隙を突かれて殺された伝説の聖女騎士と劣等生の夫、共に手を取り、革命を起こす!

アンジェロ岩井

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探索編

伝説の騎士対伝説の騎士の対決

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巨漢の黒鉄の鎧をした騎士は確かにそう名乗った。『エルンスト・フォン・ランバッハ』と。
彼は男を取り囲む騎士の会の面々を無視し、男の頭から槍を引っこ抜き、乱暴にそれを回した後に、その穂先を向けながらそう叫んだのだ。
それを聞いて、居ても立っても居られくなったのはハンスである。

彼は木剣を強く握り締めると、その先端をエルンストに突き付けながら叫ぶ。

「我が名はハンス・ノッケンドルフッ!お前は確かに『エルンスト・フォン・ランスバッハと名乗ったな!?」

「その通りだ。だが、それがどうかしたのか?」

「この際、あんたの事なんてどうでもいい……おれは昔から勇ましいあんたの事が好きだった。頼むッ!おれと戦ってくれ!」

ハンスはそう言って深々と頭を下げたが、彼は相手にもしない。
彼がその穂先を向けて勝負を申し込んだのはルイーダ・メルテロイである。

「おれが生まれる前よりも高名を挙げていた伝説の女騎士、〈竜乙女ドラクニア・メイデンよッ!お前に決闘を申し込むッ!」

「私が嫌だと言ったらどうするつもりだ?」

ルイーダは腕を組み、エルンストを睨みながら尋ねた。

「嫌だとは言えまい。おれが貴様の停まる寮に行って、各部屋を荒らすと告げればな」

ルイーダの片眉がピクリと音を立てて動く。

「成る程、この決闘の条件は金貨だな?貴様の目的は金貨……そういう事だな?」

「その通りだ。おれが決闘に勝てば、貴様の持っている金貨をもらおう」

「成る程、だが、この決闘を受けるにあたり、私が命と金貨を賭けるのに対し、貴様が命だけではいささか吊り合わないような気がするな」

「ご尤もだ。ならば、決闘に勝てば、私のこの槍を貴様にやろうではないか。それならば、公平な決闘になるだろう?」

ルイーダは首肯した。と、同時に互いに武器を構え合うのだが、その間に慌ててハンスが入り、自身の要求を二人に叫ぶ。

「ま、待ってくれ!おれがルイーダの代理としてこの決闘に臨みたいッ!勝って、あんたの槍をもらいたいんだッ!」

「やめておけ、ハンス……今のキミに上位魔法である高速魔法を扱えるか?今のキミに私と同じ剣技が扱えるか?」

ハンスはその言葉に対し、頭の中から反論の言葉が見つけ出せなかった。
ルイーダは彼の沈黙を肯定の返答と、とったのだろう。
黙って、彼を脇へと押し入り、再び剣を構えてエルンストと対峙していく。

エルンストは槍を彼女の目の前で一回転させ、その石突を地面の上で大きく叩くと、そのまま穂先を彼女に向けていく。
エルンストは正面に向けた槍を構えて、真っ直ぐに突っ込み、ルイーダの心臓へと真っ直ぐに向かっていく。
ルイーダは剣を縦に構えてエルンストの槍を真っ直ぐに迎え撃つ。

と、同時に空いた方の手でその掌から炎を噴き上げていく。
竜の放つ黒色の炎がエルンストを焼き尽くすかと思われたのだが、彼は槍を一度、自身の手元に引き戻し、身を交わす事によって、その炎を回避する事に成功する。
ルイーダは次に高速魔法を利用して、エルンストの元へと追い縋っていくのだが、彼も歴史に名を残すだけの事はあり、彼女と同じ魔法を用いて、超高速空間の中で槍を使って彼女の剣と斬り結ぶ。

高速空間の中での戦いであるので、普通の人々にはその姿がよく見えない。
当然、ハンスもそうであるのだが、ボロボロになった二人の姿を見つめるたびに激しい嫉妬心を覚えた。
強く、何度傷付きあっても、お互いの信じる者のために戦う二人の姿は、まさしく自身の理想とする気高い騎士の姿そのもので、その二人の決闘を見守る事すらできない自分に嫉妬心のようなものが芽生えて、気高き騎士道精神を持つ二人を憎らしく思ってしまうのだ。

だが、二人の理想とする騎士の決闘は外套の男の手によって妨害されてしまう。
二人の間には大きな戦斧を持った短い金髪に茶色の瞳をした中年と思われる男性がルイーダとエルンストの両方にその斧を向けていた。

「何者だ?」

双方が同音に問い掛ける。すると、中年の男はクックッと笑いながら、わざと自身の体を人差し指で指しながら調子の良い口調で答えた。

「おれか?おれの名前はアレクサンドリア。“アレク”とでも“アレッキー”とでも気軽に呼んでくれや。ちなみにおれは北の国の出身だぜ」

「随分と馴れ馴れしいな。貴様」

ルイーダは剣を突き付けながらアレクサンドリアを嗜めたが、彼は意に変えすどころか、ヘラヘラと笑っていた。

「さてと、おれはあんたらの疑問に答えたぜ、今度は貴様らがおれの質問に答える番だ。金貨はどこにある?」

「なんだと!?」

「わかってるんだろ?金貨だよ。潜水艦設計図の図面が組み込まれた金貨だ」

「オレだって知らんぞ、知っているのはそこの女だけだ」

「あぁ、アレクサンドリアとやら、私なら、その金貨の場所を知っているぞ」

「へへ、なら話が早いや。さっさと案内しろ」

「だが、私には案内するつもりなどない。潜水艦設計図とやらはマナエ党にも、北の国にも渡さんと決めているからな。どうしても、欲しければ、貴様が私の手から奪い取ってみせろ」

「へぇ、随分と舐め腐った事を言ってくれるじゃあないですか」

男は戦斧を振り回し、周りの空を切りながら、ルイーダの元へと近付いていく。
恐らく、自分とエルンストとの決闘に横入りをしたという事実から、この男も高速魔法を使用できるのだろう。
ルイーダは同時に横も見つめる。そこには何も言わずに槍を両手に持って、結論が出るのを待つエルンストの姿。
エルンストにとっても、あの男は敵の部類にあたるのだろう。

何せ、あの男は自分から北の国の出身だと名乗っていたのだから。
ルイーダは標的をどちらにしようかと悩んでいたのだが、覚悟を決めて、どちらにもその剣を振っていく。
同時に、エルンストとアレクサンドリアの両名が共に武器を振るい、ルイーダの剣を防いでいく。

彼女の剣に両名の武器の重みがのし掛かっていく。
おまけに、アレクサンドリアの武器からは氷が生じ、たちまちのうちに剣の半分までもが凍っていく。
ルイーダは一旦、背後に蹴りを入れて、後方へと下がると、自身の炎で剣身を溶かすと、もう一度、両名と斬り合いを続けていく。

今度はどこまでも喰らいつく予定である。
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