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ジャパニーズコネクション編

ボルジア・ファミリー進出す

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場面は変わり、イタリア半島に位置するロンバルディア王国の公爵屋敷にて。
ここに一人の老人が座っていた。老人はシワや老いを感じさせる雰囲気こそ、あるものの、どこか厳かな雰囲気を老人は放っていた。
「さてと……サルは?サルはどこにおる?」
彼が言ったのはサル・ボロネーオだった。彼はボルジア・ファミリーにおいて、日本の暗黒街においての支部長を務める男だった。
「お言葉ですが、ドン・ボルジア……ミスターボロネーオは今、日本におりまして……」
と、執事風の衣装に身を包んだ若い男が、自らの首領ドンに進言するが。
「何だと……お前、わたしに進言するのかッ!トミーッ!」
トミーと呼ばれた男性は怯えたような表情を浮かべたが。
「いいえ、そのようなつもりはありません。ドン・ボルジア。わたしはあくまでも、ミスターボロネーオは日本にいると、申し上げたのです」
その言葉を聞くなり、ドン・ボルジアは大声を上げて笑い出す。
「うっハッハッ~! いいぞ、さすがはわたしの一等執事だ。他のわたしと同い年の執事ならば、恐れおののくのにな、お前は怯えこそするものの、わたしを嫌悪の目で見つめることはない、さすが、貧民街から、拾い上げた男だ」
「言っておきますが、わたしは最初から何もなかったわけではありませんよ、ドン・ボルジア。わたしは貧民街ではタクシーの運転手の職に就いておりましたよ」
その通りだ。男ーーートミー・モルテは元は貧民街に務めるタクシー運転手に過ぎない身だった。
だが、たまたまボルジア公爵もとい、ドン・ボルジアがタクシーを使った時に、彼のギャングとしての目。人を蹴散らしててでも上に上がりたいという目。
この目を買い、ドン・ボルジアは彼を自分の執事としてめしたのだ。
(奴には、わしに対する恐れというものがない……いずれ、トミーは我がファミリーの中枢メンバーとなるだろうな)
ボルジアは恐らく、自分が生涯最後となるであろう逸材を見つめ、そう遠くない先の未来を思い浮かべ、笑った。

本多太郎はジャック・レッドニオとアース・モンタナの壊滅の報告を受け、思わず持っていた書類を握り潰してしまう。
「それは本当なのか?」
本多太郎は先祖の本多忠勝とは違い、武人とは言えないようなガッチリとした姿だったが、口元には立派な髭を生やしていたので、よく見れば市長のような姿だと白籠市の市民には認識されている。
他の特徴としては、彼はジャパニーズ・フライドチキンの会社を三件経営しており、収入は市長としての給料の3倍を得ていた(だから、彼は片桐健人の莫大とも言える300万の保釈金を支払えたのだ)
「はい、本当です。昼から夕方にかけての桂馬川の抗争に、アンタッチャブルが介入し、殆どのメンバーは捕らえられてしまいまします! 」
太郎は拳を思いっきり、市長のために用意されている高価な社長椅子に叩きつける。
「アンタッチャブル!?アンタッチャブルだとッ!アイツらがッ!」
「ええ、参りましたね、これで今度はまた市民たちが我々のの方に目を向けてきますよ」
その部下の進言に太郎は思わず胸ぐらを掴む。
「うるさいッ!お前に言われなくても分かっておるわッ!おれとしては、このまま次の手を考えて……」
その時だ。市長室のドアが開かれた。
「誰だッ!」
そう叫んだ市長に答えのは、一人の外国人の男だった。
「……お前は何人だ?」
そう尋ねたのは、二つのバイカー組織壊滅の旨を伝えた市長秘書の島津智弘だった。島津は自分の自分の自慢の黒ぶちの眼鏡をズレていると見て、上に上げる。
「そうやって、賢者ぶったつもりなのか?日本人というのはどうも自分を人よりも偉く見せたい民族のようだ」
その言葉に智弘は反応した。懐から潜ませていたであろう拳銃を取り出したが……。
「辞めろ、それよりもいい話とは?」
「簡単だ。この白籠市の暗黒街を我々に引き渡してほしいのだ」
恐らくどこか外国の暴力団組織だろう。太郎はこの男が、熱心に海外進出に取り組んでいるロンバルディア王国のボルジア・ファミリーの構成員の一人だろうと認識する。
「何故、わたしに聞くのだ?この街を仕切るヤクザは刈谷組だ。組長が逮捕されたとはいえ、この街の闇を仕切っているのは、奴らだ……何も我々のような光の部分に許可を求めることはなかろうに……」
太郎は腕を組みながら、目の前の外国人の男を見下すように言ったが……。
「ふふふ、ここでおれらが騒動を起こせば、得をするのは誰だと思う市長さん……」
その言葉に太郎の片眉が僅かに動くのを感じた。
「あんたには一つの疑惑がかかっている。それは……いや、敢えて言わないでおこう……人間には誰だって触れられたくない秘密というものがあるからな、あんたもそうだろ?市長さん?」
太郎はこの外国人の男。いや、ボルジア・ファミリーの男は中々交渉が上手い男だと考えた。自分のを握ることにより、自分を脅し、スームズに動かそうとしているのだ。
「なぁ、あの噂が本当ならば、あんたはクズだ……それも特上のな……」
「ふふふ、面白い全翻訳機オート・トランスレーションを使っているにしては、人の心理を見抜くのが上手い奴だ」
その言葉に、男は何がおかしいのかケタケタと笑い出す。
「おれは全翻訳機オート・トランスレーションなんぞ、使っていないんだぜ、あんたが勝手にそう判断しているだけだ。ロンバルディア王国の貴族たるもの、最低でも6ヶ国語くらいは話せんとね」
「驚いたな、お前支部長か?」
太郎の指摘に男は口元を緩める。
「そうだよ、ようやく気付いたらしいな、おれの名前はサル・ボロネーオ。ドン・ボルジアから、この日本を任せられたのさッ!」
サル・ボロネーオを名乗る冷徹な目をした男は智弘を見下すような目で見つめる。
「ふふふ、頼むぜ、おれの期待を壊さんでくれよ、センセイ……」
そう言うと、サルは緑色の背広の上に羽織っている茶色のコートのポケットに手を入れながら市長室を跡にする。
「どうしますか、市長?」
「放っておけ、奴らが中村孝太郎どもを消してくれるのなら、好都合だ」
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