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人と異形とが争いを繰り広げる惑星『ボーガー』
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「あんたは最初からジョーカーを引いていたんですよ」
修也は地面の上に倒れ込んだ文邑を見下ろしながら言った。
と、同時に超能力の効果が切れたのか、地面の上から勢いよくジョウジが落ちてきた。
地面の上に叩き付けられても、多少の砂埃が体に付着した程度で済んだのは彼がアンドロイドであるからだろう。自身の体に付いた泥土を両手を使って丁寧に払い落とすと、冷めた目で修也を見つめながら言った。
「ったく、あの計画を聞かされた時には本当に肝が冷えましたよ。相手が自信過剰な性格だったから上手くいったものの、用心深い方ならあなたもう死んでましたからね」
「ハハっ、確かに」
修也は苦笑しながら言った。そこを突かれれば痛い。今の修也はアキレス腱をパリスに矢で射抜かれたアキレスの気分だった。
「それから、あの男が背後からこの方を殺そうとした可能性も捨て切れません。万が一、そうなっていたらどうしてました?」
「いやぁ、面目もない。申し訳ありません」
「こんな愚かな賭けに乗るなんて……やはりあなたは人間ですよ」
ジョウジが呆れたように言った時だ。猿の一体が興奮して胸を叩き始めた。その姿は怪奇映画に登場する安っぽい怪物のようを見ているかのようだった。
猿たちはそんな風に興奮した様子を見せたかと思うと、修也たちを無視してあちこちの民家を襲い始めた。
「おのれッ! 猿どもめッ!」
奉天が方天戟を握り締め、猿の対応に向かっていった時のことだ。突然猿の一体が背中に火傷を負って地面の上へと倒れていったのだ。
修也が光線が放たれた方向を見つめると、そこにはレーザーガンを構えた悠介の姿が見えた。
「悠介!」
「悪い。扉の隙間から出てくるタイミングをずっと窺ってんだけどさぁ。思ったよりもガードが固くて難しそうだったんだわ」
悠介が頭をかいて照れ臭そうに説明していた時だ。別の猿たちが悠介を無視して壁の上を登り、戸締りを行なっていた窓を突き破り、中に侵入しようとした。
だが、窓から泥棒のように部屋の中へと侵入を試みようとしていた猿は勢いよく吹き飛ばされ、地面の上へと落下していく姿が見えた。
修也たちが猿が落ちてきた先を見上げると、そこには『エンプレスト』の拳を突き上げた麗俐の姿が見えた。
この時になって麗俐は何も言わなかった。代わりに修也たちを安心させるように親指を立てていた。紅晶はカエデと麗俐の二人が守っているので気にすることはないだろう。
修也は奉天の動きら漏れ、武器を構えて襲い掛かろうとする猿たちに対してビームソードを構えて迎撃の態勢で迎え撃とうとしていた。
その時だ。自身の目の前に太陽のように赤く燃え上がっている火の玉が数珠状に連なった火車のようなものが迫ってきたことに気が付いて、慌てて背後へと下がっていった。
修也が目を凝らして見てみると、目の前には見慣れない男の姿が見えた。老いていたものの、その鋭く開かれた双眸からは青白い光が放たれ、見る人全てを威圧するかのようだった。
男は修也の前に立つと、一礼をしながら言った。
「初めまして、天よりの使者殿よ、私の名前は沮元結と申します。孫本初様の参謀役を務めております。以後、お見知り置きを」
元結は丁寧に頭を下げながら自己紹介を行なった。意味が分からなかった修也に対してジョウジが慌てて側に駆け寄り、耳元で言葉を伝えたことによって修也はようやくその意味を理解した。
これまでに対峙してきたどの相手とも異なり、丁寧な自己紹介を行う相手に対して修也は戸惑いを隠しきれなかった。
面食らったといった方が正しいかもしれない。
挑発目的でやっていることは明らかなのだが、それでもわざわざ名前や所属を教えてくれたことに対しては礼を返さなくてはならないのがサラリーマンというものではないだろうか。
修也は元結と同様頭を下げた後で、「これはこれはご丁寧に」と前置きまでした後に丁寧な口調を用いて自身の自己紹介を初めていった。
元結が明かしたのと同様にあくまでも名前と所属先のみであったが、それでも一応は返礼ができたことになる。ジョウジの通訳によって元結へと伝わると、当初は元結も困惑していたようだった。
まさか、彼も挑発目的の後の自己紹介で同じように自己紹介を返されるとは思いもしなかったのだろう。呆気に取られたような顔を浮かべていた。
だが、すぐに嘲笑の色を浮かべながら修也を見つめた。心の中では「このお人よしが!」とでも煽っていたかもしれない。その後は顔に笑みを浮かべながら火の車をぶつけていった。
修也は迫り来る数珠状の火車へと向かってレーザーガンの引き金を放っていき、迎撃を試みた。
だが、残念ながら迎撃には失敗することになった。真正面から火車を受け止める羽目になってしまい、地面の上に倒れ込んでしまったのであった。
「お、お父さん!?」
悠介がレーザーガンを握り締めながらあわてて父親の元へと駆け寄ろうとしていった。
だが、そんな立派な孝行息子たる悠介に対しても元結は容赦する姿を見せず、淡々と火車をぶつけていこうとしていた。
「させるものかッ!」
悠介はレーザーガンの銃口を突き付けて元結を撃ち殺そうと目論んだ。が、レーザーガンから放たれた熱線が飛んでいくのと同時に元結は慌てて地面の上を飛び上がっていった。
同時に元結が火車を飛ばし、悠介の元へと投げていった。悠介としては己の身を守るためレーザーガンの銃口を火車の方へと変えなければならなかった。悠介の人差し指が引き金へと触るため、次々と熱線が飛んでいったが、火車は用意に操作することができるのか、熱線を交わして悠介の元へと近付いていった。
悠介は舌を打った後でレーザーガンを足元に仕舞い、ビームソードをバットのように握り締めるとそのまま真下から勢いよく振り上げていき、火車をかっ飛ばしたのであった。
迫ってきた火車はものの見事に宙の上で円を描きながら空の果てへと消えていった。
「やるな、ガキにしてはやるじゃあないか。そこだけは褒めてやる」
悠介の戦績は元結から羨望と嘲りが混ざり合った不機嫌な声をもって出迎えられた。
父親と同様に悠介に元結の言葉は通じなかった。しかしあからさまな嘲笑が向けられたことにより、悠介は無言で自分に向かって小馬鹿にしてくるような態度を取る相手を無言で睨み付けるだけだった。
それはささやかな抵抗に過ぎなかった。悠介からすれば戦車に乗った外的に対して投石で応じる市民のような心境であったに違いない。
だが、それでも無言で支配を受け入れるよりは何倍もマシであるように思えた。
悠介がビームソードを構えながら元結を迎え撃とうとした時のことだ。
不意に元結が地面の上を蹴って真っ黒な空の上へと飛び上がっていった。
そして、2本の足を使ってまるで地上の上を歩くように空の上を自由自在に闊歩していったのである。
「な、何をするつもりだ?」
悠介の問い掛けは日本語である。悠介の言葉など通じるはずがなかった。
だが、元結は悠介の問い掛けへと答えるかのように火車を宿屋にある2階へと向かって放り投げていった。
火車は既に破壊されていた破壊された窓の部分から損傷部を広げていった。その様は布巾で闇雲に拭いてしまったためにコーヒーやジュースといった飲み物の染みを広げていく行動に類似していた。元結は一瞬の行動で2階にあった壁そのものを剥ぎ取っていったのである。
その間にも悠介は地上からレーザーガンを抜いて妨害を試みていたが、それは幼い頃に父親と電子オセロで勝負をした時、負けるのが嫌で父親に対して気を紛らわせるような言葉を繰り返していた時のようになんの意味ももたらさないことであった。
元結は悠介の妨害にも関わらず、そのまますっかりと広がった壁から宿屋の中に侵入を果たし、紅晶とカエデを守る麗俐と対峙を果たしたのだった。
麗俐はビームソードを構えながらも元結を迎え撃とうとしていた。
元結はそんな麗俐に対して爬虫類のような気色が悪い、背筋を凍らせるような気色の悪い笑みを浮かべながら近付いていった。
「女に手を上げるのは私の趣味じゃあないんだ。悪いが、どいてくれるかな?お嬢さん?」
元結は紳士的に振る舞おうとしたものの、麗俐はその場を退こうとしなかった。父親や弟と同様に言葉を理解していなかったということも大きかったが、仮に言葉を介していたとしても麗俐は元結に道を譲ろうとしなかっただろう。
元結は頑な態度を見せる麗俐の姿を見て、残念そうに息を吐いてから挑み掛かっていった。
今回使用したのは修也や悠介に使用した火車ではなかった。
短剣の上に炎を纏わせて向かっていったのだ。昔の京劇に出てくる主人公が使用する火炎剣のようであった。
麗俐はビームソードを使って火炎を纏わせた短剣を防いでいった。
この時にビームソードの刃と炎を纏わせた短剣とがその刃を重ね合わせていたが、驚くべきことであったが、両者の得物の温度はまるっきり同じであった。
両者とも熱気というものに耐えきれなくなり、一度は互いに得物を離し合い、その後で何度も打ち合ったが、体験の差からか、徐々に元結の方が戦いを有利に進めていった。
そして麗俐のビームソードを弾き、その左腕を掴んで動きを封じた後で体を押し倒し、首元に短剣を突き付けて勝利を確信した笑みを浮かべた時だ。
自身の体が勢いよく吹き飛び、宙の上を飛んでいたことに気が付いた。壁は自らの手で削り取ったこともあり、ぶつかることなく地上へと落下するはずだった。
が、途中で足を使って宙の上を蹴って、宙の上を歩いていったのだった。
そのまま落下した2階へと上がっていくと、そこには先ほど自分と対峙した悠介の姿が見えた。
その瞬間に元結は慌てて駆け付けた悠介に背中を蹴られたことを察した。しかしそれでも怒る様子は見せずにニヤニヤと笑みを浮かべて、
「なるほど、いいだろう。こいつとはここで決着を付けてやろう」
と、元結はもう一度短剣を強く握り締めて戦闘の準備を行う二人に向かって挑み掛かっていった。
修也は地面の上に倒れ込んだ文邑を見下ろしながら言った。
と、同時に超能力の効果が切れたのか、地面の上から勢いよくジョウジが落ちてきた。
地面の上に叩き付けられても、多少の砂埃が体に付着した程度で済んだのは彼がアンドロイドであるからだろう。自身の体に付いた泥土を両手を使って丁寧に払い落とすと、冷めた目で修也を見つめながら言った。
「ったく、あの計画を聞かされた時には本当に肝が冷えましたよ。相手が自信過剰な性格だったから上手くいったものの、用心深い方ならあなたもう死んでましたからね」
「ハハっ、確かに」
修也は苦笑しながら言った。そこを突かれれば痛い。今の修也はアキレス腱をパリスに矢で射抜かれたアキレスの気分だった。
「それから、あの男が背後からこの方を殺そうとした可能性も捨て切れません。万が一、そうなっていたらどうしてました?」
「いやぁ、面目もない。申し訳ありません」
「こんな愚かな賭けに乗るなんて……やはりあなたは人間ですよ」
ジョウジが呆れたように言った時だ。猿の一体が興奮して胸を叩き始めた。その姿は怪奇映画に登場する安っぽい怪物のようを見ているかのようだった。
猿たちはそんな風に興奮した様子を見せたかと思うと、修也たちを無視してあちこちの民家を襲い始めた。
「おのれッ! 猿どもめッ!」
奉天が方天戟を握り締め、猿の対応に向かっていった時のことだ。突然猿の一体が背中に火傷を負って地面の上へと倒れていったのだ。
修也が光線が放たれた方向を見つめると、そこにはレーザーガンを構えた悠介の姿が見えた。
「悠介!」
「悪い。扉の隙間から出てくるタイミングをずっと窺ってんだけどさぁ。思ったよりもガードが固くて難しそうだったんだわ」
悠介が頭をかいて照れ臭そうに説明していた時だ。別の猿たちが悠介を無視して壁の上を登り、戸締りを行なっていた窓を突き破り、中に侵入しようとした。
だが、窓から泥棒のように部屋の中へと侵入を試みようとしていた猿は勢いよく吹き飛ばされ、地面の上へと落下していく姿が見えた。
修也たちが猿が落ちてきた先を見上げると、そこには『エンプレスト』の拳を突き上げた麗俐の姿が見えた。
この時になって麗俐は何も言わなかった。代わりに修也たちを安心させるように親指を立てていた。紅晶はカエデと麗俐の二人が守っているので気にすることはないだろう。
修也は奉天の動きら漏れ、武器を構えて襲い掛かろうとする猿たちに対してビームソードを構えて迎撃の態勢で迎え撃とうとしていた。
その時だ。自身の目の前に太陽のように赤く燃え上がっている火の玉が数珠状に連なった火車のようなものが迫ってきたことに気が付いて、慌てて背後へと下がっていった。
修也が目を凝らして見てみると、目の前には見慣れない男の姿が見えた。老いていたものの、その鋭く開かれた双眸からは青白い光が放たれ、見る人全てを威圧するかのようだった。
男は修也の前に立つと、一礼をしながら言った。
「初めまして、天よりの使者殿よ、私の名前は沮元結と申します。孫本初様の参謀役を務めております。以後、お見知り置きを」
元結は丁寧に頭を下げながら自己紹介を行なった。意味が分からなかった修也に対してジョウジが慌てて側に駆け寄り、耳元で言葉を伝えたことによって修也はようやくその意味を理解した。
これまでに対峙してきたどの相手とも異なり、丁寧な自己紹介を行う相手に対して修也は戸惑いを隠しきれなかった。
面食らったといった方が正しいかもしれない。
挑発目的でやっていることは明らかなのだが、それでもわざわざ名前や所属を教えてくれたことに対しては礼を返さなくてはならないのがサラリーマンというものではないだろうか。
修也は元結と同様頭を下げた後で、「これはこれはご丁寧に」と前置きまでした後に丁寧な口調を用いて自身の自己紹介を初めていった。
元結が明かしたのと同様にあくまでも名前と所属先のみであったが、それでも一応は返礼ができたことになる。ジョウジの通訳によって元結へと伝わると、当初は元結も困惑していたようだった。
まさか、彼も挑発目的の後の自己紹介で同じように自己紹介を返されるとは思いもしなかったのだろう。呆気に取られたような顔を浮かべていた。
だが、すぐに嘲笑の色を浮かべながら修也を見つめた。心の中では「このお人よしが!」とでも煽っていたかもしれない。その後は顔に笑みを浮かべながら火の車をぶつけていった。
修也は迫り来る数珠状の火車へと向かってレーザーガンの引き金を放っていき、迎撃を試みた。
だが、残念ながら迎撃には失敗することになった。真正面から火車を受け止める羽目になってしまい、地面の上に倒れ込んでしまったのであった。
「お、お父さん!?」
悠介がレーザーガンを握り締めながらあわてて父親の元へと駆け寄ろうとしていった。
だが、そんな立派な孝行息子たる悠介に対しても元結は容赦する姿を見せず、淡々と火車をぶつけていこうとしていた。
「させるものかッ!」
悠介はレーザーガンの銃口を突き付けて元結を撃ち殺そうと目論んだ。が、レーザーガンから放たれた熱線が飛んでいくのと同時に元結は慌てて地面の上を飛び上がっていった。
同時に元結が火車を飛ばし、悠介の元へと投げていった。悠介としては己の身を守るためレーザーガンの銃口を火車の方へと変えなければならなかった。悠介の人差し指が引き金へと触るため、次々と熱線が飛んでいったが、火車は用意に操作することができるのか、熱線を交わして悠介の元へと近付いていった。
悠介は舌を打った後でレーザーガンを足元に仕舞い、ビームソードをバットのように握り締めるとそのまま真下から勢いよく振り上げていき、火車をかっ飛ばしたのであった。
迫ってきた火車はものの見事に宙の上で円を描きながら空の果てへと消えていった。
「やるな、ガキにしてはやるじゃあないか。そこだけは褒めてやる」
悠介の戦績は元結から羨望と嘲りが混ざり合った不機嫌な声をもって出迎えられた。
父親と同様に悠介に元結の言葉は通じなかった。しかしあからさまな嘲笑が向けられたことにより、悠介は無言で自分に向かって小馬鹿にしてくるような態度を取る相手を無言で睨み付けるだけだった。
それはささやかな抵抗に過ぎなかった。悠介からすれば戦車に乗った外的に対して投石で応じる市民のような心境であったに違いない。
だが、それでも無言で支配を受け入れるよりは何倍もマシであるように思えた。
悠介がビームソードを構えながら元結を迎え撃とうとした時のことだ。
不意に元結が地面の上を蹴って真っ黒な空の上へと飛び上がっていった。
そして、2本の足を使ってまるで地上の上を歩くように空の上を自由自在に闊歩していったのである。
「な、何をするつもりだ?」
悠介の問い掛けは日本語である。悠介の言葉など通じるはずがなかった。
だが、元結は悠介の問い掛けへと答えるかのように火車を宿屋にある2階へと向かって放り投げていった。
火車は既に破壊されていた破壊された窓の部分から損傷部を広げていった。その様は布巾で闇雲に拭いてしまったためにコーヒーやジュースといった飲み物の染みを広げていく行動に類似していた。元結は一瞬の行動で2階にあった壁そのものを剥ぎ取っていったのである。
その間にも悠介は地上からレーザーガンを抜いて妨害を試みていたが、それは幼い頃に父親と電子オセロで勝負をした時、負けるのが嫌で父親に対して気を紛らわせるような言葉を繰り返していた時のようになんの意味ももたらさないことであった。
元結は悠介の妨害にも関わらず、そのまますっかりと広がった壁から宿屋の中に侵入を果たし、紅晶とカエデを守る麗俐と対峙を果たしたのだった。
麗俐はビームソードを構えながらも元結を迎え撃とうとしていた。
元結はそんな麗俐に対して爬虫類のような気色が悪い、背筋を凍らせるような気色の悪い笑みを浮かべながら近付いていった。
「女に手を上げるのは私の趣味じゃあないんだ。悪いが、どいてくれるかな?お嬢さん?」
元結は紳士的に振る舞おうとしたものの、麗俐はその場を退こうとしなかった。父親や弟と同様に言葉を理解していなかったということも大きかったが、仮に言葉を介していたとしても麗俐は元結に道を譲ろうとしなかっただろう。
元結は頑な態度を見せる麗俐の姿を見て、残念そうに息を吐いてから挑み掛かっていった。
今回使用したのは修也や悠介に使用した火車ではなかった。
短剣の上に炎を纏わせて向かっていったのだ。昔の京劇に出てくる主人公が使用する火炎剣のようであった。
麗俐はビームソードを使って火炎を纏わせた短剣を防いでいった。
この時にビームソードの刃と炎を纏わせた短剣とがその刃を重ね合わせていたが、驚くべきことであったが、両者の得物の温度はまるっきり同じであった。
両者とも熱気というものに耐えきれなくなり、一度は互いに得物を離し合い、その後で何度も打ち合ったが、体験の差からか、徐々に元結の方が戦いを有利に進めていった。
そして麗俐のビームソードを弾き、その左腕を掴んで動きを封じた後で体を押し倒し、首元に短剣を突き付けて勝利を確信した笑みを浮かべた時だ。
自身の体が勢いよく吹き飛び、宙の上を飛んでいたことに気が付いた。壁は自らの手で削り取ったこともあり、ぶつかることなく地上へと落下するはずだった。
が、途中で足を使って宙の上を蹴って、宙の上を歩いていったのだった。
そのまま落下した2階へと上がっていくと、そこには先ほど自分と対峙した悠介の姿が見えた。
その瞬間に元結は慌てて駆け付けた悠介に背中を蹴られたことを察した。しかしそれでも怒る様子は見せずにニヤニヤと笑みを浮かべて、
「なるほど、いいだろう。こいつとはここで決着を付けてやろう」
と、元結はもう一度短剣を強く握り締めて戦闘の準備を行う二人に向かって挑み掛かっていった。
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