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交流編
試合に向けての第一歩
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ルイーザが鼻を鳴らしながら校舎を後にしていた時のことだ。不意に路地裏から見慣れない男たちが現れたのだ。
「な、何よ!あんたたちは!」
ルイーザは咄嗟に現れた男たちに向かって叫んだが、周りが雨だということもありその音にルイーザの悲鳴はかき消されてしまう。周りを黒いスーツを着た男たちが囲んでいたのだ。黒い中折れ帽を被り、黒い眼鏡まで掛けている姿はひどく不気味に思えた。
思わずルイーザが後退りをすると、それに合わせるかのように男たちも距離を詰めてくるのだ。助けを求めようにも人通りや車の往来があまりない寂しい場所であるということも重なって助けは来そうになかった。今まさにルイーザは絶望的な状況へと追い込まれていたのだ。そのことを察してルイーザが青い顔を浮かべていると、突然男たちが懐から拳銃を取り出した。
自動式のオートマチック型の拳銃である。おまけに銃口には消音器いわゆるサプレッサーが付いている。彼らが今ここで引き金に手を掛けたとしてもギリギリまで使用した歯磨き粉が入ったチューブの入り口からようやく微量な歯磨き粉が出てきたくらいの音しか生じないと聞いた。
死を突きつけられたルイーザの顔は死人のような青い顔を浮かべていた。そればかりではない。両足や全身を震わせ、歯をガタガタと鳴らすといった普段ならば見せることがないような醜態も見せていたのだ。
人間というのは自身の死が差し迫った際にようやくその本性を露わにするという言葉を聞いたことがあるが、今のルイーザはまさしくその状況にあった。
そこまで悟った時にルイーザの脳裏にこれまでの人生が唐突に思い起こされていく。これまでルイーザの人生を振り返ってみれば舞踏に全てを注いできたといってもいい。
大抵の魔法に芽生えた人たちは魔法を攻撃用或いは護身用のものとして磨き上げていく。中には学習の過程で別の魔法を見つけ、それと組み合わせたり、あるいは状況に応じて使い分けることによって更に自身の力を高めていく人物もいる。
ルイーザからすれば一文字違いの武道部門の選手であるルイーダがそのいい例であった。
そうした理由から魔法を磨いている多くの魔法使いたちをルイーザは心の奥底で見下ろしてきた気持ちがあるのも事実だ。せっかくの魔法を芸術ではなく、戦闘に向けるなど愚の骨頂だ。ずっとそう思ってきていた。
だが、人生においては何が起こるかわからない。そんな降り掛かる火の粉を振り払うことができる術を自分は研究してこなかったのは事実だ。そして、今はそのツケを払う時が来ている。
ルイーザは頭の中で自らが今死ぬ理由をそのように結論付けたのだが、それでも勝ったのは生への執着だった。当然だ。ルイーザはあくまでも「選手」であってルイーダたちのような「戦士」ではないのだ。
ルイーザは近くにいた男に対して勢いよくぶつかり、体当たりを喰らわせた。その隙を突いて転倒させてからは一気にその場を駆け出す。それから大声を張り上げながら周囲に向かって助けを求める声を出していく。大雨で声が隠れることなど分かっていたが、それでも本能がそう訴え掛けていたのだ。
男たちはルイーザの咄嗟の行動に対して驚きを隠せない様子であったが、すぐに標的に向けて拳銃を構えていく。
彼らからすれば元々ルイーザは抹殺対象なのだ。そのやり方が少し変わっただけに過ぎない。それ故に彼らは躊躇なく引き金を引こうとした。その時だ。
「いけないなぁ、レディに向かってそんな物騒なものを向けるだなんて」
と、凛とした声が聞こえた。それでいて透き通った綺麗な声だ。
