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入学編

フォーレンゲルダ家は元の主人に、では、オーランドは

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オーランドと名乗る騎士を先祖に持つ事は彼にとっては自慢であった。
現在、魔銃士育成学園の新聞部にてその籍を置く、エックハルト・アイズマンは自慢の先祖こそ持っているものの、自身は新聞部にて、つまらないカメラを弄りながら、学園生活を運命付けられている事に退屈みを感じていた。
エックハルトは普段、痩せこけた体に重い四角い形の眼鏡を掛け、赤い髪をしている事から、負け組と呼ばれても仕方のない立場にいてもおかしくはないのだが、新聞部の部員としての腕は高いのが幸いしてか、“エック”という愛称で新聞部の面々からは親しまれている。それでも、彼の組む記事は大抵、生徒会やマナエ党に批判的な記事だとして、修正を喰らってしまう。

エックは自身に与えられた記事をボツにされた時には憤りを感じたが、涼やかな笑顔の裏にドス黒さを感じるクレメンティーネに逆らう事ができずに、虚しさのようなものを感じていた。
そんな時だ。ラッキーオフィサーを務める双子の兄妹が生徒会を離反したという報道を聞き付けたのは。
彼が慌てて、カメラを携えて生徒会室の扉の前へと向かうと、そこには丁度、生徒会の面々と言い合いになっていた双子の兄妹並びにルイーダの姿があった。

彼は慌てて言い争い合う姿を見て、シャッターを切り、その言い争いの内容を詳細にメモへと記していく。

「バカな!そんな事ができるわけないでしょう!」

必死の形相を浮かべて応対するクレメンティーネに対し、ルイーダは冷静な様子で言葉を発していく。

「私は一介の生徒として、ここの生徒会のやり方に疑問を持っているから、討論会を開かせてくれと請求しているだけだ。断るのなら、生徒会室に火でも放ってやろうか」

「貴様!神聖なる生徒会の部屋になんて事を!」

「言うだけなら、何を言っても勝手だろう。それとも、生徒会というのは生徒一人の冗談に一々、目くじらを立てなければやっていけんのかな?」

「貴様ァァァァァ~!!」

副生徒会長はついに堪忍袋の尾が切れたらしく、ルイーダの胸ぐらを強く掴み上げるが、ルイーダはその腕を優しく叩くだけである。

「この手はなんだ?まさか、生徒会というのは武器も持たない一般生徒を攻撃する集団なのかな?」

副生徒会長がいよいよ、その拳を彼女の顔へとぶつけようとした時だ。
クレメンティーネは彼女のその手を掴んで、それを妨害する。

「気持ちはわかるけど、ここでこの女の手に乗ってはダメよ。いいわ。あなたの提案に乗ってあげましょう」

「感謝しよう。ズィーベン殿」

ルイーダはそれだけ告げると、副生徒会長を強引に自身の胸元から引き離し、共に来ていた二人の騎士と夫とを連れ、元来た道を引き返していく。
その瞬間をエックは逃さなかった。カメラとメモを携えながら、伝説の女騎士にすかさずインタビューを行なっていく。

「ま、待ってくれ!あんたはさっき、生徒会に宣戦布告したのか?」

「その通りだ。生徒会の横暴にはいささか腹が立っていたからな。喜べ〈獲物〉クラスに属する全寮の人々よ!貴君らがその辛酸の涙を流すのもこれまでだ!私がこの腐りきった学園を変えてやろうではないか!」

ルイーダは人差し指を突き付けながら、生徒会へと宣戦布告を行う。
その姿をエックはようやくの思いでシャッターに収めたのであった。
エックはその後も彼女の夫であるジードフリード。ジード。そして、ラッキーオフィサーのメンバーであった双子の兄妹に密着した取材を行なっていく。

四人は学園内におけるラッキーオフィサーであるヨーゼフの横暴や他の〈狩人〉クラスの生徒たちの横暴を止めるために動いており、その中でも剣術部における魔銃士候補生の横暴を止めたのは見事といってもいい。
短くて黒い髪にガッチリとした体型の青年は自身の練習の木製の剣を魔法を用いて、本当の剣に変えたのである。
しかも、それで相手の青年に対して、切り掛かっていたのだから、彼が殺されるのも無理はあるまい。

本当の剣を持った彼が咄嗟の事に怯える青年に対し、唸り声を上げて襲い掛かってきたのだが、彼女は至極あっさりと交わすのと同時に、その首を自身の剣で掻き切ったのである。
助けられた長く黒髪の見た目麗しい青年は首から赤黒い血を出している青年を他所に、ルイーダに礼を述べていたが、彼女は偉ぶる事もなく言った。

「なぁに、大した事はしていないさ。先に剣を抜いたのはあやつなのだからな。切られても文句はあるまい」

短い髪の青年が練習用の木製の剣を本当の剣に魔法で変えたのはエックが写真に収めていたし、何よりも周りの生徒たちが目撃している。
生徒会は無理矢理にルイーダのこの件を警察に突き出そうとしていたが、写真と証言とが警察の介入を阻む事になった。
これに対し、不満を爆発させたのは剣術部の顧問であり、育成学園の教師でもあり、同時に殺された生徒の父親でもある、アウグスト・フォン・ハインリヒである。

東洋の魔法使いのような長くて白い顎髭を伸ばした、彼は直に生徒会室を訪れ、ズィーベン生徒会長に直談判していた。

「会長!この件については納得がいかない!今すぐにあの女を殺す許可をわしに与えてくれ!」

「……今はダメです。殺すのならば、討論会の日にお願いします」

「なぜだ?」

アウグストは老いたりとはいえ、剣術部の顧問を務めているためか、そのガッチリとした両腕を机に掛けてその力を強めていく。
クレメンティーネはこれ以上、老齢の戦死を刺激しないために、その理由を話す事にした。

「討論会の日、あの連中は私たちが指し示すデータや事例の前になす術もなく破れ去るでしょう。その際に、恐らく、最後には力に訴える事は目に見えています。それを大義名分に、あなたはあの女をお殺しなさいませ」

アウグストはそれを聞くと、机の上から両手を離し、下を向いて表情を隠す。
だが、やかで、その両目を大きく見開くのと同時に、生徒会長の座る机を大きく叩いて、彼女を怒鳴り散らす。

「そうか、そうか、詭弁もいい加減にしろ!私はそんな悠長な真似は待ってられんのだ!見ていろ!時代遅れだが、息子が得意としていたやり方であの女を葬ってやろう!」

アウグストは腰に下げていた銃を机の上に置くと、わざとドカドカと音を立てながら生徒会室を後にした。
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