5 / 112
デストロイ・メトロポリス編
反撃の第一歩!
しおりを挟む
『おい、どうした?何があった?』
男の持つ無線から聞こえるのはダズ・スペクターの声。
決められた時間になっても戻ってこなかったので不審に感じたに違いない。
だが、返ってくるのは見張りに遣わせた男の声そのもの。
機械や何やらで加工したものではない。正真正銘の生の声。人工知能『ゼウス』の分析により、安堵したダズは無線機の向こうの彼と連絡を取り合い続けていく。
『いいか、中村孝太郎が来たのなら、即座にオレの元に連れて来い。それから、差し入れの女どもはさっさと始末しろ』
『し、失礼を承知で申し上げますが、差し入れの女を始末すれば、警察の奴らが不審がるのでは?」
男は日本人である。恐らく三百年前ならばユニオン帝国人。即ち旧アメリカ合衆国の人間であるダズの言葉を理解する事など不可能であっただろう。
だが、24世紀の現在ならば携帯翻訳機の力で異なる国の人間同士が会話を交わす事は可能である。
この装置は空気に乗った音声を機械が即座に翻訳しお互いの言語で伝え合うように作動しているのだ。
これにより、国々同士の諍いは殆どなくなったといってもいいだろう。
だが、機械は機械。万が一という事もあり、言語学は未だに学問の地位の上に存在している。
勿論、そんな事は見張りの男やダズの知った事ではない。
ダズは見張りの男に中村孝太郎の二人の仲間を始末する内容をくどくどと説明していく。
全ての説明が終わると、満足したのか一旦、通信が途絶えた。
男は通信機の装置を切ると、今現在、自分の頭に向けてレーザーガンを突き付けている男に向かって愛想笑いを浮かべる。
「へっへっ、これでいいんでしたよね?」
「あぁ、お役目ご苦労だったな。お前の役目はこれで終了だ」
孝太郎はそういうと右手に持っていた光線銃を異空間の武器庫中に仕舞い、拳を強く握り締めると、そのまま真っ直ぐに彼の頬に向かって強烈な一撃を喰らわせる。
丸太が落ちるような衝撃を受けた男はそのまま地面の上に倒れ込む。
孝太郎はそれを見届けると、男の服を剥ぎ取り、それを破くと即席の縄に仕立て、男の両腕を拘束する。
それから男が持っていたビームライフルを手に取り、仲間たちを引き連れ、ダズたちが籠る宇宙囚人号船の内部へと進む。
広い建物であったが、元が移送船であるためか、あまり身を隠せる場所はない。
ただ、見通しはよいために隠れ進む人間にとってはこれ以上に不利な場所はないだろう。
見張りが来ない事を祈りながら三人は進むが、現実というものは非情であるらしい。
先を進む三人の前に現れたのは先程の男と同様にビームライフルを持った二人の男性。
二人は三人の姿を見るのと同時に咄嗟に「あっ」と叫んで、ビームライフルを構えたが、その前に杖と袋を持ったマリヤ・カレニーナが二人の元に素早く駆け寄り、紙袋を捨てると、両手で手に持っていた杖の先端で二人の腹に当てて二人を意識外へと叩き落とす。
マリヤ・カレニーナは現在の日本の首都、ビッグ・トーキョーに存在する白籠市に存在する白籠署の刑事であるのと同時にロシア正教会の司教である。
彼女は日本語で表すのなら『剣客』と表すのが一番当てはまるだろうか。
彼女の得物は前世を覗くという水晶玉が付いた大きくて立派な杖の中に隠されている。
彼女は悪人を切り裂く前に、その水晶玉からその人の前世を推し量り、相手を一刀両断に斬り倒すのである。
もっとも、今回の場合は相手を殺してはいない。
同僚であり、自分が今現在所属するチームの参謀閣である中村孝太郎が犯人死亡という展開を忌み嫌っているためだ。
だから、初任務の今回では白刃を囚人号船の中で輝かせるなく、相手を倒したのだ。
マリヤは倒した敵を一瞥すると、孝太郎の方を向いて、
「急ぎましょうか。こうしている間にも、ダズの奴らは囚人号船の看守たちに何をしでかすのか分かりませんよ」
「そうだな。ありがとう。マリヤ……オレの意見を尊重してくれて」
「……私は聖職者。神に仕える身です。だから、悪党とはいえ命を助ける事を尊重しただけの事です」
彼女は素っ気なく言った。だが、その内心では孝太郎が礼を言ってくれた事を嬉しく思っていた。
マリヤは恋愛小説に登場するヒロインのように孝太郎に恋をしたわけではない。
孝太郎と信頼関係を築き上げられた事が嬉しかったのだ。
自分がこのチームの仲間に入ってから、日本どころか世界をも騒がせたカルト教団との戦いで彼と出会ってからまだ数日しか経っていない。
彼の姉とその姉を除けば一番信頼していると思われる青髪の刑事はまだ入院してるし、今自分と共に走っている丸渕眼鏡の女性刑事とは赴任の際に事務的な会話を交わしたばかり。
こんな調子だから、少しでも信頼関係を築いておきたいというのは彼女としては当たり前の事ではないだろうか。
そんな事を考えていると、またしても巡回の姿が見えた。数は四人。その内の半数がビームライフルを下げて歩いている。
マリヤがまたしても杖を構えて四人の元に向かおうとしたが、孝太郎はそれを手で静止させて、
「心配するな。今度はオレが止める」
そう言って、彼は異空間の武器庫から小さな自動拳銃を取り出す。
男の持つ無線から聞こえるのはダズ・スペクターの声。
決められた時間になっても戻ってこなかったので不審に感じたに違いない。
だが、返ってくるのは見張りに遣わせた男の声そのもの。
機械や何やらで加工したものではない。正真正銘の生の声。人工知能『ゼウス』の分析により、安堵したダズは無線機の向こうの彼と連絡を取り合い続けていく。
『いいか、中村孝太郎が来たのなら、即座にオレの元に連れて来い。それから、差し入れの女どもはさっさと始末しろ』
『し、失礼を承知で申し上げますが、差し入れの女を始末すれば、警察の奴らが不審がるのでは?」
男は日本人である。恐らく三百年前ならばユニオン帝国人。即ち旧アメリカ合衆国の人間であるダズの言葉を理解する事など不可能であっただろう。
だが、24世紀の現在ならば携帯翻訳機の力で異なる国の人間同士が会話を交わす事は可能である。
この装置は空気に乗った音声を機械が即座に翻訳しお互いの言語で伝え合うように作動しているのだ。
これにより、国々同士の諍いは殆どなくなったといってもいいだろう。
だが、機械は機械。万が一という事もあり、言語学は未だに学問の地位の上に存在している。
勿論、そんな事は見張りの男やダズの知った事ではない。
ダズは見張りの男に中村孝太郎の二人の仲間を始末する内容をくどくどと説明していく。
全ての説明が終わると、満足したのか一旦、通信が途絶えた。
男は通信機の装置を切ると、今現在、自分の頭に向けてレーザーガンを突き付けている男に向かって愛想笑いを浮かべる。
「へっへっ、これでいいんでしたよね?」
「あぁ、お役目ご苦労だったな。お前の役目はこれで終了だ」
孝太郎はそういうと右手に持っていた光線銃を異空間の武器庫中に仕舞い、拳を強く握り締めると、そのまま真っ直ぐに彼の頬に向かって強烈な一撃を喰らわせる。
丸太が落ちるような衝撃を受けた男はそのまま地面の上に倒れ込む。
孝太郎はそれを見届けると、男の服を剥ぎ取り、それを破くと即席の縄に仕立て、男の両腕を拘束する。
それから男が持っていたビームライフルを手に取り、仲間たちを引き連れ、ダズたちが籠る宇宙囚人号船の内部へと進む。
