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モスト・オブ・デンジャラス・ゲーム編
リトル・モスクワ・ウォーズーその④
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街の人々が行き交う中で、その惨劇は発生した。
その光景を目撃した仕事帰りのロシア人男性は後にこう証言する。
「帰宅途中の事でした。私の目の前を車が通ったのかと思うと、その前方の後方に黒色の車が現れ、そこからマシンガンやらビームライフルやらを所持した、暴力団関係者と思われる人間が、車に乗っていた人間を一斉に射殺したんです。確か、死んだのはロシア人だったと思います」
記者は引き続き尋ねる。あなたはその場において何も動こうとしなかっのか、と。
すると、その問いにロシア人男性は眉間にしわを寄せ、不機嫌な様子で返答した。
「冗談じゃあありませんよ! その時に止めにでもいって、私が殺されたらどう責任を取るつもりだったんですか!?私に死ねとでも?とにかく、もうこれ以上答えることはありません! 」
男性は記者たちを強引に押し出し、部屋の扉を閉めて自分のアパートから追い出す。
その執念に記者たちは思わずに肩をすくめてしまったらしい。
「ケッ、くだらねー」
石井聡子は病室に備え付けてあった、真っ白な机の上にその新聞紙を叩きつける。
「だいたい、あいつらがあんな質問をしなければ、追い出されなかったんだろ?仮にあいつらが生命の取り合いの場面に遭遇したら、おんなじ行動を取るに決まってるさ」
聡子は余程、その記者団への怒りは新聞紙を叩きつける程度では済まなかったらしい。
その新聞紙に小さいながらも強力な拳をめり込ませる。
「ちょっと、聡ちゃん。物にあたるのってよくないよ……もう少し大事にしてあげないと……」
「分かってるよー。でも、あんまりにもこの記事を書いた奴が分かってないな、と思ってさ……」
聡子は頰を膨らめせて、言い訳の言葉を述べる。
その様子を見て、となりのベッドを寝床とする白籠市のアンタッチャブルの会計係ーー倉本明美は小さな溜息を吐く。
「でもね、聡ちゃん。この新聞紙の気持ちになって考えたらどうかな?」
「新聞紙の気持ち?」
聡子はその明美の言葉に思わず眉をしかめてしまう。
だが、そんな聡子の様子に配慮する事も無く、明美は話を続ける。
「うん、想像してみて……新聞紙さんが仮にあたしと同じような気持ちを持っているとしたら、絶対に痛いと思うよ」
「ハァ、分かったよ。新聞紙さんすいませんでしたー」
ワザとおちゃらけたような口調で謝る聡子に明美は難色を示したらしく、不快を顕著に表した声で、
「そうじゃなくて、これから気を付けてよ」
「分かったよ。これからは気を付けますって……だから、幼児に躾けるように言わないでくれよー」
聡子が足をばたつかせながら抗議していると、倉本明美のとなりのベッドの折原絵里子が口を開き、
「さてと、本題に戻るけど……そのロシアン・マフィアとは長らく冷戦状態が続いていたのよね。どうして、今になって動いたのかしら?」
その絵里子に質問に聡子は眉をひそめながら、
「恐らく、何らかのきっかけで冷戦が終結したんだよ。冷戦の雪解けという奴だっけ?最も、冷たい戦争が終わり、温かい戦争……つまり、武器を使う戦争が始まったという事だから、あんまりいい意味じゃあないけれど……」
「武器を?」
「うん、前に病室に親父が来たの覚えてるだろ?その時にあたし話を聞いたんだよ。ここら辺でロシアン・マフィアとウチの子飼いの組が抗争を始めるって……しかも、リトル・モスクワのロシアン・マフィア『レーシー』の東日本総支部と系列組織の大空組は昔から猿犬の仲で、些細なきっかけで大規模な抗争が始まる可能性が高かったんだって、この火薬庫みたいな状況のリトル・モスクワの中で、誰かが……」
「火薬庫に銃を撃ち込んだ。そう言いたいんだよね?」
明美の問いに聡子は首肯して答えてみせる。
