161 / 206
人と異形とが争いを繰り広げる惑星『ボーガー』
20
しおりを挟む
「悠介たちは無事かな?」
修也は胸元を抑えながらフラフラとその場から起き上がっていった。
「無事ですよ。ただ、恐らく悠介さんと麗俐さんが宿屋の二階であの男と戦っているので、絶対とは言いきませんが……」
ジョウジは罪悪感からか、少し言葉の端を濁らせていた。
「……そうですか」
修也はヘルメットの下で不安そうに両目を細めた。
正直にいえばあの男の強さというのは規格外のものだった。『これまでに出会ったどの人物よりも』という形容詞を使うにはいささか大袈裟であったかもしれないが、それでも随分と脅威に感じたのは事実だ。修也の人間としての本能が恐怖心というものを刺激していたといってもいい。
この星で出会った他の敵のように超能力に溺れていたわけでも超能力に操られていたというようなものでもない。しっかりと己の力量というものをわきまえており、その上で適正な攻撃を繰り出してきたというのが彼を強敵たらしめた理由のように思えた。
修也が生唾を飲み込み、その恐ろしさを改めて実感させていた時のことだ。背後から殺気を感じてレーザーガンを構えた。レーザーガンを突き付けた先にいたのは猿たちであった。
奉天が一人で対応を続けているとはいえ、それでも数が多いから漏れた人数もいるのだろう。
方天戟の洗礼を免れた獰猛な猿たちは槍や矛を振り回しながら修也に向かって襲いかかってきていたのだ。
横暴な答えに対する返答というのは修也の中で決まっていた。すなわち即座に引き金を引いて熱線を放って、相手をあの世へと送ってやることだ。
向こうに話し合う気がないというのならばこちらも話し合う必要などない。向こうが理性というものをかなぐり捨て、獣のように暴力で訴えるというのであればこちらも同様に獣としての態度を取るまでのことなのだ。
いかに屈強な鎧とはいえ22世紀の最新鋭の熱線を防ぐことは不可能だった。
無事に襲撃を防ぐことができたとはいえ、他にも猿たちが辺りを彷徨いていたのは事実である。
「……どうやら、彼らを片付けないとどうしようもないようですね」
修也はレーザーガンを構えながら言った。
「そうですね。ここは悠介さんや麗俐さんたちがあの男を倒すまでの時間稼ぎということにしましょうか」
「同感です。あの猿たちを一歩も近付けてはなりませんよ」
この時、ビームポインターを握り締めたジョウジは既に修也へとその背中を預けている。ピッタリと互いにくっ付けあった背中は信頼の証のように思えた。
悠介と麗俐とが元結との戦いに集中できたのは父親やその相棒のアンドロイドが猿たちを防いでくれていたという事情があったからだ。
しかし元結一人であったとしても強敵だった。修也ですら敵として高い評価を送っているというのに、戦闘経験の少ない二人からすれば元結はロールプレイングゲームに登場するラスボスにも匹敵する存在であったに違いなかった。
戦いを始めてからというものの、当初は互角のように立ち振る舞っていたが、現在においては防戦一方という惨めな有り様だった。
その状況を表すかのように悠介は果敢に拳を振り上げて元結へと振り上げていったものの、咄嗟のタイミングで火車を当てられ、地面の上へと落下する羽目になった。
勢いよく床の上に叩き付けられので悠介は傷こそ負わなかったものの、叩き付けられた際に生じた衝撃が全身を伝わっていく。なんともいえない痛みのようなものが生じていき、悠介は起き上がることができなかった。
「ククッ、哀れなものだ。さてと、そこのお嬢さん。大人しくしていれば私はもう手を出さないが……どうだね?」
麗俐は無言だった。言葉が分からなかったということも大きかったが、それ以上に元結に、襲ってきた敵に対する嫌悪感の方が強かったのだ。
それでも元結の持つ超能力には対応できなかったので無言で睨み付けるという浅い抵抗を試みることしかできなかったのだ。
元結は麗俐のそうした事情を知らなかったが、仮に知っていたとしても彼が容赦することはなかっただろう。元結は火車を作り出すと、麗俐に向かって放り投げた。麗俐は床の上を転がることで元結の火車を交わしたものの、転がったところを蹴り上げられて倒されてしまったのだ。
腹部を強く蹴られたことによって麗俐は動くことができなかった。訓練を受けたにしろ、それまで普通の女の子としての人生を送ってきた麗俐からすれば大きな丸太を直に受けたに等しい衝撃であったに違いなかった。
麗俐が息を切らしていると、もう一度蹴りを喰らわせた。これで麗俐は完全に動けなくなった。
元結は宝物が置かれた宝物庫の扉を開くかのように、紅晶が隠れている部屋の扉を開いた。ギィィィと油の差していない扉をゆったりとして開く動作は紅晶を守ろうとしていた二人に対して見せしめの意味もあったかもしれない。
自分の無力さを訴えさせるためにこんなことをしたのであれば相当なまでに性質が悪いことはいうまでもない。
意地悪な笑みを浮かべながら扉を開くと、そこにはビームポインターを構えながら元結を睨む見知らぬ女性とその背後に隠れている紅晶の姿が見えた。
元結はその姿を見て得意げな笑みを浮かべた。
「ほぅ、これはこれは……紅晶殿下ですな? お初にお目に掛かります。我が名は沮元結。孫本初様の参謀役を務めておりますものです。以後お見知り置きを」
深々と頭を下げ、わざと臣下としての礼を取ったのは彼が持つせめてもの礼儀であったのか、はたまた皮肉であったか分別は難しかった。
何も言わない代わりに紅晶はギロっと自身の部屋に侵入してきた無礼者を睨み付けた。
「ククッ、これは手厳しい。ですが、殿下のご意志とは関係なく、私はあなた様をこれまでに亡くなられた帝の元へと送らなくてはなりません。お覚悟を」
元結が短剣を突き付けながら言った時のことだ。
「お待ちなさい!」
と、真横から静止する声が聞こえた。
元結が声のした方向を見ると、そこにはこれまで黙っていた女性の姿が見えた。
側仕えの女官などとは気色が違う。銀色の全身が繋がった服からして異様だ。天よりの使者と思うしか他にない。
だが、元結は不服に思うこともせず、むしろ寛容な笑みを用いて彼女に接したのだった。
「何か御用かな? 美しいお嬢さん」
「勝手に淑女の部屋に入るとはそれでも殿方のやることですか!? 無礼者!! 恥を知りなさい!!!」
この時カエデは自身の頭の中に浮かんだ言葉の中からなるべく適切かつ場面にあった台詞を選んだつもりでいた。
しかし懸命に編み出した罵声も元結の胸には響いていなかったらしい。余裕を含んだ笑みを浮かべながら元結は答えた。
「申し訳ないが、お嬢さん……私にはなりふりを構う余裕がないんだよ。ここで殿下をお隠ししなければお叱りを受けるのは私なのだから」
この時に肩をすくめて見せ、悲しむような声で答えてみせたのは彼の余裕の表れであったかもしれない。
もしくは彼なりの冗談かもしれない。
だが、そんな元結の心境などカエデには知ったことではない。
「ならば、十分に叱られなさい」
カエデは淡々と言い放った。
そしてそのままビームポインターの引き金を引いたが、すぐに異変を察したのか、元結は身を屈めて熱線を回避した。
カエデによって熱線は元結の背後にあった木製の扉を勢いよく貫き、この星の人々がどんなに頑張って計測したとしても空けられない正確な丸い穴を開けていた。
元結も背後を振り返り、見事に空いた丸い穴を見て口笛を吹いた。
だが、そう感心してばかりもいられない。第二撃は瞬時に訪れた上空を飛んで回避し、今度はカエデの手に向かって短剣を投げ付けた。
投げ付けられた短剣はカエデが握っていたビームポインターを地面の上へと弾き落とした。
磨かれたばかりの床の上を転がるかのように勢いよく転んでいったビームポインターを元結はゆっくりと持ち上げた。
「なるほど、これが火の矢を放つ杖か」
元結がそう吐き捨てたのも無理はない。いわゆる過去の人間である元結にとってビームポインターというのはいかなる状況でも恐ろしい熱線を放つことができる魔法の杖だったのだ。
元結はそのまま二人に向かっていくらでも熱線を出す魔法の杖ことビームポインターを突き出したが、不幸であったのは使い方が分からなかったことだ。
この時に彼自身の得物を用いることができていれば困惑した隙に生じる隙などできなかったはずだ。
それが彼の命運を分けたといっても過言ではなかった。カエデがビームポインターを構えた元結に対して勇敢にも立ち向かい、体当たりを繰り出して彼を地面の上に叩き付けたのである。
紅晶はこの隙を見て、彼女が何も言う前にその場所を逃げ出した。
「し、しまった!」
元結は真下からカエデを突き飛ばし、慌てて追い掛けていく。勢いよく扉を開いたその時だ。
一匹の優れた鷹が元結へと襲い掛かってきた。大きく気高い翼を広げた偉大な鷹、劉尊は自ら仕えるべき女主人を守るため、勇敢にも立ち向かってきたのである。
元結の顔へと覆い被さったかと思うと、鳴き声を上げながら彼の視界とそして耳の両方を奪っていった。
「くっ、こ、このクソ鳥ッ!」
元結がバタバタと暴れているのを見たカエデはここぞとばかりに地面の上から起き上がり、元結の両足を防いだ。
元結はそのまま地面の上に組み敷かれることになった。カエデは足からそのまま胴体へと手を伸ばし、そしてその両手を背後に回して組み伏せたていったのである。
同時に劉尊が空中へと待機していく。カエデは劉尊が飛び去った頭の上にビームポインターを突き付けて言った。
「あなたの負けです。大人しくなさい」
元結は何も返さなかった。ただ悔しそうに下唇を噛み締めながらカエデを睨み付けるのみだった。
それまで動けなかった二人も元結が組み敷かれる姿を見て、確認のためかヨロヨロと動きながら近付いてきた。
これでようやく宿屋での戦いは終息を迎えたのであった。
修也は胸元を抑えながらフラフラとその場から起き上がっていった。
「無事ですよ。ただ、恐らく悠介さんと麗俐さんが宿屋の二階であの男と戦っているので、絶対とは言いきませんが……」
ジョウジは罪悪感からか、少し言葉の端を濁らせていた。
「……そうですか」
修也はヘルメットの下で不安そうに両目を細めた。
正直にいえばあの男の強さというのは規格外のものだった。『これまでに出会ったどの人物よりも』という形容詞を使うにはいささか大袈裟であったかもしれないが、それでも随分と脅威に感じたのは事実だ。修也の人間としての本能が恐怖心というものを刺激していたといってもいい。
この星で出会った他の敵のように超能力に溺れていたわけでも超能力に操られていたというようなものでもない。しっかりと己の力量というものをわきまえており、その上で適正な攻撃を繰り出してきたというのが彼を強敵たらしめた理由のように思えた。
修也が生唾を飲み込み、その恐ろしさを改めて実感させていた時のことだ。背後から殺気を感じてレーザーガンを構えた。レーザーガンを突き付けた先にいたのは猿たちであった。
奉天が一人で対応を続けているとはいえ、それでも数が多いから漏れた人数もいるのだろう。
方天戟の洗礼を免れた獰猛な猿たちは槍や矛を振り回しながら修也に向かって襲いかかってきていたのだ。
横暴な答えに対する返答というのは修也の中で決まっていた。すなわち即座に引き金を引いて熱線を放って、相手をあの世へと送ってやることだ。
向こうに話し合う気がないというのならばこちらも話し合う必要などない。向こうが理性というものをかなぐり捨て、獣のように暴力で訴えるというのであればこちらも同様に獣としての態度を取るまでのことなのだ。
いかに屈強な鎧とはいえ22世紀の最新鋭の熱線を防ぐことは不可能だった。
無事に襲撃を防ぐことができたとはいえ、他にも猿たちが辺りを彷徨いていたのは事実である。
「……どうやら、彼らを片付けないとどうしようもないようですね」
修也はレーザーガンを構えながら言った。
「そうですね。ここは悠介さんや麗俐さんたちがあの男を倒すまでの時間稼ぎということにしましょうか」
「同感です。あの猿たちを一歩も近付けてはなりませんよ」
この時、ビームポインターを握り締めたジョウジは既に修也へとその背中を預けている。ピッタリと互いにくっ付けあった背中は信頼の証のように思えた。
悠介と麗俐とが元結との戦いに集中できたのは父親やその相棒のアンドロイドが猿たちを防いでくれていたという事情があったからだ。
しかし元結一人であったとしても強敵だった。修也ですら敵として高い評価を送っているというのに、戦闘経験の少ない二人からすれば元結はロールプレイングゲームに登場するラスボスにも匹敵する存在であったに違いなかった。
戦いを始めてからというものの、当初は互角のように立ち振る舞っていたが、現在においては防戦一方という惨めな有り様だった。
その状況を表すかのように悠介は果敢に拳を振り上げて元結へと振り上げていったものの、咄嗟のタイミングで火車を当てられ、地面の上へと落下する羽目になった。
勢いよく床の上に叩き付けられので悠介は傷こそ負わなかったものの、叩き付けられた際に生じた衝撃が全身を伝わっていく。なんともいえない痛みのようなものが生じていき、悠介は起き上がることができなかった。
「ククッ、哀れなものだ。さてと、そこのお嬢さん。大人しくしていれば私はもう手を出さないが……どうだね?」
麗俐は無言だった。言葉が分からなかったということも大きかったが、それ以上に元結に、襲ってきた敵に対する嫌悪感の方が強かったのだ。
それでも元結の持つ超能力には対応できなかったので無言で睨み付けるという浅い抵抗を試みることしかできなかったのだ。
元結は麗俐のそうした事情を知らなかったが、仮に知っていたとしても彼が容赦することはなかっただろう。元結は火車を作り出すと、麗俐に向かって放り投げた。麗俐は床の上を転がることで元結の火車を交わしたものの、転がったところを蹴り上げられて倒されてしまったのだ。
腹部を強く蹴られたことによって麗俐は動くことができなかった。訓練を受けたにしろ、それまで普通の女の子としての人生を送ってきた麗俐からすれば大きな丸太を直に受けたに等しい衝撃であったに違いなかった。
麗俐が息を切らしていると、もう一度蹴りを喰らわせた。これで麗俐は完全に動けなくなった。
元結は宝物が置かれた宝物庫の扉を開くかのように、紅晶が隠れている部屋の扉を開いた。ギィィィと油の差していない扉をゆったりとして開く動作は紅晶を守ろうとしていた二人に対して見せしめの意味もあったかもしれない。
自分の無力さを訴えさせるためにこんなことをしたのであれば相当なまでに性質が悪いことはいうまでもない。
意地悪な笑みを浮かべながら扉を開くと、そこにはビームポインターを構えながら元結を睨む見知らぬ女性とその背後に隠れている紅晶の姿が見えた。
元結はその姿を見て得意げな笑みを浮かべた。
「ほぅ、これはこれは……紅晶殿下ですな? お初にお目に掛かります。我が名は沮元結。孫本初様の参謀役を務めておりますものです。以後お見知り置きを」
深々と頭を下げ、わざと臣下としての礼を取ったのは彼が持つせめてもの礼儀であったのか、はたまた皮肉であったか分別は難しかった。
何も言わない代わりに紅晶はギロっと自身の部屋に侵入してきた無礼者を睨み付けた。
「ククッ、これは手厳しい。ですが、殿下のご意志とは関係なく、私はあなた様をこれまでに亡くなられた帝の元へと送らなくてはなりません。お覚悟を」
元結が短剣を突き付けながら言った時のことだ。
「お待ちなさい!」
と、真横から静止する声が聞こえた。
元結が声のした方向を見ると、そこにはこれまで黙っていた女性の姿が見えた。
側仕えの女官などとは気色が違う。銀色の全身が繋がった服からして異様だ。天よりの使者と思うしか他にない。
だが、元結は不服に思うこともせず、むしろ寛容な笑みを用いて彼女に接したのだった。
「何か御用かな? 美しいお嬢さん」
「勝手に淑女の部屋に入るとはそれでも殿方のやることですか!? 無礼者!! 恥を知りなさい!!!」
この時カエデは自身の頭の中に浮かんだ言葉の中からなるべく適切かつ場面にあった台詞を選んだつもりでいた。
しかし懸命に編み出した罵声も元結の胸には響いていなかったらしい。余裕を含んだ笑みを浮かべながら元結は答えた。
「申し訳ないが、お嬢さん……私にはなりふりを構う余裕がないんだよ。ここで殿下をお隠ししなければお叱りを受けるのは私なのだから」
この時に肩をすくめて見せ、悲しむような声で答えてみせたのは彼の余裕の表れであったかもしれない。
もしくは彼なりの冗談かもしれない。
だが、そんな元結の心境などカエデには知ったことではない。
「ならば、十分に叱られなさい」
カエデは淡々と言い放った。
そしてそのままビームポインターの引き金を引いたが、すぐに異変を察したのか、元結は身を屈めて熱線を回避した。
カエデによって熱線は元結の背後にあった木製の扉を勢いよく貫き、この星の人々がどんなに頑張って計測したとしても空けられない正確な丸い穴を開けていた。
元結も背後を振り返り、見事に空いた丸い穴を見て口笛を吹いた。
だが、そう感心してばかりもいられない。第二撃は瞬時に訪れた上空を飛んで回避し、今度はカエデの手に向かって短剣を投げ付けた。
投げ付けられた短剣はカエデが握っていたビームポインターを地面の上へと弾き落とした。
磨かれたばかりの床の上を転がるかのように勢いよく転んでいったビームポインターを元結はゆっくりと持ち上げた。
「なるほど、これが火の矢を放つ杖か」
元結がそう吐き捨てたのも無理はない。いわゆる過去の人間である元結にとってビームポインターというのはいかなる状況でも恐ろしい熱線を放つことができる魔法の杖だったのだ。
元結はそのまま二人に向かっていくらでも熱線を出す魔法の杖ことビームポインターを突き出したが、不幸であったのは使い方が分からなかったことだ。
この時に彼自身の得物を用いることができていれば困惑した隙に生じる隙などできなかったはずだ。
それが彼の命運を分けたといっても過言ではなかった。カエデがビームポインターを構えた元結に対して勇敢にも立ち向かい、体当たりを繰り出して彼を地面の上に叩き付けたのである。
紅晶はこの隙を見て、彼女が何も言う前にその場所を逃げ出した。
「し、しまった!」
元結は真下からカエデを突き飛ばし、慌てて追い掛けていく。勢いよく扉を開いたその時だ。
一匹の優れた鷹が元結へと襲い掛かってきた。大きく気高い翼を広げた偉大な鷹、劉尊は自ら仕えるべき女主人を守るため、勇敢にも立ち向かってきたのである。
元結の顔へと覆い被さったかと思うと、鳴き声を上げながら彼の視界とそして耳の両方を奪っていった。
「くっ、こ、このクソ鳥ッ!」
元結がバタバタと暴れているのを見たカエデはここぞとばかりに地面の上から起き上がり、元結の両足を防いだ。
元結はそのまま地面の上に組み敷かれることになった。カエデは足からそのまま胴体へと手を伸ばし、そしてその両手を背後に回して組み伏せたていったのである。
同時に劉尊が空中へと待機していく。カエデは劉尊が飛び去った頭の上にビームポインターを突き付けて言った。
「あなたの負けです。大人しくなさい」
元結は何も返さなかった。ただ悔しそうに下唇を噛み締めながらカエデを睨み付けるのみだった。
それまで動けなかった二人も元結が組み敷かれる姿を見て、確認のためかヨロヨロと動きながら近付いてきた。
これでようやく宿屋での戦いは終息を迎えたのであった。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。


Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※毎週、月、水、金曜日更新
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる