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神との接触編
人間は悪魔か、それとも神か
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誰も人の未来を奪うことはできない。孝太郎は目の前の全能なる神などという輩にその言葉を思いっきり叫んでやりたかった。
だが、そんなことを叫ぶ暇などは与えられない。孝太郎は警察官として人々を守るために悪しき力に身を委ねつつも神と戦うしかなかったのだ。
マリヤは二人の戦いを側から見つめていた。彼女は現在倒れる羽目になってしまったので応戦することはできない。
だが、転がりながらもその戦いを黙って見つめていた。
眩いばかりの閃光に包まれるゼウスと悪しき漆黒の闇に身を包まれる孝太郎。
どちらが善であるのか、悪であるのかもうマリヤには判別がつかなかった。
神だという言葉が本当であるのならば善はゼウスにある。ゼウスが人を滅ぼそうというのも神ならば当然の権利として執行しているだけだ。
だが、そのことは人にとっては悪なのだ。誰も好き好んでこの世を去りたい人などいないのだ。
例え相手が神であってもできる限りの手段を用いて抵抗を試みるに違いない。
そうした観点で見れば善は一見悪魔のように見える孝太郎にあるに違いない。
果たして本当の悪は善はどちらにあるのだろう。マリヤは聖職者である。本来であるのならば神であるゼウスに味方をして悪魔のような姿をした孝太郎を倒さなくてはならない。それは聖職者として当然の行為だろう。
だが、マリヤの頭に中に善と悪は人によって分別されていいのだろうか、という考えが過ったことでマリヤを押し留めた。本来であるのならば神の味方として孝太郎を倒さなくてはならないというのに体が動かない。
ゼウスは悪なのか、それとも当然の権利として人間を粛清しようとしているだけなのか。マリヤにはわからなくなっていた。
ただ願うことしかできなかった。マリヤは無力な子羊のように両手を握り締め両目を瞑り、ひたすら神に祈りを捧げた。
この時ゼウスの軍隊のうち一体がマリヤの元へと現れ、祈りを捧げるマリヤの前に剣を放とうとしたのだ。
マリヤは夢中になって祈りを唱え続けていたのでそれが見えなかったのだ。
孝太郎もゼウスとの戦いに夢中になってマリヤの前に駆け付ける余裕はない。
マリヤは気が付いていなかったが、彼女は絶対絶命の危機へと陥っていたのだ。
無言でその男が剣を振り上げようとしたのもマリヤに気が付かせることを阻んだ。
剣はマリヤの頭上まで数センチの距離にまで迫った。この時になってマリヤは両目を見開いた。自分でも意識しないうちに仕込み剣を頭上へと振り上げ、剣を盾の代わりにして相手の剣を防いだのであった。
マリヤからはあの亀の怪物を倒した時と同様に強大な力が湧き上がっていく。服装もスーツからかつて亀の怪物を退治した際に着用していた聖職者としての衣装へと変わっていく。
白いベールが落ち、黒色のワンピースに身を包んではいるものの、彼女の周りから漂うのは神々しい光ではなく、悪魔や神の敵を連想させるようなドス黒い光だ。そうした毒々しいオーラを身に纏った彼女は自身の剣にそのオーラを纏わせていく。
異様な力を身に纏った剣は敵の剣を粉々に破壊し、そのまま敵の鎧を砕いたのであった。場末のバーカウンターでアイスピックを用いて氷を壊すかのような容量でマリヤはやってのけた。
鎧と武器を失った敵は慌てて逃げ出そうとしたが、マリヤは容赦などしない。
バッタのような異様な脚力で飛び上がったかと思うと、敵の前に立ち塞がり、正面から敵を叩き斬ったのである。
残りの兵士たちは慌てて剣や槍といった原始的な武器を構えマリヤを包囲していくが、マリヤにとってそれは意味のないものであった。
退屈そうな目で一瞥を行った後で剣を振り回していく。
中国時代劇に登場する男装の剣士のような華麗な殺陣はまるで舞を舞っているかのようであった。
残された不可能犯罪対策課の面々は逃げるのも忘れてマリヤの動きに見惚れていた。
そんな面々の前にまたしても動きがあった。ズドンと何か重いものが落ちた時の音が聞こえたかと思うと、全体が大きく揺れ動いていった。
地面にヒビが割れ、アスファルトが砕かれていく。
そして絶壁を登って何かが警官たちの前に現れた。『ダビデ』を身に纏った不可能犯罪対策課の面々が銃口を構えると、そこには見た目麗しい金色の女性の姿が現れた。
目鼻がはっきりとした白い肌の女性だ。彼女の美しさを例えるとするのならば到底この世の言葉では言い表せないに違いないそれ程までに美しく魅力的な女性であった。
しかし、その女性は見た目とは裏腹に人々に安らぎを与える聖母というイメージからは程遠いものであった。
芸術品のように細くて白い人差し指を振り上げたかと思うと、『ダビデ』を纏った警察官の一人に対して落雷を浴びせたのだ。
標的にされた警察官の上空に小さな暗雲が立ち込めたかと思うと、鋭いプラズマが生じて警察官を即死させたのである。
こうなってしまっては『ダビデ』の装甲など何の役にも立たなかった。
我を忘れてその場を逃げ出そうとする警察官たちを見て、彼女は口元にほのかな微笑を浮かべていた。
そして、もう一度人差し指を突き付けたのだ。第二の犠牲者が出るかと思われたその時だ。
背後からマリヤが剣を振り上げながら現れたのだ。
彼女は頭を引っ込めることで難なくマリヤの剣を交わした。
マリヤはそのまま剣を使って相手を突き殺そうと試みたが、彼女はその剣を自身の掌で受け止めたのだ。
先程のようなほのかな笑みを浮かべながら……。
一方で攻撃を受け止められたマリヤは絶望に瀕した表情を浮かべていた。
青く染まった顔と全身から吹き流れた冷や汗は止めようにも自分の意思で止めることができなかった。
マリヤはその女性によって真横から平手打ちを喰らってしまい地面の上へと倒れ込む。
マリヤは叩かれた頬を摩りながら懇願するかのような目で自身の頬を叩いた相手に向かって問い掛けた。
「……あなたは何者?どうしてこんな酷いことをするの?」
(何者?それはあなたが一番よく知っているんじゃあないの?)
頭の中に女性の声が響いていく。母親を思わせるような慈愛に満ちた優しい声だ。
だが、その回答は慈母やその精神からは大きくかけ離れたものであった。
そのような意地悪な問われ方をしたとしてもマリヤには身に覚えがないのだ。
唖然としているマリヤに向かってその女性は容赦のなくゼウスと同様の三叉の槍を作り出したのであった。
青銅色で作られた槍で、どこか美しさを感じる品だ。ギリシャかどこかの博物館で飾られていたとしても違和感はない。
もちろん、風情やらを感じている暇はない。今すぐにでも立ち上がらなくてはマリヤの方が死んでしまうのだ。
マリヤは自らを奮い立たせ、もう一度この理不尽な罰を与える女神へと立ち向かっていくのである。
彼女の目に迷いはなかった。迷いの感情は既に断ち切っていたのだ。
だが、そんなことを叫ぶ暇などは与えられない。孝太郎は警察官として人々を守るために悪しき力に身を委ねつつも神と戦うしかなかったのだ。
マリヤは二人の戦いを側から見つめていた。彼女は現在倒れる羽目になってしまったので応戦することはできない。
だが、転がりながらもその戦いを黙って見つめていた。
眩いばかりの閃光に包まれるゼウスと悪しき漆黒の闇に身を包まれる孝太郎。
どちらが善であるのか、悪であるのかもうマリヤには判別がつかなかった。
神だという言葉が本当であるのならば善はゼウスにある。ゼウスが人を滅ぼそうというのも神ならば当然の権利として執行しているだけだ。
だが、そのことは人にとっては悪なのだ。誰も好き好んでこの世を去りたい人などいないのだ。
例え相手が神であってもできる限りの手段を用いて抵抗を試みるに違いない。
そうした観点で見れば善は一見悪魔のように見える孝太郎にあるに違いない。
果たして本当の悪は善はどちらにあるのだろう。マリヤは聖職者である。本来であるのならば神であるゼウスに味方をして悪魔のような姿をした孝太郎を倒さなくてはならない。それは聖職者として当然の行為だろう。
だが、マリヤの頭に中に善と悪は人によって分別されていいのだろうか、という考えが過ったことでマリヤを押し留めた。本来であるのならば神の味方として孝太郎を倒さなくてはならないというのに体が動かない。
ゼウスは悪なのか、それとも当然の権利として人間を粛清しようとしているだけなのか。マリヤにはわからなくなっていた。
ただ願うことしかできなかった。マリヤは無力な子羊のように両手を握り締め両目を瞑り、ひたすら神に祈りを捧げた。
この時ゼウスの軍隊のうち一体がマリヤの元へと現れ、祈りを捧げるマリヤの前に剣を放とうとしたのだ。
マリヤは夢中になって祈りを唱え続けていたのでそれが見えなかったのだ。
孝太郎もゼウスとの戦いに夢中になってマリヤの前に駆け付ける余裕はない。
マリヤは気が付いていなかったが、彼女は絶対絶命の危機へと陥っていたのだ。
無言でその男が剣を振り上げようとしたのもマリヤに気が付かせることを阻んだ。
剣はマリヤの頭上まで数センチの距離にまで迫った。この時になってマリヤは両目を見開いた。自分でも意識しないうちに仕込み剣を頭上へと振り上げ、剣を盾の代わりにして相手の剣を防いだのであった。
マリヤからはあの亀の怪物を倒した時と同様に強大な力が湧き上がっていく。服装もスーツからかつて亀の怪物を退治した際に着用していた聖職者としての衣装へと変わっていく。
白いベールが落ち、黒色のワンピースに身を包んではいるものの、彼女の周りから漂うのは神々しい光ではなく、悪魔や神の敵を連想させるようなドス黒い光だ。そうした毒々しいオーラを身に纏った彼女は自身の剣にそのオーラを纏わせていく。
異様な力を身に纏った剣は敵の剣を粉々に破壊し、そのまま敵の鎧を砕いたのであった。場末のバーカウンターでアイスピックを用いて氷を壊すかのような容量でマリヤはやってのけた。
鎧と武器を失った敵は慌てて逃げ出そうとしたが、マリヤは容赦などしない。
バッタのような異様な脚力で飛び上がったかと思うと、敵の前に立ち塞がり、正面から敵を叩き斬ったのである。
残りの兵士たちは慌てて剣や槍といった原始的な武器を構えマリヤを包囲していくが、マリヤにとってそれは意味のないものであった。
退屈そうな目で一瞥を行った後で剣を振り回していく。
中国時代劇に登場する男装の剣士のような華麗な殺陣はまるで舞を舞っているかのようであった。
残された不可能犯罪対策課の面々は逃げるのも忘れてマリヤの動きに見惚れていた。
そんな面々の前にまたしても動きがあった。ズドンと何か重いものが落ちた時の音が聞こえたかと思うと、全体が大きく揺れ動いていった。
地面にヒビが割れ、アスファルトが砕かれていく。
そして絶壁を登って何かが警官たちの前に現れた。『ダビデ』を身に纏った不可能犯罪対策課の面々が銃口を構えると、そこには見た目麗しい金色の女性の姿が現れた。
目鼻がはっきりとした白い肌の女性だ。彼女の美しさを例えるとするのならば到底この世の言葉では言い表せないに違いないそれ程までに美しく魅力的な女性であった。
しかし、その女性は見た目とは裏腹に人々に安らぎを与える聖母というイメージからは程遠いものであった。
芸術品のように細くて白い人差し指を振り上げたかと思うと、『ダビデ』を纏った警察官の一人に対して落雷を浴びせたのだ。
標的にされた警察官の上空に小さな暗雲が立ち込めたかと思うと、鋭いプラズマが生じて警察官を即死させたのである。
こうなってしまっては『ダビデ』の装甲など何の役にも立たなかった。
我を忘れてその場を逃げ出そうとする警察官たちを見て、彼女は口元にほのかな微笑を浮かべていた。
そして、もう一度人差し指を突き付けたのだ。第二の犠牲者が出るかと思われたその時だ。
背後からマリヤが剣を振り上げながら現れたのだ。
彼女は頭を引っ込めることで難なくマリヤの剣を交わした。
マリヤはそのまま剣を使って相手を突き殺そうと試みたが、彼女はその剣を自身の掌で受け止めたのだ。
先程のようなほのかな笑みを浮かべながら……。
一方で攻撃を受け止められたマリヤは絶望に瀕した表情を浮かべていた。
青く染まった顔と全身から吹き流れた冷や汗は止めようにも自分の意思で止めることができなかった。
マリヤはその女性によって真横から平手打ちを喰らってしまい地面の上へと倒れ込む。
マリヤは叩かれた頬を摩りながら懇願するかのような目で自身の頬を叩いた相手に向かって問い掛けた。
「……あなたは何者?どうしてこんな酷いことをするの?」
(何者?それはあなたが一番よく知っているんじゃあないの?)
頭の中に女性の声が響いていく。母親を思わせるような慈愛に満ちた優しい声だ。
だが、その回答は慈母やその精神からは大きくかけ離れたものであった。
そのような意地悪な問われ方をしたとしてもマリヤには身に覚えがないのだ。
唖然としているマリヤに向かってその女性は容赦のなくゼウスと同様の三叉の槍を作り出したのであった。
青銅色で作られた槍で、どこか美しさを感じる品だ。ギリシャかどこかの博物館で飾られていたとしても違和感はない。
もちろん、風情やらを感じている暇はない。今すぐにでも立ち上がらなくてはマリヤの方が死んでしまうのだ。
マリヤは自らを奮い立たせ、もう一度この理不尽な罰を与える女神へと立ち向かっていくのである。
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