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第二章『王国を覆う影?ならば、この私が取り除かせていただきますわ』
『マーモ』を覆う影を取り払って
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「大丈夫かい?カーラ?」
レキシーが慌ててカーラの元へと寄っていく。
「えぇ、平気ですわ。それよりもあの方々がわざわざ警告に訪れるだなんて予想外でしたわ」
「あぁ、まさかこんな大勢の人が来てるところであんたに掴み掛かるとはね……あたしも考えなかったよ」
二人が黙って顔を合わせていると、厨房から騒ぎを聞き付けたメイソンが慌てて二人の元へと駆け寄っていく。
「大丈夫でしたか?娘がひどい真似をしてしまって……本当に申し訳ありません」
「いいえ、お気になさらず……それよりも娘さんがあのようになられてしまった理由をお聞かせ願えませんか?」
「……娘の存在が可愛くてね。私もマリーもつい甘やかしてしまったのです。最初は可愛いものでした。けれど、徐々に変貌していきましてね。彼女は自分の思い通りにならないことはないと思うようになりました。増長し、悪い男たちとつるむようになりました。そればかりか、私たちに暴力まで……」
メイソンの手が震えている。余程の事情があるに違いない。二人は敢えて詮索することはなくメイソンにフルコースの続きを懇願した。
メイソンは呆気に取られたような表情を浮かべていたが、厨房へと戻っていく。
レキシーは料理が来るまでの暇を潰すためにワインが入ったグラスを揺らしながらカーラに問い掛けた。
「そういえばさっき、いつぞやの『這いつくばり姫』の劇の時に見せた義理の姉みたいなことをあいつに言ってたけど、あれはどうしてだい?」
「あぁ、その件ですか……それは彼女に気が変わらせないようにさせるためですよ」
「成る程、あんたも策士だねぇ」
レキシーは口元を怪しげな笑みで歪めていく。カーラは例の襲撃で完全にスローンを仕留める気でいるのだ。その計画を狂わせてはならない。そうした執念があのような『這いつくばり姫』に登場する義理の姉のような表情を作り出し、台詞を喋らせたのだろう。
レキシーはカーラが魅せる演技力に感心していた。
その後で魚料理を片付け、肉料理を待っている間に酒を飲みながら話し合いを行なっていく。
肉料理が来てからはメインとして使われた鹿のステーキをフォークとナイフで切り刻みながら、デザートとしてプリンなる新作のスイーツが来た時も二人は真剣な顔を引っ込めなかった。最後に茶が運ばれて二人で茶を啜っていく。茶の葉は中々いいものを使っており二人は肩の力を抜くことができた。
二人で料理を平らげると扉を出てレストランの門を出て二人で夜の街を並んで歩いていく。城下町というのは騒がしい場所以外は死んだように静まり返っている街である。二人で襲撃の準備を話すのにはちょうどいい場所であった。
二人で襲撃の準備を話し合いながら家へと向かう。その後は身支度を整えて体を休めるだけであったが、どことなく眠れない。囮といえども自分が酷い目に遭うかもしれないからだろうか。
このようなことを考えるとは自分の心も弱くなったものだ。カーラは苦笑しながらベッドの中で寝返りを打っていた。
翌日はヒューゴとギークを招いての最終的な打ち合わせが行われ、予想される襲撃に備えるを整えていく。
翌日家を出る時もカーラは少しばかり足が震えていた。緊張の中で自宅から診療所へ向かおう時だ。同行していたヒューゴからカーラの耳を疑うようなニュースが飛び込んできた。
「な、なんですって!?メイソンさんが!?」
「……そうなんですよ。メイソンさんが昨日に急死したとかで……」
「死因はなんなんだい?」
「昨日勤務終了後に自宅で召使いと晩酌していた時に発作を起こされたみたいで……」
スローンの仕業だ。間違いない。表向きは発作になっているものの、例の毒薬を使ってメイソンを殺したに違いない。だが、どういった動機でメイソンを始末したのかはカーラには理解できなかった。
