クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

復讐の時きたり！得物は伝説の槍！

モームはいや、北村康輝は腹の底からの怒りを感じていた。既に彼の頭の中には不快感のようなものは消え去っていた。
むしろ、頭の中に流れ込む無心メールは彼の中の怒りを増幅させるばかりである。
彼は槍を構えて、突っ込むと大きな声を上げ、心の底から湧き出てくる怒りと自身の名前とを高岩に向かって叫ぶ。

「ウォォォォォォ～！！高岩ァァァァ～！！オレは北村康輝だァァァァ～！！」


高岩は真横から突っ込んでくる槍の攻撃を間一髪のタイミングで交わす。
だが、モームはそんな高岩に息を吐かせる暇もない程にしつこく槍の穂先で狙っていく。
高岩はそれを年に似合わない俊敏な動きで交わしていき、モームの目に向かって砂を投げ付けていく。

砂の攻撃に悶えるモームに対し、高岩は容赦なくナイフハンドからナイフを発射していく。
モームの腹の上をナイフがなぞり、彼は悲鳴を上げてしまう。
悲痛な声を上げる金髪碧眼の王子に対し、高岩は容赦のない攻撃を加え続けていく。

ミサイルとナイフの猛攻が続いた後に、なんと、モームが持っていた槍が高岩の手に渡り、それが投げ付けられていくではないか。
モームへと向かっていく槍を受けとめたのは鳥の少女。
彼女はあろう事か、身を呈してモームを助けたのである。

「モーム！逃げてッ！」

「ダメだッ！今、キミたちを置いて逃げるわけにはいかないッ！オレは誓ったんだ。尚弥に代わって、キミたちを守るとね……」

モームの表情は確固たる決意に満ち溢れていた。一個の少女を自分の身に変えてでも守ろうとする姿はまさしく人間の鏡。その様子をニヤニヤと眺めている詐欺人間との人間性の違いも浮き彫りになっているのが面白い。
そんな人間性の終わった男はお互いを庇い合う二人に対し、黙って、ミサイルハンドのミサイルを向ける。

「これで、ジ・エンドだ。お二人さん」

「流石はお父さんね！」

この人間性の終わった父娘がどうにかして、制裁を受けないかと義喜を除く全員が願っていた時だ。
奇跡は起きた。なんと、勇者の剣が高岩の呪縛から解き放たれ、菜穂子に向かって切り掛かっていくではないか。
予想外の標的に言葉を失う高岩。慌てて、ミサイルハンドのミサイルを勇者の剣へと向けて放つ。

夢中になって切り掛かっていったためか、勇者の体に小さなミサイルが直撃し、彼の体は吹き飛ばされてしまう。
だが、怪我の功名という言葉が示すように、彼は一定の成果を残したのだ。
というのも、それまでは天使のような少女とモーム、亜人の少女に向けていたミサイルの照準が一時的にズレたので、三人は高岩に飛び掛かる瞬間を与えられたのだ。