上 下
12 / 233
第一部 『白籠町のアンタッチャブル (決して触れられないもの達)』

第十二話 白籠駅騒乱ーその①

しおりを挟む
白籠市での滞在を終え、竜堂寺清太郎は地元の神戸へと帰還しようとしていた。
「では、折原さん。聡子を立派な警察官へと育て上げてくださいね」
「勿論ですわ、わたし達にとっても、大事な仲間ですし……」
絵里子のその言葉を聞くなり、清太郎は安堵の表情を浮かべていた。
「では、失礼致しま……」
と、ここで銃声が鳴り響く。
一瞬。ほんの一瞬の出来事出であった。竜堂寺清太郎は背後からの銃弾により倒れてしまう。
彼の手下も絵里子たちも慌てて駆け寄ってくるが、もはや何の意味もないことを悟った。清太郎は腹を撃たれてしまったのだから。
また、この銃撃事件は奇襲とも呼ばれる事件とも言えるもので、周りに彼を守るように固まっていた部下たちでさえも、周りの人間の隙間を縫って彼に銃弾が当たるなど考えもしないだろう。
「組長! しっかりしてくだせぇ! 」
部下の一人が声をかけたものの、清太郎は唸り声を上げるばかりだった。
そんな清太郎を突き飛ばさんばかりの勢いで向かってくるのは、あの石井聡子であった。
「父さァァァァ~~ンンンンンンん~~!!! 」
もはや、そこに他人行儀も気まずさもない。銃により撃たれた父親を心配する娘の顔そのものだ。
「いや、死んじゃあイヤよ! お願い、父さん目を開けて! 」
うずくまっている父親を心配していると、何と駅の全てのシャッターが閉められる音がした。
「どういう事だ!?重病人がいるんだぞ! 一刻も早く救急車を呼ぶべきなんじゃあないのか!?どうして、シャッターを閉める!?」
叫ぶように尋ねる孝太郎の声に答えたのは、動揺する大衆の中で唯一平静を保っていたとも思われる男。
「くっくっ、残念だが、そうはいかねえぜ、お前らはここに完璧に閉じ込められたんだ。そう、組長の作戦でなッ!」
すると、彼は武器保存ワーペン・セーブを使い、そこから45口径のオート拳銃を向ける。
「お前らは、おしまいなんだよ、覚悟しなッ!」
男の声に眉を寄せて険しい表情を浮かべたのは、白籠市のアンタッチャブルの参謀役とも言える中村孝太郎。
「お前らはクズだということはすぐに分かったよ、そして思った……」
孝太郎は男と同じ魔法を使い、ポンプ式のショットガンを取り出し、それを持った後には、それを片手で軽々しく持ち上げると、その銃口を男に向ける。
「お前らは片付けるのにはこれが一番だとなッ!」
孝太郎は武器保存ワーペン・セーブから、ポンプ式のショットガンを取り出し、瞬時に構え、その銃口を男に向ける。
「お前はオート拳銃……オレはショットガン……どちらが強いか尋ねてみるか?」
「上等だぜ、クソガキが……」
男が45口径のオート拳銃の引き金に手を当てようとした時。
「うっ、なんだ……」
突然、男の拳銃が孝太郎の方に向かって吸い寄せられていく。
「何がどうなっていやがる!?」
「オレの魔法さ、オレの魔法は強力な上級魔法でね、しかも空間を破壊するという優れものさ……お前の拳銃までの空間を破壊し、拳銃を吸い寄せたんだッ!」
「成る程ね、くっくっ……」
男は額に手を当てて大笑いとも例えられる笑いを浮かべ終えると、すぐに孝太郎をサメのように鋭い目で睨みつける。