「そう、正解。だから、この抗争は多数の死傷者ならびに逮捕者を出しながらも、続いてるって訳だ。リトル・モスクワはもはや一般人の立ち入る場所じゃあないよ」
と、ちょうどその時に病室の扉が勢いよく開かれる。
そして、必死な形相の柿谷淳一が現れて、絵里子の元へと詰め寄る。
「なあ、孝太郎はどこだよ!?」
「孝ちゃん?そう言えば、最近全然姿を見せないけれど……」
「あの野郎ッ!リトル・モスクワにボリス・レオニードの調査に行ったっきり帰って来ねーんだよ! この『リトル・モスクワの惨劇』とやらには宇宙究明学会やあの野郎が関与してんのか!?答えてくれよ! 」
淳一の指摘に絵里子は答えるどころか、顔を青ざめてしまっている。
そして、強い震えを起こしながら、
「嘘だよね……孝ちゃんは!?あたしの孝ちゃんは!?」
「だから、それを聞いてんじゃねーか! 」
淳一が絵里子の胸ぐらを掴みかかろうとするが、淳一は理性が働いたのだろうか。
はたまた、絵里子を責めても仕方がないと悟ったのだろうか、絵里子の胸元を掴もうと伸ばしていた右腕を引っ込める。
だが、絵里子はその淳一の行動を咎めるよりも前に呆然とした様子で、ベッドから起き上がり、
「大変だわ……孝ちゃんの元に行かないと……あたしが付いていてあげなくちゃあ! 」
その異変を感じ取ったのだろう。淳一は慌てて絵里子を押さえつける。
「待てよ! お前は後2日は寝ていなくちゃあいけないんだぜッ!医者がそう決めてるんだッ!」
「放してよ! あたしは孝ちゃんの元に……」
絵里子は淳一を振り解こうと、両手と両足を振り上げている。
明美は見ていられないわ、とばかりに視線を下に落としていたが、聡子は拳をプルプルと震わせてから、
「いい加減にしろよッ!」
「さ、聡子?」
絵里子は思わぬ喝に正常な思考を取り戻したらしく、聡子の方へと視線を向ける。
「だいたいさ、あんたやあたしらが孝太郎さんの元に駆け寄った所で、何ができるんだよ?」
「何って……」
「あたしらさ、病人なんだよ?怪我してるんだ。そんな状態なのに魔法が使えると思う?ヤクザやロシア人マフィアやカルト教団の狂信者と戦えるの?無理だよね?だったら、ここで少しでも安静にして、少しでも早く復帰するのがベストだと思うよ。それが、孝太郎さんのためにもなると思う」
聡子の指摘を聞くのと同時に絵里子は肩の力が抜けたらしい。
淳一の手から彼女の手がスルスルと抜けていくのが感じ取れる。
それから、絵里子は淳一の手を振りほどいてから、聡子の方を振り向き、
「ありがとうね、あたし少し冷静さを失っていたわ」
「よく言うよ。弟をバカにされると、誰にでも突っ込んでいく癖にさー」
聡子はからかうように白い八重歯を見せてクックっと笑う。
絵里子はベッドに横になってから、近くの机に置いてあった週刊誌を手に取る。
「そうだよね……あたしたちが焦った所で何もできやしないよね。今、駆け付けても孝ちゃんの迷惑になるだけだと思うし……」
絵里子は自分の抑えきれない不安を誤魔化すためなのか、雑誌をパラパラとめくっていく。
初めのうちは和かそのものの表情であったが、次第に深刻な顔つきへと変わっていく。
そして、無言のうちにベッドを立ち上がり、
「ごめん、あたしやっぱり行くわ……」
「お、おいどうしたんだよ?」
「こんな所には一分一秒でもいられないわ、早くリトル・モスクワに行かなきゃあ……」
淳一は再び絵里子を押さえつけようとするが、その必要は無くなったらしい。
肝心の絵里子が右足を抑えてその場に倒れてしまったのだから。
「お、おい! 医者を呼んでくれ! 早く手当をしてやらなけりゃあ! 」
淳一の指示に従い、ナースコールが押された。
すぐに看護師が駆け付けて、絵里子を介抱する。
その後3人は医師の説明を受ける。どうも、無理に動いた事によって傷が少しばかり刺激されたらしい。
幸いにも、少し休めば元に戻るらしいが、今後こんな事は無いように注意を促された。
3人は「どうしようもない」と言わんばかりの目でお互いを見つめ合った。
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その執念に記者たちは思わずに肩をすくめてしまったらしい。
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石井聡子は病室に備え付けてあった、真っ白な机の上にその新聞紙を叩きつける。
「だいたい、あいつらがあんな質問をしなければ、追い出されなかったんだろ?仮にあいつらが生命の取り合いの場面に遭遇したら、おんなじ行動を取るに決まってるさ」
聡子は余程、その記者団への怒りは新聞紙を叩きつける程度では済まなかったらしい。
その新聞紙に小さいながらも強力な拳をめり込ませる。
「ちょっと、聡ちゃん。物にあたるのってよくないよ……もう少し大事にしてあげないと……」
「分かってるよー。でも、あんまりにもこの記事を書いた奴が分かってないな、と思ってさ……」
聡子は頰を膨らめせて、言い訳の言葉を述べる。
その様子を見て、となりのベッドを寝床とする白籠市のアンタッチャブルの会計係ーー倉本明美は小さな溜息を吐く。
「でもね、聡ちゃん。この新聞紙の気持ちになって考えたらどうかな?」
「新聞紙の気持ち?」
聡子はその明美の言葉に思わず眉をしかめてしまう。
だが、そんな聡子の様子に配慮する事も無く、明美は話を続ける。
「うん、想像してみて……新聞紙さんが仮にあたしと同じような気持ちを持っているとしたら、絶対に痛いと思うよ」
「ハァ、分かったよ。新聞紙さんすいませんでしたー」
ワザとおちゃらけたような口調で謝る聡子に明美は難色を示したらしく、不快を顕著に表した声で、
「そうじゃなくて、これから気を付けてよ」
「分かったよ。これからは気を付けますって……だから、幼児に躾けるように言わないでくれよー」
聡子が足をばたつかせながら抗議していると、倉本明美のとなりのベッドの折原絵里子が口を開き、
「さてと、本題に戻るけど……そのロシアン・マフィアとは長らく冷戦状態が続いていたのよね。どうして、今になって動いたのかしら?」
その絵里子に質問に聡子は眉をひそめながら、
「恐らく、何らかのきっかけで冷戦が終結したんだよ。冷戦の雪解けという奴だっけ?最も、冷たい戦争が終わり、温かい戦争……つまり、武器を使う戦争が始まったという事だから、あんまりいい意味じゃあないけれど……」
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「うん、前に病室に親父が来たの覚えてるだろ?その時にあたし話を聞いたんだよ。ここら辺でロシアン・マフィアとウチの子飼いの組が抗争を始めるって……しかも、リトル・モスクワのロシアン・マフィア『レーシー』の東日本総支部と系列組織の大空組は昔から猿犬の仲で、些細なきっかけで大規模な抗争が始まる可能性が高かったんだって、この火薬庫みたいな状況のリトル・モスクワの中で、誰かが……」
「火薬庫に銃を撃ち込んだ。そう言いたいんだよね?」
明美の問いに聡子は首肯して答えてみせる。
「そう、正解。だから、この抗争は多数の死傷者ならびに逮捕者を出しながらも、続いてるって訳だ。リトル・モスクワはもはや一般人の立ち入る場所じゃあないよ」
と、ちょうどその時に病室の扉が勢いよく開かれる。
そして、必死な形相の柿谷淳一が現れて、絵里子の元へと詰め寄る。
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はたまた、絵里子を責めても仕方がないと悟ったのだろうか、絵里子の胸元を掴もうと伸ばしていた右腕を引っ込める。
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肝心の絵里子が右足を抑えてその場に倒れてしまったのだから。
「お、おい! 医者を呼んでくれ! 早く手当をしてやらなけりゃあ! 」
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すぐに看護師が駆け付けて、絵里子を介抱する。
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