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ロックウェル一族の闘争篇

高層ビルの決戦ーその④

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「まあまあ、お嬢さん……考えてもみたまえよ。私が周りの兵士たちに指示を出せば、キミは一気にあの世に行って最後の審判を受ける羽目になるんだよ」
「そんなのあたしは恐れないッ!」
メアリーはそう言ってエリックを睨みつける。
だが、エリックは特別な反応をする事なく、相変わらず不敵な笑顔を見せるばかり。
「な、何がおかしいの!?」
「失礼、キミがあまりにも青く甘い人間だと思ってね、多くの人間を見てきた、私が言うから間違い無いんだが、キミのような感情に任せるタイプは早死にするんだ……日本の会社を奪い取った時に、直情型の社長がいてね……そいつは私の挑発に乗った挙句に降伏するから許してくれ……せめて、社員の退職金分だけでも払って欲しい、と私に懇願したんだよ」
「それで、あなたはどうしたの?」
「断ったに決まってるさ、勝手に挑発に乗って、会社を破綻させた奴に金なんぞやれるかとな……」
メアリーはその言葉を聞くなり、その日本の社長に同情せずにはいられない。
彼は恐らく、情に熱い人間だったのだろう。それ故にロックウェル家の卑劣な挑発に乗り、会社を破綻させられてしまったのだ。
挑発に乗ったのはその社長自身。だからこそその点については同情しない。
だからこそ、社員のために泣きついたという部分には同情を覚える。
それだけに、その事を武勇伝のように語る目の前の男が許せなかった。
「ハッハッ、どうしたんだね?そんなに顔を赤くして……まるで、日本の民話に出てくる『鬼』のようだよ」
「『鬼』?それなら、それで結構……あなた達に怖がられるなら、それはそれで本望かもね……」
そのメアリーの言葉を聞くなり、ローランドは大きく唇を緩めて、
「ふん、あまり強がるなよ。お前の命運は今や我々が握っているんだからなッ!」
「粋がってなんかないよ。ただ……あんたらがどうしても許せないって事だけさッ!」
メアリーはそう叫ぶのと同時に社長机の前に立っていた、エリックに向かって拳銃の引き金を引く。
だが、メアリーの放った弾は……。
「フフフ、私はエリック・ロックウェル……ロックウェル家の実質的な2代目当主だぞ、その程度の攻撃を予測していなかったとでも言うのか?」
「あなたは悪魔ね」
メアリーがそう呟くのも無理はない。何故なら、エリックがメアリーの銃弾を防ぐために使用したのは、秘書のジョセフだったから。
ジョセフは眉間から血を流しており、筋肉の関係なのだろう。
舌を出して、ブラリと垂れていた。
そんなジョセフをエリックはゴミでも捨てるかのように放り捨て、
「これで、私の実力が分かっただろ?誰もが私に従うのだ。もはや私自身がこの世界の法といっても過言ではないのだ」
「あたしはそんな法律は認めないッ!」
「最後に言いたい言葉はそれだけかな?やれッ!お前たち! 」
メアリーと他の警察官たちに向かって、銃口が向けられる。
メアリーが死を覚悟して目を瞑った、まさにその時だ。
「な、何だ!?」
エリックは大きな揺れを感じて、その場に崩れ落ちてしまう。
だが、それは彼にとっては結果的に『吉』になったに違いない。
次の瞬間には天井に穴ができ、その下にいた警備兵たちが一瞬のうちに消失してしまったのだから。
「い、一体何が起きた!?」
「私の仕業だよ」
その言葉ともに空いた天井から顔を覗かせたのは、アンドリュー・カンブリア本人。
「あなたがエリック・ロックウェルですね?」
「そ、そうだが……」
「ならば、よかったです。もう少しだけお待ちいただけますか?すぐにそちらの方へと向かいますから……」
アンドリューのその言葉はエリックはともかく、ローランドには死刑執行の言葉のように聞こえたらしく、全身をプルプルと震わせている。
その様子を見苦しく思ったのか、エリックは机を強く叩きつけ、
「狼狽えるなッ!ローランドッ!貴様……それでも男なのか!?みっともない奴だッ!」
エリックの叱責が応えたのだろう。ローランドは全身を震わせるのを止めて、代わりにCMSを嵌める。
「それでいいぞ、では私も付けさせてもらおうか……」
エリック自身も社長椅子の下から、CMSを取り出し、右腕に装着する。
それから、天井からの電磁波に怯えて、その場で尻餅を付いているメアリーに向かって、
「これが何なのか分かるかね?」
「ああ、ジャック・カルデネーロが抵抗の際に使った……例の」
「その通り、コンパクト・マジック・ソード略して、CMSらしい……」
「でも、あなたはどんな魔法が使えるのか知らないんでしょ?それだったら、意味ないじゃん」
メアリーの挑発じみた言葉が引き金となったのかは本人のみぞ知る事だが、エリックは穴の空いた天井に向かって、右腕を掲げ、次の瞬間には……。
「な、なんて事なの!?大きな光が……?」
「その通りだよ。あのアンドリューなる男はギルゴアの挑発から分かるが、電磁波を扱えるらしいがね。私自身の魔法も負けず劣らずの魔法と思わないかい?」
「説明するとだな、エリックの魔法は『光』だよ。レーザー光線のような殺人光線だよ」
ローランドの解説にも、メアリーはそうと告げるばかり。
「可愛げのない女だな、まあそろそろ潮時だろうな」
エリックがメアリーとその部下の警察官たちに向かって、自身の右腕を向けた時だ。
勢いよく、扉が開かれ、
「さてと、突然のご来訪失礼致します……エリック・ロックウェル様にローランド・ロックウェル様。本当に突然で悪いのですが、あなた方お二方のお命を頂戴いたします」
まるで、日本の時代劇に出てくる悪役のようなセリフを吐いて登場したのは、アンドリュー・カンブリア。
その横には従者のように立っていたのは、メアリーのかつての相棒、チャーリー・クレイ。
チャーリーは真っ白な歯を見せながら、
「大変だったね、助けに来たよ。メアリー」
メアリーはチャーリーの言葉に思わずそっぽを向いてしまう。
「ようやく、お出ましのようだな、本日の主客が」
エリックは両手を叩きながら言う。
「ええ、温かいおもてなしに心の底から感謝致しますよ」
アンドリューは皮肉混じりの感謝の言葉を述べる。
だが、エリックはそんなアンドリューの皮肉を無視して、
「それは光栄だな、では更なるおもてなしをご用意したので、楽しんでいただけると幸いだ」
エリックはアンドリューに向かって、CMSの付いた右腕を向ける。
アンドリューもそれに対抗して、自らのCMSの付いた右腕をエリックに向けた。
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