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護衛編
思いは一千年を超えて
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「どうだ?似合っているか?ジード?」
ルイーダは両頬を赤く染め上げながら部屋の外で自分を待っていたジードに向かって問い掛けた。
だが、ジードからの返事はない。ルイーダはジードの沈黙が普段はしないドレスという珍しい服を着ている。つまりこれまでこうした衣装は着てこなかったのだ。
それ故にジードはドレス姿の自分の格好が似合わないと思っているのかもしれない。そんな考えが頭によぎると、ルイーダは目の前のジードがあまりにも酷いものを見たことで落胆してしまっているのかと思うほどであった。
しかしその真実はルイーダが考えているものとは真逆であった。肝心のジードは結婚式に着るような純白のドレスを着たルイーダにすっかりと見惚れてしまっていたのだ。白は昔から王族や騎士が使うような高貴な色であり、同時に純白と高潔とを表す色であるということを本で読んだことがある。
ルイーダは伝説にも知られている一流の騎士だ。それ故に騎士の象徴でる白色の服を身に纏うことに関してはなんの違和感も感じないはずであったが、予想以上にドレスはルイーダに似合っていた。
装飾もほとんどなく、華美な色でもないドレスであったが、逆にシンプルでなんの装飾もないからこそルイーダの均等の取れた美しいプロポーションを存分に引き出していたのである。
今はまだ何もないが、首元に同じような飾り気のない首飾りを巻けば「舞踏会の花」として十分に輝いていくに違いない。
いや、舞踏会ばかりではない。美しい金色の髪の上にウェディングベールを被れば、披露宴でも十分に主役として成り立つほどであった。沈黙の時間の間に考えていたことはルイーダの予想とは180度も真反対のものであったといってもいい。
我が子に対して深い愛情を抱く親に近いような考えを胸に抱いていたジードが呆然とした様子でドレス姿のルイーダを見つめていたのだが、本人から直接口に出されていないので当の本人がそのことを知るはずがない。
それ故に不安そうな声で返事がないことを問いかけたのである。
「どうしたんだジード?さっきから黙ってしまって……何か思うことがあったのか?」
「い、いやなんでもない。少しぼんやりしただけさ」
ジードは苦笑いを浮かべながら答えた。頭の中に秘めていた親バカのような台詞は照れ臭くて言えなかった。
無論そんなジードの隠された思いなどに気がつくはずもない。ルイーダは両肩を落とし、視線を地面の下へと落としながら低い声で言った。
「そうか、ぼんやりされるというと、やはり私にはこんな衣装は似合わなかったんだな。わかってはいたさ」
「そ、そんなはずないだろッ!まぁまぁ可愛かったぜ」
思っていた以上にルイーダが落胆したのでジードは慌てて慰めてやらなくてはならなかった。それでも照れ臭さからか素直に褒めることはできなかった。
「まぁまぁ?……褒め言葉として受け取っておくよ」
ルイーダはジードの回答に苦笑しながら言った。その表情には少し影が差していた。
ジードは自分の失言に気が付いた。今からでも遅くない。自分の知っている限りの語彙を用いてルイーダを褒め殺しにしてやろうではないか。照れ臭さなど引っ込めてしまえ。そんな思いを胸に秘めてジードがなんとか口を開こうとした時のことだ。
「おお!!なんと美しい」
と、背後から率直な賞賛の言葉が聞こえてきた。
そこには驚いた顔のまま石のように固まっているジェラルドの姿が見えた。どうやら称賛の言葉を発したのは十中八九ジェラルドで間違いあるまい。
大方、祝辞暗唱の息抜きにでもルイーダと話をしたいと考えてこの部屋を訪れたのだろう。
そしてたまたま部屋を開けると珍しいドレスを纏ったルイーダの姿が見えたものだからジェラルドはその衝撃で称賛の言葉を浴びせた後でそのまま石のように固まっていたに違いない。
