62 / 220
第二章『王国を覆う影?ならば、この私が取り除かせていただきますわ』
義理の妹にしては
しおりを挟む
結局はカーラの要求は通され、更衣室でカーラはカミラが用意した袖付きの赤色をした綺麗なドレスに着替えていた。自身が着てきたドレスはカミラに手渡し、丁寧に洗ってもらっている最中だ。苛立ち紛れにドレスを引き裂くなどの処置を行えば弁償しなくてはならないことは彼女も理解できるだろう。否応なしでも『人面獣心』と忌み嫌っている自分のドレスを洗うより他にないのだ。カーラは渡された使い捨ての紙で髪に付着した水滴を洗いながら屋敷に帰ってくるまでの前日にヒューゴから渡された依頼のことを思い返す。
あの日診療所を訪れたヒューゴは真剣な顔を浮かべながらカーラに向かって告げた。
用意した熱めのお茶にも口を付けなかったことから深刻に悩んでいたことは明白である。それでも重く閉ざされていたはずの口が開いたのはそれだけ切羽詰まった依頼であったからだろう。
ヒューゴはカーラの目を強く見つめて言った。
「……お願いがあります。プラフティー公爵家の私兵の隊長であるオーウェンと執事のベンジー。この両名を駆除していただけないでしょうか?」
「ベンジーさんとオーウェンさんを?」
「えぇ、この二人……相当な悪でしてね。二人で組んで麻薬商売を行っているんですよ」
その言葉を聞いてカーラの背筋が凍った。確かにこれまで血の繋がらない妹ばかりを贔屓してきたが、それでも令嬢として接してこられた期間の方が多く、その時までは悪い印象を持ってこなかったせいか、根は善人だと信じていた節があった。それ故にヒューゴから発せられた言葉に対してのカーラの衝撃は大きかった。
「依頼を行ったのはとある商店の店主です。商店といってもあんたが贔屓してる菓子屋さんみたいに大きな店のものですよ。それでも復讐の資金を貯めるのに三年もかかってしまったみたいで、つい先日にようやくギルドマスターに前金を手渡したということらしいです」
ヒューゴはそう言って机の上に二十枚ばかりの金貨を置いた。
金貨一枚でも相当楽な生活ができるのだ。これだけの金額があれば当分は食べるものに困らないどころか、復讐のために稼いでいる資金にも大きく影響が出るだろう。小さな店の店主だというが事件の後に死ぬつもりで働き、店を大きくしてこのような金を作り上げたに違いない。全ては一念からだ。
そう考えると手に取った金貨が妙に重く感じられた。
依頼を受諾した理由としては店主の一念に敬意を表したこともあったが、今回の相手が自身の復讐対象者である義妹や両親と同じく公爵家の人間であるということも大いに影響していた。
両親や義妹を討つ前の小手調べとしてもちょうどいいではないか。
カーラはそれらの理由から躊躇う様子も見せずに金貨を自身の財布の中へと仕舞い込む。
ただし、全ての金貨を仕舞い込んだのではない。何枚かの金貨をレキシーに渡す。
「おや、どうしてあたしに渡すんだい?」
「今回の駆除はレキシーさんに協力していただきたいんですの。自分の生まれ育った家だからこそ公爵家の警備が固いことも知っておりますの。私の針ではお二方のうちのどちらかが限界ですの。もう片方を仕留めるためにレキシーさんの毒薬が必要だとお思いまして」
「そういうことなら受け取っておくよ。あたしの毒薬が必要なんだね」
カーラは首を縦に振った。レキシーはそれを見て早速毒薬の精製へと取り掛かっていく。おそらく明日の朝にはできているだろう。ヒューゴは金貨を受け取ったカーラの目をじっくりと見据えた後に丁寧に頭を下げて言った。
「……どうかお気を付けて」
「お任せください。私が必ずこの国を巣食う闇を打ち払ってみせますわ」
カーラは元気よく自身の胸を叩いてみせた。レキシーに作ってもらった毒薬は普通の粉薬に見せかけて持ってきた旅行鞄の中にしまってある。万が一に見られたとしても問題はない。
護身用の針は着替える際に袖から抜き取り、カミラが手渡した畳まれた服の中に隠しており、着替え終わるのと同時に床に落ちた針を拾って袖の中に隠す算段となっている。今のところ問題は起きていない。
カーラは落ちた針を拾い上げながら思った。準備は完了であり、いつでも駆除を執行できる、と。そんな思いを抱えながらカーラは後ろめたさを感じることもなく堂々と用意された部屋の中へと戻っていったのである。