かと思うと、男の首元に鋭利な刃物が突き付けられていた。男が慌てて周りを見渡すと、彼の仲間は全て倒れ伏していた。仰向けであったり、うつ伏せであったりとそれぞれ向きを変えながらも血を流して起き上がろうとしないのは事実だ。
男は哀れな末路を辿った仲間たちを見た後で、もう一度自身の首元に向かって剣を突き付けているここで抵抗の意思を見せれば自身も目の前に突きつけられている剣を引かれ、地面の上に転がっている仲間たちと同様の末路を辿ることになるだろう。
男は観念したものの、心まで屈する必要はないと判断したことが所以だ。
声を張り上げて脅迫者に問い掛けた。
「な、何者だ?貴様は?」
「私か?私はルイーダ。ルイーダ・メルテロイ。ガレリア国の騎士だ」
脅迫者は予想よりも寛大であったらしい。男の無礼な態度に怒るどころか、質問に対して丁寧に答えてまでくれたのだ。
「ルイーダ?そうか、同志がお話しされていたルイーダというのはお前なのか!?」
目の前に予想外の相手が現れてしまったという事実に思わず、男は口を滑らせてしまったらしい。言葉を発した後で「あっ」とした表情で固まるのをルイーダは目撃した。
剣を用いた尋問を行った甲斐もあったというものだ。男の口ぶりから察するに男は「同志」とやらの口伝でルイーダの情報を既に仕入れていたらしい。
引っかかるのはその「同志」なる人物だ。「同志」がこの男たちを操っているのは明白である。問題はその「同志」がどこの国の人物であるかということだ。そのことさえ割り出せば毅然とした対応を取ることもできるだろう。
ルイーダがもう一度脅しを掛けようとした時のことだ。
不意に男の体が前倒しになり、ルイーダの肩へと寄り掛かってきたのだ。嫌な予感がした。ルイーダが慌てて男の顔からサングラスを外すと、すっかりと青くなった男の顔が見えた。特徴のない地味な顔立ちの男であったが、それでも死の間際においては特徴を見せるらしい。
「アカンベー」とみっともなく舌を出していたのだ。口からはみ出た赤い舌が印象的に思えた。
ルイーダは息絶えた男の体を優しく地面の上へと下ろしてやり、軽い死体見聞を行なっていく。
勿論、ルイーダはその道のプロではない。それでも騎士として相応の経験はある。自信はあった。結論としては簡単な死体見聞のみであったが、大まかな死因は判明した。死因は背中からの銃弾であった。恐らく男の仲間がこれ以上男の口から機密が漏れることを恐れ、男の口を封じたのだろう。男の着ていたスーツを貫き、心臓を撃ち抜いていた。
ルイーダは失敗した者に対して容赦のない制裁を下す組織に怒りを覚え、舌を打った。同時に敵対する組織の大きさというものを感じさせられた。
いくら失敗を行ったといっても小規模な組織ではそう簡単に粛清できないというのが事情だろう。そこを考えると、一筋縄ではいかなさそうだ。ルイーダは思わず身震いをしてしまった。
こうしてルイーダの中をほんの僅かな時間ではあったものの、恐怖の感情が支配した後に芽生えたのは冷たくなった敵たちに対する憐憫の情であった。
いかなる事情があったにしろ、この男とルイーダが敵対していたことには変わらない。
だが、死の世界へと旅立てばその罪を憎む気持ちも薄れるというものだ。ましてや騎士と騎士の間には試合や戦場では敵同士でも関係のないところで付き合う分には同じ「騎士」というしがらみでしか縛られることがない。その上死人には敬意を払えとも習ってきた。
ルイーダは己の判断に従ってその男のみならずルイーザを襲っていた男たちを丁寧に埋葬してやることにした。
もっともルイーダが仮死薬で眠る前の竜歴元年の頃であったのならばともかく、今の時勢で勝手に埋葬を行うことは許されない。
ルイーダはやむを得ず近くの公衆電話から警察を呼ぶことになったのであった。
北の国の支部にて支部長を務めるパーロブ・ボブ・サルポーという男の特徴は哲学者、そして国家的に知られる文学者という表向きの顔を除けば分厚い四角い形をした眼鏡だろう。人々が思い描くようなエリートが掛けるような眼鏡を実際に掛け、絹で織られたスーツを着用しているサルポーは庶民が思い描くエリートの格好を体現していたといってもいい。
