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ホープ・オブ・マジシャンスクール編
そして、盾の騎士は英雄となる
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問題は互いの盾が壊れてその身が割れた時だ。そこに隙を見出さなければ彼は倒せないだろう。
もう一度、あの男が地面を蹴ってこちらに向かってきたその時こそが、決戦の時だ。
もう一度、いやもう二度彼は私に向かって攻撃を繰り出す。
盾の攻撃が繰り出され、あの男の姿が現れる。チャンスだ。私は一瞬の間に生じた隙を狙って拳銃を放つ。
男は私が銃口を構えたのを見て自分も引き金を引かねばならないのだと判断したのだろうが、もう遅い。
私の放った銃弾が彼の足を貫き、彼を戦闘不能に追い込む。
私は銃を突き付けて彼の元へと向かおうとしたが、彼は私を跳ね除けて例の盾の中に籠もっていく。
彼は盾の中で鋭い視線で私を睨み続けていた。
だが、私は男の視線に怯える事なく彼に向かって銃口を突き付ける。
「……おれの完敗か……クソッタレ、オレはこんな所で倒れる訳にはいかねーんだよ」
「その心意気は見事よ。でも、もう大人しく投降しましょう?」
だが、それを聞いた騎士は激しい口調で私を弾劾していく。
「ふざけるなッ!オレはこのまま王国に捕まったんだったら、死刑は確実なんだよッ!別に死ぬのなんて怖くないが、あの女を……オレたちの国に巣食う疫病の源を摘出しなければ死んでも死に切れねーんだ」
その言葉を聞いて彼に同情の心を寄せた私は思わずマルセラ王女の侍女の正体について教えようかと考えたのだが、このホテルに妹と共に戦いから逃げた王女がまた戻ってくるのかもしれないという事から、私はその事については口を紡ぐ事にした。
その代わりに、彼に対してある提案をしてみた。
「ねぇ、あなたは立場はどうであれ、この国で何か犯罪を犯さなかった?」
男は私のその言葉を聞いて思わず両目を見開く。
だが、直ぐに視線を逸らす。どうやら、彼が、今着ているスーツにコートは何処からか盗ったもの、もしくは奪った金である可能性は高い。
私は盾に籠り、足を抑えて一定の方向を虚な目で見つめていた彼に対して満面の笑みを浮かべて提案する。
「あなたの身柄はこちらで預かるわ。あなたはウィンストン・セイライムの法廷で裁きを受ける羽目になるでしょうけれども、死刑になるような事をしていないのならば、あなたはきっと命は助けられる筈よ」
その言葉を聞いて一瞬、彼の顔が輝く。だが、直ぐに表情に陰りを見せた。
彼はその暗い顔で地面に視線を下ろして、
「ありがとう。けれども、刑務所に閉じ込められたままじゃあ、生きている人生とは言えない……オレは絶対に国の不穏分子をーー」
彼はその続きを喋ろうとはしたものの、私はその続きを聞けず、また彼も喋る事が出来なかった。
と、いうのも逃げた筈の王女がホテルに舞い戻り、彼と話している私を突き飛ばし、彼が篭っている見えない盾を蹴り始めたからだ。
眉間に青筋を立てて歯を食い縛りながら、見えない盾をひたすらに蹴り続ける姿は人間には見えない。
まるで、鬼女ではないか。彼女は口汚く盾の騎士を煽り続けていく。
「よくもッ!この私に向かって歯向いやがったなッ!このクズがッ!何様だと思ってやがるッ!パパから受けた恩も忘れやがってッ!このクズがッ!」
私は思わずその口の汚さにゾッとしてしまう。まるで、街で弱者を恐喝するギャングのようだ。今の彼女から気品も気高さも優雅さえも感じられない。
ただのチンピラだ。勿論、あの騎士の盾はこの程度のもので壊されるものではない。なので、蹴ったとしてもダメージが入るのは彼女の脚だけだろう。
だが、彼女はそんな事は構いもせずに蹴りを入れ続けていく。
あまりにも醜悪な光景だ。背後で妹が止める声が聞こえたのだが、彼女は構わずに蹴り続けていた。
だから、彼女が現在、人質にされているのも自業自得だとしか思えない。
マルセラ王女を人質にした彼はその場に居合わせた私たちに向かって要求する。彼女の王位継承権の放棄を。
何という間抜けな王女なのだろう。彼女はあろう事か見えない盾を蹴り続けるのに夢中になっていたために、咄嗟に盾を消した男の事に気が付かなかったのだ。
彼女は振り上げた脚をそのまま地面へと落とそうとした時に、弱っていた筈の盾の騎士に脚を掴まれてそのまま人質にされてしまったのだ。
私は思わず溜息を吐く。どうして、父はいや、四大国家の元首たちはこんな奴の畏敬訪問を受け入れたのだろう。
明らかに火薬で満杯で少しでも火を灯せば爆発しそうな火薬庫を押し付けられたようなものではないか。
もしかしすると、スパイスシーの向こう。帝国の属国である王国は帝国と四大国家とを対立させるためにこの王女を押し付けたのではないか。
いや、それならば血塗れグラントが抹殺のために潜入している理由が分からない。
そもそも、海の向こうの国王にそんな度胸がある筈がない。大方、しょうもない理由だろう。
だが、彼女は私の考察を大きな声で遮り、私に向かって助けを求める。
「何をやっているゥ!早く私を助けろ!使用人の分際でお前たちは何をやっているッ!」
私は無言で王女の頭に小型のショットガンを突き付けている男の頭に向かって狙いを付ける。
これが上手くいけば、王女は助かる筈だ。私が意を決して彼に向かって銃を突き付けた時だ。
捕らえられていた王女が大きな声で叫ぶ。
「何だ?その銃は私を殺す気だろう!?私を殺すのか!?この人殺しがッ!」
もういい。もうどうなろうが知った事か。
私は拳銃を構えて大きな声で叫ぶ。
「このド外道がァァァァァ~!!」
その叫び声と共に弾丸が放たれて脚を突きながらも彼女を人質に最後の勝負に打って出ていた男を撃ち殺す。
私は額から赤い蛇を出し、目を見開いて地面の上で大の字になっている男を見つめた。密かに彼に詫びを入れて私は地面の上で震えている王女の保護に向かう。
王女は自分の所為が原因でこのような目に遭ったのにも関わらず、ただ私の事ばかりを責め立てていく。
だが、私はそんな行為に構う事はなく地面の上で倒れた男に向かって詫びを入れていく。
先程の『ド外道』は私の胸で私を叩く緑色の髪の王女に向けたものだと。
私は慌てて駆け付けた妹と王女の侍女に王女を託してホテルの外へと向かう。
ホテルの外に出ると空の上には満点の星空。
そこに流れ星が一つ落ちたのを見届けた。もしかすれば、あの星は私が先程、撃ち殺した盾の魔法を使う騎士だったのかもしれない。
やはり、言えば良かったかもしれない。王女は帝国か共和国のどちらかで死ぬ事になると。
私はそれから、暫くの間、ただ呆然とした様子で星空を眺めていた。
もう一度、あの男が地面を蹴ってこちらに向かってきたその時こそが、決戦の時だ。
もう一度、いやもう二度彼は私に向かって攻撃を繰り出す。
盾の攻撃が繰り出され、あの男の姿が現れる。チャンスだ。私は一瞬の間に生じた隙を狙って拳銃を放つ。
男は私が銃口を構えたのを見て自分も引き金を引かねばならないのだと判断したのだろうが、もう遅い。
私の放った銃弾が彼の足を貫き、彼を戦闘不能に追い込む。
私は銃を突き付けて彼の元へと向かおうとしたが、彼は私を跳ね除けて例の盾の中に籠もっていく。
彼は盾の中で鋭い視線で私を睨み続けていた。
だが、私は男の視線に怯える事なく彼に向かって銃口を突き付ける。
「……おれの完敗か……クソッタレ、オレはこんな所で倒れる訳にはいかねーんだよ」
「その心意気は見事よ。でも、もう大人しく投降しましょう?」
だが、それを聞いた騎士は激しい口調で私を弾劾していく。
「ふざけるなッ!オレはこのまま王国に捕まったんだったら、死刑は確実なんだよッ!別に死ぬのなんて怖くないが、あの女を……オレたちの国に巣食う疫病の源を摘出しなければ死んでも死に切れねーんだ」
その言葉を聞いて彼に同情の心を寄せた私は思わずマルセラ王女の侍女の正体について教えようかと考えたのだが、このホテルに妹と共に戦いから逃げた王女がまた戻ってくるのかもしれないという事から、私はその事については口を紡ぐ事にした。
その代わりに、彼に対してある提案をしてみた。
「ねぇ、あなたは立場はどうであれ、この国で何か犯罪を犯さなかった?」
男は私のその言葉を聞いて思わず両目を見開く。
だが、直ぐに視線を逸らす。どうやら、彼が、今着ているスーツにコートは何処からか盗ったもの、もしくは奪った金である可能性は高い。
私は盾に籠り、足を抑えて一定の方向を虚な目で見つめていた彼に対して満面の笑みを浮かべて提案する。
「あなたの身柄はこちらで預かるわ。あなたはウィンストン・セイライムの法廷で裁きを受ける羽目になるでしょうけれども、死刑になるような事をしていないのならば、あなたはきっと命は助けられる筈よ」
その言葉を聞いて一瞬、彼の顔が輝く。だが、直ぐに表情に陰りを見せた。
彼はその暗い顔で地面に視線を下ろして、
「ありがとう。けれども、刑務所に閉じ込められたままじゃあ、生きている人生とは言えない……オレは絶対に国の不穏分子をーー」
彼はその続きを喋ろうとはしたものの、私はその続きを聞けず、また彼も喋る事が出来なかった。
と、いうのも逃げた筈の王女がホテルに舞い戻り、彼と話している私を突き飛ばし、彼が篭っている見えない盾を蹴り始めたからだ。
眉間に青筋を立てて歯を食い縛りながら、見えない盾をひたすらに蹴り続ける姿は人間には見えない。
まるで、鬼女ではないか。彼女は口汚く盾の騎士を煽り続けていく。
「よくもッ!この私に向かって歯向いやがったなッ!このクズがッ!何様だと思ってやがるッ!パパから受けた恩も忘れやがってッ!このクズがッ!」
私は思わずその口の汚さにゾッとしてしまう。まるで、街で弱者を恐喝するギャングのようだ。今の彼女から気品も気高さも優雅さえも感じられない。
ただのチンピラだ。勿論、あの騎士の盾はこの程度のもので壊されるものではない。なので、蹴ったとしてもダメージが入るのは彼女の脚だけだろう。
だが、彼女はそんな事は構いもせずに蹴りを入れ続けていく。
あまりにも醜悪な光景だ。背後で妹が止める声が聞こえたのだが、彼女は構わずに蹴り続けていた。
だから、彼女が現在、人質にされているのも自業自得だとしか思えない。
マルセラ王女を人質にした彼はその場に居合わせた私たちに向かって要求する。彼女の王位継承権の放棄を。
何という間抜けな王女なのだろう。彼女はあろう事か見えない盾を蹴り続けるのに夢中になっていたために、咄嗟に盾を消した男の事に気が付かなかったのだ。
彼女は振り上げた脚をそのまま地面へと落とそうとした時に、弱っていた筈の盾の騎士に脚を掴まれてそのまま人質にされてしまったのだ。
私は思わず溜息を吐く。どうして、父はいや、四大国家の元首たちはこんな奴の畏敬訪問を受け入れたのだろう。
明らかに火薬で満杯で少しでも火を灯せば爆発しそうな火薬庫を押し付けられたようなものではないか。
もしかしすると、スパイスシーの向こう。帝国の属国である王国は帝国と四大国家とを対立させるためにこの王女を押し付けたのではないか。
いや、それならば血塗れグラントが抹殺のために潜入している理由が分からない。
そもそも、海の向こうの国王にそんな度胸がある筈がない。大方、しょうもない理由だろう。
だが、彼女は私の考察を大きな声で遮り、私に向かって助けを求める。
「何をやっているゥ!早く私を助けろ!使用人の分際でお前たちは何をやっているッ!」
私は無言で王女の頭に小型のショットガンを突き付けている男の頭に向かって狙いを付ける。
これが上手くいけば、王女は助かる筈だ。私が意を決して彼に向かって銃を突き付けた時だ。
捕らえられていた王女が大きな声で叫ぶ。
「何だ?その銃は私を殺す気だろう!?私を殺すのか!?この人殺しがッ!」
もういい。もうどうなろうが知った事か。
私は拳銃を構えて大きな声で叫ぶ。
「このド外道がァァァァァ~!!」
その叫び声と共に弾丸が放たれて脚を突きながらも彼女を人質に最後の勝負に打って出ていた男を撃ち殺す。
私は額から赤い蛇を出し、目を見開いて地面の上で大の字になっている男を見つめた。密かに彼に詫びを入れて私は地面の上で震えている王女の保護に向かう。
王女は自分の所為が原因でこのような目に遭ったのにも関わらず、ただ私の事ばかりを責め立てていく。
だが、私はそんな行為に構う事はなく地面の上で倒れた男に向かって詫びを入れていく。
先程の『ド外道』は私の胸で私を叩く緑色の髪の王女に向けたものだと。
私は慌てて駆け付けた妹と王女の侍女に王女を託してホテルの外へと向かう。
ホテルの外に出ると空の上には満点の星空。
そこに流れ星が一つ落ちたのを見届けた。もしかすれば、あの星は私が先程、撃ち殺した盾の魔法を使う騎士だったのかもしれない。
やはり、言えば良かったかもしれない。王女は帝国か共和国のどちらかで死ぬ事になると。
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