いずれにせよ実の親ですら手に掛けることを躊躇しない化け物が自分たちの元に襲い掛かっくるのだ。
用心しなくてはなるまい。カーラは今日も服の袖の中に針を仕込んでおり、いざとなればすぐにスローンを始末できる準備ができた。
カーラはその日の診察が終了するまでは平穏な時間を過ごすことになっている。だが、いつでも襲撃があるのだと身構えなければならないのは疲れた。
その日最後の患者の診察が終了し、レキシーと共に診療所を出た時だ。周りを屈強な男性に囲まれてしまう。
レキシーはその男たちに囲まれて入ってこれられない状態にある。
想定内である。それでもカーラは気弱な人物の振りをしなくてはならなかった。
「な、なんなんですの!あなた方は!?」
だが、男はカーラの疑問には答えてくれなかった。カーラの腹に向かって強烈な一撃を叩き込んで鳩尾を喰らわせ、カーラを強制的に昏睡へと追い込んだのであった。
意識を失ったカーラはそのまま男たちに担ぎ上げられながらどこかへと連れ去られることになった。
というのは表向きの話である。実際のところカーラは昏睡などしていなかった。
にわか仕込みとはいえカーラは準備期間の間にギークから鳩尾を喰らった際の対処法を学び、しっかりとその意識を保っていたのである。鳩尾の瞬間に腹を引っ込めた振りをして悲鳴を上げることで鳩尾を喰らった振りをして倒れる真似をする。これだけで十分なのだ。
カーラは薄っすらと目を開けながら背後から仲間たちがつけていることを確認する。物陰で待機していたヒューゴとギークは動き始め、物陰からこっそりと男たちの後をつけてきていた。
レキシーも悲しむ振りをしながら診療所を離れてから二人に合流して後をつけてきている。
カーラは目的地に着くまでの間こっそりと尾行を続ける三人の仲間の姿を見ながら安堵の笑みを浮かべた。
連れ去られた先は郊外の空き家。スローンが根城にしているごろつきたちの溜まり場であった。カーラたちからすれば準備期間中に逆尾行や逆追跡で幾度も足を運んだ場所である。
カーラは入り口の近くで降ろされ、乱暴に体を引っ張り上げられるとそのまま突き飛ばされるように歩かされたのであった。
「痛いですわ。何をなさいますの?」
「黙れッ!この家の中にお前の義理の娘となるスローンがいるんだ。最後に挨拶くらいしろ」
男によって乱暴に突き飛ばされ、家の中を歩いていくと玄関からすぐの台所とリビングを兼任していると思われる大きな部屋の中央に揺り椅子に腰を掛けるスローンの姿が見えた。武器を持ったごろつきたちに囲まれたスローンは揺り椅子の上に優雅に腰を掛けながらごろつきの一人に連れられたカーラを一瞥するとふんと鼻を鳴らした。どうやら自分の方が上だと勝利を確信したらしい。
失礼な話だ。仮に彼女が貴族の令嬢であるのならば身分を剥奪される前の自分がしっかりと躾けているに違いない。
そんなことを考えていると男の手によって背中を乱暴に突き飛ばされ、強制的に彼女の前へと押し出されてしまう。
悲鳴を上げるカーラを受け止め、その顎を持ち上げて視線を合わせると言った。
「どうだい?今の気分というのは?」
「最悪と言いようがありませんわ。どうしてこんな真似をなさいますの……私あなたと家族になりたいと思っているだけですのに」
カーラは自分でも安っぽいと思うような台詞を吐いて懇願するような真似をしてみる。
「家族?白々しいねぇ。どうせあのクソ親父の遺産目当てでしょ?でも、まぁそのクソ親父は死んだ上に遺書を探して読んでみたらあんたの名前は載っていなかったよ」
スローンは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら言った。
「私をここで殺すというのならば『冥界王の下賜品』として最後に一つだけ教えてくださいな。どうしてあなたはご自身の父親を?」
「決まってるだろ?あいつがあんたと婚約するって言っていたからさ。遺書にあんたの名前が書かれる前にクソ親父を殺してしまおうと思ってね」
「そ、そんな理由で……」
「そういうこと。まぁ、いいや。ここであんたを殺せば遺産は全部あたしのものだしーー」
「お可哀想な方」
