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ニュー・メトロポリス編
パトリオットUFOーその⑤
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「無駄だって言っているのに、懲りない人だなぁ」
天使のその言葉は本物であった。圓太郎の放った小型の円盤は天使に向かってレーザー光線を一斉に放射していくが、天使は一向に倒れる気配を見せないのだ。
いくら攻撃を受けても倒れる気配を見せようとはしない。
圓太郎は戦術を変え、豆粒のような爆弾による爆破を試みたが、いくら爆発を受けてもなお、天使は平然とした顔を浮かべて立っている。
そして、本来ならば捕まえられるはずの円盤を容易に掴む。高速で動いているので、本来ならば絶対に捕まらないはずの円盤が、である。
天使は円盤を卵を持つかのように優しく持ち直すと、天使の両手から光を放射されて円盤を消していく。
天使に捕まれた円盤は懺悔を行った後の人間のような煌びやか光に包まれて消滅していく。
その後も天使に向かわせた円盤は全て同じような結果となった。
圓太郎は自らの周りを回る円盤とは別に、もう一度円盤を繰り出そうとしたが、なぜか攻撃用の円盤が出てこない。
圓太郎が焦っていると、天使は優しげな微笑を浮かべながら告げる。
「無駄だよ。キミの魔法の半分はぼくにより消滅させられた。つまるところだね、キミはもう攻撃用の円盤を繰り出す事はできないんだ」
「う、嘘だッ!」
圓太郎は声を張り上げてその天使の言葉を否定した。だが、天使は容赦なく残酷な真実を突き付けていく。
「嘘じゃあないよ。さっき、攻撃用の円盤を繰り出そうとしても、出なかったでしょ?それが動かぬ証拠だよ」
圓太郎は反論の言葉をここで紡ぎだそうとしたが、既にガス欠の車のアクセルを動かそうとも停まった場所から一歩も動かないのと同様でそれは絶対的な不可逆的な事に少しでも逆らおうとするための無駄な足掻きに過ぎなかったのだ。
だからだろう。圓太郎は反論の言葉を出す代わりに、刀を上空に振り上げて天使へと向かっていく。
彼の周りには首飾りのように漂う小型の円盤までもいる。
小型の円盤は主人を助けるようにレーザーを照射しながら向かってきていたのだ。
だが、天使はその努力を嘲笑うかのように短刀を突き付けて、宙に向かってそれを大きく振るう。
途端に何もない空間の中で大きな斬撃の波が生じて彼の魔法ごと円谷圓太郎を飲み込んでいく。
「そ、そんな……孝太郎さんがあれだけ苦労した魔法師がこんなにも簡単に」
「理解したかな?マリヤ・カレニーナ。案ずるなよ。あの攻撃は苦しむ間もなくあの世にいけるからね。さっさとあの世に送ってあげるよ」
怯えるマリヤの元へと詰め寄っていく天使。マリヤは恐怖のために頬に両手を当てて、自らの元へと迫ってくる天使の姿を眺めていた。
マリヤが悲鳴を上げようとした時だ。突然、天使が転倒する。マリヤが背後を振り返ると、そこには天使の体を強く抱き締める孝太郎の姿。
「待ちやがれ!マリヤに手を出すつもりならそうはさせねぇぞ!」
「こ、孝太郎さん!どうして?」
「たった今、目が覚めたんだ!そうしたら、外に出てお前たちが暴れている事に気が付いた!」
「やれやれ、究極の超越者が現れたんじゃあ勝負にならないかもな。ここは一度出直した方が良さそうだ。おっと、その前に」
天使は指を振るうと、孝太郎の腹を蹴り、引き離すと、先程の円谷圓太郎との戦いで生じた戦いの傷痕を直していく。
「じゃあね、究極の超越者さん……ゼウス神からのご命令だとキミを殺すのは一番最後なんだ。だから、今キミを殺すのは命令に反する」
天使はその美しい体の背中からこの世のものとは思えない程に美しく整った羽根を生えさせて、そのまま病院の窓から夜の闇の中へと消えていく。
「くそ、待て!」
孝太郎は慌てて天使を追い掛けようとしたが、なにせ、空を飛んでは捕まえようがあるまい。
孝太郎が下唇を強く噛みながら窓の外を眺めていると、途端に先程、蹴られた腹のうちに痛みを生じて蹲っていく。
それを見て慌てて駆け付けるマリヤ。彼女は孝太郎に自らの腕を貸し、彼を病室へと連れて行く。