部屋の中には忌々しそうな表情を浮かべたマルグリッタの姿が見えた。
マルグリッタの怒る顔など気にすることなくカーラは目の前に座り、とっくの昔に冷めたお茶を啜りながら言った。
「さて、お話の続きを致しましょうか」
「……なんの話でしたっけ?」
「ウフフ、私をどうかしたいんじゃありませんでした?」
「そうでしたわね。お針子の話はともかくメイドにはしたいなと改めて思いましたわ。お義姉様はあれだけ偉そうにメイドについて語られるのだからご自身がメイドになられればさぞかしご立派なことをなさられるのでしょうね」
マルグリッタは嫌味な口調で咎めるように言ったのだが、カーラはその問い掛けに対して答えをはぐらかすばかりであった。
「どうでしょう?」
その言葉を聞いたマルグリッタはわなわなと震えていた。小動物のような可愛らしい顔が醜く歪んでいく。
これこそが祖父が言っていた本性というものであるかもしれない。
屈辱に震えるマルグリッタに対してカーラは余裕のある表情を見せていた。その姿を見て苛立ったのか、マルグリッタは客間の机を蹴り飛ばし、席から勢いよく立ち上がったのであった。
息を荒げながらマルグリッタは人差し指をカーラに向かって突き刺し、プルプルと震わせながら叫ぶ。
「お、覚えていなさい!この私をコケにしたことを絶対に後悔させてやるんだからッ!」
「あら、もうよろしいのですの?」
カーラがとぼけた口調で問い掛けた。
「つ、続きの交渉は明日行いますわ!今日はもうそんな気分じゃありませんの!」
マルグリッタは捨て台詞を吐いだかと思うと、顔を真っ赤にしてその場から立ち去っていった。
カミラは主人の仇を取らんとばかりに目を針のように細めてガーラを睨み付けたかと思うと、そのままマルグリッタの後を追っていく。
カミラが立ち去った後でこの家のメイドが現れた。
「……本日の交渉はここまでです。本日は部屋にお帰りになりますよう」
「では、そうさせていただきますわ。案内していただけて?レイラさん」
敢えて名前を言うことで逆らえないようにしておいたのであった。
レイラと呼ばれたメイドはロングのエンプロンドレスの裾を思いっきり掴み、手を震わせながら首を縦に動かす。
だが、案内する間際に「人面獣心」と吐き捨てるのだけは忘れなかった。大したものである。よく証拠もないのに人に向かって悪口を叩けるものだ。
ここまでくると感心してしまう。荷物を持ちながらレイラに付いていき、カーラは案内された客間へと辿り着いた。
大きなベッドに広い机と小さな椅子の他に衣装ダンスやシューズクローゼットなどの身支度を整えるものが全て置かれている巨大な着替えスペースが置いてあった。カーラは荷物を置いて、ベッドの上に勢いよく腰を掛けた。
そのまま立ち去ろうとするレイラに向かってカーラは少しばかり嫌味な口調で問い掛けた。
「あら、お待ちになって……あなたの口からお夕食の時間とお風呂の時間を聞いていませんでしたわ」
「……食事はこちらにお持ち致します。お風呂は夜の方に入ってください」
「あら、お客人だというのにあなた方よりも先にお風呂に入ってはいけないの?」
「偉そうに言いやがって、そうした陰湿な手口でお嬢様を虐めてきたんだろ」
メイドの堪忍袋の尾が切れたのだろう。対等な口調でカーラに向かって文句を言った。
「……質問に答えてくださいな。なぜ私が先にお風呂に入ってはいけないのかをお教え願いたいのだけれど」
メイドはその言葉を聞いても何も言わずに客室の鍵だけを放り投げて、部屋を去っていく。大方最低限の世話しか見ないことでマルグリッタに対して復讐を果たしたつもりでいるのだろう。
使用人よりも後の風呂に入れることで自分に屈辱を味合わせているつもりでいるのだ。もちろん屈辱的ではあるが、駆除人としては堂々と夜に出歩いても不思議に思われない口実を手に入れられた。『災い転じて福となす』という言葉は今のような状況の時にいうのだろう。
カーラは頭の中でベッドの上で大の字になりながらひとまずは体を休めていく。
駆除は夜のなのだ。それまではゆっくりと休んでも罰は当たるまい。
カーラは寝息を立ててベッドの上で眠り始めた。
あの日診療所を訪れたヒューゴは真剣な顔を浮かべながらカーラに向かって告げた。