「なんだって?」
「お可哀想な方だと仰ったんですの。確かに私はあなたのお父様に婚約を言い渡されましたが、私は辞退しておりますわ。レストランに招かれたのは突然の婚約に対するお詫びだったんですの。要するに全て空回りしておられましたの。お分かりでして?」
カーラは先程までの怯えた顔を引っ込め、両目に青白い光を浮かべながら低い声でスローンに問い掛けた。
「な、そ、そんな……」
「……そして私はあなたが私を憎んでおり、私を攫う計画を立ていることも分かった上でわざとあなたに攫われましたの」
その言葉を聞いてスローンは何か恐ろしいものでも見るかのような目でカーラを見つめていた。
「あ、あんた何者なんだい?そこまでわかっていてなんで……」
スローンは声を震わせながらカーラに問い掛けた。
その問いに対してカーラは両目を見開いて大きな声で返答した。
「私?私は駆除人ですの。あなたのような害虫を駆除するのが私の本職でしてよ」
カーラはそこで会話を打ち切り、スローンに飛び掛かったかと思うと、手早く自身の腕をスローンの首元に回して、袖の下から針を取り出してスローンの延髄に向かって勢いよく針を突き立てのであった。スローンはカーラの針を受けた瞬間に絶命し地面の上へと崩れ落ちていく。
それを見て集まっていた男たちから絶叫が上がる。全員が持っていた武器をカーラに向かって構えた時だ。
扉が蹴破られて武器を携えた三人の駆除人が流れ込み、奇襲をかけていく。
これもカーラが立てた計画通りである。攫われた後、攫われた先で男たちの怒鳴り声が聞こえれば待機していた場所から雪崩れ込み、奇襲をかけるというものであった。
それでも相手は九人である。いささか数は多いもののヒューゴやギークは難なく相手を斬り倒していく。
レキシーも短剣を巧みに用いてヒューゴやギークよりは斬る数は劣るものの、一人一人を着実に仕留めていくのであった。
自身も針を使って遠慮なくごろつきたちを片付けていく。
いくら九人のごろつきでも四人の屈強な駆除人の前には手も足も出なかったらしい。四人の駆除人が最後の一人を仕留めて家を出る時空き家からは物音一つ聴こえず静寂のみが郊外にある空き家の中で漂っていたのであった。
レキシーが慌ててカーラの元へと寄っていく。
「えぇ、平気ですわ。それよりもあの方々がわざわざ警告に訪れるだなんて予想外でしたわ」
「あぁ、まさかこんな大勢の人が来てるところであんたに掴み掛かるとはね……あたしも考えなかったよ」
二人が黙って顔を合わせていると、厨房から騒ぎを聞き付けたメイソンが慌てて二人の元へと駆け寄っていく。
「大丈夫でしたか?娘がひどい真似をしてしまって……本当に申し訳ありません」
「いいえ、お気になさらず……それよりも娘さんがあのようになられてしまった理由をお聞かせ願えませんか?」
「……娘の存在が可愛くてね。私もマリーもつい甘やかしてしまったのです。最初は可愛いものでした。けれど、徐々に変貌していきましてね。彼女は自分の思い通りにならないことはないと思うようになりました。増長し、悪い男たちとつるむようになりました。そればかりか、私たちに暴力まで……」
メイソンの手が震えている。余程の事情があるに違いない。二人は敢えて詮索することはなくメイソンにフルコースの続きを懇願した。
メイソンは呆気に取られたような表情を浮かべていたが、厨房へと戻っていく。
レキシーは料理が来るまでの暇を潰すためにワインが入ったグラスを揺らしながらカーラに問い掛けた。
「そういえばさっき、いつぞやの『這いつくばり姫』の劇の時に見せた義理の姉みたいなことをあいつに言ってたけど、あれはどうしてだい?」
「あぁ、その件ですか……それは彼女に気が変わらせないようにさせるためですよ」
「成る程、あんたも策士だねぇ」
レキシーは口元を怪しげな笑みで歪めていく。カーラは例の襲撃で完全にスローンを仕留める気でいるのだ。その計画を狂わせてはならない。そうした執念があのような『這いつくばり姫』に登場する義理の姉のような表情を作り出し、台詞を喋らせたのだろう。
レキシーはカーラが魅せる演技力に感心していた。