ジードはしばらく大きく目を見開いたまま硬直していたジェラルドを両目を尖らせながら睨んでいたが、やがて硬直が解けると、王族に相応しい優しい笑顔を浮かべながらルイーダの元へと近付いていく。
「麗しいの姫よ……今宵、もしもご機会がございましたらどうかこの私と踊っていただけないでしょうか?」
「えっ、で、殿下?」
ルイーダは困惑している様子だった。しかし満更でもなさそうなのが少し苛立った。
ジードからすれば自分の妻に色目を使うなどもってのほかのことだ。
それ故に少しばかり強い口調でジェラルドに意見を行なってしまった。
「申し訳ありませんが、殿下、あまりジロジロと見られても困ります。ルイーダもどうすればいいのか分からないのは見て分かるでしょう?」
ジードの抗議を聞いたジェラルドは正気に戻ったのか、申し訳なさそうな表情を浮かべながら慌てて後ろへと下がっていく。
だが、それでも自身の想いを伝えることには余念がなかったらしい。ルイーダの視線を真っ直ぐに見つめながらハッキリとした口調で言った。
「その首元に似合うようなドレスを後であなたに持ってこよう。きっと素敵なレディになるだろうから」
「で、殿下」
ルイーダの表情は完全に恋する乙女になっていた。同時にジードの中にある嫉妬の炎がメラメラと燃え上がっていくのが感じられた。
ジードはジェラルドの背中を押すことによって強制的にルイーダの前から退場させたのであった。
反論の言葉を口に出す余裕も与えず、ジェラルドが祝辞を休んで抜け出したという事実のみを指摘して部屋へとジェラルドを部屋に戻していったのである。
ジードによって部屋に戻ったジェラルドは練習を休んでこっそりと抜け出したことを執事からこっ酷く叱責されているらしい。怒鳴り声が扉越しからも聞こえてきた。
いい気味だ。気に食わない人物の不幸というのはどうしてここまで笑えてしまうのだろうか。ジードは部屋の前で忍び笑いを立てていた。
ジードがクックと笑いながら部屋に戻ると、そこには普段の服に戻ったルイーダの姿が見えた。
いきなり服を着て変えたので、ジードは困惑を隠せなかった。
「ど、どうしたんだよ?」
「……別に、なんとなくあの服が似合わないと思ったから元の格好に戻ったんだ」
そう呟くルイーダの横にはドレスの箱が見えた。あの中に先ほど着ていたドレスが納められているのだろう。
あんなに似合っていたというのにもったいない。ジードがそのことを伝えようとする前にルイーダが口を挟んだ。
「なぁ、ジード。お前どうして殿下にあんな口をきいたんだ?」
「べ、別に……なんとなく気に入らなかっただけだよ」
追求されれば弱い。ジードは目を背けながらそれらしい理由を発してその場を乗り切ろうとした。
だが、歴戦の女騎士には既にジードの嘘は見抜かれているらしい。
ルイーダは呆れたような声で、
「ほーう。なんとなく気に入らないという理由だけでお前は一国の皇太子にぞんざいな態度を取って、部屋から追い出したというのか?」
と、ジードの非を淡々と追求していく。この時のルイーダの両目は鋭く尖っていた。青白い光さえ宿っていて恐怖も感じた。自身の夫に向かってそのような態度を取るほど騎士として王や王族に無礼な態度を取る今回のようなことは許せなかったのだ。
普段ならばルイーダの表情を見てジードも引き下がるところだろうが今回ばかりはそうもいかなかった。
これは自分にとっては命よりも大事な問題であるのだ。ジードは腹を括った。
この際だからハッキリと自分の思いを伝えてしまおう。
ジードは両目をハッキリと見開いて目を背けることなく、しっかりとルイーダの両目を捉えた。
それから思わぬ行動をとったジードに対して怯えたような顔を浮かべるルイーダに向かって部屋の中いっぱいに響き渡っていくような大きな声で言った。
「お、オレはあの野郎がお前にベタベタと触るのが気に食わないんだよッ!」