「悪かったよ、魔法師相手に銃で戦おうなんて、考えが浅はかだったな、見せてやるよ、オレの魔法をッ!」
男は空中から一本のヨーヨーを取り出す。
「それが魔法だといいたいのか?」
孝太郎は相手の男がふざけているのかと勘違いしたが。
「いいや、お前さんはオレを阿呆か何かだと思っているようだがなッ!それは勝手な判断というものさッ!オレの真価はこの魔法により発揮されるのさッ!」
男は清太郎の近くにいた孝太郎のいる場所まで、一気に距離を詰め上げると、ヨーヨーを放つ。
孝太郎はヨーヨーを難なく避けたのだが、孝太郎の避けたヨーヨーは駅の柱にぶつかり、柱に損害を与えた。ヒビが入るくらいに。
「どうだ?これがお前の頭に当たると思うと怖いだろ?」
「いいや、近づいて攻撃してきたのは、お前さんの運の尽きだったな」
孝太郎は右手を思いっきり横に振り、男までの僅かな距離を破壊し、自分の元へとすい寄せる。
「どうだ、これでお前さんを捕まえたぜ、ヨーヨーの力とやらも大したことは無かったようだな)
孝太郎の言葉に、男は苦虫を噛み潰していたようだが。
駅の正面の扉が破壊される音と共に、男はすぐに苦虫を噛み潰したような顔を笑顔に変えた。
「お前らはもう終わりなんだよ、今、来たのは、組長と全ての組員さッ!厄介なポリ公と鬱陶しい別の組織のヤクザのボスを始末するために、最初から考えていた計画だそうだぜッ!」
男の言葉に孝太郎はしまったと握り拳を宙に空振りさせる。
「孝ちゃん! あたしも参戦していいかしら!?」
「お前が!?」
孝太郎は今、現在瀕死の清太郎の面倒を見ている絵里子の言葉に思わず二度聞きする。
「確かに言ったわよ、清太郎さんの怪我は大丈夫よ、あたしの魔法は病気でも怪我でも致命傷でない限りは治せるのよ! 」
孝太郎は我が孫ながら、頼もしい存在だと考えざるを得ない。
幼い頃はただのわんぱくな女の子だと思っていた姉が、今では立派な連邦捜査官だ。孝太郎はそんな姉を誇りに思った。
「ナイス! ナイス判断さ絵里子! 」
孝太郎は親指を立てて笑ってみせる。
「ありがとう! なら、あたしも全力を出して頑張るわ! 」
絵里子は駅の正面から新たに突入してくるメンバーと乗客に扮していた(この駅に入ってからの乗客は全て、刈谷の手下だったのだ)メンバー相手に絵里子は武器保存ワーペン・セーブを使用し、空中からスコーピオン機関銃を取り出し、それを手に持ち、ワザと体を滑らせ、自分たちに迫ってくるヤクザの足元に銃弾を撃ちまくる。
ヤクザたちは足を撃たれた痛みと衝撃から、次々とバランスを崩し、倒れていく。
「やったわね! あとは刈谷阿里耶を倒すだけかしら……」
そんな絵里子の側にナイフが投げられる。
「なっ、一体何者なの!?」
絵里子の問いかけに答えるように、それまで革靴ばかりだった足音の中から、ハイヒールの足音が自分の方に向かってくるのを聞く。
「もしかして……」
「察しがいいわね、久方彩香よ、あんたをこの場で始末してあげてもいいんだけれど……向こうに行きましょう?」
そんな彼女が指差すのは、駅の奥の方。つまり、駅構内のデパートに繋がる場所。
「仲間と孤立させたいみたいね、いいわ、付いて行くわよ! 」
絵里子は空中を飛んでいく彩香を追ってデパートの奥へと消えて行く。


