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SOS!高岩よ、家族を助けろ!
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雷が直撃し、魔王の体が真っ白な光に包み込まれていく。
辺り全体がホワイトアウトしたような光に包まれ、三人は一瞬の間、視界を奪われたのだが、その隙に魔王が新たなる姿へと変貌した事を高岩は許してしまった。
「あ、あれは……」
義喜は見覚えるのある魔王が更に見覚えのある姿へと変貌した事に対し、驚きを隠し得なかった。
というのも、今の魔王はマントも羽織っておらず、金の鎧を剥き出しにしながら、金の兜真横に真っ直ぐに角を生やしているというどこぞのミドラさんのよう格好であったからだ。
しかも、ご丁寧な事にその手には先程持っていた金の杖の代わりに大きなサーベルが握られているではないか。
そんな魔王は金属のブーツの足音を鳴らしながら、高岩の元へと歩みを進めていく。
「貴様ら、よくもやってくれたな……かくなる上は余の真の姿で貴様らを葬り去ってやろう」
「おのれ!魔王めッ!まだ、別の姿を隠していたとはッ!」
「やかましい!やってくれおったな。貴様ら……特にそこの小娘ッ!」
ミドラもどきの魔王は剣の先端を突きつけながら、ボンヤリとしていた菜穂子に向かって言う。
「よもや、玉砕覚悟で余の城の中で爆裂魔法を用いて、余の爆殺を目論むとはな。やってくれるではないか」
「玉砕覚悟?いやいや、菜穂子はそこまで深く考えてねーよ」
「ほざくなッ!そうでも考えなければ、城の中で爆発魔法など用いんぞ!」
「だから、何も考えてねーのが菜穂子なんだよ」
義喜は溜息を吐きながら、魔王に向かって言い返す。
だから、憤慨した様子の魔王にはいかなる説得も通じないらしい。
魔王は高岩一家に向かって、なんの躊躇いもなく剣を振り、衝撃波を放っていく。
その衝撃波の強さのために義喜たちは次々と吹き飛ばされていく。
だが、致命傷に至っていないのは不幸中の幸いというべきだろうか。
高岩の呼びかけに応じ、二人の子供はそれぞれの生存の声を上げていく。
それを聞いた魔王はその声を手掛かりに衝撃波を放つ。
迂闊だった。高岩は少し前の自分の判断を責めたくなってしまう。
少し考えればわかる事だろうに。子供二人が無事であった事に盲目になり、自衛隊で受けた基本的な訓練の事すら忘れてしまったのだろうか。
近くには負傷する二人の子供。我を忘れて高岩は二人の名前を叫ぶ。
「義喜ッ!菜穂子ッ!」
「へ、平気だ。親父……んなもんかすり傷だよ」
と、弱々しく笑って見せる義喜。
「うん。あたしだって平気だよ。気にしないで、大好きなお父さん」
菜穂子はそう言って父に笑い掛ける。心の底に何かを隠しての笑みではない。
心底からの純粋な笑いだった。
それを聞いた高岩は拳を強く握り締めた後に人差し指を魔王に突き付けながら叫ぶ。
「待てッ!ここから先は拳法の達人である岸友也が相手をするッ!これ以上、貴様におれの家族を苦しめさせはしないッ!」
「ほざくなッ!今更、貴様一人、立ち向かったとて、余に勝てるわけがなかろう!」
「いいや勝てるッ!おれにはこれがあるからなッ!カモーン!借り物ハンド!」
高岩の両手に借り物ハンドが装着された。
辺り全体がホワイトアウトしたような光に包まれ、三人は一瞬の間、視界を奪われたのだが、その隙に魔王が新たなる姿へと変貌した事を高岩は許してしまった。
「あ、あれは……」
義喜は見覚えるのある魔王が更に見覚えのある姿へと変貌した事に対し、驚きを隠し得なかった。
というのも、今の魔王はマントも羽織っておらず、金の鎧を剥き出しにしながら、金の兜真横に真っ直ぐに角を生やしているというどこぞのミドラさんのよう格好であったからだ。
しかも、ご丁寧な事にその手には先程持っていた金の杖の代わりに大きなサーベルが握られているではないか。
そんな魔王は金属のブーツの足音を鳴らしながら、高岩の元へと歩みを進めていく。
「貴様ら、よくもやってくれたな……かくなる上は余の真の姿で貴様らを葬り去ってやろう」
「おのれ!魔王めッ!まだ、別の姿を隠していたとはッ!」
「やかましい!やってくれおったな。貴様ら……特にそこの小娘ッ!」
ミドラもどきの魔王は剣の先端を突きつけながら、ボンヤリとしていた菜穂子に向かって言う。
「よもや、玉砕覚悟で余の城の中で爆裂魔法を用いて、余の爆殺を目論むとはな。やってくれるではないか」
「玉砕覚悟?いやいや、菜穂子はそこまで深く考えてねーよ」
「ほざくなッ!そうでも考えなければ、城の中で爆発魔法など用いんぞ!」
「だから、何も考えてねーのが菜穂子なんだよ」
義喜は溜息を吐きながら、魔王に向かって言い返す。
だから、憤慨した様子の魔王にはいかなる説得も通じないらしい。
魔王は高岩一家に向かって、なんの躊躇いもなく剣を振り、衝撃波を放っていく。
その衝撃波の強さのために義喜たちは次々と吹き飛ばされていく。
だが、致命傷に至っていないのは不幸中の幸いというべきだろうか。
高岩の呼びかけに応じ、二人の子供はそれぞれの生存の声を上げていく。
それを聞いた魔王はその声を手掛かりに衝撃波を放つ。
迂闊だった。高岩は少し前の自分の判断を責めたくなってしまう。
少し考えればわかる事だろうに。子供二人が無事であった事に盲目になり、自衛隊で受けた基本的な訓練の事すら忘れてしまったのだろうか。
近くには負傷する二人の子供。我を忘れて高岩は二人の名前を叫ぶ。
「義喜ッ!菜穂子ッ!」
「へ、平気だ。親父……んなもんかすり傷だよ」
と、弱々しく笑って見せる義喜。
「うん。あたしだって平気だよ。気にしないで、大好きなお父さん」
菜穂子はそう言って父に笑い掛ける。心の底に何かを隠しての笑みではない。
心底からの純粋な笑いだった。
それを聞いた高岩は拳を強く握り締めた後に人差し指を魔王に突き付けながら叫ぶ。
「待てッ!ここから先は拳法の達人である岸友也が相手をするッ!これ以上、貴様におれの家族を苦しめさせはしないッ!」
「ほざくなッ!今更、貴様一人、立ち向かったとて、余に勝てるわけがなかろう!」
「いいや勝てるッ!おれにはこれがあるからなッ!カモーン!借り物ハンド!」
高岩の両手に借り物ハンドが装着された。
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