用意した熱めのお茶にも口を付けなかったことから深刻に悩んでいたことは明白である。それでも重く閉ざされていたはずの口が開いたのはそれだけ切羽詰まった依頼であったからだろう。
ヒューゴはカーラの目を強く見つめて言った。
「……お願いがあります。プラフティー公爵家の私兵の隊長であるオーウェンと執事のベンジー。この両名を駆除していただけないでしょうか?」
「ベンジーさんとオーウェンさんを?」
「えぇ、この二人……相当な悪でしてね。二人で組んで麻薬商売を行っているんですよ」
その言葉を聞いてカーラの背筋が凍った。確かにこれまで血の繋がらない妹ばかりを贔屓してきたが、それでも令嬢として接してこられた期間の方が多く、その時までは悪い印象を持ってこなかったせいか、根は善人だと信じていた節があった。それ故にヒューゴから発せられた言葉に対してのカーラの衝撃は大きかった。
「依頼を行ったのはとある商店の店主です。商店といってもあんたが贔屓してる菓子屋さんみたいに大きな店のものですよ。それでも復讐の資金を貯めるのに三年もかかってしまったみたいで、つい先日にようやくギルドマスターに前金を手渡したということらしいです」
ヒューゴはそう言って机の上に二十枚ばかりの金貨を置いた。
金貨一枚でも相当楽な生活ができるのだ。これだけの金額があれば当分は食べるものに困らないどころか、復讐のために稼いでいる資金にも大きく影響が出るだろう。小さな店の店主だというが事件の後に死ぬつもりで働き、店を大きくしてこのような金を作り上げたに違いない。全ては一念からだ。
そう考えると手に取った金貨が妙に重く感じられた。
依頼を受諾した理由としては店主の一念に敬意を表したこともあったが、今回の相手が自身の復讐対象者である義妹や両親と同じく公爵家の人間であるということも大いに影響していた。
両親や義妹を討つ前の小手調べとしてもちょうどいいではないか。
カーラはそれらの理由から躊躇う様子も見せずに金貨を自身の財布の中へと仕舞い込む。
ただし、全ての金貨を仕舞い込んだのではない。何枚かの金貨をレキシーに渡す。
「おや、どうしてあたしに渡すんだい?」
「今回の駆除はレキシーさんに協力していただきたいんですの。自分の生まれ育った家だからこそ公爵家の警備が固いことも知っておりますの。私の針ではお二方のうちのどちらかが限界ですの。もう片方を仕留めるためにレキシーさんの毒薬が必要だとお思いまして」
「そういうことなら受け取っておくよ。あたしの毒薬が必要なんだね」
カーラは首を縦に振った。レキシーはそれを見て早速毒薬の精製へと取り掛かっていく。おそらく明日の朝にはできているだろう。ヒューゴは金貨を受け取ったカーラの目をじっくりと見据えた後に丁寧に頭を下げて言った。
「……どうかお気を付けて」
「お任せください。私が必ずこの国を巣食う闇を打ち払ってみせますわ」
カーラは元気よく自身の胸を叩いてみせた。レキシーに作ってもらった毒薬は普通の粉薬に見せかけて持ってきた旅行鞄の中にしまってある。万が一に見られたとしても問題はない。
護身用の針は着替える際に袖から抜き取り、カミラが手渡した畳まれた服の中に隠しており、着替え終わるのと同時に床に落ちた針を拾って袖の中に隠す算段となっている。今のところ問題は起きていない。
カーラは落ちた針を拾い上げながら思った。準備は完了であり、いつでも駆除を執行できる、と。そんな思いを抱えながらカーラは後ろめたさを感じることもなく堂々と用意された部屋の中へと戻っていったのである。
部屋の中には忌々しそうな表情を浮かべたマルグリッタの姿が見えた。
マルグリッタの怒る顔など気にすることなくカーラは目の前に座り、とっくの昔に冷めたお茶を啜りながら言った。
「さて、お話の続きを致しましょうか」
「……なんの話でしたっけ?」
「ウフフ、私をどうかしたいんじゃありませんでした?」
「そうでしたわね。お針子の話はともかくメイドにはしたいなと改めて思いましたわ。お義姉様はあれだけ偉そうにメイドについて語られるのだからご自身がメイドになられればさぞかしご立派なことをなさられるのでしょうね」
マルグリッタは嫌味な口調で咎めるように言ったのだが、カーラはその問い掛けに対して答えをはぐらかすばかりであった。
「どうでしょう?」
その言葉を聞いたマルグリッタはわなわなと震えていた。小動物のような可愛らしい顔が醜く歪んでいく。
これこそが祖父が言っていた本性というものであるかもしれない。
屈辱に震えるマルグリッタに対してカーラは余裕のある表情を見せていた。その姿を見て苛立ったのか、マルグリッタは客間の机を蹴り飛ばし、席から勢いよく立ち上がったのであった。
息を荒げながらマルグリッタは人差し指をカーラに向かって突き刺し、プルプルと震わせながら叫ぶ。
「お、覚えていなさい!この私をコケにしたことを絶対に後悔させてやるんだからッ!」
「あら、もうよろしいのですの?」
カーラがとぼけた口調で問い掛けた。
「つ、続きの交渉は明日行いますわ!今日はもうそんな気分じゃありませんの!」
マルグリッタは捨て台詞を吐いだかと思うと、顔を真っ赤にしてその場から立ち去っていった。
カミラは主人の仇を取らんとばかりに目を針のように細めてガーラを睨み付けたかと思うと、そのままマルグリッタの後を追っていく。
カミラが立ち去った後でこの家のメイドが現れた。
「……本日の交渉はここまでです。本日は部屋にお帰りになりますよう」
「では、そうさせていただきますわ。案内していただけて?レイラさん」
敢えて名前を言うことで逆らえないようにしておいたのであった。
レイラと呼ばれたメイドはロングのエンプロンドレスの裾を思いっきり掴み、手を震わせながら首を縦に動かす。
だが、案内する間際に「人面獣心」と吐き捨てるのだけは忘れなかった。大したものである。よく証拠もないのに人に向かって悪口を叩けるものだ。
ここまでくると感心してしまう。荷物を持ちながらレイラに付いていき、カーラは案内された客間へと辿り着いた。
大きなベッドに広い机と小さな椅子の他に衣装ダンスやシューズクローゼットなどの身支度を整えるものが全て置かれている巨大な着替えスペースが置いてあった。カーラは荷物を置いて、ベッドの上に勢いよく腰を掛けた。
そのまま立ち去ろうとするレイラに向かってカーラは少しばかり嫌味な口調で問い掛けた。
「あら、お待ちになって……あなたの口からお夕食の時間とお風呂の時間を聞いていませんでしたわ」
「……食事はこちらにお持ち致します。お風呂は夜の方に入ってください」
「あら、お客人だというのにあなた方よりも先にお風呂に入ってはいけないの?」
「偉そうに言いやがって、そうした陰湿な手口でお嬢様を虐めてきたんだろ」
メイドの堪忍袋の尾が切れたのだろう。対等な口調でカーラに向かって文句を言った。
「……質問に答えてくださいな。なぜ私が先にお風呂に入ってはいけないのかをお教え願いたいのだけれど」
メイドはその言葉を聞いても何も言わずに客室の鍵だけを放り投げて、部屋を去っていく。大方最低限の世話しか見ないことでマルグリッタに対して復讐を果たしたつもりでいるのだろう。
使用人よりも後の風呂に入れることで自分に屈辱を味合わせているつもりでいるのだ。もちろん屈辱的ではあるが、駆除人としては堂々と夜に出歩いても不思議に思われない口実を手に入れられた。『災い転じて福となす』という言葉は今のような状況の時にいうのだろう。
カーラは頭の中でベッドの上で大の字になりながらひとまずは体を休めていく。
駆除は夜のなのだ。それまではゆっくりと休んでも罰は当たるまい。
カーラは寝息を立ててベッドの上で眠り始めた。
0
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿の両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!
平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。
「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」
その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……?
「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」
美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる