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第一部 『白籠町のアンタッチャブル (決して触れられないもの達)』
第十話 ある夜の出来事 前編
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それからの話し合いはスムーズに進み、刈谷組は派手な活動を控えることを。竜堂寺組は今後は刈谷組のやり方に干渉しない事を条件に相互不可侵条約を結ぶ。
それから、いよいよ、竜堂寺清太郎の最終滞在日。
折原絵里子と中村孝太郎は二人でホテルを訪ねることにしていた。
名目は護衛任務の最終報告であったが、その実態は自分たちのメンバーの一人石井聡子と彼との関係を尋ねるためというためであった。
「聞いたところで無駄だと思うぞ」
聞き分けの悪い姉に孝太郎はたしなめるように言ったが、絵里子は弱々しい声で反論する。
「そうかもしれないけれど、それでもあたしは聞いてみたいの! だってあたしたちの仲間の一人の事をわたし達は何も知らないのって嫌じゃない」
絵里子は視線をホテルの高級な赤色の絨毯の敷いてある地面に落としながら言う。
「でもね、彼女は巨大な像に立ち向かうアリと呼ばれているのよ、この街で刈谷阿里耶に立ち向かおうとしたのは、あたしと孝ちゃんを除いたら、彼女と明美さんだけなのよ! 」
絵里子の強い反論に孝太郎はしばらくは言い出せずにいたようだが、何とかして重い口を開く。
「だかな、ヤクザの世界というのは厳しいんだ。そうユニオン帝国とロンバルディア帝国におけるマフィアの血の掟と同じくらいにな……」
マフィアの血の掟。その言葉を口にするだけで絵里子は恐ろしさで全身を震わせたくなる。
マフィアというのはこの23世紀においての最大の反社会的存在。
と言うのも、ユニオン帝国ーーー旧アメリカ合衆国においてのマフィアは頼りない帝国貴族や帝国警備兵に代わる街の警察と言えたし、欧州のロンバルディア帝国においてはマフィアの親分が帝国の公爵やら伯爵を兼ねていたりするから、本当に性質が悪い。
特にイタリアン・マフィアは最近国外への進出にも熱心と聞く。
絵里子にしてみれば、ヤクザも厄介な存在であるが、それ以上に厄介と言えるのはイタリアン・マフィアと言えた。
特にビッグ・トーキョーにおける浄瑠璃寺町の竜堂寺組とボルジア・ファミリーの衝突事件が社会に与えた影響は大きく。捜査当局はヤクザの撲滅を放置し、イタリアン・マフィアの日本における勢力の全面壊滅に切り替えたくらいである。
だが、ボルジア・ファミリーの首領たるジョー・ボルジアはロンバルディア帝国における公爵であり、その彼の直属の部下であり、日本での支部長を務めているサル・バロニーオはロンバルディア帝国において、準男爵の地位を築いていたために、彼の逮捕は至難となっている。
各国の貴族を逮捕するという権限は他の国々には認められておらず、もし、独断で逮捕しようものならば、国際問題にもなりかねない。
(だからと言って、マフィアを野放しにしておくと言うルールは何処にもないわ、いずれ、サル・バロニーオの捕縛にも務めなくっちゃ)
絵里子はそんな決意を胸に秘めていると。
「着いたぞ」
孝太郎に声をかけられる。本当だ。気がつけば、竜堂寺清太郎の部屋の前に到着している。
いよいよ、二人は関西いや日本最大のヤクザの親分の部屋の扉を開くのだ。
竜堂寺清太郎氏に報告があると出て行った二人。
そんな二人を置いておいて、一人22世紀に発明された手で触れるだけで出る目の前に出てくるパソコンを弄る手。
白籠市のアンタッチャブルの帳簿係こと倉本明美は一人懸命に詰めっちゃ所のアパートの中で計算に励む。
二人の疑問の中心。石井聡子も無論、残留してはいたが。
「だ~れッ~~だァァァ~! 」
聡子は待たされている間の暇つぶしのためか、明美の顔を自らの両手で覆って視界を奪う。
「ひっ、ひィィィィィ~~!! 」
明美は一瞬悲鳴を上げたが、声の主が聡子だと気づき、そして両手が上がっていき、視界が戻ると言う現象も助け、すぐに高鳴った胸を撫で下ろす。