靴は海外から仕入れた質の良いものであり、手入れも欠かしていない。今でも革の表面は買ったばかりの時のようにピカピカと光っている。髪も七三分けに整えられているばかりではなく、ワックスまでも塗られた本格的なものだ。
そして何よりも庶民たちの羨望を集めるのは彼の取る食事が全てレストランであるということだろう。
表向きの顔は哲学者であり、国家的に知られた文学者なので印税という収入は馬鹿にできなかった。
現に今日も自らの表家業を潤うすために本屋から取り寄せた難しい哲学書を読み終え、サルポーは市の中央にできた高級レストランで一人舌鼓を打っていた。
ランチメニューとして自らが注文した牛肉の赤ワイン煮にナイフを入れようとした時だ。
目の前から不意に目の前に別のフォークが現れ、サルポーの肉を掻っ攫ったのであった。
「……キミかね?レオジーナ」
「フッ、わかってるくせに」
瞬間移動の魔法を使ってこの場に現れたレオジーナは悪びれる様子も見せず、口の中いっぱいに頬張った肉を噛みながら言った。
「まぁ、いい。それよりも、だ。ガレリアの方はどうだ?」
「あー、ダメだ。あの女、予想より強いぜ……こりやぁ、出場を辞退させるのは至難の技だなぁ」
レオジーナはどこか他人事のような口調だった。実際レオジーナからすればこの一件は他人事に過ぎないのかもしれない。
だが、サルポーは違う。今回の任務にしくじることがあれば自身は党本部から粛清させれてしまうのだ。それ故に命懸けなのだ。
そのことを再度訴えたのだが、レオジーナからの返答は軽いものであった。
「大丈夫、大丈夫、試合ならば絶対に負けねーからよ」
「だが、キミは一度その女に負けたのだろう?そんな男の言葉を信用できるかな?」
向かい側の席から鋭い目で睨み付けてくるサルポーに対してレオジーナは余裕を含んだ態度を見せていた。
「大丈夫だって、試合ならば工作できるだろ?」
レオジーナの目が怪しく光る。サルポーはそれを見て満足げに頷いた。
「な、何よ!あんたたちは!」
ルイーザは咄嗟に現れた男たちに向かって叫んだが、周りが雨だということもありその音にルイーザの悲鳴はかき消されてしまう。周りを黒いスーツを着た男たちが囲んでいたのだ。黒い中折れ帽を被り、黒い眼鏡まで掛けている姿はひどく不気味に思えた。
思わずルイーザが後退りをすると、それに合わせるかのように男たちも距離を詰めてくるのだ。助けを求めようにも人通りや車の往来があまりない寂しい場所であるということも重なって助けは来そうになかった。今まさにルイーザは絶望的な状況へと追い込まれていたのだ。そのことを察してルイーザが青い顔を浮かべていると、突然男たちが懐から拳銃を取り出した。
自動式のオートマチック型の拳銃である。おまけに銃口には消音器いわゆるサプレッサーが付いている。彼らが今ここで引き金に手を掛けたとしてもギリギリまで使用した歯磨き粉が入ったチューブの入り口からようやく微量な歯磨き粉が出てきたくらいの音しか生じないと聞いた。
死を突きつけられたルイーザの顔は死人のような青い顔を浮かべていた。そればかりではない。両足や全身を震わせ、歯をガタガタと鳴らすといった普段ならば見せることがないような醜態も見せていたのだ。
人間というのは自身の死が差し迫った際にようやくその本性を露わにするという言葉を聞いたことがあるが、今のルイーザはまさしくその状況にあった。
そこまで悟った時にルイーザの脳裏にこれまでの人生が唐突に思い起こされていく。これまでルイーザの人生を振り返ってみれば舞踏に全てを注いできたといってもいい。
大抵の魔法に芽生えた人たちは魔法を攻撃用或いは護身用のものとして磨き上げていく。中には学習の過程で別の魔法を見つけ、それと組み合わせたり、あるいは状況に応じて使い分けることによって更に自身の力を高めていく人物もいる。
