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フォー・カントリー・クロスレース編

悪党のせいで荒れ放題になった憂鬱な街の片隅に

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話を聞くに連れて、この街の状況が見えてきた。どうも、この街はモーティーマーという保安官の一味が支配する箇所とモンコ兄弟というギャングの一味が対立する箇所に分けられているらしい。
話によれば、今のモーティーマー保安官は二代目という事で、既に引退した偉大なる保安官、フリント・モーティーマーの威光を傘に着て威張っていたらしいが、少し前にそれに反発し、一度は組織を解散した筈のモンコ兄弟が組織を再編し、モーティーマーと対立しているらしい。
この話を聞いた時に、私がお爺さんから差し出された魚のフライを口にしながら、尋ねると、
「ちょっと待って、じゃあ、何で、町の人たちがモンコ兄弟と対立しているの?」
「同じくモーティーマー保安官が敵だったら、対立するメリットなんか無いのに」
“バカやろう!モンコの奴らもオレ達から場所代やら何やら請求して、苦しめてるんだよッ!だから、オレ達はモーティーマーもモンコも嫌いなんだ」
成る程、と私は相槌を打つ。
お爺さんはそれを聞くと、フンと鼻息を立てて背後に棚に並んできた酒瓶を弄り、私の前にバーボンの瓶を乱暴に置く。
「その酒は儂の奢りじゃ、騒動に出る前に早う出て行けーー」
その時だった。ハンマーにより乱暴に扉が壊され、二人の男が現れた。
お爺さんはその顔を見て絶句してしまっていた。
言葉を失っていたと言った方が的確なのかもしれない。
お爺さんは指を震わせながら、
「モーティーマーにモンコ、どうして、お前らがここにいやがる!?」
「どうしても何も」
「テメェがオレの手下に言ったんだろう!?親分を連れて来いとなッ!」
この二人を観察した時に私が感じた印象は正反対と言った感じであった。
モーティーマー保安官は若い男であり、短い金髪が特徴のチャラチャラという風貌の男であった。その傍ら、モンコ兄弟の長男だと思われる男は老けた男で、白い髪が黒い髪に交じっている事に気が付く。かなりの年寄りらしい。
私はついでに吹き飛ばされた扉の前に集まった手下の数を眺めていく。
集まった手下の数だけで五十人くらいは居そうだ。
もし、この場にいる手下のガンマンの数がこいつらの戦力の一部だとしたら……。
私は恐ろしさのために思わず生唾を飲み込む。
そして、顔から冷や汗を出して、必死に顔を背けていたのだが、モーティーマー保安官はそんな私の態度に苛立ったのか、モンコ兄弟の長男と共に机の前にやって来て、私の前の場所を強く叩く。
「おい、お前か?オレらの縄張りに手を出そうという小娘はッ!」
「一体何の話なのか、さっぱり……」
「惚けるんじゃあねぇよ!オラァ、あいつから聞いたんだぞ、お前がニューヨーシャー王国の方でブラック姉弟なる悪党をぶっ殺して、相当の額の賞金を稼いだ事をよぉ~オレ達の事も殺しに来たんだろう?帝国から悪徳保安官をぶっ殺せとなッ!」
「私はここに休憩のために立ち寄っただけよ。ここに居たのも食べ物を食べにきただけで」
「やかましいやッ!だが、テメェが来てくれたお陰で助かったぜ、テメェとテメェの連れて来る帝国の騎兵隊に対抗するために、こうして、オレ達が手を結んだんだからな」
モント兄弟の長男と思われる男が私の前に迫って叫ぶ。
その後に、モーティーマー保安官が腰から拳銃を抜き、酒を用意していたお爺さんを脅す。
「悪いが……オレ達と一緒に来てもらおうじゃあねぇか。勿論、嫌だとは言わせねぇぞ。オレの待っているこれが見えねぇわけじゃあねぇだろう」
金髪の青年が突き付けているのは回転式拳銃。
今、ここで散弾銃を取り出しても間に合わないと判断したのだろう。
お爺さんは大人しく両手を上げて、保安官に連れ去られていく。
そして、扉の前で保安官は手下から投げ縄を借り、縄でお爺さんの手首を縛り、まるで罪人を連行するかのように連れて行くき、去り間際にこちらを振り向いて、
「いいか!?このジジイを返してほしけりゃあ、町の広場ッ!明日の朝に、井戸の近くにある場所に来いッ!テメェ、一人で臆する事なく来りゃあこのジジイを返してやるよ!」
保安官の言葉を聞き、私は何も言わない代わりに悪党達を鋭い瞳で睨み付ける。
私のその視線を犯人達は宣戦布告と受け取ったに違いない。
彼らは私をバカにするような声を上げる事もなく酒場を去っていく。
私は誰も居なくなったバーカウンターの前で勝手にバーボンを拝借する。
決闘は明日の朝なのだ。それまでに準備を進めておかねばならない。
私はバーボンの瓶を直接口に付けながら、かつて、ピーターに聞いたお話を思い出す。
ピーターから聞いた話ではこの街と同じ町であったのだが、大きく異なるのは二大勢力が私を倒すために手を組んでいるという事だろうか。
ピーターの話だったら、街を二分する勢力は主人公の暗躍の末に抗争を続けた末に、壊滅し、そのもう片方の勢力を主人公が全滅させるという筋書きだったのだが、どうも、現実は物語のようには上手く事は運ばないらしい。
私はバーボンを飲み終えると、外へ出て自分の馬の安否を確認する。
あれだけの男がいながらも、酒場の前に停めた馬は無事だったらしい。
私は愛馬の頭を撫でると、そのまま街を歩いていく。
大衆達の目。とりわけ、先程と違う点は先程は余所者を警戒する目であったのにも関わらず、今の彼らの視線は明らかに罪人を弾劾する視線であったのだ。打ち付けた板の隙間から余計な事をしやがってと言わんばかりの呪詛の視線が突き刺さるのだが、私は気にする事なく、街を歩き、翌日の決闘に備えるための武器を探す。
武器屋を探すのは簡単だった。武器屋は拳銃のマークの描かれている場所であり、そこの扉もこの町の例に漏れずに塞がれていたのだが、私は店の前に馬を停めると、構う事なく扉を大きく叩いて店主を呼び出す。
無愛想な顔で店主は扉を開けて、私の前に現れる。
「あんたか?さっき、奴らが探していた女っていうのは?」
「ええ、そうよ。明日、奴らと決闘するの。だから、私に武器をーー」
「とんでもねぇや!悪いが、あんたにゃあ武器を売れねぇ!あいつらの敵に武器を売ったなんて噂されりゃあ、オレはあいつらに殺されちまう!」
店主の男は慌てて店を閉めようとしたのだが、私は扉を閉ざされようとする扉を必死に閉めて、店主を説得しようと試みる。
「待って!私の事を知らない!?」
「本当に済まないが、あんたが例え権力者の娘だろうが、武器は売れねぇ!分かったら、早くーー」
「私はこの二人を仕留めたのよ」
私はそう言って懐から少し前に会長に貰った手配書を押し付ける。
店主は手配書を見て目を見開いてしまう。
「信じられねぇ!こんな額の賞金首を!?あんたが仕留めたっていうのかい!?」
私は首肯する。すると、彼は瞳を輝かせて、
「オレ達はあんたのような救世主を待っていたのかもしれねぇ」
そう言うと、武器屋の店主は乱暴に私を武器屋へと連れ込む。
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