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第三部『未来への扉』

闇の帝王の進撃 パート4

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西原さやかとガラドリエル女王の斬り合いが始まるのと同時に透明の盾を持つ剣士達ガラス・オブ・ソードと見張り台の守備隊との間にもう一度剣が交じり合っていく。
オークやゴブリンの武器と守備隊や近衛兵団の剣がぶつかり合う音が聞こえてくる。
そんな中でも、双子は西原さやかから目を伏せて地面を眺めていた。
特にマートニアは両目を防いで西原さやかを視界の中に映す事を拒否していた。
ディリオニスも同様で、西原さやかが現れてからと言うもののずっと塞ぎ込むばかりであった。
ゲオルグは打ち付けた腰を右手で押さえながら、彼らの元に近付いていく。
ゲオルグは二人の目の前に現れ、二人に向かって険しい声で二人に向かって激励の言葉を投げ掛ける。
「戦うんだッ!あの女に何をされたのかは知らないが、キミたち二人が戦わなければ、ずっとキミ達二人はトラウマを抱えたまま生きる事になるんだぞ!」
だが、二人はゲオルグの言葉にも従わずにひたすら地面見て俯いていた。
「……どうして、どうしてボクはあの子の告白を断っちゃったんだろう?そんな事をしたから、ボクは……妹まで……」
ディリオニスは虚な視線で地面を向いていた。
勇敢なる騎士は彼の暗い態度に苛立ったのか、口もよりも先に手が動いてしまう。
女王の忠実なる騎士にして見張り台の最高責任者である男はディリオニスの両肩を強く揺さぶり、彼に激しい口調で怒鳴っていく。
「オレはお前達二人があの女と何が合ったのかは分からないけれど、だが、お前達二人があの女にどんな目に遭わされたのかは大方予想できる……けれど、誰にも過去を変える事はできないんだッ!今、オレ達が振り向かなければならないのは現在なんだッ!見るがいい!女王陛下の姿を!」
ゲオルグはいじけ続ける双子の騎士に自分達の女王が懸命にピンク色の鎧を身に纏った邪悪な存在と戦っている場面を目撃した。
互いに剣を打ち合っていたが、やはり、疲労が溜まってきているのだろうか。
遠目にでも彼女がフラフラしている事に気が付く。
その姿を見せた上で、ゲオルグはもう一度双子の騎士、ディオリニスに向き直り、彼の肩を強く握って、
「いいかッ!オレ達は女王陛下に忠誠を誓うと決めた身なんだッ!その陛下が苦境に陥っている時に助けるのは女王陛下の臣である我々の役目なんだ!」
ゲオルグの言葉にディリオニスの体全体が稲妻に生まれたような衝撃によって震えてしまう。
彼自身の口からハッと言う息が聞こえたのをゲオルグはハッキリと聞いた。
勇敢なる黒髪の騎士は中性的な均整な顔立ちの男の騎士の背中を押す。
ようやく立ち上がった騎士は自分の側に蹲っている妹に向かって綺麗な腕を差し伸べる。
「行こう、由紀……いや、マートニア。ボクらの役目は女王陛下を守る事だろう?そのために、ぼくらは行かなくちゃあならないんだ。ぼくらの手で亡霊を打ち砕くんだ」
ディリオニスの差し伸べられた手をマートニアはゆっくりと手に取る。
双子の騎士は女王と自分達を苦しめる亡霊の前に立ち塞がる怪物達に向かって剣先を向けるが、その前に女王の相談役にして偉大なる魔道士の最後の生き残りであるユーノ・キルケが現れ、目の前に現れた怪物達を内部から爆破して消し飛ばしていく。
ユーノは得意気に杖を振ってから、二人に向かって慈母神を思わせるような優しい微笑みを向ける。
「女王陛下に向かおうとする雑魚どもは我々に任せろとのあの騎士団長から伝言を受け取って参りましたわ、勿論、私もその騎士団長と同意見だと先に言っておきますわ、お行きなさい。後の雑魚は私に任せて、あなた方は女王陛下の守護をお頼み申しますわ」
ユーノは引き続き杖を振って雑魚の殲滅を担当していく。
双子の騎士はオークやゴブリンと言った怪物の死体を踏み分けながら、女王と亡霊が斬り結んでいる場所へと向かう。
塔の門の前では自分達の女王とかつての亡霊が激しい戦いを繰り広げていた。
二人は肩を並べて腰に下げていた剣を鞘から引き抜き、女王の敵に向かってその剣先を突き付ける。
双子はお互いの肩を守るために、声を震わせて叫ぶ。
その事で、ガラドリエルに向かって剣を突き刺そうとする西原さやかをこちらに振り向けさせる事に成功した。
西原さやかは双子の姿を見るなり、ニヤニヤとした笑顔を浮かべて、
「鷹山ァ~飼い主に剣を向けるってどう言う事なのかな?本当に苛つく奴だよね。あの体育館の倉庫に閉じ込めた時もそうだったよな?あたしらに勝手にあんな事をしてさ、だから、頭を蹴飛ばしてやってーー」
「私の臣下にそれ以上言いようのない侮辱を行うのなら、女王の名においてお前を二人の名誉を汚した罪でお前を鞭打ちの刑に処してやるがどうだ?」
「ハッ、こんな状況で何が女王だよ。バカにしてんの?」
双子の騎士はそれでも尚、沈黙を保っていた。女王は二人の態度に痺れを切らしたのか、大きな声で二人に向かって叫ぶ。
「ディリオニスッ!マートニアッ!お前達二人の過去に何が合ったのかは問わぬ!だが、私の命が危うい中で職務を放り出すのを私は騎士とは認めぬ!私に忠誠を尽くす気があるのなら、このしれ者を斬り殺すのだッ!」
「お前、本当にムカつく奴だな、この西原さやかに向かってよくもそんな口を……」
さやかは無言でガラドリエルに向かって剣を振り下ろそうとした時だ。その前にディリオニスが現れて、彼女の剣を防ぐ。
さやかは歯を軋ませながら、双子の騎士を見遣る。
いつも通りの可愛らしい顔だ。自分達がいつも自尊心を散々点した子供の顔。
だが、力だけは子供のものではない。さやかの放った剣がピクリとも動かないのだから。
さやかが何とか剣を振り下ろそうと努力していると、彼女の空いていた左水平を苛めていた女の方が狙う。
「ペットの癖にッ!」
さやかはそう叫んで剣を振り回そうとしたが、彼女の剣はその位置で固定されて動かない。
「西原さやか……もうぼくらにお前をが怖がる気持ちはない。あるのはどうしようもない怒りだけッ!お前を殺したいと叫ぶ程のなッ!」
ディリオニスはそう言って激しく剣を左右に振っていく。
さやかはその剣を受け取るのに四苦八苦しており、彼女の近くの地面がすり減っている事に気が付く。
ディリオニスだけではない、マートニアもこの戦いに参戦してさやかを追い詰めていく。
さやかは不利な状況をペットが自分に逆らったと言う自分勝手な自尊心だけで二人の猛攻に耐えていた。
さやかは双子の騎士の猛攻を剣握る両腕が痺れても尚、認めてはいなかったのだ。
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