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豊臣家士族会議編

本領発揮の段!

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「動くな!この鞄の中にありったけの金を詰めろ!」
黒色の目出し帽を顔に被った男が二連発式の散弾銃を突き付けながら、銀行員に向かって叫ぶ。
「いいか!オレたちに手向かいしてみろ、この炎がテメェらを地獄送りにするぜ!」
もう一人、彼の持つ魔法に相応しい赤色の目出し帽を被った男が掌の上から小さな炎を作り出す。
「相棒の言う通りだ!お前たちは大人しくしていれば手を出さん!」
もう一人、最後に黄色の目出し帽を被った男が支店長と思われる銀行員が慌てて差し出した札束を自身の黒のスポーツバッグに詰め込みながら叫ぶ。
銀行強盗たちが金を詰める様を銀行員の人々は複雑な思いで見つめていた。
黄色の目出し帽の男が金を全て詰め終えるのと同時に、三人は急いで正面に停めてあった黒色の浮遊車スカイアップ・カーと呼ばれるタイヤのない車へと飛び込む。
車の中には既に二人の男が仲間たちを待っていた。
二人の男は車が仲間が車の中へと飛び込むと同時に、急いでアクセルを踏んで勢いよく車を進ませていく。
「急げ!早くしろ!」
「何やってんだ!?随分と遅いじゃあないか!」
運転席の青色の目出し帽の男と灰色の目出し帽を被った助手席の男とが交互に遅れた仲間たちを罵倒していく。
「わ、悪い。金を引き出すのに時間が掛かった」
黄色の目出し帽の男の言葉に二人はまだ何か言いたげであったが、背後から迫るパトカーのサイレンの音を聞くと同時に前の二人はサイドミラーを他の三人は背後の窓を覗き込む。
「っちくしょう!警察だ!」
「どうする?」
赤色の目出し帽を被った男に黄色の目出し帽を被った男が尋ねる。
「心配するな、こいつを使うんだよ」
黒色の目出し帽を被った男が異空間の武器庫から最新式の機関銃を取り出しながら言った。
男はその言葉通りに機関銃を持って、扉の窓を開けると、そこから身を乗り出し、背後から迫るパトカーのタイヤを、或いは浮遊車スカイアップ・カーの弱点である浮遊エンジンを狙う。
浮遊エンジンが少しでも損傷すれば車は動かなくなる。
そこがこの車の弱点であった。男はそれを見抜いていたのだ。
男は全ての車が公道の真ん中で停止した事を確かめると、身を引っ込め、機関銃を元の場所へと戻す。
「へっへっ、ざまぁみろ!!オレの腕の前じゃあ、流石のお巡りもーー」
男が得意そうな笑みを浮かべるのと、彼らが乗る車が大きくブレーキを引いて止まるのは殆ど同時であった。
「お、おい!なんでブレーキなんて掛けるんだよ!?」
男は抗議の言葉を運転手に投げ掛けるが、彼は何も言わずにそのまま車の外へと降りていく。
それを追って次々に車を降りていく強盗たち。
全員が車を降りた先には見覚えのある五人の刑事たちが自分達が乗ってきたであろう車を背に置き、各々の武器を待ち構えていた。
「あ、こいつらは確か!?」
黄色の目出し帽を被った男はそのリーダー格である唯一の男性の若い刑事を指差す。
彼は確か、先の天使騒動において活躍を示した中村孝太郎その人ではないか。
その隣にいるのも例の天使騒動の際に孝太郎と共に活躍を共にしていたメンバーたちではないか。
「ちくしょう!こいつらがおれたちの邪魔を!」
黒色の覆面を被った男が異空間の武器庫から例の最新型の機関銃を取り出したが、男がその引き金を放つよりも前に、銃声が鳴り響き、男の拳銃を強制的に地面の上へと放り出していく。
彼の目の前で孝太郎と同じような赤銅色の肌をした若くて美しい女性が銃口から吹く煙を自身の息で払い除けながら、男に勝ち誇ったような表情を浮かべる。
一瞬で自分の得意の得物を失った男は戦意までも喪失してしまったらしく、その場にへたれこむ。
どうやら、腰の力が抜けて入らないらしい。
「ちくしょう!舐めやがって!」
そういきり立つのは水色の目出し帽と灰色の目出し帽を被った運転手と助手席のそれぞれに座っていた二人の男たち。
二人は異空間の武器庫から九州方面の暴力団関係者から安価な値段で買い入れた刀を取り出していく。
刀を構えた二人は中央に立っていた孝太郎の命を狙うものの、その前にボブショートの青い髪の小柄な女性が割り込み、彼女自身の刀で女性の2本の刀を防ぐ。
そして、そのまま刀を使って二人の体もろとも刀を弾くと、ガラ空きとなった腹を狙って峰を打ち込む。
二人は悶絶して苦しみながらも地面の上へと倒れ込む。
「こうなったらオレがやる!」
赤い色の目出し帽を被った男が炎を出しながら、孝太郎の元へと向かっていくが、孝太郎がその炎に向かって右手の掌を向けたのと同時に炎はたちまちのうちにその場から消え去っていく。
まるで、最初からそんな炎はなかったとでも言わんかのように。
「ば、バカな、オレの魔法が!?」
「終わりだな。さっさと仲間と共に自首しやがれ」
「ほざくな!」
孝太郎の挑発に男は心底から激怒したらしい。顔だけではなく、心までも真っ赤にして孝太郎へと飛び掛かっていく。
それを孝太郎は真っ赤なマントを引っ提げて襲い掛かる牛を躱す闘牛士のように華麗に交わすのと同時に、男の腕を後ろから手に取り、手錠を掛ける。
「う、うわァァァァァァ」
残った二人の男は歯向かう気力さえ消え失せていた。
慌ててその場から逃げようとするが、その前に杖を持った長い金髪の女性が慌てて逃げる二人を待ち構えていた。
彼女は杖から剣を抜くと、そのまま二人に向かって剣先を突き付ける。
「ここから先は通しませんよ。どうしても、駆け抜けるというのなら、私を殺してからにしなさい」
その声は明瞭としていて落ち着いたものであったが、明らかな命令口調であった。
彼女の鬼神の如き剣幕に二人の男は怯え切ってしまい、その場に自ら両腕を差し出す。
直後に二人の拘束を告げる心地の良い音が響いた。
「これで、全員だな?明美?」
孝太郎の問い掛けに丸渕眼鏡を掛けた童顔の女性が首を縦に動かす。
「ええ、強盗は確かに五人です」
彼女は堂々とした声で言った。その言葉を聞くと同時にチーム内の全員が顔を見合わせて笑う。
なにせ、明美はこのチームの会計係なのだ。その数字のプロである彼女が言うのだ。間違いないらしい。
五人は駆け付けた応援に強盗たちを引き渡すと、署へと戻っていく。
これが、この五人の応援を頼まれた時の応対だろう。
近くでこの一大捕物長を眺めていた小太郎は急いでウィンドウを開いて、そこのメモ欄に五人の戦いの特徴を書いていく。
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