いじめられ勇者が世界を救う!?〜双子のいじめられっ子が転生した先で亡国の女王を助け、世界を救うと言うありふれた話〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
上 下
84 / 106
第二部『救世主と悪魔達との玉座を巡る争い』

大陸間戦争 パート6

しおりを挟む
翌日のまだ夜も明けない内に北の国の軍勢は押し寄せて来た。
北の国の軍勢は前回よりも多くの人数で構成されており、ゴブリンやオークの部隊が復活しているのは勿論、彼らの頭上に一隻の船が飛んでいたのをユーノは確認した。
船の看板の上で宙に向かって杖を掲げているフレーゲルの姿が見える事から、彼が飛行船を動かしているに違いない。
どうやら、前回よりも多くの兵士を引き連れ、見張り台に向かって来ているらしい。
双子の騎士と偉大なる魔道士、この場にいる全兵が鞘を抜いて、見張り台の柵の上から地面を埋め尽くさんばかりの数の亜人やら魔物の数に絶望の表情を見せていく。
ユーノはその姿を見るなり、自らはテレポートの魔法で女王に北の国に対処するための軍を派遣するように進言すると言い放つ。
その行動を止める者は居なかった。ユーノはもう一度双子の騎士の腕をゆっくりと手に取って、自分の思いを託していく。
「しっかりと頑張ってね。ディリオニス……応援しているわ」
「ユーノさんもね。キミなら絶対に女王陛下を動かせると思うよ」
「ユーノさん。カールを倒した時のようにまたもう一度この戦いに勝利できるよ!だから、頑張ろう!」
ユーノはマートニアのその言葉を聞くのと同時に彼女の手をもう一度強く握っていく。
それから彼女は自らにテレポーテーションの魔法を掛けて姿を消す。
双子の騎士と見張り台の数百名の兵士達は一抹の期待を彼女にかけながら、彼女が消えた場所を見守る。
それから、双子の騎士は剣を引き抜き、北の国の軍勢と対峙する事を叫ぶ。
「皆んな!ここが正念場だッ!ぼく達の活躍で北の国の愚かな侵攻を終わらせるんだッ!奴らの神と一緒に奴らによる侵攻を終わらせていくんだッ!」
「女王陛下のために、そして私達人類のために戦いましょう!私達が負けて、ここを突破され、ブレーメレの街を占領されたら、次に奴らが狙うのは皆んなの家族や恋人や友人、大切な人達だよ!彼らをここで止めずに他で何処で止めるのよ!」
マートニアの演説に一番興奮したのはゲオルグであった。ゲオルグは歯を剥き出しにして完全に理性を吹き飛ばしながら、彼女の演説に向かって肯定の言葉を飛ばしていく。
「マートニア騎士殿の言う通りだッ!奴らが狙うのは我々の大切な人達だッ!前より数が多いのが何だッ!我々には女王陛下とプロイセン大陸の神々が付いている!我々に怖い物などある訳がないッ!」
ゲオルグの演説によって彼らへの激昂は完了し、彼らは見張りの兵士とブレーメレの街への援軍を求める早馬を飛ばしていき、彼らは死を覚悟して化け物の大軍に立ち向かって行く。
先陣を切って突撃したのは例の双子の騎士。
彼は先頭で見張り台の粉砕を試みていたリザードマンの群れの中に体を投げ込み、多くのメイスや盾と一緒に彼らの体を斬り刻んでいく。
「行くぞ!マートニアッ!ここに王国の荒廃が掛かっているんだッ!」
「そうね!女王陛下のために!そして、人類のためにあたし達は戦いましょう!お兄ちゃん、ううん、あなたッ!」
マートニアのディリオニスへの一人称が「お兄ちゃん」から「あなた」へと変わっていく。
ディリオニスは改めて夫婦である事を認識し、体全体を鼓舞し、リザードマンの軍団を次々と斬り刻んでいく。
ディリオニスは大きな声で叫びながら、彼らを叩き伏していく。
メイスや盾ごと壊されるのではたまったものではない。
リザードマンは次々に戦意を喪失し、彼らの代わってゴブリンの部隊が双子の対処へと当たっていく。
リザードマンは数十名が殺された所で双子に立ち向かうのは不可能だと判断したのだろう。
彼らを無視して他の兵士達に向かって行く。
彼らは多くの死体の上でリザードマンの大軍と対峙していく。
ゲオルグはリザードマンの頭を狙い剣を振るっていく。
ゲオルグの風を切るような素早い速さで振られる一振りによってリザードマンの頭は跳ねられていく。
リザードマンは双子の騎士程では無くても、ゲオルグを脅威に思い始め、彼らは大勢でゲオルグを取り囲む。
だが、それが災いし、彼らの頭を他の兵士達が剣やら槍やらで攻撃していく。
その上、ゲオルグ自身も躊躇いもなくリザードマンの首を跳ねていく。
ゲオルグはリザードマンの返り血を浴び、体全体を真っ赤に濡らしながら、目の前に新たに現れた他のリザードマンやオークやゴブリンに向かって咆哮を放つ。
彼は荒い息を吐きながら、ゴブリンやオークに向かって剣を振るっていく。
ゲオルグの野獣のような咆哮にゴブリンやらオークやらは立ち竦む。
オークの強化体であるオーガの部隊が代わりにゲオルグの元に向かって行くが、結果は変わらない。
彼は大勢の数のオーガに囲まれたとしても、問題なくオーガの攻撃を交わしていくばかりか、カウンター攻撃さえ喰らわせていく。
オーガ達もたじろぐ中で、彼の目の前に現れたのは額の上にサイのような角を生やした一つ目の鋭い目を持った巨人達。
胴体は人間の形をし、下半身は馬のような体をした巨人は手に巨大な棍棒のような棒を下げている事から、彼らをそれで潰そうと考えているのは明白だった。
ゲオルグは集まった守備兵士達に大声で退却の指示を出す。
ゲオルグの指示に従い、守備隊の兵士達は後退していく。
ゲオルグは近くの若い兵士に向かって大きな声で、
「ドラゴンを連れて来い!我々があの怪物に対処できるのはドラゴンしかないだろう!?早くしろ!」
「あ、あぁ……分かった。直ぐに連れてくるよ!」
若い兵士は唐突な同僚の指示に従い、慌てて見張り台の近くで待機しているドラゴンを呼びに行く。
ゲオルグはそれまでの間に巨人達の群れに対処するために、巨人の元に飛び掛かり、彼らの視界を奪う事にした。
彼らの視界を斬り付け、彼は地面に着地する。
すると、視界を奪われた一つ目の巨人はめちゃくちゃに棍棒を振り回し、他の仲間達や検討違いの方向に向かって棍棒を振り回していたのだった。
勿論、戦闘の輪を乱したその巨人には他の巨人達による粛清が施された。
彼は仲間達の棍棒によって命を奪われた。
彼らは憎しみの瞳を先頭の巨人の視界を奪った男に注いでいく。
ゲオルグは巨人の視界に映ったとしても彼は表情を変えない。
剣を掲げてドラゴンが応援に向かうまでの時間を稼ぐ事にした。
彼は死を覚悟して巨人達の群れに向かっていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