広い建物であったが、元が移送船であるためか、あまり身を隠せる場所はない。
ただ、見通しはよいために隠れ進む人間にとってはこれ以上に不利な場所はないだろう。
見張りが来ない事を祈りながら三人は進むが、現実というものは非情であるらしい。
先を進む三人の前に現れたのは先程の男と同様にビームライフルを持った二人の男性。
二人は三人の姿を見るのと同時に咄嗟に「あっ」と叫んで、ビームライフルを構えたが、その前に杖と袋を持ったマリヤ・カレニーナが二人の元に素早く駆け寄り、紙袋を捨てると、両手で手に持っていた杖の先端で二人の腹に当てて二人を意識外へと叩き落とす。
マリヤ・カレニーナは現在の日本の首都、ビッグ・トーキョーに存在する白籠市に存在する白籠署の刑事であるのと同時にロシア正教会の司教である。
彼女は日本語で表すのなら『剣客』と表すのが一番当てはまるだろうか。
彼女の得物は前世を覗くという水晶玉が付いた大きくて立派な杖の中に隠されている。
彼女は悪人を切り裂く前に、その水晶玉からその人の前世を推し量り、相手を一刀両断に斬り倒すのである。
もっとも、今回の場合は相手を殺してはいない。
同僚であり、自分が今現在所属するチームの参謀閣である中村孝太郎が犯人死亡という展開を忌み嫌っているためだ。
だから、初任務の今回では白刃を囚人号船の中で輝かせるなく、相手を倒したのだ。
マリヤは倒した敵を一瞥すると、孝太郎の方を向いて、
「急ぎましょうか。こうしている間にも、ダズの奴らは囚人号船の看守たちに何をしでかすのか分かりませんよ」
「そうだな。ありがとう。マリヤ……オレの意見を尊重してくれて」
「……私は聖職者。神に仕える身です。だから、悪党とはいえ命を助ける事を尊重しただけの事です」
彼女は素っ気なく言った。だが、その内心では孝太郎が礼を言ってくれた事を嬉しく思っていた。
マリヤは恋愛小説に登場するヒロインのように孝太郎に恋をしたわけではない。
孝太郎と信頼関係を築き上げられた事が嬉しかったのだ。
自分がこのチームの仲間に入ってから、日本どころか世界をも騒がせたカルト教団との戦いで彼と出会ってからまだ数日しか経っていない。
彼の姉とその姉を除けば一番信頼していると思われる青髪の刑事はまだ入院してるし、今自分と共に走っている丸渕眼鏡の女性刑事とは赴任の際に事務的な会話を交わしたばかり。
こんな調子だから、少しでも信頼関係を築いておきたいというのは彼女としては当たり前の事ではないだろうか。
そんな事を考えていると、またしても巡回の姿が見えた。数は四人。その内の半数がビームライフルを下げて歩いている。
マリヤがまたしても杖を構えて四人の元に向かおうとしたが、孝太郎はそれを手で静止させて、
「心配するな。今度はオレが止める」
そう言って、彼は異空間の武器庫から小さな自動拳銃を取り出す。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
『レンタル・メンタル』って――どう考えても外れスキルだよね?
藍染 迅
ファンタジー
十歳になったジョバンニ。神から頂いた恩寵スキルは「レンタル・メンタル」。
他人の性格、性癖、思考パターンを借用できるという能力だった。
戦闘の役に立たない外れスキル持ちと判断されたジョバンニは、貴族の家を追われることになる。
可愛いメイド見習いのリーナを連れて、平民として生きるジョバンニの明日はどっちだ?
やがて「弱者の剣と」自ら称する一流を立て、「音無しのジョバンニ」と呼ばれることになる剣の達人のエピソード・ゼロ。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる