王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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大統領の陰謀編

オウルマン騒動とそれにまつわるよからぬ共和国の噂

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私は銃を持ちながら、目の前の怪物を見つめる。あの梟の様な怪物は怒り狂った目で私を睨んでおり、よくも邪魔されたと言わんばかりの勢いでこちらに向かってくる。
私が咄嗟に足の下に隠していた拳銃を抜いたためだろうか、銃声と怪物の鳴き声に殆どの貴族が宮殿のホールを後にした。そして、一応は各国も護衛を連れてきているだろうから、彼ら彼女らの心配をする必要はないだろう。問題は私だ。
この場合はどう対処するべきだろうか。やはり、ニューロデム共和国には梟の様な怪物が国を荒らし回っているという噂は本当だったのだろうか。
いや、そもそも怪物自体が共和国の作り上げたものだというのは本当なのだろうか。
全ては仮初の父に馬車の中で聞いた話だ。公爵家という称号を持つスペンサー家の情報網は中々に多角に渡って広がっていたらしく、この情報も共和国に潜り込ませた自身の部下から聞いた情報だという。
表向きの父はその情報を私に伝え終えると、私に黙って拳銃を手渡す。
それも、ただの銃ではない。彼が手に握っていた拳銃は私の愛銃だった。
私がどうしてと尋ねると、彼は小さな声で、
「ここだけの話。これはあくまでも私が推測に推測を重ねたいわゆる推論という奴なのだが、ストロンバーグは次の会合式で陛下の命を狙うかもしれぬ」
私は思わず言葉を失ってしまう。どうして、ストロンバーグが父の命を狙うのかと尋ねると、公爵は厳かなオーラを体全体から放ちながら、私に向かって自分がそこに至るまでの推論を話していく。
何でも、共和国内に現れたオウルマンなる怪物は大統領が各国からの非難、つまり、“自分の国だけが怪物に襲われない”という状況をカモフラージュするために、最初に放ったという事。自国に最初の怪物を放った後で各国にも怪物を放ち、各国を混乱に招き入れた後に、その後に会合式に集まった自分たちの国の参加者を除く会合式の参加者を怪物で殺すのではないかという事。
「どうして、その様な事をなさるのですか?共和国にとって他の大陸の三つの国家を回すのは得策とは言えないのに……」
公爵は人差し指を横に振って、自らの推論を述べていく。
「恐らくだが、そうなった場合にストロンバーグはその全ての責任を怪物に押し付けるつもりだ。その後に自分たちは運良く生き残った首脳陣として名を馳せるつもりなのだろうな」
だが、公爵はここで話を切る事は無かった。彼は荘厳な雰囲気を纏わせて、
「問題はここからだ。各国の王族や貴族が居なくなった場合に混乱するのは何処だと思う?」
公爵の言葉に私は思わず叫んでしまう。
「……国の中枢」
冷や汗を流した私に表向きの父は首を縦に動かして、
「その通り、会合式に出るのは国のトップとも言える人間ばかりだ。それらの人間が全て殺され混乱に陥った時に軍隊が進められたら?」
恐らくだが、公爵はこの時に全ての点と線を繋げたに違いない。公爵の考えた事が全て実行された後に一番得をするのは共和国と大統領だ、と。
私は思わず身を乗り出して、
「それは父に……いえ、陛下に進言なされましたか?」
公爵は迷う様子さえ見せずに首肯した。だが、その顔は重くて暗い。
父は公爵の進言を退けたのだろうか。それとも、自分は怪物に殺される筈がないとタカを括っているのだろうか。
私にはあの人が分からない。何を考えているのか。
思わず爪を噛みそうになった時だ。公爵がジッと私の顔を見つめている事に気が付く。
青い瞳がマジマジと私の姿を映している事に気が付き、私は思わずに、
「あの、どうしたのでしょうか?」
「あぁ、そう言えばキミがあの怪物を撃ち殺した際に怪物を操っていた存在がいるって聞いてな」
その言葉に私はあの金髪の二つ結びの少女の顔を思い出す。
あの少女は単独であの怪物を作り出し、使役していたのだろうか。
いや、公爵の考えを聞けばそれも違ってくる気がする。その時に私の中に浮かんだ考えというのは。
嫌な想像だ。私は咄嗟に頭の中に浮かんだ考えを振り払ってしまう。もし、アーリー・シリウスなる少女が共和国のスパイだったとしたら、他の国に現れた怪物を操る人間達もいるのではないのだろうか。もし、それらの人物も怪物と共に同行していたらどうなるのだろう。
私は王都からの道をそんな事を考えながら過ごしていた。
そして、今、この瞬間、目の前から向かってきた梟の形をした怪物を撃った時に咄嗟に辺りを見渡す。
怪物を操る人間が居ないかどうかを。
すると、なぜか私をジッと見つめている大統領と額に手を当てた副大統領の姿が見える。
もしかして、大統領のあの表情は思いの外に事を運ばせているオウルマンに惚れているという事なのだろうか。
そんな事を考えていると、私の目の前に梟の怪物が立ちはだかる。
私は咄嗟に引き金を引き、梟の怪物に向かって放つのだが、怪物に効いた気配は無い。
すると、怪物は私をその鋭い爪で狙う。
私は咄嗟に身を交わし、梟の鋭い爪を避けたが、あの怪物が容赦する事は無さそうだ。
怪物はもう一度翼を広げて空へと飛び上がると、彼は躊躇する事なく私に向かって急降下していく。
銃弾は予想通りというべきで、貫通しない。万事休すかと思われたのだが、その時にこの怪物の操り主と思われる中年の男が庭の御馳走やら酒やらが載せられた机の下から姿を表す。
男は長銃の銃口を構えて私に狙いを定めている。私は男の右腕に狙いを定めて銃を放つ。
男は短い悲鳴を上げて机の下に落ちていく。それをチャンスとばかりに私は机の下へと駆けていく。
その際にあの梟の怪物が現れたのだが、私は上手く頭をしゃがませる事により、私の頭に怪物の鍵爪が当たる事を防ぐ。
私は怪物に向かって拳銃を向けると、躊躇う事なく引き金を引く。
今度は胴体や頭ではなく翼だ。幾ら、不死身の怪物と言えども翼までは強化されていなかったのか、翼に銃弾が直撃すると怪物は痛みのためか泣き叫ぶ。
私はその声を無視し、机の下に潜り込むと、机の下に隠れている男の襟首を掴む。
「早く、あの怪物を止めなさい!」
「や、やだね……あの怪物はここに集まったVIP共を皆殺しにするまで止まらんさ……」
男は吐き捨てるように言うと、私を乱暴に突き飛ばし、無事な左手で懐から小型の拳銃を取り出す。
「さてと、ちょいと早いだろうが、あんたはここで退場さ、ウィンストン・セイライムのお姫様……」
彼は口元を緩ませながら言ったが、結局彼が引き金を引く事にはならなかった。
と、言うのも私は彼の手に持っていた小型の拳銃を蹴り飛ばしたからだ。
中年の男はしまったと言わんばかりの表情で私を見つめた。
だが、私は男に容赦する事なく左手を光らせて男の魔法を奪う。
私は男の慌てる様子など気にも留めずに、ニヤリと口元を緩めて、しめたと言わんばかりの表情を浮かべた。
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