154 / 195
人と異形とが争いを繰り広げる惑星『ボーガー』
13
しおりを挟む
修也たちは探索を命じられた日から3日に渡って熱心な聞き込みを行なったものの、なかなか手掛かりというのは見えてこない。
大昔の刑事ドラマでは足を棒にして動かすのが大事だと言われていたのだが、現在の刑事ドラマでは足よりも資料を調べろというのが定説となっている。
そうした刑事ドラマの設定が活かされるのは21世紀の地球であるからであり、機械など欠片も見えない星ではあまり意味がないことであった。
それ故に今回は古き良き刑事ドラマに倣った方がいいだろう。
だが、当然であるが限界というものは訪れる。足が痛み始めてきたのだ。靴を脱いで痛む足を自らの右手で摩りたいという欲望が修也を襲ってきた。
いくら他の星の中であるとはいえ、道の真ん中で靴を脱いで摩るなどということは常識的に許されることではないのは修也が一番身に染みて分かっていた。
その代わりに彼は提案を投げ掛けるように言った。
「少し疲れましたね」
ジョウジはそれを聞いて納得した。修也は既に40を過ぎた中年の男性である。足腰が疲れたと訴えるのも仕方がないことである。
「わかったわ。じゃあ、適当なところで休みましょう。あっ、あそこにある茶館なんてどうかな?」
と、見かねた紅晶が提案の言葉を述べながら茶館の場所を指指した。
紅晶が口にした茶館という地球でいうところの喫茶店に相当する場所だった。
茶館は地球の中国でも知られた茶屋の名称である。茶館は文化革命を生き延び、現代にも残った古き良き伝統文化といってもいい。
茶館では多くの中国茶の他に欧米や日本でも発展した喫茶店のように菓子類や軽食が提供されている。これは地球の中国でも発展した飲茶が大きく影響していると思われる。飲茶は英国でいうところのティータイムに相当する時間であり、中国茶を飲みながら小さな料理や点心を食べて楽しむという文化だ。
日本では中国茶を飲むことよりも点心を食べることに重点が置かれているが、本場中国ではお茶を飲むことの方に重点が置かれている。日本における茶道の要素も含まれており、礼儀作法の一環としても扱われているのかもしれない。
このような作法と娯楽の一面を併せ持つ飲茶の歴史は唐代に遡るとされ、21世紀に至るまで受け継がれているのだ。
現在の地球における茶館では飲茶を開く人々のために点心や菓子類が提供されており、中国人のみならず世界中の人々の舌を満足させているといってもいい。
ジョウジは紅晶が示した『獄龍門』という看板を眺めながら、自身の中に入っていた『飲茶』に関する基礎知識のことを思い返していた。
基礎知識が間違っている可能性があるかもしれないが、飲茶に関する説明としてはこんなものであっていたような気がする。間違っているのかもしれない。そんな不安がジョウジの頭を過ったが、よく考えれば唐代以前の文化しかないこの星に飲茶もしくはそれに類する制度があるのも不自然な話だ。
もしかすればこの星においては自分の中にある古代中国の文化や歴史の知識はあまり役に立たないのかもしれない。
カルチャーショックともいえる文化を目の当たりにしたことでジョウジが不安に苛まれて茶館の前で唸り声を上げていた時のことだ。紅晶がジョウジの腕を引っ張りながら先へと進んでいく。
修也たちが紅晶が指差した茶館の中へ足を踏み入れると、中は盛況といっても差し支えないほど賑わって見えた。多くの人々が仕事や勉学の合間に詰めているらしく、お茶を飲んだり、菓子や軽食を食べながら談笑に励んでいた。
どの人も楽しげな顔をしていた。修也は喫茶店でも疲れたような顔を見せる現代日本の人々とは対照的のように思われた。
その一方でジョウジは作法に捉われず、楽しげにお茶をする人々を見て中国本土の飲茶というよりかは英国のアフターヌーンティーに類似点を見つけ出していた。