ルイーザからすれば一文字違いの武道部門の選手であるルイーダがそのいい例であった。
そうした理由から魔法を磨いている多くの魔法使いたちをルイーザは心の奥底で見下ろしてきた気持ちがあるのも事実だ。せっかくの魔法を芸術ではなく、戦闘に向けるなど愚の骨頂だ。ずっとそう思ってきていた。
だが、人生においては何が起こるかわからない。そんな降り掛かる火の粉を振り払うことができる術を自分は研究してこなかったのは事実だ。そして、今はそのツケを払う時が来ている。
ルイーザは頭の中で自らが今死ぬ理由をそのように結論付けたのだが、それでも勝ったのは生への執着だった。当然だ。ルイーザはあくまでも「選手」であってルイーダたちのような「戦士」ではないのだ。
ルイーザは近くにいた男に対して勢いよくぶつかり、体当たりを喰らわせた。その隙を突いて転倒させてからは一気にその場を駆け出す。それから大声を張り上げながら周囲に向かって助けを求める声を出していく。大雨で声が隠れることなど分かっていたが、それでも本能がそう訴え掛けていたのだ。
男たちはルイーザの咄嗟の行動に対して驚きを隠せない様子であったが、すぐに標的に向けて拳銃を構えていく。
彼らからすれば元々ルイーザは抹殺対象なのだ。そのやり方が少し変わっただけに過ぎない。それ故に彼らは躊躇なく引き金を引こうとした。その時だ。
「いけないなぁ、レディに向かってそんな物騒なものを向けるだなんて」
と、凛とした声が聞こえた。それでいて透き通った綺麗な声だ。
かと思うと、男の首元に鋭利な刃物が突き付けられていた。男が慌てて周りを見渡すと、彼の仲間は全て倒れ伏していた。仰向けであったり、うつ伏せであったりとそれぞれ向きを変えながらも血を流して起き上がろうとしないのは事実だ。
男は哀れな末路を辿った仲間たちを見た後で、もう一度自身の首元に向かって剣を突き付けているここで抵抗の意思を見せれば自身も目の前に突きつけられている剣を引かれ、地面の上に転がっている仲間たちと同様の末路を辿ることになるだろう。
男は観念したものの、心まで屈する必要はないと判断したことが所以だ。
声を張り上げて脅迫者に問い掛けた。
「な、何者だ?貴様は?」
「私か?私はルイーダ。ルイーダ・メルテロイ。ガレリア国の騎士だ」
脅迫者は予想よりも寛大であったらしい。男の無礼な態度に怒るどころか、質問に対して丁寧に答えてまでくれたのだ。
「ルイーダ?そうか、同志がお話しされていたルイーダというのはお前なのか!?」
目の前に予想外の相手が現れてしまったという事実に思わず、男は口を滑らせてしまったらしい。言葉を発した後で「あっ」とした表情で固まるのをルイーダは目撃した。
剣を用いた尋問を行った甲斐もあったというものだ。男の口ぶりから察するに男は「同志」とやらの口伝でルイーダの情報を既に仕入れていたらしい。
引っかかるのはその「同志」なる人物だ。「同志」がこの男たちを操っているのは明白である。問題はその「同志」がどこの国の人物であるかということだ。そのことさえ割り出せば毅然とした対応を取ることもできるだろう。
ルイーダがもう一度脅しを掛けようとした時のことだ。
不意に男の体が前倒しになり、ルイーダの肩へと寄り掛かってきたのだ。嫌な予感がした。ルイーダが慌てて男の顔からサングラスを外すと、すっかりと青くなった男の顔が見えた。特徴のない地味な顔立ちの男であったが、それでも死の間際においては特徴を見せるらしい。
「アカンベー」とみっともなく舌を出していたのだ。口からはみ出た赤い舌が印象的に思えた。
ルイーダは息絶えた男の体を優しく地面の上へと下ろしてやり、軽い死体見聞を行なっていく。
勿論、ルイーダはその道のプロではない。それでも騎士として相応の経験はある。自信はあった。結論としては簡単な死体見聞のみであったが、大まかな死因は判明した。死因は背中からの銃弾であった。恐らく男の仲間がこれ以上男の口から機密が漏れることを恐れ、男の口を封じたのだろう。男の着ていたスーツを貫き、心臓を撃ち抜いていた。
ルイーダは失敗した者に対して容赦のない制裁を下す組織に怒りを覚え、舌を打った。同時に敵対する組織の大きさというものを感じさせられた。
いくら失敗を行ったといっても小規模な組織ではそう簡単に粛清できないというのが事情だろう。そこを考えると、一筋縄ではいかなさそうだ。ルイーダは思わず身震いをしてしまった。
こうしてルイーダの中をほんの僅かな時間ではあったものの、恐怖の感情が支配した後に芽生えたのは冷たくなった敵たちに対する憐憫の情であった。
いかなる事情があったにしろ、この男とルイーダが敵対していたことには変わらない。
だが、死の世界へと旅立てばその罪を憎む気持ちも薄れるというものだ。ましてや騎士と騎士の間には試合や戦場では敵同士でも関係のないところで付き合う分には同じ「騎士」というしがらみでしか縛られることがない。その上死人には敬意を払えとも習ってきた。
ルイーダは己の判断に従ってその男のみならずルイーザを襲っていた男たちを丁寧に埋葬してやることにした。
もっともルイーダが仮死薬で眠る前の竜歴元年の頃であったのならばともかく、今の時勢で勝手に埋葬を行うことは許されない。
ルイーダはやむを得ず近くの公衆電話から警察を呼ぶことになったのであった。
北の国の支部にて支部長を務めるパーロブ・ボブ・サルポーという男の特徴は哲学者、そして国家的に知られる文学者という表向きの顔を除けば分厚い四角い形をした眼鏡だろう。人々が思い描くようなエリートが掛けるような眼鏡を実際に掛け、絹で織られたスーツを着用しているサルポーは庶民が思い描くエリートの格好を体現していたといってもいい。
靴は海外から仕入れた質の良いものであり、手入れも欠かしていない。今でも革の表面は買ったばかりの時のようにピカピカと光っている。髪も七三分けに整えられているばかりではなく、ワックスまでも塗られた本格的なものだ。
そして何よりも庶民たちの羨望を集めるのは彼の取る食事が全てレストランであるということだろう。
表向きの顔は哲学者であり、国家的に知られた文学者なので印税という収入は馬鹿にできなかった。
現に今日も自らの表家業を潤うすために本屋から取り寄せた難しい哲学書を読み終え、サルポーは市の中央にできた高級レストランで一人舌鼓を打っていた。
ランチメニューとして自らが注文した牛肉の赤ワイン煮にナイフを入れようとした時だ。
目の前から不意に目の前に別のフォークが現れ、サルポーの肉を掻っ攫ったのであった。
「……キミかね?レオジーナ」
「フッ、わかってるくせに」
瞬間移動の魔法を使ってこの場に現れたレオジーナは悪びれる様子も見せず、口の中いっぱいに頬張った肉を噛みながら言った。
「まぁ、いい。それよりも、だ。ガレリアの方はどうだ?」
「あー、ダメだ。あの女、予想より強いぜ……こりやぁ、出場を辞退させるのは至難の技だなぁ」
レオジーナはどこか他人事のような口調だった。実際レオジーナからすればこの一件は他人事に過ぎないのかもしれない。
だが、サルポーは違う。今回の任務にしくじることがあれば自身は党本部から粛清させれてしまうのだ。それ故に命懸けなのだ。
そのことを再度訴えたのだが、レオジーナからの返答は軽いものであった。
「大丈夫、大丈夫、試合ならば絶対に負けねーからよ」
「だが、キミは一度その女に負けたのだろう?そんな男の言葉を信用できるかな?」
向かい側の席から鋭い目で睨み付けてくるサルポーに対してレオジーナは余裕を含んだ態度を見せていた。
「大丈夫だって、試合ならば工作できるだろ?」
レオジーナの目が怪しく光る。サルポーはそれを見て満足げに頷いた。
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