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岩の惑星ラックスフェルン
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「ジョウジさん、私奇妙なデータを持っているんです」
カエデは神妙な顔を浮かべながら言った。
「奇妙なデータ?」
「えぇ、ジョウジさんは21世紀の末……2090年代に執り行われた『アメーバの召喚実験』というのをご存知ですか?」
「いいえ、存じ上げません」
ジョウジはきっぱりと言い放った。
「アメリカの生物学者であるジェームズ・ローゼンバーグ氏によって提唱された実験です。元来孤独であるはずのアメーバがなんらかのきっかけで一族意識を持っていたらどうなるのかという試みから始められたものです」
「アメーバに仲間意識が?」
「えぇ、元来ならば知性などないとされてきたアメーバ。しかしハンター氏はアメーバに高い知能があると判断したんです。それからアメーバたちに催眠やショック療法、ビデオなどを用いて半ば強引に仲間意識並びに一族意識を植え付けていったんです」
「それでどうなりました?」
「結果として集められたアメーバは別のアメーバに危害が加えられると妙な動きをし始めるようになったんです。その後に大量のアメーバが危害を加えられたアメーバの元に集まり始めたんです」
「つまり人間の手によって呼び起こされたものであるということは間違いないとしてアメーバの中に同族意識のようなものがあることは間違いないんですね?」
ジョウジからの問い掛けをカエデは躊躇うことなく首肯した。その瞬間にジョウジのコンピュータが最悪の結果を診断した。
地球上のアメーバは小柄な微生物であり、各地に散っている上に数も少ない。
それ故に直接対面し、人間が教えることでしか同族意識は芽生えなかった。
だが、ラックスフェルンに棲まうアメーバは巨大である。その上数の方も地球に存在するものよりも多いことは先の交易で明らかになっている事実だ。
更に地球のアメーバにはないサイコキネシスのようなものを有している可能性すらある。
あの村で倒されたアメーバがテレパシーのようなものを発して仲間を呼んでいたらと仮定すれば今執拗に修也を襲っていることに対しても辻褄が合う。
厄介なことになったものだ。ジョウジは苦笑した。
社長に目を掛けられているという人材を見捨てては何を言われるのか分からない。ジョウジは護身用に社長から与えられた小型レーザーポインターと呼ばれる武器を用いて修也を拘束していた触手を焼き切ったのだった。
触手から放り出された修也は地面の上に投げ飛ばされたものの、『メトロイドスーツ』の固い装甲が体を守ったということもあって無事だった。
ここからは修也が反撃する番だった。修也はビームソードを構えてアメーバの元へと突っ込んでいった。先ほどと同様にアメーバの体の中にビームソードを突っ込み、そのまま焼き切るという目論見だった。
しかしその前に触手が飛ばされていった。飛んできた触手はビームソードで叩き切ったのだが、その際に修也は一つのことに気が付いた。
(……妙だ。まるで、私が次にどう出るのかを予想していたみたいだ……)
嫌な予感がした。一度距離を取って対峙している巨大な人喰いアメーバから離れようとした時だ。
装甲に包まれた体がブヨっとした何かに触れたことに気が付いた。
修也が背後を振り返ると、二体の人喰いアメーバが背後を壁のように塞いでいたのだった。
「な、なんだと!?」
修也が驚きの声を上げるのと二体のうち一体が修也の足をすくって持ち上げていった。そのまま自らの口で捕食しようと目論んでいるようだ。
カエデとジョウジの両名は慌ててビームポインターと呼ばれる小型のレーザーガンを出して修也を助けようとした。
だが、それはもう一体の巨大アメーバが壁として立ち塞がったことによって援護の熱線は塞がれてしまうことになった。
二人がもう一体の処置に手間取ってしまったのは大きかった。巨大な人喰いアメーバはその間にも触手を使って修也を飲み込もうとしていた。
修也はこの時に死を覚悟した。修也が両目を閉じていたのはその証明であったといってもいいかもしれない。まぶたの裏にはこれまでの記憶が鮮明に蘇っては消えていった。これが俗に言う『走馬灯』というものであるのかもしれない。
流れてくる記憶の中で修也は家族の姿を見た。そうだ。自分はまだ死ねない。家族を残して死ぬことはできないのだ。
修也はビームソードを強く握り締めた。
そして人喰いアメーバの巨大な口に飲み込まれる寸前でビームライフルの剣身を口の中へとねじ込ませたのだった。
口というデリケートな場所に熱を帯びた剣身を喰らったのだ。いかに巨大で実体のないような体といえども無傷では済まなかった。痛みに耐えられずに修也を吐き出し、そのまま暴れ始めたのだった。
痛みで判断が付かないのか、同族である他のアメーバにまで攻撃を行なっていた。
修也はそんな絶好の機会を逃さなかった。勢いをつけた飛び上がり、暴れ回っている巨大な人喰いアメーバに向かってビームソードを勢いを付けて突き刺した。
巨大な人喰いアメーバはビームソードの熱に耐えられず、最初に応対した個体と同様に萎んで蒸発していった。
「ハァハァ、やった」
修也は息を整えた後で最初に対峙した固体にもう一度向き直っていった。
最初に対峙した固体は触手を全身から生やし、ウネウネという気色の悪い擬音を立ててうねっていた。
「化け物め、来るなら来い! 負けないぞッ!」
修也の挑発を理解したのか、最初に対峙した固体は全身の触手を鞭のように振り払って修也に向かってきた。
修也は時代劇に登場する凄腕の侍のようにビームソードを振り回して自身に迫ってくる触手を叩き斬っていったのである。
そして地面を蹴って最初に対峙した固体に向かってビームソードを突き刺したのだった。
修也の狙い通り最初に対峙した固体は焼き切れていき、最後は黒ずみ萎んでいった。
「よしッ! これで後は一体だけだ」
修也はジョウジとカエデの両名が戦っている個体に向かって向き直っていった。
幸いであったのは両名が戦っている固体は両名と戦うのに夢中で自分の存在に気が付いていない、もしくは忘却していたことだろう。
それを好機と捉え、修也はビームソードを両手に握って二人が対峙していた固体に向かって突っ込んでいった。
だが、その瞬間に二人と対峙していたはずの個体が修也の方に振り返った。
「な、なに!?」
二人と対峙していた固体は全て理解していたのだ。知った上で修也をわざと泳がせていたのだ。
確実に修也の足を引っ張り上げてものにするためにわざと気が付かないふりをしていたのだ。
(な、なんて奴だ……この知能、本当に人間のようだ……)
修也は両足を触手で掴まれながらもビームソードを構えて最初に仕留めた固体と同様の目に遭わせてやろうと目論んだ。
だが、二人と対峙していた固体は自分の仲間がどのように倒されたのかをハッキリと覚えていたらしい。
触手で握ったまま修也を近くにあった岩へとぶつけたのだった。
修也は『メトロイドスーツ』と呼ばれる強固なパワードスーツを身に付けている。
これはかなりの強度に耐えられることができる優れものだ。逆にいえばスーツ本体の強度もかなりものということなのだ。固いものと固いものとがぶつかればかなりの衝撃を生むことになる。
岩にぶつかった際に修也は全身に強い衝撃を感じた。そしてそのまま意識を失ってしまった。
カエデは神妙な顔を浮かべながら言った。
「奇妙なデータ?」
「えぇ、ジョウジさんは21世紀の末……2090年代に執り行われた『アメーバの召喚実験』というのをご存知ですか?」
「いいえ、存じ上げません」
ジョウジはきっぱりと言い放った。
「アメリカの生物学者であるジェームズ・ローゼンバーグ氏によって提唱された実験です。元来孤独であるはずのアメーバがなんらかのきっかけで一族意識を持っていたらどうなるのかという試みから始められたものです」
「アメーバに仲間意識が?」
「えぇ、元来ならば知性などないとされてきたアメーバ。しかしハンター氏はアメーバに高い知能があると判断したんです。それからアメーバたちに催眠やショック療法、ビデオなどを用いて半ば強引に仲間意識並びに一族意識を植え付けていったんです」
「それでどうなりました?」
「結果として集められたアメーバは別のアメーバに危害が加えられると妙な動きをし始めるようになったんです。その後に大量のアメーバが危害を加えられたアメーバの元に集まり始めたんです」
「つまり人間の手によって呼び起こされたものであるということは間違いないとしてアメーバの中に同族意識のようなものがあることは間違いないんですね?」
ジョウジからの問い掛けをカエデは躊躇うことなく首肯した。その瞬間にジョウジのコンピュータが最悪の結果を診断した。
地球上のアメーバは小柄な微生物であり、各地に散っている上に数も少ない。
それ故に直接対面し、人間が教えることでしか同族意識は芽生えなかった。
だが、ラックスフェルンに棲まうアメーバは巨大である。その上数の方も地球に存在するものよりも多いことは先の交易で明らかになっている事実だ。
更に地球のアメーバにはないサイコキネシスのようなものを有している可能性すらある。
あの村で倒されたアメーバがテレパシーのようなものを発して仲間を呼んでいたらと仮定すれば今執拗に修也を襲っていることに対しても辻褄が合う。
厄介なことになったものだ。ジョウジは苦笑した。
社長に目を掛けられているという人材を見捨てては何を言われるのか分からない。ジョウジは護身用に社長から与えられた小型レーザーポインターと呼ばれる武器を用いて修也を拘束していた触手を焼き切ったのだった。
触手から放り出された修也は地面の上に投げ飛ばされたものの、『メトロイドスーツ』の固い装甲が体を守ったということもあって無事だった。
ここからは修也が反撃する番だった。修也はビームソードを構えてアメーバの元へと突っ込んでいった。先ほどと同様にアメーバの体の中にビームソードを突っ込み、そのまま焼き切るという目論見だった。
しかしその前に触手が飛ばされていった。飛んできた触手はビームソードで叩き切ったのだが、その際に修也は一つのことに気が付いた。
(……妙だ。まるで、私が次にどう出るのかを予想していたみたいだ……)
嫌な予感がした。一度距離を取って対峙している巨大な人喰いアメーバから離れようとした時だ。
装甲に包まれた体がブヨっとした何かに触れたことに気が付いた。
修也が背後を振り返ると、二体の人喰いアメーバが背後を壁のように塞いでいたのだった。
「な、なんだと!?」
修也が驚きの声を上げるのと二体のうち一体が修也の足をすくって持ち上げていった。そのまま自らの口で捕食しようと目論んでいるようだ。
カエデとジョウジの両名は慌ててビームポインターと呼ばれる小型のレーザーガンを出して修也を助けようとした。
だが、それはもう一体の巨大アメーバが壁として立ち塞がったことによって援護の熱線は塞がれてしまうことになった。
二人がもう一体の処置に手間取ってしまったのは大きかった。巨大な人喰いアメーバはその間にも触手を使って修也を飲み込もうとしていた。
修也はこの時に死を覚悟した。修也が両目を閉じていたのはその証明であったといってもいいかもしれない。まぶたの裏にはこれまでの記憶が鮮明に蘇っては消えていった。これが俗に言う『走馬灯』というものであるのかもしれない。
流れてくる記憶の中で修也は家族の姿を見た。そうだ。自分はまだ死ねない。家族を残して死ぬことはできないのだ。
修也はビームソードを強く握り締めた。
そして人喰いアメーバの巨大な口に飲み込まれる寸前でビームライフルの剣身を口の中へとねじ込ませたのだった。
口というデリケートな場所に熱を帯びた剣身を喰らったのだ。いかに巨大で実体のないような体といえども無傷では済まなかった。痛みに耐えられずに修也を吐き出し、そのまま暴れ始めたのだった。
痛みで判断が付かないのか、同族である他のアメーバにまで攻撃を行なっていた。
修也はそんな絶好の機会を逃さなかった。勢いをつけた飛び上がり、暴れ回っている巨大な人喰いアメーバに向かってビームソードを勢いを付けて突き刺した。
巨大な人喰いアメーバはビームソードの熱に耐えられず、最初に応対した個体と同様に萎んで蒸発していった。
「ハァハァ、やった」
修也は息を整えた後で最初に対峙した固体にもう一度向き直っていった。
最初に対峙した固体は触手を全身から生やし、ウネウネという気色の悪い擬音を立ててうねっていた。
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修也の挑発を理解したのか、最初に対峙した固体は全身の触手を鞭のように振り払って修也に向かってきた。
修也は時代劇に登場する凄腕の侍のようにビームソードを振り回して自身に迫ってくる触手を叩き斬っていったのである。
そして地面を蹴って最初に対峙した固体に向かってビームソードを突き刺したのだった。
修也の狙い通り最初に対峙した固体は焼き切れていき、最後は黒ずみ萎んでいった。
「よしッ! これで後は一体だけだ」
修也はジョウジとカエデの両名が戦っている個体に向かって向き直っていった。
幸いであったのは両名が戦っている固体は両名と戦うのに夢中で自分の存在に気が付いていない、もしくは忘却していたことだろう。
それを好機と捉え、修也はビームソードを両手に握って二人が対峙していた固体に向かって突っ込んでいった。
だが、その瞬間に二人と対峙していたはずの個体が修也の方に振り返った。
「な、なに!?」
二人と対峙していた固体は全て理解していたのだ。知った上で修也をわざと泳がせていたのだ。
確実に修也の足を引っ張り上げてものにするためにわざと気が付かないふりをしていたのだ。
(な、なんて奴だ……この知能、本当に人間のようだ……)
修也は両足を触手で掴まれながらもビームソードを構えて最初に仕留めた固体と同様の目に遭わせてやろうと目論んだ。
だが、二人と対峙していた固体は自分の仲間がどのように倒されたのかをハッキリと覚えていたらしい。
触手で握ったまま修也を近くにあった岩へとぶつけたのだった。
修也は『メトロイドスーツ』と呼ばれる強固なパワードスーツを身に付けている。
これはかなりの強度に耐えられることができる優れものだ。逆にいえばスーツ本体の強度もかなりものということなのだ。固いものと固いものとがぶつかればかなりの衝撃を生むことになる。
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