その後で魚料理を片付け、肉料理を待っている間に酒を飲みながら話し合いを行なっていく。
肉料理が来てからはメインとして使われた鹿のステーキをフォークとナイフで切り刻みながら、デザートとしてプリンなる新作のスイーツが来た時も二人は真剣な顔を引っ込めなかった。最後に茶が運ばれて二人で茶を啜っていく。茶の葉は中々いいものを使っており二人は肩の力を抜くことができた。
二人で料理を平らげると扉を出てレストランの門を出て二人で夜の街を並んで歩いていく。城下町というのは騒がしい場所以外は死んだように静まり返っている街である。二人で襲撃の準備を話すのにはちょうどいい場所であった。
二人で襲撃の準備を話し合いながら家へと向かう。その後は身支度を整えて体を休めるだけであったが、どことなく眠れない。囮といえども自分が酷い目に遭うかもしれないからだろうか。
このようなことを考えるとは自分の心も弱くなったものだ。カーラは苦笑しながらベッドの中で寝返りを打っていた。
翌日はヒューゴとギークを招いての最終的な打ち合わせが行われ、予想される襲撃に備えるを整えていく。
翌日家を出る時もカーラは少しばかり足が震えていた。緊張の中で自宅から診療所へ向かおう時だ。同行していたヒューゴからカーラの耳を疑うようなニュースが飛び込んできた。
「な、なんですって!?メイソンさんが!?」
「……そうなんですよ。メイソンさんが昨日に急死したとかで……」
「死因はなんなんだい?」
「昨日勤務終了後に自宅で召使いと晩酌していた時に発作を起こされたみたいで……」
スローンの仕業だ。間違いない。表向きは発作になっているものの、例の毒薬を使ってメイソンを殺したに違いない。だが、どういった動機でメイソンを始末したのかはカーラには理解できなかった。
いずれにせよ実の親ですら手に掛けることを躊躇しない化け物が自分たちの元に襲い掛かっくるのだ。
用心しなくてはなるまい。カーラは今日も服の袖の中に針を仕込んでおり、いざとなればすぐにスローンを始末できる準備ができた。
カーラはその日の診察が終了するまでは平穏な時間を過ごすことになっている。だが、いつでも襲撃があるのだと身構えなければならないのは疲れた。
その日最後の患者の診察が終了し、レキシーと共に診療所を出た時だ。周りを屈強な男性に囲まれてしまう。
レキシーはその男たちに囲まれて入ってこれられない状態にある。
想定内である。それでもカーラは気弱な人物の振りをしなくてはならなかった。
「な、なんなんですの!あなた方は!?」
だが、男はカーラの疑問には答えてくれなかった。カーラの腹に向かって強烈な一撃を叩き込んで鳩尾を喰らわせ、カーラを強制的に昏睡へと追い込んだのであった。
意識を失ったカーラはそのまま男たちに担ぎ上げられながらどこかへと連れ去られることになった。
というのは表向きの話である。実際のところカーラは昏睡などしていなかった。
にわか仕込みとはいえカーラは準備期間の間にギークから鳩尾を喰らった際の対処法を学び、しっかりとその意識を保っていたのである。鳩尾の瞬間に腹を引っ込めた振りをして悲鳴を上げることで鳩尾を喰らった振りをして倒れる真似をする。これだけで十分なのだ。
カーラは薄っすらと目を開けながら背後から仲間たちがつけていることを確認する。物陰で待機していたヒューゴとギークは動き始め、物陰からこっそりと男たちの後をつけてきていた。
レキシーも悲しむ振りをしながら診療所を離れてから二人に合流して後をつけてきている。
カーラは目的地に着くまでの間こっそりと尾行を続ける三人の仲間の姿を見ながら安堵の笑みを浮かべた。
連れ去られた先は郊外の空き家。スローンが根城にしているごろつきたちの溜まり場であった。カーラたちからすれば準備期間中に逆尾行や逆追跡で幾度も足を運んだ場所である。
カーラは入り口の近くで降ろされ、乱暴に体を引っ張り上げられるとそのまま突き飛ばされるように歩かされたのであった。
「痛いですわ。何をなさいますの?」
「黙れッ!この家の中にお前の義理の娘となるスローンがいるんだ。最後に挨拶くらいしろ」
