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入学編
エリック・フォン・クロージックの陰謀
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「クックッ、これでは流石の女騎士も這い上がれないだろうな」
短いオレンジ色の髪をした青年、エリックは勝ち誇った表情を浮かべながら言った。
「お前!卑怯だぞ!ルイーダに勝つためにこんな手を使うなんて!」
ジードは拳を震わせながら、懸命に抗議の言葉を浴びせていくが、エリックには効果がないらしい。
平然と、まるで、何事もないかのような表情を浮かべながら、ハンスの首元をそのナイフの先端でなぞっていくではないか。
「なんとでもいえ、どうせ、貴様は妻と違って何もできないんだからな。本当に情けない男だ」
エリックは嘲るように言う。ニタニタという陰湿な笑みがこちらにまで伝わってくるが、ジードとしては動けない。
落ちこぼれの自分が動いたとしても、ハンスを助けられるわけがない。
ジードが下唇を噛み締め、自身の拳を爪を食い込ませるまでに強く握り締めていると、なんと、憔悴した様子のコルネリアが立ち上がって、その銃口をエリックに向けているではないか。
「なんのつもりです?副生徒会長」
「会長のあの様を見て、私はようやく生徒会の愚かさに気が付いた。エリック、悪い事は言わない。その青年をこちらに渡すんだ」
「嫌だね」
エリックは生徒会の役員であり、同時に先輩が相手だというのに、敬語すら使わずに言った。
「なら、撃つぞ」
彼女は猟銃を改造した銃を構えて言ったのだが、エリックは相変わらずの憎たらしい笑みを浮かべて、挑発するばかりである。
彼女としてもその銃の引き金を引く事はできなかった。この引き金を引けば、人質であるハンスが死亡する可能性や弾が逸れたとしても、逆上したエリックがハンスの首を掻き切る可能性の方が高かったからだ。
だから、彼女の表情には迷いがあったのだ。
それに射撃技術もエリックに当てるほどの自身はない。
コルネリアは悔しい思いで一杯である。
ここにきて、何もできない自分に対して腹が立って仕方がない。
そんな時だ。真横では未だにウジウジとしているジードの姿が見えた。
その姿のなんて情けない事だろう。まるで、欲しい玩具を前にして親にねだろうと留まっている子供のようではないか。
コルネリアがここにきて行ったのは、ジードへの叱責であった。
「情けないぞ!貴様!それでも、ルイーダ・メルテロイの夫かッ!」
意外そうなに自分を指さすジードを他所に、コルネリアは自身の思いの丈をぶつけていく。
「ルイーダ・メルテロイは騎士を目指す人々の憧れなんだッ!邪悪な竜を討伐しだけれども、最期にはその力を危惧した王によって殺される悲劇の騎士!そんな騎士に憧れて、騎士を目指した人々が居るって事を忘れるなッ!」
「なにかと思えば、コルネリアさん。いきなり、騎士道物語の話なんかし始めて、騎士の会にでも入会したのかい?」
エリックが白と黄色との中間である乱雑な男の象徴のような歯を見せて笑う。
だが、彼女はそんな下劣な嘲笑や罵声など無視して、説得を続けていく。
「キミがここで足を引っ張るのが、どれだけ、ルイーダ・メルテロイを傷付けるのを考えたらどうだッ!」
その言葉に触発されたのか、エリックは唸り声を上げると、エリックの元へと突っ込んでいく。
咄嗟の突進であったので、人質を利用するという機転も思い付かなかったのだろう。ジードの突進により、もみくちゃにされたエリックは人質を自身の手元から離してしまう。
「な、し、しっ、しまった!?」
そして、時に必死になった素人の拳は稀に物凄い力を出すものである。
ジードの拳を正面から喰らったエリックは檀の上でよろめき、足をステップさせたかと思うと、悲鳴を上げながら檀の上に寝転ぶ。
横になる彼の姿を見れば、もうこれ以上は害がないと判断してもいいだろう。
だが、コルネリアはそうではないらしい。猟銃を改造した拳銃を携えて、エリックの首元にその銃口を突き付ける。
「降伏するんだ。さもないと、私の銃がキミの頭を撃ち抜くぞ」
「う、撃てるのならば撃ってみやがれ!どうせ、撃てる度胸もないくせに口だけでーー」
「本当に口先だけだと思うか?」
コルネリアは銃口でその体をグリグリと弄りながら、エリックに向かって言い放つ。
氷のような冷たい声色が彼の心を揺さぶったのか、彼はまるで真冬の中にでも立たされたかのように全身を震わせていくではないか。
コルネリアは恐怖の表情を顔いっぱいに浮かべるエリックに対し、容赦なく、その眉間に銃口を付ける。
「終わりだ。貴様もこれまでの生徒会も」
いよいよもって、その引き金が引かれようとした時だ。
「ま、待ってよ!」
と、背後からそれを止める声が聞こえた。慌てて、彼女が振り返ると、そこには血相を変えたジードの姿。
「そんな奴のためにあんたが手を汚す必要なんてないよ!」
「だが、こいつを殺さねば、いずれはこいつは更なる危機を起こすだろう。先程とは比較にはならない程の規模の、な」
「それでも、あんたはそんな奴のために手を汚してもいいのかい!?その腕はこれから、国のために使うんだろ?」
ジードのその説得が功を奏したのか、胸を打たれらしいコルネリアは銃口を眉間から引いて、代わりにその大きな銃尻でエリックの頭を叩き付ける。
「これでいいだろ?これで、もうこいつは動けまい」
「あぁ、これでもう終わりだろうな」
エリック・フォン・クロージックの敗北は確定し、それは檀下のラインハルトの顔が青ざめていく姿が見えた。
「貴様もそろそろ終わりみたいだな?折角の貴様の奥の手も我が夫の前には敵わなかったらしい」
ルイーダが感心したように告げるのとは反対に、ラインハルトは声を裏返しながら、汚い言葉で彼女を罵っていく。
「離せッ!このクソッタレのノータリンめがッ!」
「随分と汚い言葉を口になさるようだ。到底、高潔なるラッキーオフィサーの言葉とは思えんな」
「だ、黙れッ!貴様こそ、騎士ならば騎士らしく、決闘に応じたらどうだ?」
「いいだろう」
ルイーダのその言葉に呆気に取られたのは、彼女の目の前にいたコニーだけではない。
周辺に居た彼女の見方の殆どが目を見張ったのである。ラインハルトは言った本人であるのに、目を大きく見張っているではないか。
「る、ルイーダ!!考え直してくれ!こいつが決闘のルールを守るとは思えないッ!」
ケニーは忠誠を誓う相手に心からの警告を捧げたものの、彼女はかぶりを振って、幼い自身の騎士に何故にこの決闘を受けた理由を説明していく。
「これは代理の決闘なのだ。すなわち、この戦いを収めるためのな……これ以上の混戦は避けたかろう?だから、私はこの男との決闘を受け入れた。それだけの事だ」
「そういう事だ。小僧……この決闘ではオレが勝って、学園の秩序を再び正してやる事にするぜ!ハッハッ!!」
「……だそうだが、案ずるな。私は負けん」
ルイーダは不安がる幼い忠義者に精一杯の笑顔を浮かべて言った。
短いオレンジ色の髪をした青年、エリックは勝ち誇った表情を浮かべながら言った。
「お前!卑怯だぞ!ルイーダに勝つためにこんな手を使うなんて!」
ジードは拳を震わせながら、懸命に抗議の言葉を浴びせていくが、エリックには効果がないらしい。
平然と、まるで、何事もないかのような表情を浮かべながら、ハンスの首元をそのナイフの先端でなぞっていくではないか。
「なんとでもいえ、どうせ、貴様は妻と違って何もできないんだからな。本当に情けない男だ」
エリックは嘲るように言う。ニタニタという陰湿な笑みがこちらにまで伝わってくるが、ジードとしては動けない。
落ちこぼれの自分が動いたとしても、ハンスを助けられるわけがない。
ジードが下唇を噛み締め、自身の拳を爪を食い込ませるまでに強く握り締めていると、なんと、憔悴した様子のコルネリアが立ち上がって、その銃口をエリックに向けているではないか。
「なんのつもりです?副生徒会長」
「会長のあの様を見て、私はようやく生徒会の愚かさに気が付いた。エリック、悪い事は言わない。その青年をこちらに渡すんだ」
「嫌だね」
エリックは生徒会の役員であり、同時に先輩が相手だというのに、敬語すら使わずに言った。
「なら、撃つぞ」
彼女は猟銃を改造した銃を構えて言ったのだが、エリックは相変わらずの憎たらしい笑みを浮かべて、挑発するばかりである。
彼女としてもその銃の引き金を引く事はできなかった。この引き金を引けば、人質であるハンスが死亡する可能性や弾が逸れたとしても、逆上したエリックがハンスの首を掻き切る可能性の方が高かったからだ。
だから、彼女の表情には迷いがあったのだ。
それに射撃技術もエリックに当てるほどの自身はない。
コルネリアは悔しい思いで一杯である。
ここにきて、何もできない自分に対して腹が立って仕方がない。
そんな時だ。真横では未だにウジウジとしているジードの姿が見えた。
その姿のなんて情けない事だろう。まるで、欲しい玩具を前にして親にねだろうと留まっている子供のようではないか。
コルネリアがここにきて行ったのは、ジードへの叱責であった。