「しっかりしてください。孝太郎さん……」
「あいつは?あいつらは誰なんだ?」
孝太郎の問い掛けにマリヤは先程見聞きした事を丁寧に教えていく。
孝太郎は天使の事を知ると、大きく体をぐらつかせていく。
それを慌てて支えるマリヤ。孝太郎は荒い息を吐きながら一人呟いていく。
「ちくしょう、そんな奴らが相手なら勝てるわけがないじゃあないか」
「……孝太郎さん」
マリヤは孝太郎の気持ちが分かるとばかりに目を潤ませて意図的に顔を背ける。
なにせ、先程の言葉を取れば、天使や神といった本来ならば人間を助けるはずの存在が人間に牙を向けたのだ。
これまで、孝太郎の敵は殆どが凶悪犯であり、自分と同じ血の通った人間であった。
だが、今度の敵は違う。自分たちよりも圧倒的な上の立場にある天使である。
どうやったとしても勝てるわけがない。しかも、天使は短刀を一振りするだけで大規模な斬撃を発生させて一瞬で円谷圓太郎を葬り去ったではないか。
孝太郎があれほど、苦戦した円谷圓太郎をあんなに簡単に。
マリヤはこれからの事を考えると少し憂鬱になりそうであった。
「円谷が戻らんな」
そう口に出したのは次元装置を持つ軍人グループのリーダーである紅兵庫少将である。
「ええ、彼は殺されたのでしょうか?はたまた逮捕されたのでしょうか?」
「そうなれば、警察が何かしらの発表をするだろう。そうしないのは心苦しいが円谷が我々を裏切り、警察に手を貸しているという事かもしれません」
「閣下、幾らなんでも、円谷ほどの人物が寝返るだなんて……」
「可能性の一つとして提示したまでだ。桑山少佐……ともかく、我々としては今後、裏切りの事を視野に入れてだなーー」
「大丈夫、裏切ってなんていないさ」
その場にいた全員が声のした方向を一斉に振り向く。同時にその場にいた全員が言葉を失う。
なぜなら、その場にいたのはかつて彼らが幼い頃に見た御伽噺に出てくる天使が立っていたからだ。
全員が驚きを隠せない中で唯一、紅少将だけが言葉の中に動揺を混ぜつつも冷静に尋ねる。
「お前は何者だ?」
「ぼく?ぼくは天使さ。人を導く存在であり、人を守護する存在、それがぼくなんだよ」
天使のその言葉は本物であった。圓太郎の放った小型の円盤は天使に向かってレーザー光線を一斉に放射していくが、天使は一向に倒れる気配を見せないのだ。
いくら攻撃を受けても倒れる気配を見せようとはしない。
圓太郎は戦術を変え、豆粒のような爆弾による爆破を試みたが、いくら爆発を受けてもなお、天使は平然とした顔を浮かべて立っている。
そして、本来ならば捕まえられるはずの円盤を容易に掴む。高速で動いているので、本来ならば絶対に捕まらないはずの円盤が、である。
天使は円盤を卵を持つかのように優しく持ち直すと、天使の両手から光を放射されて円盤を消していく。
天使に捕まれた円盤は懺悔を行った後の人間のような煌びやか光に包まれて消滅していく。
その後も天使に向かわせた円盤は全て同じような結果となった。
圓太郎は自らの周りを回る円盤とは別に、もう一度円盤を繰り出そうとしたが、なぜか攻撃用の円盤が出てこない。
圓太郎が焦っていると、天使は優しげな微笑を浮かべながら告げる。
「無駄だよ。キミの魔法の半分はぼくにより消滅させられた。つまるところだね、キミはもう攻撃用の円盤を繰り出す事はできないんだ」
「う、嘘だッ!」
圓太郎は声を張り上げてその天使の言葉を否定した。だが、天使は容赦なく残酷な真実を突き付けていく。
「嘘じゃあないよ。さっき、攻撃用の円盤を繰り出そうとしても、出なかったでしょ?それが動かぬ証拠だよ」
圓太郎は反論の言葉をここで紡ぎだそうとしたが、既にガス欠の車のアクセルを動かそうとも停まった場所から一歩も動かないのと同様でそれは絶対的な不可逆的な事に少しでも逆らおうとするための無駄な足掻きに過ぎなかったのだ。
だからだろう。圓太郎は反論の言葉を出す代わりに、刀を上空に振り上げて天使へと向かっていく。
彼の周りには首飾りのように漂う小型の円盤までもいる。
小型の円盤は主人を助けるようにレーザーを照射しながら向かってきていたのだ。