一行は椅子の上に腰を掛けると、机の上に置かれていた用意されたメニュー表と思われる紙に目を通したが、意味が分からずに腕を組んで悩むことになった。
そんな時に助け舟を出したのが紅晶だった。彼女はこの星の言葉で店員に向かって何かを話したかと思うと、修也たちにこの星の言葉で何を頼んだのかを説明していった。
ジョウジによればまだ早い時間だということもあって、軽食の類は頼まずに菓子のみを頼んだそうだ。お茶に関しては自分が美味いと感じ、お勧めしたいものを頼んだということだ。
紅晶の言葉通りに美味しそうなお茶と五種類の菓子が運ばれてきた。
薄い黄色のお茶の他に揚げ団子や獅子の形をした水と粉でくっ付けた菓子、柔らかめの皮を焼き上げた焼き菓子などが並んでいた。杏仁豆腐と思われる菓子が小さなガラスの器の中へと収まっていた。
杏仁豆腐の横にはどう見てもエッグタルトと思わしき菓子が並んでいるのも見えた。サクサクとした食感が舌の上で思い浮かびそうな生地に囲まれた中にはフワリととろけた食感を思わせられそうな柔らかいアパレイユの姿が確認できた。
本来であれば古代中国の時代にエッグタルトが存在しているのは不自然な話である。だが、それを言えば古代中国の文明しか持ち得ていないこの星に飲茶の習慣があるのも不自然だといえるだろう。
もしかすれば食文化は古代の中国よりも発展しているかもしれない。
そう考えることでしか辻褄が合わない。ジョウジは不本意ながらもエッグタルトに手を伸ばした。すると、口に入れた瞬間に柔らかな食感が迸り、卵を使ったアパレイユの甘味が口の中いっぱいに広がっていく。
エッグタルトのような菓子は絶品だった。地球上でもこの星のようなエッグタルトにはそうそう巡り合うことはできないだろう。
ジョウジは感動に咽び、全身をブルブルと震わせていた。
許されるのならばこのエッグタルトを地球に持って帰りたいという衝動に駆られた。
だが、そんな無駄なものに宇宙船のスペースを使ってはいられないことは自身の中にあるデータが示している。感情の面ではデータなど無視しろとしつこいのだが、どちらを優先しなければならないのかはハッキリと分かっていた。
それ故にジョウジはエッグタルトを持つ手を止め、大きく溜息を吐かずにはいられなかった。
「どうかしたの? ジョウジさん?」
鉛のように重い溜息を吐いたこともあって、麗俐が心配そうな顔でジョウジを見つめた。
「い、いえ、なんでもないんですよ。ほ、本当に美味しいですね。このエッグタルト」
ジョウジは苦笑いを浮かべながら答えた。自身の悩みを感じ取られないようにジョウジは他の菓子にも手を伸ばしたが、結局頭の中に残っていたのはエッグタルトのことだった。
このまま1日はエッグタルトのことを引き摺るのかとばかり思っていたのだが、予想だにしない言葉が耳に入ったためジョウジの意識からエッグタルトのことは消える羽目になった。
「しかし本当かよ? 猿どもが本格的に攻め入ってくるなんて」
「あぁ、噂だけど、生意気にも近くを陣取ってる猿どもの間で反乱が起きたみたいでさ。新しく長になった猿がそう息巻いてるみたいだぜ」
ジョウジがこの星の言葉を理解できたのは幸いであった。何かおかしい。
ジョウジは引き続き聞き耳を立てることにした。
「更にこの裏には逃げた丞相様が関わってるみたいなんだと」
「本当かよ。物騒な話だな」
この噂を話していた2人にとっては何気ない日常の中で流れる他愛のない会話であったのかもしれない。
だが、犯人を探すように命令されたジョウジからすれば喉から手が出るほどほしい情報であった。
ジョウジはすぐにその話を修也たちに向かって日本語で話し、紅晶に関してはこの星の言葉で喋っていった。
ジョウジの話を聞いた紅晶は信じられないと言わんばかりに両眉を上げていたのだが、やがて難しい顔を浮かべた後に納得のいったと言う顔を浮かべながら自分の考えを話していった。
