しばらくの間、二人は幼い子どもが家で戯れ合うかのように楽しげに戯れあっていたのだが、やがて、何かを思い立ったのか、ゆっくりと二人名残惜しそうに離れ、それぞれのベッドの上へと戻っていく。
「おやすみ、ロビン」
「おやすみ、エイブリー」
二人はそのまま目を閉じ、夢の世界へと旅立つつもりでいた。
その予定ではいたのだが、二人とも思ったよりも目が冴えてしまい眠れなかった。
だからこそ、二人は仲の良い兄弟が親の目を盗んで、同じ部屋で声を潜めて話し合うかのように小さな声で囁き合っていくのであった。
「ねぇ、エイブリー」
「なんだい?」
「ぼく、エイブリーが好きだよ。だからーー」
「わかってる。その先は言わないでもわかるさ」
エイブリーはベッドの上から立ち上がり、そのままロビンの頬へと優しく唇を落とす。
それはまるで、眠れない子どもに母親が安心させるために行うキスのようだ。
この時、ロビンは胸が高鳴り、しばらくは喜びで寝付けなかったのだが、それでも疲れの方が勝ったのか、少し時間が経ってからは元気の良い寝息を立てていた。
エイブリーはそんな相棒の寝息を黙って笑顔で聞いていた。
こうして三者三様とも接触の日には計画を練り、その翌日に準備を行い、来るべき決戦へと臨んでいったのである。
ネオドラビア教の教会跡。そこに見えたのはカーラとそれから二人の赤い頭巾を被った二人の美少年のみである。
教会の近くには木が生い茂っているので、その中に七人の駆除人が姿が身を隠すのは容易いことであった。
七人が緊張しているのをよそに、カーラと赤ずきんたちは距離を縮めていく。
そして目と鼻の先まで訪れたところでカーラが丁寧な一礼を行ったのである。
「この度はご足労いただき誠に感謝致しますわ。私の名前はカーラと申します。あなた方が標的にしている人そのものですわ。間違っていたのならば謝らせていただきますけれど、どうかしら?」
「合っているよ。ねぇ、ロビン」
「あぁ、エイブリー。彼女で間違いない」
二人は顔を見合わせながら言った。
「よかった。作戦に狂いはありませんでしたわ」
カーラは安堵した表情を浮かべて言った。それから二人を見据えながら深刻な顔で問い掛けた。
「よろしければどうして、お二方が私を狙うのかをお教え願えません?」
「それは駄目だよ。ぼくらの流儀に反するからね」
ロビンが飾り紐を取り出しながら言った。既に戦闘の準備は整っているらしい。それを見たカーラは小さく溜息を吐いてから、
「仕方がありませんわね」
と、残念そうな表情を浮かべながら袖の中に仕込んでいた針を取り出す。
カーラはそのまま針を突き付けながらロビンに向かって言った。
「あなた様のお名前は存じ上げませんけれども」
「ロビンだよ」
「失礼しました。ロビンさん。では、正々堂々と戦わせていただきましょう」
カーラが頭を上げるのと同時にロビンが飾り紐を飛ばす。
カーラは目の前から飛んできた飾り紐を針で叩き飛ばすものの、すぐに二度目の紐がカーラの首元へと飛ぶ。
慌てて片方の手で飾り紐を握るものの、ロビンはそのままカーラの片手を強く締め上げていく。
「し、しまった……」
「終わりだね」
ロビンは得意げな表情を浮かべながらカーラの手首を締め上げていく。
カーラが苦痛に顔を歪めるのを見て、ヒューゴは居ても立っても居られなくなったのだろう。
隠れていた場所から姿を現し、剣を振り上げながらロビンに向かって斬りかかっていく。
だが、ヒューゴの剣はロビンではなくロビンの相棒であるエイブリーが受け止めた。鋭利な刃物がヒューゴの剣身の上を滑り、ヒューゴの顔を串刺しにせんばかりに時折、剣身の間を抜け、ヒューゴの顔を掠める。
ヒューゴは目の前にいる赤い頭巾の少年の強さに驚いた。
どうして、ここまで強いのだろう、と。
それでも、ヒューゴは足を踏ん張り、なんとしてでも目の前にいる少年を叩き斬り、飾り紐を扱う少年からカーラを救わねばならないのだ。
ヒューゴは大きな声を振り上げ、少年を得物である飾り櫛ごと背後へと放り、そのままカーラの元へと駆けていく。
それを見た少年は危機を感じ、カーラの手首から飾り紐を外す。
窮地を脱したカーラはそのまま少年の元へと駆けていくのであった。
あとがき
本日は投稿が大幅に遅れて申し訳ありませんでした。本日はなかなか気乗りがしなかったのと、どうしても外せない用事のために投稿時間が大きく遅れてしまいました。
改めてここにお詫びするのと同時に、今後はこのようなことがないように気を付けたいと思います。
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