王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
98 / 211
オール・ザ・ソルジャーズマン編

王都動乱 パート5

しおりを挟む
この男はここまで追い詰められたのは予想外であったらしい。それまでの強さは恐らく不意を突く事により、どんなガンマンも或いはどんな魔法使いも即座に殺していたからだろう。
だが、その不意打ちのトリックを見破られた今となってはもう手出しはできない。
ゲイシーは心の底から悔しいと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「オレの……オレの魔法が通用しないだと……」
男の足がふらつき始めていく。どうやら、余程、この私に恐れをなしたらしい。
私は逃げようとするゲイシーの足元に向かって引き金を引く。
「さてと、どうする?軍曹さん……このままあなたを撃ち殺しても良いのよ。けれど、この後のマッケンジーの目的を教えてくれれば命だけは助けてあげても良いわ。マッケンジーが逃げた場所を教えなさいッ!」
「だ、誰が言うものかッ!」
私は無言で男の手の甲を撃ち抜く。男はそれこそ言葉にならない悲鳴を上げていく。
「教えなさい。あなたが考えるマッケンジーの反撃の場所は何処なの?」
「わ、分かったッ!教えるッ!教えるから殺さないでくれ!」
ゲイシーは刑務所で考えた計画を命惜しさにベラベラと喋ってくれた。
何でも、ゲイシーとマッケンジーが計画したのはこの街に集まった王国軍の全滅であった。彼らは反乱軍が引っ張ってきたマシンガンを引き摺り出し、彼らを中央の線路の敷かれた場所へと引き摺り出して殺すという計画だったらしい。
「マシンガンでこの場に集まったみんなを……」
「あぁ、その通りだ。その後に中将とオレとで国王を殺し、国を乗っ取る算段だったのさ」
ちなみに、この計画は私や宮殿並びに王都の守備隊の活躍ぶりに反乱軍が次々と倒されるために、急遽占領した警察署内でマッケンジーが書き直した脚本だったそうだ。
あまりにも粗雑な計画だ。マッケンジー中将は共和国の大統領に比べれば脚本家としての腕は相当に落ちるらしい。
この計画の矛盾点を挙げるとするのならば、仮にマッケンジーが王国の重要な位置を牛耳ったとしたのならば、国民はそれに賛同するだろうか。しないだろう。恐らく、国王陛下の仇という大義名分を得て僅かなギャングが集う王都を周囲の街の民衆や警察やそれにクーデターに同調しなかった軍隊たちが真っ先に彼らを叩き潰すに違いない。
更にこの反乱を上手く潰したとしても、周辺の国が黙ってはいないだろう。
間違いなく帝国とニューヨーシャー王国は確実に牙を剥き、反乱の鎮圧で大幅に兵力を減らした旧王国に向かう事は間違いない。加えて、彼らの母国である共和国の大統領も彼らを無関係な存在とみなし、他の二カ国と共に攻撃をするか、そうでなくとも黙ってはいるだろう。
確実に言えるのは母国は彼ら二人を永久に見捨ててしまい、後に残るのは破滅という道だけであった。
元来の計画ならば上手くいく筈のもの中将の計画では色々と狂うに違いない。
第一、大幅な反乱鎮圧の際に彼らは殺されるか、仮にそれを免れたとしても国民の虐殺に警察勢力の削減による犯罪の増加、同軍同士の更なる殺し合いにより国内の大幅な戦力低下が予想され、その弱り切った勢力で確実に周辺諸国に始末される事は間違いないだろう。
私は下で蠢く男の体を蹴って無言でマッケンジーとその部下の犯罪者たちを探しに向かおうとしたその時だ。
倒れていた筈のゲイシーが私の目の前に現れたのだ。それも、銃口を私の目と鼻の先に突き付けて、
「ハッハッ、油断したなッ!これでお前は終わりだッ!この動乱を終わらせはしないぞ!きっと中将の考えた計画は成功し、オレはこの国の将軍になるのさッ!」
「……あんな粗雑な計画を信じているなんて本当に大馬鹿ね。あなた」
ゲイシーはそれを聞いて無言で引き金を引いたのだが、私は地面を蹴り、スライディングをする事により男の銃弾を避ける。そして、私は地面の上を滑っていく過程、男の股の下を潜り抜ける直前に両手で拳銃を構えて男の心臓に向ける。
軍用拳銃の引き金を引く前に一言、私は呟く。「ド外道」と。
私の放った銃弾は見事にゲイシーの胸を撃ち抜いたらしく、ゲイシーは苦しそうな表情で胸を抑えて私が股の下を潜り抜けて脱出するのと入れ違いに地面へと倒れていく。私は地面の上から起き上がると、真横で倒れる男を見つめて、
「良かったわ、これで安心してマッケンジーを探せるわ。あなたも本望でしょ?あの世で戦争ごっこの夢を見れて」
私は死体となったゲイシーに向かって言った。それから、私は散り散りになった犯罪者たちの集うマシンガンのある場所を探索していく。
探索していく過程でたまたま私は反乱に参加していた兵士と出会う事ができ、マシンガンの居場所を聞く事が出来た。
マシンガンは王都の出入り口に置いてあるらしい。
何でも、王城攻略戦の時に使うつもりであったそうだ。私は王都の出入り口へと向かう。
だが、私が到達した時には既に彼らはマシンガンを占領していたらしい。
一人の柄の悪い男が荷台に積まれたマシンガンの上に乗り、両手を使用してそれを撃つ真似をしていた。
その様子を満足そうに見守るマッケンジー。
どうやら、彼が追加で書き上げたゴミ脚本の進行は順調に進んでいっているらしい。その様子を王都近くの出店の陰に隠れながら見ていた私はこの後をどうするのかを考えていく。
門の前の荷台を囲むギャングの数はおおよそ三十名。
その様子を見るとますます彼が哀れに思えてしまう。あれでは王宮で国王を殺して終わりだろう。今は彼の部下となっているギャング達も大勢の民衆やら保安委員やら軍人やらが向かって来たら手も足も出ないに違いない。
その事を考えながら、私は陰から見守っていた。
すると、マシンガンを弄っていた男の正面に小さな雷雲が現れて彼の頭上に一筋の雷を落とす。
彼らが慌てて銃を構えると、彼らの前に大きな足音を立ててケネスとマーティ、そしてクラリスの三人が現れた。
突如、現れた乱入者に対して彼は声を震わせて問い掛ける。
「な、何者だッ!貴様らは!?」
「賞金稼ぎ部のケネス・ローエングリンと言っておこうか、貴様らを始末するために現れた男だ」
「同じく、マーティン・チェリーローズ」
「同じく、クラリス・チャップマン。私は二人とは違う目的でここに訪れた。マッケンジーッ!一連の事件の黒幕であり、兄の仇であるお前を殺す目的でなッ!」
クラリスの剣幕にマッケンジーが恐れ慄いているのが見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...