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探索編
偉大なる魔法使いとの戦い!
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ヨハンの手によって作り出された怪物は小瓶の中から飛び出すのと同時に、木の枝を折ると、それを剣の代わりに手の中に携えて、二人に向かって突っ掛かってくる。
だが、所詮は枝。そんなに恐れるものではない。
二人はそう考えていたのだが、どうした事か、いきなり枝が鋭利なレイピアになったのである。
背後を見ると、杖を掲げてた髭面の魔法使いの姿。
どうやら、背後の魔法使いが妙な魔法を使用したらしい。
魔法使いは二人が自身の事に気がつくと、申し訳なさそうに言った。
「お主らに恨みはないのだが、金貨を得るためじゃ。少しばかり痛い目に遭ってもらうぞ」
「そう言われて、はいそーですかなんて答える人はいないぞ。老人よ」
ルイーダはジードに作ってもらった剣を構えて、その剣に黒色の炎を纏わせながら、魔法使いの作り出した怪物へと切り掛かっていく。
怪物は大きなレイピアで彼女の剣を受け止め、そのまま炎が引火するよりも前にレイピアを使って彼女を地面の上へと弾き飛ばしていく。
ルイーダは地面の上に転がったまますぐに立ち上がり、もう一度、炎を纏った剣を構えて怪物へと突っ込む。
剣とレイピアが混じり合い、刃の間に火花が生まれていく。
だが、それでも怪物はその巨大に似合う程の力であったらしく、怪物はその勢いのままルイーダを再度、地面の上へと叩き付けていく。
地面の上に転がっているルイーダの目の前にレイピアの先端が突き付けられた。
怪しげな光を放つそれは、確実にルイーダの生殺与奪を握るものである。
自身が妙な行動を取れば、それは確実に額を貫き、そのまま脳髄にまで到達するだろう。
それだけ避けなくてはなるまい。わかってはいるものの、ルイーダの頭の中にはどれだけ捻っても、命乞いを意味する言葉が出てこないのだ。
彼女が黙っている事を不審に思ったのだろう。怪物が先に口を開く。
「このままだとお前は死ぬぞ。さっさと自身の負けを認め、金貨の居場所を吐いてもらおうか」
「……ごめんだ。私が金貨の場所を吐けば、貴様たちはそれをマナエに献上するだろう。ともなれば、潜水艦という多くの人の命や物を奪う悪魔の様な兵器を生み出しかねない。だから、私は口を紡がせてもらおう」
「例え、この場で殺されてもか?」
「くどいな!殺したければ、殺せばよかろう!我が名はルイーダ・メルテロイッ!誇り高きガレリアの騎士にして竜乙女の異名を持つ者!戦いの最中に戦士として死ぬのは本望よッ!」
「……やむを得ない」
ヨルムガンドはレイピアを一旦引くと、その勢いのまま彼女を突き刺そうとしたのだが、突如、目の前からルイーダが消え去ったかと思うと、自身の夫と共に背後へと回り込んでいたらしい。
慌てて、馬の下半身を回し、反対方向を振り向くと、そこには剣を構えた二人の姿。
「助かったぞ、我が夫よ。まさか、高速魔法が使えるとはな。向こうも使えないと思っていたから、諦めていたぞ」
「戦場において思い込みは禁物だぞ。だが、どうやら、あの怪物は他の魔法師や魔銃士候補生とは異なり、高速魔法や擬似高速魔法は使えんらしいな」
二人は再度剣を構えると、改めて怪物へと向かい合っていく。
怪物はもう一度、レイピアを二人へと繰り出していくが、高速魔法やその擬似魔法が扱えないとなると、形勢は逆転する事になった。
ルイーダは怪物の下半身へと飛び乗ると、人間の上半身を片方の手で抱き締め、もう片方の利き手に握った剣を用いて、その首元へと突き付けていく。
「先程とは違って、今は私がキミが生きるか、死ぬかを決められる状況にあるんだ。金貨の事は忘れて、何処かの山にでも籠るんだな。山籠りをすれば、いくらマナエ党といえども、キミを簡単には見つけられんだろう」
「……断ると言ったら、私の首を掻き切るのかね?」
「誠に遺憾だが、そうなるな。私としてもあまり人は殺したくない。だから、大人しく引いてくれないか?」
ルイーダは懇願する様な声で尋ねたのだが、彼はその首を縦には動かさない。
それどころか、ルイーダを自身の体から振り落とそうと、辺りをわざと大きく叩き、体を大きく揺すっていく。
だが、ルイーダは体にしがみついて離れない。おまけに剣も離さない。
いよいよ鬱陶しくなってきた時だ。彼女目の前で悲鳴が聞こえたかと思うと、ヨルムガンドの近くに倒れているジードの姿が見えた。
「……そこまでだ。わしの息子を虐めるのはやめてもらおうか」
「虐める?やめてくれ、そんな事を言われると、私が悪い様に見えてしまうじゃあないか」
「事実、虐めているようなものだろう。動けない息子を痛ぶり、剣を突き付けていく……人間のする事かね?それが?」
「人間だからこそ生きたいと思うのが普通なんじゃあないのかな?」
ルイーダはそれでも『虐める』という言葉が引っ掛かったのか、ヨルムガンドの背中から降りると、そのまま魔法使いの老人と対峙していく。
杖と剣とを両手で構えて睨み合っていたが、先に動いたのはルイーダの方である。
彼女は竜の黒い炎を纏わせた剣を構えて、老人の元へと突っ込む。
老人は彼女の剣を杖を盾の代わりとして防ぎ、そのまま彼女を弾いていく。
ルイーダはこの時に老人の杖がまるで、鉄の棒のように固くなっている事に気が付く。
どうやら、硬化の魔法が掛けられているらしい。単なる木の杖があそこまで硬くなっているのはそういった事情があるのだろう。
ルイーダが剣を握りながら、奥歯を強く噛んでいると、老人はその杖を振り上げて、ルイーダごと剣を弾いていく。
「それは筋力強化の魔法か?」
ルイーダは必死の思いで立ち上がり、声を振り絞りながら尋ねる。
だが、ヨハンは首を振ると、至極冷静な声で言った。
「いいや、これはわしの素の力じゃよ。なにせ、暗殺者が多くくるものでな。それに対抗するために、筋肉を付けなければならなかったし、奴らの剣に対抗するためには剣の腕も鍛えなければならなんだ」
ヨハンはそういうと、そのまま杖を一本の鋭い剣へと置き換えて、ルイーダへと突き付けていく。
ルイーダは目の前のヨハンという老人の凄さを改めて思い知らされた。
老人の頭の中には『不可能』という言葉が見当たらないように思えた。
だが、そんな相手であろうが、金貨は守らなくてはならないのだ。
祖国、ガレリアを戦火から救うために。
だが、所詮は枝。そんなに恐れるものではない。
二人はそう考えていたのだが、どうした事か、いきなり枝が鋭利なレイピアになったのである。
背後を見ると、杖を掲げてた髭面の魔法使いの姿。
どうやら、背後の魔法使いが妙な魔法を使用したらしい。
魔法使いは二人が自身の事に気がつくと、申し訳なさそうに言った。
「お主らに恨みはないのだが、金貨を得るためじゃ。少しばかり痛い目に遭ってもらうぞ」
「そう言われて、はいそーですかなんて答える人はいないぞ。老人よ」
ルイーダはジードに作ってもらった剣を構えて、その剣に黒色の炎を纏わせながら、魔法使いの作り出した怪物へと切り掛かっていく。
怪物は大きなレイピアで彼女の剣を受け止め、そのまま炎が引火するよりも前にレイピアを使って彼女を地面の上へと弾き飛ばしていく。
ルイーダは地面の上に転がったまますぐに立ち上がり、もう一度、炎を纏った剣を構えて怪物へと突っ込む。
剣とレイピアが混じり合い、刃の間に火花が生まれていく。
だが、それでも怪物はその巨大に似合う程の力であったらしく、怪物はその勢いのままルイーダを再度、地面の上へと叩き付けていく。
地面の上に転がっているルイーダの目の前にレイピアの先端が突き付けられた。
怪しげな光を放つそれは、確実にルイーダの生殺与奪を握るものである。
自身が妙な行動を取れば、それは確実に額を貫き、そのまま脳髄にまで到達するだろう。
それだけ避けなくてはなるまい。わかってはいるものの、ルイーダの頭の中にはどれだけ捻っても、命乞いを意味する言葉が出てこないのだ。
彼女が黙っている事を不審に思ったのだろう。怪物が先に口を開く。
「このままだとお前は死ぬぞ。さっさと自身の負けを認め、金貨の居場所を吐いてもらおうか」
「……ごめんだ。私が金貨の場所を吐けば、貴様たちはそれをマナエに献上するだろう。ともなれば、潜水艦という多くの人の命や物を奪う悪魔の様な兵器を生み出しかねない。だから、私は口を紡がせてもらおう」
「例え、この場で殺されてもか?」
「くどいな!殺したければ、殺せばよかろう!我が名はルイーダ・メルテロイッ!誇り高きガレリアの騎士にして竜乙女の異名を持つ者!戦いの最中に戦士として死ぬのは本望よッ!」
「……やむを得ない」
ヨルムガンドはレイピアを一旦引くと、その勢いのまま彼女を突き刺そうとしたのだが、突如、目の前からルイーダが消え去ったかと思うと、自身の夫と共に背後へと回り込んでいたらしい。
慌てて、馬の下半身を回し、反対方向を振り向くと、そこには剣を構えた二人の姿。
「助かったぞ、我が夫よ。まさか、高速魔法が使えるとはな。向こうも使えないと思っていたから、諦めていたぞ」
「戦場において思い込みは禁物だぞ。だが、どうやら、あの怪物は他の魔法師や魔銃士候補生とは異なり、高速魔法や擬似高速魔法は使えんらしいな」
二人は再度剣を構えると、改めて怪物へと向かい合っていく。
怪物はもう一度、レイピアを二人へと繰り出していくが、高速魔法やその擬似魔法が扱えないとなると、形勢は逆転する事になった。
ルイーダは怪物の下半身へと飛び乗ると、人間の上半身を片方の手で抱き締め、もう片方の利き手に握った剣を用いて、その首元へと突き付けていく。
「先程とは違って、今は私がキミが生きるか、死ぬかを決められる状況にあるんだ。金貨の事は忘れて、何処かの山にでも籠るんだな。山籠りをすれば、いくらマナエ党といえども、キミを簡単には見つけられんだろう」
「……断ると言ったら、私の首を掻き切るのかね?」
「誠に遺憾だが、そうなるな。私としてもあまり人は殺したくない。だから、大人しく引いてくれないか?」
ルイーダは懇願する様な声で尋ねたのだが、彼はその首を縦には動かさない。
それどころか、ルイーダを自身の体から振り落とそうと、辺りをわざと大きく叩き、体を大きく揺すっていく。
だが、ルイーダは体にしがみついて離れない。おまけに剣も離さない。
いよいよ鬱陶しくなってきた時だ。彼女目の前で悲鳴が聞こえたかと思うと、ヨルムガンドの近くに倒れているジードの姿が見えた。
「……そこまでだ。わしの息子を虐めるのはやめてもらおうか」
「虐める?やめてくれ、そんな事を言われると、私が悪い様に見えてしまうじゃあないか」
「事実、虐めているようなものだろう。動けない息子を痛ぶり、剣を突き付けていく……人間のする事かね?それが?」
「人間だからこそ生きたいと思うのが普通なんじゃあないのかな?」
ルイーダはそれでも『虐める』という言葉が引っ掛かったのか、ヨルムガンドの背中から降りると、そのまま魔法使いの老人と対峙していく。
杖と剣とを両手で構えて睨み合っていたが、先に動いたのはルイーダの方である。
彼女は竜の黒い炎を纏わせた剣を構えて、老人の元へと突っ込む。
老人は彼女の剣を杖を盾の代わりとして防ぎ、そのまま彼女を弾いていく。
ルイーダはこの時に老人の杖がまるで、鉄の棒のように固くなっている事に気が付く。
どうやら、硬化の魔法が掛けられているらしい。単なる木の杖があそこまで硬くなっているのはそういった事情があるのだろう。
ルイーダが剣を握りながら、奥歯を強く噛んでいると、老人はその杖を振り上げて、ルイーダごと剣を弾いていく。
「それは筋力強化の魔法か?」
ルイーダは必死の思いで立ち上がり、声を振り絞りながら尋ねる。
だが、ヨハンは首を振ると、至極冷静な声で言った。
「いいや、これはわしの素の力じゃよ。なにせ、暗殺者が多くくるものでな。それに対抗するために、筋肉を付けなければならなかったし、奴らの剣に対抗するためには剣の腕も鍛えなければならなんだ」
ヨハンはそういうと、そのまま杖を一本の鋭い剣へと置き換えて、ルイーダへと突き付けていく。
ルイーダは目の前のヨハンという老人の凄さを改めて思い知らされた。
老人の頭の中には『不可能』という言葉が見当たらないように思えた。
だが、そんな相手であろうが、金貨は守らなくてはならないのだ。
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