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シニョリーナ・エスコート・トラベル編

無数の腕(カウントレス・アーム)と磁力(マグネシウム)ーその②

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マリオは孝太郎に憎悪の表情を浮かべながら、槍を構えて突っ込んでいく。
「このゲス野郎がァァァァァァァ~!!! 」
孝太郎は咄嗟に武器保存ワーペン・セーブから、日本刀を取り出し、刀の刃先でマリオの槍先を防ぐ。
「そいつは、日本の刀だな?世界最高の剣とも誉が高い」
「別に剣を褒めてもらっても嬉しくはないけどな」
実はこれは嘘だ。実は孝太郎の持っている妖刀『村雨』は柿谷淳一からあの事件の後に譲り受けたものであり、内心は彼からもらった刀を褒めてもらい、少しだけ、嬉しかったりした。
「まぁ、いいぜ、言っておくけど、オレの槍は強力だからな、昔の中世ヨーロッパ時代の騎士が持つような槍さ、あんたには想像もできない世界だろうがな」
マリオはそう言うと、槍を振り回し、叩いて孝太郎を殺そうとする。
孝太郎は咄嗟に日本刀の刃先で槍を防ぐ。だが、重い。孝太郎は先ほどのレーザーガンをに戻し、両手で日本刀を握っていたのだが、その両手が痺れるほどの重さであった。
更に……。
(槍の先がまた増加しやがったッ!今度は三又か……)
マリオは槍の刃先を三叉に変えたのだ。そして、槍を一旦自分の手元へと戻し……。
(突いてきやがったッ!)
流石に警察学校で剣道の実技を仕込まれた孝太郎でも、この三叉の槍を一本の刀で防ぐのは至難の技とも言えるだろう。
孝太郎は何とか、三叉の槍が自分の体を貫くよりも前に、体を右に逸らすことにより、直撃を避けた。
「危なかったな、坊や?」
マリオは槍をまた自分の手元に戻し、槍を両手で持つのをやめ、右手だけで持つようにしてから、武器保存ワーペン・セーブから、一丁のコルトパイソンを取り出す。
「オレは対象を暗殺する時は自分の魔法と、こいつを使うんだよ」
マリオは孝太郎目掛けて、引き金を立てながら、嫌悪感を相手に沸かせるような微笑を浮かべる。
「お前の魔法の程度が知れるぜ、最後は銃に頼るとはな……」
「何とでも言いやがれ、オレの好きな場面はなッ!」
そこまで、言ってから、マリオは孝太郎の脚に目掛けて、コルトパイソンを放つ。
孝太郎は先祖伝来からの防御魔法を使い、脚への負傷を防いだが、それは幸いにも、マリオの不興を買わなかったようで、相変わらず彼は映画やドラマの殺人鬼が浮かべるような不気味な笑みを浮かべていた。
「へへへ、お前は本当に面白いよ、まさかオレの銃を避けるなんてな、不意討ちを交わすなんて、今のは空を飛べる魔法師にも放ったんだが、アイツは痛みのあまりに、その場で泣き叫んでいたよ」
孝太郎は敢えて何も言わない。本来なら、孝太郎は頰を紅潮させ、怒鳴るべきなのだろう。
だが、ここで我慢して、先ほどの彼の答えを問うた。
「へ?オレの好きな場面?」
「さっき、言っただろう?お前がその悪趣味なコルトパイソンを相手に放った時の好きな場面はどこだよ?」
マリオは「そんな事か」と言わんばかりに、腹から大きな笑いを出す。
「お前、そんな事を知りたいのかよ?いいだろう教えてやるよ、脚だよ、脚を撃って逃げ場のない奴にトドメを刺そうと、銃口を向けた時の快感は何者にも変えがたいものを持っているぜェェェェェェ~~!! 」
孝太郎は目の前の男は狂っている。もしくは狂っている振りをしているのだと思った。とにかく、孝太郎としては彼を捕らえるが一番手っ取り早いと思われた。
「お前がどんな考えを持っていようが、それは自由だ。他の共産主義の国や絶対君主制の国のように、誰も考えを改めろと強制したりしない」
ここで、孝太郎は大きく息を吸う。
「だがな、オレはお前を許さないッ!だけど、お前はこの日本の法律が裁くッ!それだけは、覚えておきやがれ」
孝太郎は笑い続けているマリオに人差し指で指を差しながら冬眠中の虫も震え上がるような大声で言った。
「面白い事を言うね、オレを許さない?日本の法律で裁く?そんな甘ったるい事を言っていたら、この先生きていけねぇよォォォォ~お坊っちゃんンンンンン~~!!! 」
マリオは槍を構えて、孝太郎の元へと突っ込んでいく。
孝太郎はマリオの槍を一旦受けてから、刃先を滑り込ませ、一気にマリオの近くにまで寄ろうとするのだが。
「甘いなッ!」
マリオは自分の槍先を五叉に増やす事で、孝太郎の刃先をそこに引っかからせたのだ。
孝太郎は空中を蹴る真似をしてから、刀を上空に振り上げた。ここで、空中を蹴った衝撃と、刀を上空に振り上げた事により、孝太郎と孝太郎の刀である『村雨』はマリオの槍の餌食から逃れられた。
孝太郎は側に落ちた刀を回収し、そのまま後ろに後退りしながら考えた。
(アイツは槍の腕自体は本多太郎に劣りそうだが、問題は槍だな、アイツは魔法によって助けられている。だから、アイツは武器さえなければ、どうとでもなる相手だな)
孝太郎は自分の考察が当たっている事を祈った。それから、刀をマリオの手に当てられるのかどうかを考えた。
マリオの手から槍を落とすのには、かなりの確率で自分もあの槍先に引っかかってしまう事を考えた。
(やれやれだ、アイツの魔法を封じるためだけに、危険を冒してまで、手から刀を落とさなくちゃあならないなんてな……)
孝太郎が意を決して、両足を動かそうとした時だった。また、先ほどのような足の違和感を感じた。
(こっ、これは……?)
孝太郎は恐らく、マリオが武器に使う魔法から、例の土や砂を動かす磁力を操る魔法を使っているのだろうと考えた。
孝太郎は自分の足の踏ん張りのみで、立たなければならなかったが、逆にこれはマリオを捕縛する絶好のチャンスだとも考えた。マリオはこの魔法を使っている時は、自分の武器を強化する魔法は使えなかった筈。
孝太郎はこの自分の考えに賭けてみる事にした。
「どうした?オレが魔法を切り替えた瞬間に、これかよぉ~日本の警察は弱くていかんねッ!」
マリオの挑発に乗ることもなく、孝太郎はゆっくりと狙いを定める。目標はマリオ・アンドリーニただ一人。
刀を両手に携え、足で地面を一歩一歩着実に進んでいく。そして、孝太郎はその一歩一歩に重みを感じていた。本当に大地の精霊と触れ合っているようだ(孝太郎はアパッチ族の血も引いているためか、昔から、自然とは仲が良かった。)
孝太郎はマリオが自分の元に近づき、再びあの異次元の武器庫から、コルトパイソンを向けるのを待った。そして、マリオ・アンドリーニがコルトパイソンの引き金を引こうとした時だ。
孝太郎の斬撃はマリオがコルトパイソンの引き金を引くよりも早かった。マリオは右腕を負傷した。
「グギャァァァァァァァァァ~~!!! 」
マリオは右腕を抑えながら、その場でのたうち回る。
「あっ、ァァァァァァァァァァ~!!! 医者だッ!医者を呼んでくれッ!オレの怪我を治してくれよォォォォォォ~~!!! 」
孝太郎はそんなマリオを汚物でも見るかのような目で見つめていた。
「お前が殺した人たちもそう言って、痛がったんじゃあないのか?お前が殺した人たちにはそう言って、のたうち回っていたんじゃあないのか?」
孝太郎のその言葉にマリオは何も言い返せない。
「どうだ?自分が痛みを味わったのなら?分かるだろ?被害者の痛みも?」
マリオは歯を食いしばりながら、孝太郎を睨んでいた。
「どうする?救急車を呼んでやってもいいけど、その代わりパトカーも付くぜ、それでもいいのなら、呼んでやるよ」
その孝太郎の言葉にマリオは何度も何度も首を縦に振っていた。
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