自分で言っていても照れ臭くなるような台詞だ。三文映画の中で使い古されたような言葉に思わず耳が真っ赤に染まってしまうが、ここで引いてしまっては自分の思いは永遠に伝えられないに違いない。
ジードは持てる限りの勇気を振り絞り、必死に言葉の続きを紡ぎ出していく。
「オレはお前のことが本当に好きなんだよッ!だから誰だろうとあんな素敵な姿をしたお前を見られたくないんだよッ!」
自分の思いを伝えたジードは疲れからかハァハァと息を切らしていた。
その一方でルイーダはといえばジードを黙って見つめていた。何も言わずにしっかりとジードの姿を捉えていた。
ジードはルイーダからの返答が返ってくるまでの間、石のように固くなっていた。いくら気の強い女騎士とはいえ流石に何の了解もなくあのようなことを言えば不快な気持ちになってしまうに違いない。
下手をすれば別れを告げられてしまう可能性もあった。重い沈黙の空気が続いていく中で、ルイーダが口を開いたのはジードが一心の告白を伝えてから10分ほどの時間が経ってからのことであった。
先ほどとは異なり、ルイーダは顔を店先で真っ赤に熟れている林檎のように赤く染め上げながら答えた。
「お、お前にま、まさかそんなことを言われるとは思いもしなかった。お、お前の気持ちは正直に言えばう、嬉しい。私としても応えてやりたいよ」
「る、ルイーダ!」
「ただ、王族に無礼な態度を取ったのは事実だからな。それはそれで折り合いをつけなくてはならん」
それはそれ、これはこれという形で混同しないのがルイーダのいいところであるが、今回ばかりは混同してくれてもよいはずだ。
ジードが不満そうに両頬を膨らませていると、ルイーダが悪戯っぽい笑みを浮かべながらジードの元へと近付いていって囁くように言った。
「折り合いといっても簡単な話だ。今回の式典でも今までのようにしっかりと体を張って殿下をお守りすればいいんだ」
ジードは愛する人からの条件を聞いて黙って首を縦へと動かした。
今のジードは愛する人の怒りを解くためならば何でもできる気がしたのだ。
ルイーダは両頬を赤く染め上げながら部屋の外で自分を待っていたジードに向かって問い掛けた。
だが、ジードからの返事はない。ルイーダはジードの沈黙が普段はしないドレスという珍しい服を着ている。つまりこれまでこうした衣装は着てこなかったのだ。
それ故にジードはドレス姿の自分の格好が似合わないと思っているのかもしれない。そんな考えが頭によぎると、ルイーダは目の前のジードがあまりにも酷いものを見たことで落胆してしまっているのかと思うほどであった。
しかしその真実はルイーダが考えているものとは真逆であった。肝心のジードは結婚式に着るような純白のドレスを着たルイーダにすっかりと見惚れてしまっていたのだ。白は昔から王族や騎士が使うような高貴な色であり、同時に純白と高潔とを表す色であるということを本で読んだことがある。
ルイーダは伝説にも知られている一流の騎士だ。それ故に騎士の象徴でる白色の服を身に纏うことに関してはなんの違和感も感じないはずであったが、予想以上にドレスはルイーダに似合っていた。
装飾もほとんどなく、華美な色でもないドレスであったが、逆にシンプルでなんの装飾もないからこそルイーダの均等の取れた美しいプロポーションを存分に引き出していたのである。
今はまだ何もないが、首元に同じような飾り気のない首飾りを巻けば「舞踏会の花」として十分に輝いていくに違いない。
いや、舞踏会ばかりではない。美しい金色の髪の上にウェディングベールを被れば、披露宴でも十分に主役として成り立つほどであった。沈黙の時間の間に考えていたことはルイーダの予想とは180度も真反対のものであったといってもいい。
我が子に対して深い愛情を抱く親に近いような考えを胸に抱いていたジードが呆然とした様子でドレス姿のルイーダを見つめていたのだが、本人から直接口に出されていないので当の本人がそのことを知るはずがない。