「にわかには考え難い話です。ですが、あり得ないことではありません。理由はどうであれ2人は皇族に害を加えようとした謀反人。捕まれば公開処刑は免れない身です。ならば昨日までは『敵』として認定していた、或いは『猿』として見下していた種族に身を寄せるのも当然の話です」
「その上で融和的な政策をとる現在の長を追放して過激派の人物を後釜に据えた……というわけですか」
「そういうこと、あなた通訳にしておくには惜しいわね」
紅晶は口元に得意げな顔を浮かべながら言った。
「恐れ入ります」
ジョウジは丁寧に頭を下げながら言った。
「そうと決まれば、あとは彼らの居場所に向かうだけだわ」
紅晶はそう言うと、一分一秒でも惜しいとばかりに席の上を勢いよく立ち上がった。
会計を済ませて店を出ると、その勢いのまま猿たちが天幕を張っている場所へと向かっていく。このまま2人の謀反人を引き摺り出して朝廷へと連れて行かなければならない。
そんなことを考えていた時のことだ。突然茶館から浅黒い肌をした鋭い目付きの男が現れて紅晶に向かって勢いよくぶつかってきたのである。
ぶつかった衝撃で紅晶は思わず倒れそうになったものの、修也が慌てて取り押さえたことによって地面の上に倒れることはなかった。
「キミ、なんてことをするんだ! 危ないじゃあないか!」
見かねたジョウジがこの星の言葉で注意の言葉を吐いたが、浅黒い肌の男はニヤリと笑うばかりで謝罪の言葉を口にしようともしなかった。
なんて無礼な男だろう。言いようのない怒りに身を包まれたジョウジが男の肩を自分の拳を掴むかのように強く握り締めた時のことだ。
ジョウジの体が地面から勢いよく離されていった。
「紅晶公主殿下、申し訳ないがあなたにはここで死んでいただこうッ!」
男はそう叫ぶと、紅晶に向かって隠し持っていた短剣を突き立てようとした。
紅晶が無事であったのはこの時咄嗟に修也がカプセルを握り締め、メトロイドスーツを身に付けたまま男を勢いよく蹴り飛ばしたからであった。
大昔の刑事ドラマでは足を棒にして動かすのが大事だと言われていたのだが、現在の刑事ドラマでは足よりも資料を調べろというのが定説となっている。
そうした刑事ドラマの設定が活かされるのは21世紀の地球であるからであり、機械など欠片も見えない星ではあまり意味がないことであった。
それ故に今回は古き良き刑事ドラマに倣った方がいいだろう。
だが、当然であるが限界というものは訪れる。足が痛み始めてきたのだ。靴を脱いで痛む足を自らの右手で摩りたいという欲望が修也を襲ってきた。
いくら他の星の中であるとはいえ、道の真ん中で靴を脱いで摩るなどということは常識的に許されることではないのは修也が一番身に染みて分かっていた。
その代わりに彼は提案を投げ掛けるように言った。
「少し疲れましたね」
ジョウジはそれを聞いて納得した。修也は既に40を過ぎた中年の男性である。足腰が疲れたと訴えるのも仕方がないことである。
「わかったわ。じゃあ、適当なところで休みましょう。あっ、あそこにある茶館なんてどうかな?」
と、見かねた紅晶が提案の言葉を述べながら茶館の場所を指指した。
紅晶が口にした茶館という地球でいうところの喫茶店に相当する場所だった。
茶館は地球の中国でも知られた茶屋の名称である。茶館は文化革命を生き延び、現代にも残った古き良き伝統文化といってもいい。
茶館では多くの中国茶の他に欧米や日本でも発展した喫茶店のように菓子類や軽食が提供されている。これは地球の中国でも発展した飲茶が大きく影響していると思われる。飲茶は英国でいうところのティータイムに相当する時間であり、中国茶を飲みながら小さな料理や点心を食べて楽しむという文化だ。
日本では中国茶を飲むことよりも点心を食べることに重点が置かれているが、本場中国ではお茶を飲むことの方に重点が置かれている。日本における茶道の要素も含まれており、礼儀作法の一環としても扱われているのかもしれない。
このような作法と娯楽の一面を併せ持つ飲茶の歴史は唐代に遡るとされ、21世紀に至るまで受け継がれているのだ。
現在の地球における茶館では飲茶を開く人々のために点心や菓子類が提供されており、中国人のみならず世界中の人々の舌を満足させているといってもいい。
ジョウジは紅晶が示した『獄龍門』という看板を眺めながら、自身の中に入っていた『飲茶』に関する基礎知識のことを思い返していた。
基礎知識が間違っている可能性があるかもしれないが、飲茶に関する説明としてはこんなものであっていたような気がする。間違っているのかもしれない。そんな不安がジョウジの頭を過ったが、よく考えれば唐代以前の文化しかないこの星に飲茶もしくはそれに類する制度があるのも不自然な話だ。
もしかすればこの星においては自分の中にある古代中国の文化や歴史の知識はあまり役に立たないのかもしれない。
カルチャーショックともいえる文化を目の当たりにしたことでジョウジが不安に苛まれて茶館の前で唸り声を上げていた時のことだ。紅晶がジョウジの腕を引っ張りながら先へと進んでいく。
修也たちが紅晶が指差した茶館の中へ足を踏み入れると、中は盛況といっても差し支えないほど賑わって見えた。多くの人々が仕事や勉学の合間に詰めているらしく、お茶を飲んだり、菓子や軽食を食べながら談笑に励んでいた。
どの人も楽しげな顔をしていた。修也は喫茶店でも疲れたような顔を見せる現代日本の人々とは対照的のように思われた。
その一方でジョウジは作法に捉われず、楽しげにお茶をする人々を見て中国本土の飲茶というよりかは英国のアフターヌーンティーに類似点を見つけ出していた。
一行は椅子の上に腰を掛けると、机の上に置かれていた用意されたメニュー表と思われる紙に目を通したが、意味が分からずに腕を組んで悩むことになった。
そんな時に助け舟を出したのが紅晶だった。彼女はこの星の言葉で店員に向かって何かを話したかと思うと、修也たちにこの星の言葉で何を頼んだのかを説明していった。
ジョウジによればまだ早い時間だということもあって、軽食の類は頼まずに菓子のみを頼んだそうだ。お茶に関しては自分が美味いと感じ、お勧めしたいものを頼んだということだ。
紅晶の言葉通りに美味しそうなお茶と五種類の菓子が運ばれてきた。
薄い黄色のお茶の他に揚げ団子や獅子の形をした水と粉でくっ付けた菓子、柔らかめの皮を焼き上げた焼き菓子などが並んでいた。杏仁豆腐と思われる菓子が小さなガラスの器の中へと収まっていた。
杏仁豆腐の横にはどう見てもエッグタルトと思わしき菓子が並んでいるのも見えた。サクサクとした食感が舌の上で思い浮かびそうな生地に囲まれた中にはフワリととろけた食感を思わせられそうな柔らかいアパレイユの姿が確認できた。
本来であれば古代中国の時代にエッグタルトが存在しているのは不自然な話である。だが、それを言えば古代中国の文明しか持ち得ていないこの星に飲茶の習慣があるのも不自然だといえるだろう。
もしかすれば食文化は古代の中国よりも発展しているかもしれない。
そう考えることでしか辻褄が合わない。ジョウジは不本意ながらもエッグタルトに手を伸ばした。すると、口に入れた瞬間に柔らかな食感が迸り、卵を使ったアパレイユの甘味が口の中いっぱいに広がっていく。
エッグタルトのような菓子は絶品だった。地球上でもこの星のようなエッグタルトにはそうそう巡り合うことはできないだろう。
ジョウジは感動に咽び、全身をブルブルと震わせていた。
許されるのならばこのエッグタルトを地球に持って帰りたいという衝動に駆られた。
だが、そんな無駄なものに宇宙船のスペースを使ってはいられないことは自身の中にあるデータが示している。感情の面ではデータなど無視しろとしつこいのだが、どちらを優先しなければならないのかはハッキリと分かっていた。
それ故にジョウジはエッグタルトを持つ手を止め、大きく溜息を吐かずにはいられなかった。
「どうかしたの? ジョウジさん?」
鉛のように重い溜息を吐いたこともあって、麗俐が心配そうな顔でジョウジを見つめた。
「い、いえ、なんでもないんですよ。ほ、本当に美味しいですね。このエッグタルト」
ジョウジは苦笑いを浮かべながら答えた。自身の悩みを感じ取られないようにジョウジは他の菓子にも手を伸ばしたが、結局頭の中に残っていたのはエッグタルトのことだった。
このまま1日はエッグタルトのことを引き摺るのかとばかり思っていたのだが、予想だにしない言葉が耳に入ったためジョウジの意識からエッグタルトのことは消える羽目になった。
「しかし本当かよ? 猿どもが本格的に攻め入ってくるなんて」
「あぁ、噂だけど、生意気にも近くを陣取ってる猿どもの間で反乱が起きたみたいでさ。新しく長になった猿がそう息巻いてるみたいだぜ」
ジョウジがこの星の言葉を理解できたのは幸いであった。何かおかしい。
ジョウジは引き続き聞き耳を立てることにした。
「更にこの裏には逃げた丞相様が関わってるみたいなんだと」
「本当かよ。物騒な話だな」
この噂を話していた2人にとっては何気ない日常の中で流れる他愛のない会話であったのかもしれない。
だが、犯人を探すように命令されたジョウジからすれば喉から手が出るほどほしい情報であった。
ジョウジはすぐにその話を修也たちに向かって日本語で話し、紅晶に関してはこの星の言葉で喋っていった。
ジョウジの話を聞いた紅晶は信じられないと言わんばかりに両眉を上げていたのだが、やがて難しい顔を浮かべた後に納得のいったと言う顔を浮かべながら自分の考えを話していった。
「にわかには考え難い話です。ですが、あり得ないことではありません。理由はどうであれ2人は皇族に害を加えようとした謀反人。捕まれば公開処刑は免れない身です。ならば昨日までは『敵』として認定していた、或いは『猿』として見下していた種族に身を寄せるのも当然の話です」
「その上で融和的な政策をとる現在の長を追放して過激派の人物を後釜に据えた……というわけですか」
「そういうこと、あなた通訳にしておくには惜しいわね」
紅晶は口元に得意げな顔を浮かべながら言った。
「恐れ入ります」
ジョウジは丁寧に頭を下げながら言った。
「そうと決まれば、あとは彼らの居場所に向かうだけだわ」
紅晶はそう言うと、一分一秒でも惜しいとばかりに席の上を勢いよく立ち上がった。
会計を済ませて店を出ると、その勢いのまま猿たちが天幕を張っている場所へと向かっていく。このまま2人の謀反人を引き摺り出して朝廷へと連れて行かなければならない。
そんなことを考えていた時のことだ。突然茶館から浅黒い肌をした鋭い目付きの男が現れて紅晶に向かって勢いよくぶつかってきたのである。
ぶつかった衝撃で紅晶は思わず倒れそうになったものの、修也が慌てて取り押さえたことによって地面の上に倒れることはなかった。
「キミ、なんてことをするんだ! 危ないじゃあないか!」
見かねたジョウジがこの星の言葉で注意の言葉を吐いたが、浅黒い肌の男はニヤリと笑うばかりで謝罪の言葉を口にしようともしなかった。
なんて無礼な男だろう。言いようのない怒りに身を包まれたジョウジが男の肩を自分の拳を掴むかのように強く握り締めた時のことだ。
ジョウジの体が地面から勢いよく離されていった。
「紅晶公主殿下、申し訳ないがあなたにはここで死んでいただこうッ!」
男はそう叫ぶと、紅晶に向かって隠し持っていた短剣を突き立てようとした。
紅晶が無事であったのはこの時咄嗟に修也がカプセルを握り締め、メトロイドスーツを身に付けたまま男を勢いよく蹴り飛ばしたからであった。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》
EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる