隙を突かれて殺された伝説の聖女騎士と劣等生の夫、共に手を取り、革命を起こす!

アンジェロ岩井

文字の大きさ
上 下
26 / 178
入学編

決闘!ラインハルト対ルイーダ

しおりを挟む
「決闘の場所は前にヨーゼフと戦った、例の校庭でいいだろ?」

ラインハルトの問い掛けにルイーダはに別もなく首を縦に振る。

「よし、さっさと始めるぞ」

ラインハルトの問い掛けに対し、彼女は疑う事もなく彼の後をついていく。
気掛かりなのは彼女を信奉する騎士である。ケニーは一旦は腰のホルスターに閉まったはずの拳銃の銃尻を落ち着きのない指でなぞっているのがその証拠だろう。
コニーは袖を強く引っ張って、自身の不安を兄に対して、表していく。

校庭の真ん中にて、両者はいよいよ対峙する事になった。
ハンスもケニー同様に先程からひっきりなしに拳銃を触っているし、ジードに至ってはその不安が顔から溢れ出て、それを隠そうともしない。
だが、そんな中で唯一、平然としているのがルイーダである。

彼女は臆病さなど微塵も見せずに、ラインハルトの後をついて行く。

「ミス・メルテロイ!臆する事なく、ここまで来た事だけは褒めてやろう!」

「その言葉、そっくりそのまま貴様に返してやろう」

ルイーダは人差し指を突き刺しながら、目の前で拳銃を構えるラインハルトに向かって言葉を返していく。

「貴様、後悔しても知らんぞ!」

ラインハルトは拳銃を構えるのと同時に擬似高速魔法を利用して、彼女の元へと向かっていく。
ルイーダも同じ高速魔法を利用して、ラインハルトに追い縋っていく。
今日はあまりにも使い過ぎた。そのため、ギアは使えない。スピードでの優位性は殆ど保てないと言ってもいいだろう。

ラインハルトはそれを待ってましたと言わんばかりに白緑色に覆われた弾丸を手持ちの拳銃から放っていく。
ルイーダはその弾丸がスロモーションで自身の眼の前にまで迫っている事を確認すると、竜の炎で弾丸を破壊し尽くした後に、飛び上がり、ラインハルトの目の前へと迫っていく。
そのまま、強烈な一撃を喰らわせようとしたのだが、彼はルイーダの拳を自身の手で防ぐと、そのままもう片方の空いた手で彼女を襲っていく。

幸いにも、ルイーダはその拳をもう片方の手の肘を突き出す事により防いで、それが自身の体を襲う事を防いだのである。
ラインハルトは自身の特殊な状況を察した。利き腕が彼女の拳を捕らえ、逆にそうでない方の手が彼女に捕らえられているという状況はどうあがいても抜け出せない。
ラインハルトは内心で舌を打ち、一度、手を離した後で、後方へと逃亡しようとしたのだが、ルイーダはそれを許さない。

拳に込めた力を強めていくのである。ラインハルトは獲物を求める狩人のような執念深さに恐怖を覚え、彼はルイーダに繰り出していた拳を離していく。
結果として、それが功を奏したらしい。
彼女はバランスが崩れた事に対応できずに、足元をふらつかせてしまう。

ラインハルトは勝利を確信した笑みを浮かべる。そのまま真下から拳を突き上げていくのだが、ルイーダは直前で踏み留まり、身を逸らすと、そのまま返す刀でと言わんばかりに、ラインハルトの顔に強烈な一撃を喰らわせていく。
ラインハルトは叫び声を上げて、地面の上を転がっていく。
その一撃は彼の仲間たちが体験したように重い一撃であったのだ。

彼は悲鳴を上げて、地面の上を転がっていく。
だが、エリックなどと違うのは殴られたショックを引き摺らない点にあるだろう。
彼は朝食の用意が出来た時のように素早く起き上がると、再び自身の魔法を込めた弾丸を放った事だろう。

無論、彼は疑似高速魔法を利用しているので、その弾丸もスロモーションに放たれているのが目に見えるが、これも策略なのである。
ルイーダはあの弾丸など避けられると高を括っているだろう。
だが、それが罠。一番危うい考えなのである。
ラインハルトが生徒会の切り札と言われる所以はスローモーションとなっている物や人を触れる事により、自身が触れる事により、元のスピードに戻す事にあるのだ。

避けられると思ったルイーダが蜂の巣にされて死ぬ姿はさぞ滑稽だろう。
その高慢な鼻柱をそれで叩き折って、地獄へと叩き落とす。
これ程までに愉快な事があるだろうか。
ラインハルトの中の笑みが隠し切れなくなった時だ。
突然、赤黒い炎が弾丸の前に放たれて、全ての弾丸が消え去っていく。

「な、何ィィィィィ~!!!」

「貴様はどうやら、あの弾丸に何か仕込んでいたらしいな。だが、それも燃やしてしまえば、終わりだ。二度と、この決闘で私が貴様に殺される事はあるまい」

ラインハルトが慌てて、引き金を引こうとしたものの、どうやら、弾切れをおこしてしまったらしい。
カチカチと虚しい音が校庭の中に鳴り響いていく。

「こ、こんなバカなッ!」

「終わりだ」

ルイーダは口元に勝利を確信した笑みを浮かべると、そのまま真っ直ぐにラインハルトの顔へとその拳を叩き込む。
彼は悲鳴を上げて後方へと吹き飛んでいく。
同時に、歓声が上がっていく。全員が悟ったのだ。生徒会支配の終焉を。
そして、これから始まる期待に満ちた新たなる学園生活を。

周りに詰め掛けていた生徒たちに捕縛されたラインハルトはそのまま彼が所属する寮の地下室へと処分される事になった。
クレメンティーネ・ズィーベンもエリック・フォン・クロージックも同様の憂き目に遭うらしい。
唯一の例外は討論会からの戦いの際に心を入れ替えたコルネリアだけ。

ヨーゼフや他の生徒たちも例外なく、これまでの恨みとばかりに小突き回されながら、地下室へと連れられていく。
翌日、生徒会支配の終焉はエックハルトの記事により、特集されて大々的に知らされる事になった。
同時に、生徒会制度もルイーダの直談判により修正される事になったという。

「これからの生徒会長は学校の成績や家柄などといったものに拘らずに、生徒により、直接の投票によって決める事にしよう。これならば、誰でも生徒会長になれるからな」

この提案は生徒会を倒したルイーダにより提案された事により、教師や理事長たちは承認せざるを得ない。
この新制度の下に新らたに生徒会長に就任し、圧倒的な歓声を持って迎えられたのがルイーダ・メルテロイである。

「諸君、我らと共にこの学園を、いいや、世界そのものを変えていこうではないかッ!世界を元の正しく清い世界へと戻すために共に戦っていこうではないかッ!」

新生徒会長就任の演説は熱狂的な拍手と賛辞の言葉により迎えられ、彼女は騎士という名称に相応しい威風堂々たらん態度でそれに答えたのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され……

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...