【完結済み】ブレイメン公国の気球乗り。異世界転移した俺は特殊スキル気球操縦士を使って優しい赤毛の女の子と一緒に異世界経済を無双する。

屠龍
ファンタジー
山脈の国に降り立った気球乗りと心優しい竜騎士王女の純愛ものです。 「ドラゴンを解剖させてください」 「お前は何を言っているんだ」 日本の大学を卒業して奨学金返済の為に観光施設で気球乗りとして働いていた水無瀬隼人(みなせはやと)が謎の風に乗って飛ばされたのは異世界にある山脈の国ブレイメン公国。隼人が出会ったのは貧しくも誇り高く懸命に生きるブレイメン公国の人々でした。しかしこのブレイメン公国険しい山国なので地下資源は豊富だけど運ぶ手段がない。「俺にまかせろ!!」意気込んで気球を利用して自然環境を克服していく隼人。この人たちの為に知識チートで出来る事を探すうちに様々な改革を提案していきます。「銀山経営を任されたらやっぱ灰吹き法だよな」「文字書きが出来ない人が殆どだから学校作らなきゃ」日本の大学で学んだ日本の知識を使って大学を設立し教育の基礎と教師を量産する隼人と、ブレイメン公国の為に人生の全てを捧げた公女クリスと愛し合う関係になります。強くて健気な美しい竜騎士クリス公女と気球をきっかけにした純愛恋愛物語です。 。 第17回ファンタジー小説大賞参加作品です。面白いと思われたらなにとぞ投票をお願いいたします。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...