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第二章『王国を覆う影?ならば、この私が取り除かせていただきますわ』
息を殺して囁き合うのは
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カーラが祖父の下で技術を仕込まれ、苦しい日々を送っていたのは遠い昔の記憶である。だが、その日のことをカーラは今でも鮮明に思い出せる。
あの日々があるからこそカーラは今現在円滑に駆除をこなせるのである。
やがて、数年が経って針を使っての技術を獲得すると、カーラは祖父のリーバイから得物である針を服の袖の中に仕込んで、いつでも使えるように用心することを告げられた。
カーラが現在も袖付きの服やドレスしか着ないのはこの時に言いつけられた祖父の教えが由来している。婚約破棄を言い付けられた際には袖の下に仕込んでいる針を使って王子と自分を陥れた義妹の首元に突き刺してやろうかと考えていたのだが、あの歪んだ感情を抱いた時こそが唯一武器を仕込んでいて失敗だと感じていたことだろう。
もちろんこれらの事実は休日に決着を付ける予定のシュポスには話していない。
ただ自分が過去の思い出に浸っていたというだけの話だ。
カーラは自分の話を終えて、シュポスに向かって告げた。
「さぁ、これで私の話はお終いですわ。そろそろ帰ってもよろしくて?」
「あぁ、じゃあ、また休みの日にな」
シュポスは大きく手を振って、その場を立ち去っていく。カーラはシュポスの後ろ姿を黙って見つめていた。
それからサンドイッチのごみを持って診療所へと帰り、午後の診察を手伝う。
その日は駆除の依頼も入らなかったことからそのまま自宅で一日を過ごすことにした。カーラは副業であるお針子の仕事を終え、読書を終えると、もう一度蝋燭の炎に照らされた針を見つめていた。
蝋燭の火に針が反射されて微かな光を反射していた。カーラはこの針を見ながら自身がシュポスを仕留める場面を考えていたのであった。
酒場での動きを見る限り一瞬で勝負を付けなければ逆にシュポスからの攻撃を受けて混戦の末に死んでしまう可能性すらあった。
だが、相手が誰であろうとも掟は守らなくてはならないのだ。
カーラは手に持っていた針を置いてから机の上に置く。その日の眠りはどこか眠り心地の悪いものであった。
翌日カーラは診療所に着くなり、朝一番に大勢の兵士を共に連れてきたウィリアムに向かって国王の元へレキシーが行くことを告げて彼を安堵させた。
そこから治療にあたり、最後にドレスを持って服飾店に納めに向かう。
その後に馴染みの菓子店へと寄った時だ。アメリアから買い物帰りに一ヶ月後に訪れる孤児院でのボランティア活動について相談されたのだ。
今回の洋服もまた大変ではありそうだが、腕はなる。その分寝る時間は減ることになるだろうが、なかなかやり甲斐がありそうだ。
アメリアと別れてから自宅に戻ると、レキシーは既に食事の用意をしており、カーラは慌ててレキシーの食事の用意を手伝った。
夕食の後にカーラは買ってきた菓子をつまみながらレキシーに向かって問い掛けた。
「そういえばレキシーさんはどうしてお爺様と知り合いましたの?」
何気なく問い掛けた疑問であり、レキシーも特に詰まることもなく答えた。
「そうだねぇ、プラフティーの旦那とあんたのお爺さんと出会ったのはあたしがまだ駆除人として駆け出しの頃だったよ」
「そうだったんですのね」
「あぁ、それからずっと一緒に相棒として仕事してたんだけど、ある日の駆除の後で旦那が気になることを言ってね」
レキシーの頭の中は既に十年以上前の遠い過去の日へと遡っていく。
カーラからすれば遠い昔の城下町。今と変わらず夜の闇が世界を支配し、空いているのはレストランや酒場などの一部の例外であり、その周囲だけがランプの光で照らされており、夜の道を歩く人々の希望となっていた。
この日レストランから二人の男が出てきていた。男の名前はエドモンド・ハッターとデイビッド・マッケンジー。
二人とも下級貴族の家の出であるが、その財力は多くの下級貴族の収入を大きく上回るどころか下手な上級貴族の年収さえも凌駕するほどの財力を得ていた。
それは武力を振り翳しての一般商店からの恫喝と麻薬密売の利権にあった。
麻薬はヤクザ組織の資金源となり、その仲介料が両家に渡っているというものであった。多くの商店を県で脅しているのも大きい。
だからこそこうして二人で夜のレストランで豪遊して帰ることができたのだ。
二人が上機嫌で鼻歌を歌いながら城下町の大通りを歩いていた時だ。
目の前から不意に老齢の男の声が聞こえた。
「待て、お前さんたちハッター家のエドモンドとマッケンジー家のディビッドだろ?」
「なんだ貴様は?」
「そうだ。オレたちを誰だと思っているんだ?」
だが、目の前の男は動じる素振りも見せない。それどころか先程よりも不機嫌な声で言った。
「テメェらオレの声を忘れたっていうのかい?このオレの声を、よく思い出してみろ、な?」
壮年の男の声だ。二人が懸命にその声を思い出そうとしていると、不意に空を切るような音が聞こえた。
二人がその音に対して首を傾げた時だ。デイビッドの腹に深々と剣が突き刺さっていることに気がつく。先程の謎の声の主がいつの間にか近付いて剣を突き刺していたのだ。
ディビッドは慌てて自分の元に刺さった剣から逃れようともがいていたのだが、逃げようとすればするほど剣が深く突き刺さっていき、襲撃犯が自ら剣を引き抜く際にはディビッドの腹からは大量の血が地面の上に流れていた時だった。
その姿を見て決死に逃げ出したエドモンドであったが、その突き当たりには月の光に照らされた短剣の刃が逃走を図るエドモンドを待ち構えていたのである。
ちょうどエドモンドが目の前を通った瞬間を待ち構えて刃を突き立てのであった。
レキシーはそのまま短剣に込める力を強め、エドモンドという最低の悪人に対して侮蔑の言葉を吐き捨てていく。
「これがあんたが苦しめられた商店の人々の分さ……くたばりやがれッ!」
レキシーは突き刺した短剣に込める力を強め、エドモンドの体を痛ぶっていく。
先程のデイビッド同様にエドモンドの体から絵の具が飛び散ったかのような赤い血が飛び散り、辺りの地面の上を飛び散っていく。
レキシーはエドモンドを仕留め終えたのを確認し、相棒であるリーバイの元へと駆け寄っていったのである。
プラフティー公爵家という巨大な貴族の家の当主であったが、レキシーは反発するどころか自身が活動を始めるよりも遥かに前から害虫駆除人としてこれまでに多くの活躍を行ってきたリーバイに対して尊敬の念すら覚えていた。
貴族から感じる驕りのようは感情が見えないのも好感度が高い理由の一つではある。
レキシーはそんなリーバイを「プラフティーの旦那」と呼んで慕っていたのであった。
「旦那、相変わらず見事な手腕だよ」
「よせやい、褒めたって何も出ないぞ」
「そんなつもりじゃないよ、それよりどうだい?家に着くまでの間に殺人の匂いを取り払わなくちゃならないだろ?一緒に酒でもどうだい?」
「酒か……いいな。付き合うか」
リーバイはこの日は珍しく乗り気だった。酒場に潜り込み、二人で酒をあおっていく。
リーバイはワイングラスを揺らしながら隣に座っていたレキシーに向かって言った。
「なぁ、レキシー、お前さんは貴族社会についてどう思うんだ?」
「嫌な質問をするね。旦那」
「いや、これは真面目な話さ。正直にいえば貴族社会の政治に不満を持っている奴らも多い。大抵の貴族はテメェの家の名誉と庭付きの家を守りたいだけだ。もしくは好きにできる財産を増やしたいだけだ。腐ってやがる」
「プラフティー公爵家という大貴族の当主であるあんたがそんなことを言うなんて驚きだね」
レキシーは関心を示したらしく、感服したような態度でリーバイの言葉を称賛した。
「まぁな、オレは貴族だけど、害虫駆除人として市井の暮らしを知れる身だからな。けど、うちのバカ息子は市井の状況など知らずに貴族社会の繁栄が永遠に続くと信じてやまねぇんだ。こんなバカどもばかりじゃ貴族社会の終焉ってのも遠い未来の話じゃねぇかもしれねぇな」
「なるほどねぇ」
「そればっかりじゃあねぇ、信じていたはずの陛下の目が最近おかしくなりつつある」
「それはどういうことだい?旦那?」
レキシーは興味をそそらされたのか、身を乗り出してリーバイの元へと近付いていく。
リーバイはレキシーに向かって意味深な笑みを浮かべながら言った。
「この国に二人の王子がいることはお前さんも知っているだろうが、最近になってな、陛下が何をとち狂ったのか、弟を露骨に贔屓するようになったんだ」
レキシーによれば今の兄弟の確執はこの時から始まっていたという。
あの日々があるからこそカーラは今現在円滑に駆除をこなせるのである。
やがて、数年が経って針を使っての技術を獲得すると、カーラは祖父のリーバイから得物である針を服の袖の中に仕込んで、いつでも使えるように用心することを告げられた。
カーラが現在も袖付きの服やドレスしか着ないのはこの時に言いつけられた祖父の教えが由来している。婚約破棄を言い付けられた際には袖の下に仕込んでいる針を使って王子と自分を陥れた義妹の首元に突き刺してやろうかと考えていたのだが、あの歪んだ感情を抱いた時こそが唯一武器を仕込んでいて失敗だと感じていたことだろう。
もちろんこれらの事実は休日に決着を付ける予定のシュポスには話していない。
ただ自分が過去の思い出に浸っていたというだけの話だ。
カーラは自分の話を終えて、シュポスに向かって告げた。
「さぁ、これで私の話はお終いですわ。そろそろ帰ってもよろしくて?」
「あぁ、じゃあ、また休みの日にな」
シュポスは大きく手を振って、その場を立ち去っていく。カーラはシュポスの後ろ姿を黙って見つめていた。
それからサンドイッチのごみを持って診療所へと帰り、午後の診察を手伝う。
その日は駆除の依頼も入らなかったことからそのまま自宅で一日を過ごすことにした。カーラは副業であるお針子の仕事を終え、読書を終えると、もう一度蝋燭の炎に照らされた針を見つめていた。
蝋燭の火に針が反射されて微かな光を反射していた。カーラはこの針を見ながら自身がシュポスを仕留める場面を考えていたのであった。
酒場での動きを見る限り一瞬で勝負を付けなければ逆にシュポスからの攻撃を受けて混戦の末に死んでしまう可能性すらあった。
だが、相手が誰であろうとも掟は守らなくてはならないのだ。
カーラは手に持っていた針を置いてから机の上に置く。その日の眠りはどこか眠り心地の悪いものであった。
翌日カーラは診療所に着くなり、朝一番に大勢の兵士を共に連れてきたウィリアムに向かって国王の元へレキシーが行くことを告げて彼を安堵させた。
そこから治療にあたり、最後にドレスを持って服飾店に納めに向かう。
その後に馴染みの菓子店へと寄った時だ。アメリアから買い物帰りに一ヶ月後に訪れる孤児院でのボランティア活動について相談されたのだ。
今回の洋服もまた大変ではありそうだが、腕はなる。その分寝る時間は減ることになるだろうが、なかなかやり甲斐がありそうだ。
アメリアと別れてから自宅に戻ると、レキシーは既に食事の用意をしており、カーラは慌ててレキシーの食事の用意を手伝った。
夕食の後にカーラは買ってきた菓子をつまみながらレキシーに向かって問い掛けた。
「そういえばレキシーさんはどうしてお爺様と知り合いましたの?」
何気なく問い掛けた疑問であり、レキシーも特に詰まることもなく答えた。
「そうだねぇ、プラフティーの旦那とあんたのお爺さんと出会ったのはあたしがまだ駆除人として駆け出しの頃だったよ」
「そうだったんですのね」
「あぁ、それからずっと一緒に相棒として仕事してたんだけど、ある日の駆除の後で旦那が気になることを言ってね」
レキシーの頭の中は既に十年以上前の遠い過去の日へと遡っていく。
カーラからすれば遠い昔の城下町。今と変わらず夜の闇が世界を支配し、空いているのはレストランや酒場などの一部の例外であり、その周囲だけがランプの光で照らされており、夜の道を歩く人々の希望となっていた。
この日レストランから二人の男が出てきていた。男の名前はエドモンド・ハッターとデイビッド・マッケンジー。
二人とも下級貴族の家の出であるが、その財力は多くの下級貴族の収入を大きく上回るどころか下手な上級貴族の年収さえも凌駕するほどの財力を得ていた。
それは武力を振り翳しての一般商店からの恫喝と麻薬密売の利権にあった。
麻薬はヤクザ組織の資金源となり、その仲介料が両家に渡っているというものであった。多くの商店を県で脅しているのも大きい。
だからこそこうして二人で夜のレストランで豪遊して帰ることができたのだ。
二人が上機嫌で鼻歌を歌いながら城下町の大通りを歩いていた時だ。
目の前から不意に老齢の男の声が聞こえた。
「待て、お前さんたちハッター家のエドモンドとマッケンジー家のディビッドだろ?」
「なんだ貴様は?」
「そうだ。オレたちを誰だと思っているんだ?」
だが、目の前の男は動じる素振りも見せない。それどころか先程よりも不機嫌な声で言った。
「テメェらオレの声を忘れたっていうのかい?このオレの声を、よく思い出してみろ、な?」
壮年の男の声だ。二人が懸命にその声を思い出そうとしていると、不意に空を切るような音が聞こえた。
二人がその音に対して首を傾げた時だ。デイビッドの腹に深々と剣が突き刺さっていることに気がつく。先程の謎の声の主がいつの間にか近付いて剣を突き刺していたのだ。
ディビッドは慌てて自分の元に刺さった剣から逃れようともがいていたのだが、逃げようとすればするほど剣が深く突き刺さっていき、襲撃犯が自ら剣を引き抜く際にはディビッドの腹からは大量の血が地面の上に流れていた時だった。
その姿を見て決死に逃げ出したエドモンドであったが、その突き当たりには月の光に照らされた短剣の刃が逃走を図るエドモンドを待ち構えていたのである。
ちょうどエドモンドが目の前を通った瞬間を待ち構えて刃を突き立てのであった。
レキシーはそのまま短剣に込める力を強め、エドモンドという最低の悪人に対して侮蔑の言葉を吐き捨てていく。
「これがあんたが苦しめられた商店の人々の分さ……くたばりやがれッ!」
レキシーは突き刺した短剣に込める力を強め、エドモンドの体を痛ぶっていく。
先程のデイビッド同様にエドモンドの体から絵の具が飛び散ったかのような赤い血が飛び散り、辺りの地面の上を飛び散っていく。
レキシーはエドモンドを仕留め終えたのを確認し、相棒であるリーバイの元へと駆け寄っていったのである。
プラフティー公爵家という巨大な貴族の家の当主であったが、レキシーは反発するどころか自身が活動を始めるよりも遥かに前から害虫駆除人としてこれまでに多くの活躍を行ってきたリーバイに対して尊敬の念すら覚えていた。
貴族から感じる驕りのようは感情が見えないのも好感度が高い理由の一つではある。
レキシーはそんなリーバイを「プラフティーの旦那」と呼んで慕っていたのであった。
「旦那、相変わらず見事な手腕だよ」
「よせやい、褒めたって何も出ないぞ」
「そんなつもりじゃないよ、それよりどうだい?家に着くまでの間に殺人の匂いを取り払わなくちゃならないだろ?一緒に酒でもどうだい?」
「酒か……いいな。付き合うか」
リーバイはこの日は珍しく乗り気だった。酒場に潜り込み、二人で酒をあおっていく。
リーバイはワイングラスを揺らしながら隣に座っていたレキシーに向かって言った。
「なぁ、レキシー、お前さんは貴族社会についてどう思うんだ?」
「嫌な質問をするね。旦那」
「いや、これは真面目な話さ。正直にいえば貴族社会の政治に不満を持っている奴らも多い。大抵の貴族はテメェの家の名誉と庭付きの家を守りたいだけだ。もしくは好きにできる財産を増やしたいだけだ。腐ってやがる」
「プラフティー公爵家という大貴族の当主であるあんたがそんなことを言うなんて驚きだね」
レキシーは関心を示したらしく、感服したような態度でリーバイの言葉を称賛した。
「まぁな、オレは貴族だけど、害虫駆除人として市井の暮らしを知れる身だからな。けど、うちのバカ息子は市井の状況など知らずに貴族社会の繁栄が永遠に続くと信じてやまねぇんだ。こんなバカどもばかりじゃ貴族社会の終焉ってのも遠い未来の話じゃねぇかもしれねぇな」
「なるほどねぇ」
「そればっかりじゃあねぇ、信じていたはずの陛下の目が最近おかしくなりつつある」
「それはどういうことだい?旦那?」
レキシーは興味をそそらされたのか、身を乗り出してリーバイの元へと近付いていく。
リーバイはレキシーに向かって意味深な笑みを浮かべながら言った。
「この国に二人の王子がいることはお前さんも知っているだろうが、最近になってな、陛下が何をとち狂ったのか、弟を露骨に贔屓するようになったんだ」
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