男によって乱暴に突き飛ばされ、家の中を歩いていくと玄関からすぐの台所とリビングを兼任していると思われる大きな部屋の中央に揺り椅子に腰を掛けるスローンの姿が見えた。武器を持ったごろつきたちに囲まれたスローンは揺り椅子の上に優雅に腰を掛けながらごろつきの一人に連れられたカーラを一瞥するとふんと鼻を鳴らした。どうやら自分の方が上だと勝利を確信したらしい。
失礼な話だ。仮に彼女が貴族の令嬢であるのならば身分を剥奪される前の自分がしっかりと躾けているに違いない。
そんなことを考えていると男の手によって背中を乱暴に突き飛ばされ、強制的に彼女の前へと押し出されてしまう。
悲鳴を上げるカーラを受け止め、その顎を持ち上げて視線を合わせると言った。
「どうだい?今の気分というのは?」
「最悪と言いようがありませんわ。どうしてこんな真似をなさいますの……私あなたと家族になりたいと思っているだけですのに」
カーラは自分でも安っぽいと思うような台詞を吐いて懇願するような真似をしてみる。
「家族?白々しいねぇ。どうせあのクソ親父の遺産目当てでしょ?でも、まぁそのクソ親父は死んだ上に遺書を探して読んでみたらあんたの名前は載っていなかったよ」
スローンは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら言った。
「私をここで殺すというのならば『冥界王の下賜品』として最後に一つだけ教えてくださいな。どうしてあなたはご自身の父親を?」
「決まってるだろ?あいつがあんたと婚約するって言っていたからさ。遺書にあんたの名前が書かれる前にクソ親父を殺してしまおうと思ってね」
「そ、そんな理由で……」
「そういうこと。まぁ、いいや。ここであんたを殺せば遺産は全部あたしのものだしーー」
「お可哀想な方」
「なんだって?」
「お可哀想な方だと仰ったんですの。確かに私はあなたのお父様に婚約を言い渡されましたが、私は辞退しておりますわ。レストランに招かれたのは突然の婚約に対するお詫びだったんですの。要するに全て空回りしておられましたの。お分かりでして?」
カーラは先程までの怯えた顔を引っ込め、両目に青白い光を浮かべながら低い声でスローンに問い掛けた。
「な、そ、そんな……」
「……そして私はあなたが私を憎んでおり、私を攫う計画を立ていることも分かった上でわざとあなたに攫われましたの」
その言葉を聞いてスローンは何か恐ろしいものでも見るかのような目でカーラを見つめていた。
「あ、あんた何者なんだい?そこまでわかっていてなんで……」
スローンは声を震わせながらカーラに問い掛けた。
その問いに対してカーラは両目を見開いて大きな声で返答した。
「私?私は駆除人ですの。あなたのような害虫を駆除するのが私の本職でしてよ」
カーラはそこで会話を打ち切り、スローンに飛び掛かったかと思うと、手早く自身の腕をスローンの首元に回して、袖の下から針を取り出してスローンの延髄に向かって勢いよく針を突き立てのであった。スローンはカーラの針を受けた瞬間に絶命し地面の上へと崩れ落ちていく。
それを見て集まっていた男たちから絶叫が上がる。全員が持っていた武器をカーラに向かって構えた時だ。
扉が蹴破られて武器を携えた三人の駆除人が流れ込み、奇襲をかけていく。
これもカーラが立てた計画通りである。攫われた後、攫われた先で男たちの怒鳴り声が聞こえれば待機していた場所から雪崩れ込み、奇襲をかけるというものであった。
それでも相手は九人である。いささか数は多いもののヒューゴやギークは難なく相手を斬り倒していく。
レキシーも短剣を巧みに用いてヒューゴやギークよりは斬る数は劣るものの、一人一人を着実に仕留めていくのであった。
自身も針を使って遠慮なくごろつきたちを片付けていく。
いくら九人のごろつきでも四人の屈強な駆除人の前には手も足も出なかったらしい。四人の駆除人が最後の一人を仕留めて家を出る時空き家からは物音一つ聴こえず静寂のみが郊外にある空き家の中で漂っていたのであった。
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