それ故に不安そうな声で返事がないことを問いかけたのである。
「どうしたんだジード?さっきから黙ってしまって……何か思うことがあったのか?」
「い、いやなんでもない。少しぼんやりしただけさ」
ジードは苦笑いを浮かべながら答えた。頭の中に秘めていた親バカのような台詞は照れ臭くて言えなかった。
無論そんなジードの隠された思いなどに気がつくはずもない。ルイーダは両肩を落とし、視線を地面の下へと落としながら低い声で言った。
「そうか、ぼんやりされるというと、やはり私にはこんな衣装は似合わなかったんだな。わかってはいたさ」
「そ、そんなはずないだろッ!まぁまぁ可愛かったぜ」
思っていた以上にルイーダが落胆したのでジードは慌てて慰めてやらなくてはならなかった。それでも照れ臭さからか素直に褒めることはできなかった。
「まぁまぁ?……褒め言葉として受け取っておくよ」
ルイーダはジードの回答に苦笑しながら言った。その表情には少し影が差していた。
ジードは自分の失言に気が付いた。今からでも遅くない。自分の知っている限りの語彙を用いてルイーダを褒め殺しにしてやろうではないか。照れ臭さなど引っ込めてしまえ。そんな思いを胸に秘めてジードがなんとか口を開こうとした時のことだ。
「おお!!なんと美しい」
と、背後から率直な賞賛の言葉が聞こえてきた。
そこには驚いた顔のまま石のように固まっているジェラルドの姿が見えた。どうやら称賛の言葉を発したのは十中八九ジェラルドで間違いあるまい。
大方、祝辞暗唱の息抜きにでもルイーダと話をしたいと考えてこの部屋を訪れたのだろう。
そしてたまたま部屋を開けると珍しいドレスを纏ったルイーダの姿が見えたものだからジェラルドはその衝撃で称賛の言葉を浴びせた後でそのまま石のように固まっていたに違いない。
ジードはしばらく大きく目を見開いたまま硬直していたジェラルドを両目を尖らせながら睨んでいたが、やがて硬直が解けると、王族に相応しい優しい笑顔を浮かべながらルイーダの元へと近付いていく。
「麗しいの姫よ……今宵、もしもご機会がございましたらどうかこの私と踊っていただけないでしょうか?」
「えっ、で、殿下?」
ルイーダは困惑している様子だった。しかし満更でもなさそうなのが少し苛立った。
ジードからすれば自分の妻に色目を使うなどもってのほかのことだ。
それ故に少しばかり強い口調でジェラルドに意見を行なってしまった。
「申し訳ありませんが、殿下、あまりジロジロと見られても困ります。ルイーダもどうすればいいのか分からないのは見て分かるでしょう?」
ジードの抗議を聞いたジェラルドは正気に戻ったのか、申し訳なさそうな表情を浮かべながら慌てて後ろへと下がっていく。
だが、それでも自身の想いを伝えることには余念がなかったらしい。ルイーダの視線を真っ直ぐに見つめながらハッキリとした口調で言った。
「その首元に似合うようなドレスを後であなたに持ってこよう。きっと素敵なレディになるだろうから」
「で、殿下」
ルイーダの表情は完全に恋する乙女になっていた。同時にジードの中にある嫉妬の炎がメラメラと燃え上がっていくのが感じられた。
ジードはジェラルドの背中を押すことによって強制的にルイーダの前から退場させたのであった。
反論の言葉を口に出す余裕も与えず、ジェラルドが祝辞を休んで抜け出したという事実のみを指摘して部屋へとジェラルドを部屋に戻していったのである。
ジードによって部屋に戻ったジェラルドは練習を休んでこっそりと抜け出したことを執事からこっ酷く叱責されているらしい。怒鳴り声が扉越しからも聞こえてきた。
いい気味だ。気に食わない人物の不幸というのはどうしてここまで笑えてしまうのだろうか。ジードは部屋の前で忍び笑いを立てていた。
ジードがクックと笑いながら部屋に戻ると、そこには普段の服に戻ったルイーダの姿が見えた。
いきなり服を着て変えたので、ジードは困惑を隠せなかった。