だが、天使はその努力を嘲笑うかのように短刀を突き付けて、宙に向かってそれを大きく振るう。
途端に何もない空間の中で大きな斬撃の波が生じて彼の魔法ごと円谷圓太郎を飲み込んでいく。
「そ、そんな……孝太郎さんがあれだけ苦労した魔法師がこんなにも簡単に」
「理解したかな?マリヤ・カレニーナ。案ずるなよ。あの攻撃は苦しむ間もなくあの世にいけるからね。さっさとあの世に送ってあげるよ」
怯えるマリヤの元へと詰め寄っていく天使。マリヤは恐怖のために頬に両手を当てて、自らの元へと迫ってくる天使の姿を眺めていた。
マリヤが悲鳴を上げようとした時だ。突然、天使が転倒する。マリヤが背後を振り返ると、そこには天使の体を強く抱き締める孝太郎の姿。
「待ちやがれ!マリヤに手を出すつもりならそうはさせねぇぞ!」
「こ、孝太郎さん!どうして?」
「たった今、目が覚めたんだ!そうしたら、外に出てお前たちが暴れている事に気が付いた!」
「やれやれ、究極の超越者が現れたんじゃあ勝負にならないかもな。ここは一度出直した方が良さそうだ。おっと、その前に」
天使は指を振るうと、孝太郎の腹を蹴り、引き離すと、先程の円谷圓太郎との戦いで生じた戦いの傷痕を直していく。
「じゃあね、究極の超越者さん……ゼウス神からのご命令だとキミを殺すのは一番最後なんだ。だから、今キミを殺すのは命令に反する」
天使はその美しい体の背中からこの世のものとは思えない程に美しく整った羽根を生えさせて、そのまま病院の窓から夜の闇の中へと消えていく。
「くそ、待て!」
孝太郎は慌てて天使を追い掛けようとしたが、なにせ、空を飛んでは捕まえようがあるまい。
孝太郎が下唇を強く噛みながら窓の外を眺めていると、途端に先程、蹴られた腹のうちに痛みを生じて蹲っていく。
それを見て慌てて駆け付けるマリヤ。彼女は孝太郎に自らの腕を貸し、彼を病室へと連れて行く。
「しっかりしてください。孝太郎さん……」
「あいつは?あいつらは誰なんだ?」
孝太郎の問い掛けにマリヤは先程見聞きした事を丁寧に教えていく。
孝太郎は天使の事を知ると、大きく体をぐらつかせていく。
それを慌てて支えるマリヤ。孝太郎は荒い息を吐きながら一人呟いていく。
「ちくしょう、そんな奴らが相手なら勝てるわけがないじゃあないか」
「……孝太郎さん」
マリヤは孝太郎の気持ちが分かるとばかりに目を潤ませて意図的に顔を背ける。
なにせ、先程の言葉を取れば、天使や神といった本来ならば人間を助けるはずの存在が人間に牙を向けたのだ。
これまで、孝太郎の敵は殆どが凶悪犯であり、自分と同じ血の通った人間であった。
だが、今度の敵は違う。自分たちよりも圧倒的な上の立場にある天使である。
どうやったとしても勝てるわけがない。しかも、天使は短刀を一振りするだけで大規模な斬撃を発生させて一瞬で円谷圓太郎を葬り去ったではないか。
孝太郎があれほど、苦戦した円谷圓太郎をあんなに簡単に。
マリヤはこれからの事を考えると少し憂鬱になりそうであった。
「円谷が戻らんな」
そう口に出したのは次元装置を持つ軍人グループのリーダーである紅兵庫少将である。
「ええ、彼は殺されたのでしょうか?はたまた逮捕されたのでしょうか?」
「そうなれば、警察が何かしらの発表をするだろう。そうしないのは心苦しいが円谷が我々を裏切り、警察に手を貸しているという事かもしれません」
「閣下、幾らなんでも、円谷ほどの人物が寝返るだなんて……」
「可能性の一つとして提示したまでだ。桑山少佐……ともかく、我々としては今後、裏切りの事を視野に入れてだなーー」
「大丈夫、裏切ってなんていないさ」
その場にいた全員が声のした方向を一斉に振り向く。同時にその場にいた全員が言葉を失う。
なぜなら、その場にいたのはかつて彼らが幼い頃に見た御伽噺に出てくる天使が立っていたからだ。
全員が驚きを隠せない中で唯一、紅少将だけが言葉の中に動揺を混ぜつつも冷静に尋ねる。
「お前は何者だ?」
「ぼく?ぼくは天使さ。人を導く存在であり、人を守護する存在、それがぼくなんだよ」
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