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探索編

氷の魔法の威力

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諜報員としてのアレクサンドリアの顔を、彼の家族や隣人が知らない様に、ルイーダもまた、アレクサンドリアのゴッドファーザーとしての一面を知らない。
彼女の目の前に対峙するのは北の国より派遣された冷酷なる諜報員、アレクサンドリアなのである。
彼は氷を纏わせたその戦斧を振るうと、そのままルイーダの命を狙う。

ルイーダはそれを歯を食い縛りながら、自身の剣を振るって宙の上でかち合わせていく。
斧の刃と剣とが中の上で重なり合わされ、大きな火花が音を立てて生じていく。
ルイーダは歯を噛み締めながら、その剣を受け止めた。

炎と氷とが斧と剣という二つの武器を通じて、宙の上で衝突し、小さな爆発が生じるものの、二人は動じる事なく、武器を打ち合っていく。
二、三十合と激しい打ち合いが続いた末に、双方が武器を離し、互いに武器を持って睨み合う。
しばらくの間、武器ではなく互いの瞳の間に火花を生じさせていたが、ルイーダが剣を右斜め下から剣を突き上げた事により、ようやく事態は進展する事になった。

アレクサンドリアはその真下からの攻撃に対し、体を逸らしたかと思うと、そのまま、斧を真正面のルイーダに向かって突き付けていく。
ルイーダはそれを剣を使って受け止め、今度は逆にそのままアレクサンドリアを弾き飛ばす。
その間に足がよろめいた事が彼女を助けたに違いない。

勇敢なる女騎士はアレクサンドリアの懐へと飛び込むと、そのまま弧を描き、真っ直ぐにその光が迸る剣身を目の前の男の喉元へと向けていく。
光の様な一閃が宙の上を走り、アレクサンドリアの喉元を貫くのはルイーダの中では決定事項であったに違いない。
だが、アレクサンドリアは元々警戒心の強い男である。

ルイーダの剣の動きはとっくの昔に予想できていたのだろう。
彼は戦斧の柄で防ぎ、余裕のある笑みをルイーダへとアピールしたのである。
彼はそのまま動揺するルイーダを蹴り飛ばそうと試みたのである。
ルイーダは慌てて身を回転させると、そのまま勢いよく地面の上を転んでいくのである。

その上から、男は両手に持った戦斧を振り上げていく。
ルイーダはそれでもなお、自分の真上からの攻撃に対し、横に剣を構える事で、その災厄を防ぐ事に成功できたのである。
ルイーダはそのまま竜の黒い炎を出し、男を焼き殺そうとしたのだが、男はまたしても氷を出し、炎を冷却させる事で、ルイーダの攻撃を防いでいく。

ルイーダはお陰で、口の端から自身の意思とは無関係に生じた苦虫を噛み殺さなねばならなかった。
そのためにキュキュという歯軋りの音が虚しく響いていくのである。
ルイーダは自身の攻撃が完封された事を実感した。彼女は舌を打ち、もう一つの方法を試みた。
竜の翼の事である。彼女は地面の上にいる状態であるのにも関わらず、背後に大きな翼を作り上げて、大きな旋風を巻きこし、辺りに舞っていく砂と同様にそのまま男をも地面の上から弾き飛ばしていく。

男が起き上がる暇もなく、ルイーダは剣を振り上げて一転攻勢を試む。
彼女は弧を描き、そのまま右横へと回り込む。このまま刃が突き立てれれば、この男も終わりだろう。
それがわかっているからこそ、戦斧の刃先を真下へと向け、逆手でその柄を握り締めているのだろう。

だが、ルイーダの剣はそのまま止まらない。たちまちのうちにかち合っていく。
アレクサンドリアはなんとか、ルイーダを弾いて、自分の窮地を脱する事に成功した。

「クソ、中々に強いじゃあないか!流石はガレリアの中の伝説の騎士を自称するだけの事はある!」

「お褒めに預かり光栄だ。ならば、このまま私の剣によって倒されてくれないかな?」

「ふざけるな。おれがそんな手に乗るとでも?」

戦斧を構えて、彼はもう一度、ルイーダの元へと切り掛かっていく。
戦斧には通常、剣先が付属しており、それで相手を突くように出来ているのだ。
だから、剣を振る様に戦斧の先に付いている剣先を振るう事ができるのだ。

ルイーダにとっての新たなる脅威と称してもいいだろう。
おまけに槍の様に突く事もできるので、彼女にとっては厄介この上ない。
暫くの間は戦斧と剣による勝負を続けていたのだが、ルイーダは劣勢などものともせずにアレクサンドリアとの戦いを続けていく。

ルイーダは地面を大きく蹴り上げて、そのまま彼から距離を取るのかと思われたのだが、逆に彼に向かっていったのである。
彼女の真横からの剣はアレクサンドリアにとっては簡単に避けれる程度の代物であったはずである。
だが、どうした事だろう。アレクサンドリアは避け損ねてしまったらしい。
剣先が微かに彼の額を掠ってしまったらしい。

額から一筋の血が流れていくのが、ルイーダには見えた。
だが、彼は常人とは異なり、アレクサンドリアは慌てて、額を覆ったりはしない。
戦斧を構えて、一応は目の前のルイーダを牽制した後で、ようやく額を片方の手で抑えたのである。

「フフフ、よくもやってくれたな。すごく痛い。すご~く痛い……だがな、この程度ではおれは引かないぞ」

「そんな事をわざわざ言って、私が感心するとでも思ったのか?」

「いいや、本題はここからだ。今回はお前の勝ちにしておいてやるんだ。つまり、花を持たせてやるって事だな」

「言っている意味がわからないが」

「フッ、今はわからなくてもいいんだ。精々、今日の日の勝利を味わっておくといい」

男はそう言うと、戦斧を大きく振るうのと同時に、ルイーダに向かって氷の波状を飛ばす。
ルイーダがその波状に気を取られている隙を利用して、あの男は逃走してしまったらしい。
気が付けば、ルイーダには追い掛けられない距離まで逃亡していた事に気が付く。

「おのれ、逃げられたか」

ルイーダはそのまま剣を鞘へと仕舞おうとしたのだが、騎士団の面々がいつになく騒がしい事に気がつく。
ルイーダがその方向へと向かうと、そこには騎士の会の面々に見守れる中で、激しい接戦を繰り広げる二人の男の姿が見えたのだ。
ハンスとエルンストの両名である。両名は多くの人々が見守る中で、激しい斬り合いを演じていたのだ。

ルイーダは暫くの間は呆然とした様子で、その姿を見つめていたのだが、やがて、ことの重大さを理解して、慌てて、二人の元へと向かおうとしたが、腕を掴まれたかと思うと、引っ張られてその場に留められてしまう。
尻餅を付いた後に、手を引っ張った方向を振り向くと、そこには両目を潤ませたコニーの姿。
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