「ど、どうしたんだよ?」
「……別に、なんとなくあの服が似合わないと思ったから元の格好に戻ったんだ」
そう呟くルイーダの横にはドレスの箱が見えた。あの中に先ほど着ていたドレスが納められているのだろう。
あんなに似合っていたというのにもったいない。ジードがそのことを伝えようとする前にルイーダが口を挟んだ。
「なぁ、ジード。お前どうして殿下にあんな口をきいたんだ?」
「べ、別に……なんとなく気に入らなかっただけだよ」
追求されれば弱い。ジードは目を背けながらそれらしい理由を発してその場を乗り切ろうとした。
だが、歴戦の女騎士には既にジードの嘘は見抜かれているらしい。
ルイーダは呆れたような声で、
「ほーう。なんとなく気に入らないという理由だけでお前は一国の皇太子にぞんざいな態度を取って、部屋から追い出したというのか?」
と、ジードの非を淡々と追求していく。この時のルイーダの両目は鋭く尖っていた。青白い光さえ宿っていて恐怖も感じた。自身の夫に向かってそのような態度を取るほど騎士として王や王族に無礼な態度を取る今回のようなことは許せなかったのだ。
普段ならばルイーダの表情を見てジードも引き下がるところだろうが今回ばかりはそうもいかなかった。
これは自分にとっては命よりも大事な問題であるのだ。ジードは腹を括った。
この際だからハッキリと自分の思いを伝えてしまおう。
ジードは両目をハッキリと見開いて目を背けることなく、しっかりとルイーダの両目を捉えた。
それから思わぬ行動をとったジードに対して怯えたような顔を浮かべるルイーダに向かって部屋の中いっぱいに響き渡っていくような大きな声で言った。
「お、オレはあの野郎がお前にベタベタと触るのが気に食わないんだよッ!」
自分で言っていても照れ臭くなるような台詞だ。三文映画の中で使い古されたような言葉に思わず耳が真っ赤に染まってしまうが、ここで引いてしまっては自分の思いは永遠に伝えられないに違いない。
ジードは持てる限りの勇気を振り絞り、必死に言葉の続きを紡ぎ出していく。
「オレはお前のことが本当に好きなんだよッ!だから誰だろうとあんな素敵な姿をしたお前を見られたくないんだよッ!」
自分の思いを伝えたジードは疲れからかハァハァと息を切らしていた。
その一方でルイーダはといえばジードを黙って見つめていた。何も言わずにしっかりとジードの姿を捉えていた。
ジードはルイーダからの返答が返ってくるまでの間、石のように固くなっていた。いくら気の強い女騎士とはいえ流石に何の了解もなくあのようなことを言えば不快な気持ちになってしまうに違いない。
下手をすれば別れを告げられてしまう可能性もあった。重い沈黙の空気が続いていく中で、ルイーダが口を開いたのはジードが一心の告白を伝えてから10分ほどの時間が経ってからのことであった。
先ほどとは異なり、ルイーダは顔を店先で真っ赤に熟れている林檎のように赤く染め上げながら答えた。
「お、お前にま、まさかそんなことを言われるとは思いもしなかった。お、お前の気持ちは正直に言えばう、嬉しい。私としても応えてやりたいよ」
「る、ルイーダ!」
「ただ、王族に無礼な態度を取ったのは事実だからな。それはそれで折り合いをつけなくてはならん」
それはそれ、これはこれという形で混同しないのがルイーダのいいところであるが、今回ばかりは混同してくれてもよいはずだ。
ジードが不満そうに両頬を膨らませていると、ルイーダが悪戯っぽい笑みを浮かべながらジードの元へと近付いていって囁くように言った。
「折り合いといっても簡単な話だ。今回の式典でも今までのようにしっかりと体を張って殿下をお守りすればいいんだ」
ジードは愛する人からの条件を聞いて黙って首を縦へと動かした。
今のジードは愛する人の怒りを解くためならば何でもできる気がしたのだ。
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