魔法刑事たちの事件簿

アンジェロ岩井

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バイカー抗争編

桂馬川合戦ーその①

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銃をプルプルと震わしている感じから、健人はすぐに目の前のスカートスーツの女が、人を一回も撃ったことのない素人だと判断する。
(この女……オレを殺す気でいやがる。ふん、できるもんなら、やってみなッ!どうせ、撃てんと思うがね)
「彼女を放しなさいッ!それから、腕を後ろに組んで、コッチへと来なさいッ!」
だが、健人は絵里子の言葉には従う様子は見えない。ヘラヘラと笑顔を浮かべているばかりだ。
「オレにはよぉ~一つ持論があるんだ」
と、健人は人差し指を立てた。
「オレはな、常に争いを求めて生きている人間なんだよ、お前には分からんだらうがな……常に戦争を求めている……アース・モンタナが滅んだ後には、他の街へと進出する予定だぜ、そしてオレは日本の暴走族界枠を乗っ取るのさッ!オレこそが、皇帝だという事を共和国の全ての暴走族に知らせてやるのさッ!」
健人は真由美の拘束を解き、次に絵里子の周辺の草を操る。
「オレの魔法は緑の絶対支配者グリーン・エンペラー……お前のようなチンケな魔法師にやられるような、ケチな魔法じゃあないぞ、オレは最強の魔法だと認識しているのさッ!」
健人はそう言うと、右腕の人差し指を絵里子に向け、向けた人差し指を絵里子の方へと向ける。
すると、絵里子の周辺の草が動き、絵里子を拘束しようとしてくるのだ。
「なっ、なんなのッ!」
絵里子は急いで、武器保存ワーペン・セーブから、ナイフを取り出すが……。
「無駄さァ! いくら、ナイフを取り出したところで、お前の負けは既に決まっているのさッ!」
健人は地面から伸び、まるで縄のような草を絵里子の方へと向ける。
(まっ、まさか……あたしをッ!)
絵里子は急いで、ナイフから拳銃へと切り替えようとしたが。
「もう遅いッ!拘束しちまえ! 」
健人の言葉に、絵里子は草により拘束されてしまう。
「しっ、しまったわッ!」
「さてと……昔から、婦警どもには痛い目に遭わされてきたんだ……今回はお前にその雪辱を晴らさせてもらう事にするぜ……」
健人は武器保存ワーペン・セーブから、拳銃を取り出す。
空気銃エアガンを改造したのかしたら?それとも電動ガンを……いえ、ここは密造銃を手に入れたと判断するべきね)
絵里子は薄く形の良い唇を噛み締めながら、打開策を考える。
「さてと……死になッ!お巡りッ!」
絵里子は一か八かと自分の黒色のヒールの近くに落ちていた小石を健人に蹴る。
小石が頭に当たったのを確認すると、健人は不機嫌そうに絵里子を見つめる。
「……楽に殺してやろうと思ったが、未だにオレに反抗する気があるらしいな……いいだろうッ!お前にはこれからは一切の手加減をしてやらんッ!勿論、楽に殺してやるなんて選択肢もオレの脳裏から消し飛ばしてやったぜッ!」
健人は拳銃を捨て、ポケットに入れていたであろうナイフを取り出す。
「手下がみんな出向いているのは、痛い事だよなぁ~副総長しか手元に置いておかなかったのは、オレの過失だがね……お前のような奴に逮捕されるほど、オレも甘くはないんだよ……死になッ!」
健人がナイフを持って、絵里子に襲い掛かろうとした時だ。不意に意識が消えていくのを感じた。何が起きたのだろう。しまった! 自分の意識は真由美から、絵里子に向いていた。つまり、真由美が……。
健人は地面の上に倒れる。そして、目を覚ますことは二度となかった。
健人が死ぬと同時に絵里子の拘束も外れる。絵里子は息を吐きながら、硝煙が消えていない拳銃を未だに持っている真由美を見つめる。
何か、気まずい空気を破ったのは、絵里子だった。
「ありがとう……あなたのお陰で助かったわ」
「いいえ、あたしは人を殺してしまったんだ……そんな奴にお礼なんか言わないでよ」
その真由美の言葉に絵里子は首を横に振って否定する。
「いいえ、あなたはよくやってくれたわ、あなたがあそこで健人を撃ち殺してくれないと、あたしは死んでいたわ、それにこれは誰がどう見てもだわ! アイツは逮捕に抵抗し、ナイフや銃や魔法で抵抗した。そんな彼に対抗するのには、射殺するのは、当然よ」
絵里子は動揺している真由美を抱きしめながら言った。絵里子に抱きしめられている真由美はただ泣くことしかできなかった。


「いい加減に大人しくしやがれッ!」
聡子は自分の魔法を使いながら、相手の男の足を次々と撃ち、抵抗を辞めさせているが、それでも3対1100名では、二つの暴走族に部があるのは誰が見ても当然だろう。
「問題は、アース・モンタナの総長ですよね! 彼は何を考えているのか、分かりませんからね! 」
明美は必死に聡子に倣い、暴走族たちの足に銃を放っている。
「確かになッ!問題は孝太郎さんだよ、あの人がアース・モンタナのリーダーを担当することになってるから……」
聡子は必死に相手の足を撃ちながら、明美の質問に答えている。
その時だ。アース・モンタナが陣取る岸の方で何やら、大きな物音がした。
二人がそれを見上げると、なんとそこには一人の大きな鉤爪を持った人間が立っていたのだ。
「さてと……始めようか、第二ラウンドを……」
その、健一の姿を見るなり、アース・モンタナの構成員は歓声を上げ。ジャック・レッドニオの構成員と聡子たちアンタッチャブルの二人は絶望の表情を浮かべていた。


川岸の岩に背中を埋めている孝太郎は自分の行動を後悔していた。
サッサと逮捕すれば良かったのだ。あの男をあんな風に追い詰めてしまうから。
あの男に本気を出させてしまうから。どうすれば良いのだろう。孝太郎は必死に考えた。そして、心を鬼にして体に鞭を打って動かす。
(そもそもの敗因は奴の魔法が前の警官が使っていたような、真空を斬る魔法が使っていたことだ……奴はあの義足つまり、もう一つの右腕とも言うべき鉤爪に真空の刃を付け、それをオレに放ってきた……だが、オレは魔法で野郎の真空の刃を破壊し、追い詰めた。だけど、アイツは……」
孝太郎は自分の下唇を噛みしめる。
(捕まるよりは、最後まで暴れることを選んだ。そしてあわゆくば逃亡しようと……)
孝太郎は巨人と化した淀川健一を見上げることしかできなかった。
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