孝太郎は男から何かを尋問しようとしていたが。
「ぐっ、グゥゥゥゥゥゥ~~! 」
突然、男が胸を押さえて死んだのだ。
「何がどうなっている!?」
孝太郎が目を丸くしていると。
「オレがやったんだよ、次はお前だよ、坊やの分際で、生意気にもヤクザの商売に首を突っ込んだ愚かな坊や……」
「お前が、刈谷阿里耶だな?」
孝太郎の再確認に、阿里耶は口元を緩めてから……。
「そうだよ、とにかくここじゃあやりにくててしょうがねえ、駅の奥の方へ来いや」
孝太郎は勝負を付けるためにも、罠だと分かっていながら、この美しい男に従って、駅の奥へと消えて行く。
孝太郎は決着を付ける時が来たなと腹を括った。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

宇宙戦争中~モブの機動人型戦闘機乗りですが幸運スキルで生き残ってます~

朋 美緒(とも みお)
SF
転生物でよくあるファンタジー転生、僕はそれを選ばなかった 「<ガ〇ダ〇>や<〇クロ〇>みたいな大形(おおがた)の人型ロボットを操る戦士になりたい、でも目立ちたくないので下っ端で・・・でもすぐ死にたくないのでよろしく、可愛い彼女も欲しいし~金持ちで不自由なく暮らしたい」 男女の絡みも少しあり

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

アンドロイドちゃんねる

kurobusi
SF
 文明が滅ぶよりはるか前。  ある一人の人物によって生み出された 金属とプラスチックそして人の願望から構築された存在。  アンドロイドさんの使命はただ一つ。  【マスターに寄り添い最大の利益をもたらすこと】  そんなアンドロイドさん達が互いの通信機能を用いてマスター由来の惚気話を取り留めなく話したり  未だにマスターが見つからない機体同士で愚痴を言い合ったり  機体の不調を相談し合ったりする そんなお話です  

無頼少年記 ~最強の戦闘民族の末裔、父親に植えつけられた神話のドラゴンをなんとかしたいので、冒険者ギルドに就職する~

ANGELUS
SF
 世界で最強と名高い戦闘民族の末裔―――流川澄男は、かつて復讐者であった。  復讐のために集めた仲間たちとともに、その怨敵を討ち滅ぼした澄男は次なる目標のため、新たな人生を送る決意を固め、世界へ進出する。  その足掛かりとして任務請負機関ヴェナンディグラム北支部に所属し、任務請負人という職業に就職した彼だったが、ひょんなことから支部のエースたちと出会う。  名をレク・ホーラン、その相棒ブルー・ペグランタン。  復讐のため、一度は闇に身を投じた少年。その闇は仲間の力で終焉を迎えた。それでも彼の人生は終わらない。一度は闇に生きると決めた彼だったが、大切なもの、守るべきものが新たにできたことで、新しい目標を据えた第二の人生が幕を開ける。  手前の大事なものは死んでも守り切る。彼が幼少から思い描いていた、真なる``英雄``となるために―――。  流川澄男とその仲間たちの世界進出、そして世界中で出会うこととなる人々と織りなす、元復讐者が真なる英雄へ返り咲く物語。

【マテリアラーズ】 惑星を巡る素材集め屋が、大陸が全て消失した地球を再興するため、宇宙をまたにかけ、地球を復興する

紫電のチュウニー
SF
 宇宙で様々な技術が発達し、宇宙域に二足歩行知能生命体が溢れるようになった時代。  各星には様々な技術が広まり、多くの武器や防具を求め、道なる生命体や物質を採取したり、高度な 技術を生み出す惑星、地球。  その地球において、通称【マテリアラーズ】と呼ばれる、素材集め専門の集団がいた。  彼らにはスポンサーがつき、その協力を得て多くの惑星より素材を集める危険な任務を担う。  この物語はそんな素材屋で働き始めた青年と、相棒の物語である。  青年エレットは、惑星で一人の女性と出会う事になる。  数奇なる運命を持つ少女とエレットの織り成すSFハイファンタジーの世界をお楽しみください。

「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち
SF
 海を埋め尽くすAXISの艦隊。 飽和攻撃が始まる台湾、金門県。  海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。 同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。 苫小牧市を守るシーラス防衛軍。 そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った! SF大河小説の前章譚、第5部作。 是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

神よ願いを叶えてくれ

まったりー
ファンタジー
主人公の世界は戦いの絶えない世界だった、ある時他の世界からの侵略者に襲われ崩壊寸前になってしまった、そんな時世界の神が主人公を世界のはざまに呼び、世界を救いたいかと問われ主人公は肯定する、だが代償に他の世界を100か所救いなさいと言ってきた。 主人公は世界を救うという願いを叶えるために奮闘する。

処理中です...