「情けないぞ!貴様!それでも、ルイーダ・メルテロイの夫かッ!」
意外そうなに自分を指さすジードを他所に、コルネリアは自身の思いの丈をぶつけていく。
「ルイーダ・メルテロイは騎士を目指す人々の憧れなんだッ!邪悪な竜を討伐しだけれども、最期にはその力を危惧した王によって殺される悲劇の騎士!そんな騎士に憧れて、騎士を目指した人々が居るって事を忘れるなッ!」
「なにかと思えば、コルネリアさん。いきなり、騎士道物語の話なんかし始めて、騎士の会にでも入会したのかい?」
エリックが白と黄色との中間である乱雑な男の象徴のような歯を見せて笑う。
だが、彼女はそんな下劣な嘲笑や罵声など無視して、説得を続けていく。
「キミがここで足を引っ張るのが、どれだけ、ルイーダ・メルテロイを傷付けるのを考えたらどうだッ!」
その言葉に触発されたのか、エリックは唸り声を上げると、エリックの元へと突っ込んでいく。
咄嗟の突進であったので、人質を利用するという機転も思い付かなかったのだろう。ジードの突進により、もみくちゃにされたエリックは人質を自身の手元から離してしまう。
「な、し、しっ、しまった!?」
そして、時に必死になった素人の拳は稀に物凄い力を出すものである。
ジードの拳を正面から喰らったエリックは檀の上でよろめき、足をステップさせたかと思うと、悲鳴を上げながら檀の上に寝転ぶ。
横になる彼の姿を見れば、もうこれ以上は害がないと判断してもいいだろう。
だが、コルネリアはそうではないらしい。猟銃を改造した拳銃を携えて、エリックの首元にその銃口を突き付ける。
「降伏するんだ。さもないと、私の銃がキミの頭を撃ち抜くぞ」
「う、撃てるのならば撃ってみやがれ!どうせ、撃てる度胸もないくせに口だけでーー」
「本当に口先だけだと思うか?」
コルネリアは銃口でその体をグリグリと弄りながら、エリックに向かって言い放つ。
氷のような冷たい声色が彼の心を揺さぶったのか、彼はまるで真冬の中にでも立たされたかのように全身を震わせていくではないか。
コルネリアは恐怖の表情を顔いっぱいに浮かべるエリックに対し、容赦なく、その眉間に銃口を付ける。
「終わりだ。貴様もこれまでの生徒会も」
いよいよもって、その引き金が引かれようとした時だ。
「ま、待ってよ!」
と、背後からそれを止める声が聞こえた。慌てて、彼女が振り返ると、そこには血相を変えたジードの姿。
「そんな奴のためにあんたが手を汚す必要なんてないよ!」
「だが、こいつを殺さねば、いずれはこいつは更なる危機を起こすだろう。先程とは比較にはならない程の規模の、な」
「それでも、あんたはそんな奴のために手を汚してもいいのかい!?その腕はこれから、国のために使うんだろ?」
ジードのその説得が功を奏したのか、胸を打たれらしいコルネリアは銃口を眉間から引いて、代わりにその大きな銃尻でエリックの頭を叩き付ける。
「これでいいだろ?これで、もうこいつは動けまい」
「あぁ、これでもう終わりだろうな」
エリック・フォン・クロージックの敗北は確定し、それは檀下のラインハルトの顔が青ざめていく姿が見えた。
「貴様もそろそろ終わりみたいだな?折角の貴様の奥の手も我が夫の前には敵わなかったらしい」
ルイーダが感心したように告げるのとは反対に、ラインハルトは声を裏返しながら、汚い言葉で彼女を罵っていく。
「離せッ!このクソッタレのノータリンめがッ!」
「随分と汚い言葉を口になさるようだ。到底、高潔なるラッキーオフィサーの言葉とは思えんな」
「だ、黙れッ!貴様こそ、騎士ならば騎士らしく、決闘に応じたらどうだ?」
「いいだろう」
ルイーダのその言葉に呆気に取られたのは、彼女の目の前にいたコニーだけではない。
周辺に居た彼女の見方の殆どが目を見張ったのである。ラインハルトは言った本人であるのに、目を大きく見張っているではないか。
「る、ルイーダ!!考え直してくれ!こいつが決闘のルールを守るとは思えないッ!」
ケニーは忠誠を誓う相手に心からの警告を捧げたものの、彼女はかぶりを振って、幼い自身の騎士に何故にこの決闘を受けた理由を説明していく。
「これは代理の決闘なのだ。すなわち、この戦いを収めるためのな……これ以上の混戦は避けたかろう?だから、私はこの男との決闘を受け入れた。それだけの事だ」
「そういう事だ。小僧……この決闘ではオレが勝って、学園の秩序を再び正してやる事にするぜ!ハッハッ!!」
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