「びっくりしたわ~驚かさないでよ! 」
明美の金切り声を聞く限り、本当に怒っているらしい。
「悪かったよ~つい、調子に乗っちゃってさぁ~だって暇なんだもん」
「やっていいことと悪いことがあると思います! 」
明美は作業を中断し、腰に手を当てて聡子に注意を促す。
「へっへっ、今度からは気をつけるって」
そう舌を見せて、眉を上げる彼女の姿から、明美は今後もやらかすだろうなと自分の考えを発展させるのは、困難なことではなかった。
「それよりもさぁ~絵里子と孝太郎さん、まだ帰んないの遅いなぁ~~」
「全くですよ! いくら上からの命令でも刈谷阿里耶と同じヤクザの親分を護衛しなければならないなんて……絵里子も気の毒よね! 」
もし、この場に残っていたのが、孝太郎か絵里子ならば、これ以上の会話には発展しなかっただろう。
だが、この場にいたのは数字バカで頭デッカチで正直者な倉本明美(その性格のせいか、顔はいいのに彼氏はできないと噂される)
そんな、彼女は聡子にお構い無しに、会話を続ける。
「いくら、阿里耶と違うとは言っても、所詮は同じヤクザでしょ?しかも、日本ヤクザ界の大物!?消えてくれて嬉し涙を流す市民がこの日本に何人いるのかしら」
「……」
「地元の神戸。彼がいるから治安が保たれる……そうよね、ヤクザがいれば、怪しげな通り魔やらバイカーやらは徘徊しないし、テロリストやカルト教団さえ竜堂寺組を恐れて、下手なことはできないはず……でもね、警察が情けないだけでしょ?警察がしっかりしていれば、ヤクザなんかに頼らずに済んだのよ! 」
と、ここで聡子が大声を上げて明美の言葉を遮る。
「違う! 竜堂寺組は刈谷組なんかとは違う! 普通の人々を魔法で脅して、金を貢がせたり、或いは他のヤクザとの抗争に魔法を使って、周りに大きな被害を与えたり、子供を殺したりするなんて、ことが絶対にあるはずがないんだッ!」
明美を見つめる彼女は何やら複雑な様相を呈しているようである。
聡子は薄く形の良い唇を噛み締めながら、明美に抗議するような視線を向け続けている。
「ふーん、やけに庇うわね、それであなたは竜堂寺清太郎の親戚か何か?」
そう切り込んだ明美に聡子は惚けて見せかけようとしたが、確信の瞳を向けられ、聡子は結局口を噤んでしまう。
それから、いよいよ、竜堂寺清太郎の最終滞在日。
折原絵里子と中村孝太郎は二人でホテルを訪ねることにしていた。
名目は護衛任務の最終報告であったが、その実態は自分たちのメンバーの一人石井聡子と彼との関係を尋ねるためというためであった。
「聞いたところで無駄だと思うぞ」
聞き分けの悪い姉に孝太郎はたしなめるように言ったが、絵里子は弱々しい声で反論する。
「そうかもしれないけれど、それでもあたしは聞いてみたいの! だってあたしたちの仲間の一人の事をわたし達は何も知らないのって嫌じゃない」
絵里子は視線をホテルの高級な赤色の絨毯の敷いてある地面に落としながら言う。
「でもね、彼女は巨大な像に立ち向かうアリと呼ばれているのよ、この街で刈谷阿里耶に立ち向かおうとしたのは、あたしと孝ちゃんを除いたら、彼女と明美さんだけなのよ! 」
絵里子の強い反論に孝太郎はしばらくは言い出せずにいたようだが、何とかして重い口を開く。
「だかな、ヤクザの世界というのは厳しいんだ。そうユニオン帝国とロンバルディア帝国におけるマフィアの血の掟と同じくらいにな……」
マフィアの血の掟。その言葉を口にするだけで絵里子は恐ろしさで全身を震わせたくなる。
マフィアというのはこの23世紀においての最大の反社会的存在。
と言うのも、ユニオン帝国ーーー旧アメリカ合衆国においてのマフィアは頼りない帝国貴族や帝国警備兵に代わる街の警察と言えたし、欧州のロンバルディア帝国においてはマフィアの親分が帝国の公爵やら伯爵を兼ねていたりするから、本当に性質が悪い。
特にイタリアン・マフィアは最近国外への進出にも熱心と聞く。
絵里子にしてみれば、ヤクザも厄介な存在であるが、それ以上に厄介と言えるのはイタリアン・マフィアと言えた。
特にビッグ・トーキョーにおける浄瑠璃寺町の竜堂寺組とボルジア・ファミリーの衝突事件が社会に与えた影響は大きく。捜査当局はヤクザの撲滅を放置し、イタリアン・マフィアの日本における勢力の全面壊滅に切り替えたくらいである。
だが、ボルジア・ファミリーの首領たるジョー・ボルジアはロンバルディア帝国における公爵であり、その彼の直属の部下であり、日本での支部長を務めているサル・バロニーオはロンバルディア帝国において、準男爵の地位を築いていたために、彼の逮捕は至難となっている。
各国の貴族を逮捕するという権限は他の国々には認められておらず、もし、独断で逮捕しようものならば、国際問題にもなりかねない。
(だからと言って、マフィアを野放しにしておくと言うルールは何処にもないわ、いずれ、サル・バロニーオの捕縛にも務めなくっちゃ)
絵里子はそんな決意を胸に秘めていると。
「着いたぞ」
孝太郎に声をかけられる。本当だ。気がつけば、竜堂寺清太郎の部屋の前に到着している。
いよいよ、二人は関西いや日本最大のヤクザの親分の部屋の扉を開くのだ。
竜堂寺清太郎氏に報告があると出て行った二人。
そんな二人を置いておいて、一人22世紀に発明された手で触れるだけで出る目の前に出てくるパソコンを弄る手。
白籠市のアンタッチャブルの帳簿係こと倉本明美は一人懸命に詰めっちゃ所のアパートの中で計算に励む。
二人の疑問の中心。石井聡子も無論、残留してはいたが。
「だ~れッ~~だァァァ~! 」
聡子は待たされている間の暇つぶしのためか、明美の顔を自らの両手で覆って視界を奪う。
「ひっ、ひィィィィィ~~!! 」
明美は一瞬悲鳴を上げたが、声の主が聡子だと気づき、そして両手が上がっていき、視界が戻ると言う現象も助け、すぐに高鳴った胸を撫で下ろす。
「びっくりしたわ~驚かさないでよ! 」
明美の金切り声を聞く限り、本当に怒っているらしい。
「悪かったよ~つい、調子に乗っちゃってさぁ~だって暇なんだもん」
「やっていいことと悪いことがあると思います! 」
明美は作業を中断し、腰に手を当てて聡子に注意を促す。
「へっへっ、今度からは気をつけるって」
そう舌を見せて、眉を上げる彼女の姿から、明美は今後もやらかすだろうなと自分の考えを発展させるのは、困難なことではなかった。
「それよりもさぁ~絵里子と孝太郎さん、まだ帰んないの遅いなぁ~~」
「全くですよ! いくら上からの命令でも刈谷阿里耶と同じヤクザの親分を護衛しなければならないなんて……絵里子も気の毒よね! 」
もし、この場に残っていたのが、孝太郎か絵里子ならば、これ以上の会話には発展しなかっただろう。
だが、この場にいたのは数字バカで頭デッカチで正直者な倉本明美(その性格のせいか、顔はいいのに彼氏はできないと噂される)
そんな、彼女は聡子にお構い無しに、会話を続ける。
「いくら、阿里耶と違うとは言っても、所詮は同じヤクザでしょ?しかも、日本ヤクザ界の大物!?消えてくれて嬉し涙を流す市民がこの日本に何人いるのかしら」
「……」
「地元の神戸。彼がいるから治安が保たれる……そうよね、ヤクザがいれば、怪しげな通り魔やらバイカーやらは徘徊しないし、テロリストやカルト教団さえ竜堂寺組を恐れて、下手なことはできないはず……でもね、警察が情けないだけでしょ?警察がしっかりしていれば、ヤクザなんかに頼らずに済んだのよ! 」
と、ここで聡子が大声を上げて明美の言葉を遮る。
「違う! 竜堂寺組は刈谷組なんかとは違う! 普通の人々を魔法で脅して、金を貢がせたり、或いは他のヤクザとの抗争に魔法を使って、周りに大きな被害を与えたり、子供を殺したりするなんて、ことが絶対にあるはずがないんだッ!」
明美を見つめる彼女は何やら複雑な様相を呈しているようである。
聡子は薄く形の良い唇を噛み締めながら、明美に抗議するような視線を向け続けている。
「ふーん、やけに庇うわね、それであなたは竜堂寺清太郎の親戚か何か?」
そう切り込んだ明美に聡子は惚けて見せかけようとしたが、確信の瞳を向けられ、聡子は結局口を噤んでしまう。
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