クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

恐怖のナンパ怪人現る！ヒロインよ。立ち向かえ！

亜人の少女は思い返す。かつての主人の最期を。それに伴って、彼がどんな目に遭っているのかを。

（何をやっているのよ！あたしッ！頭が割れるほどに苦しいからって何よ！今も尚弥様は苦しんでいるというのにッ！）

亜人の少女はそう自分を奮い立たせ、割れるような痛みに耐えながら、高岩へと剣を振っていく。
高岩は慌てて身を逸らし、少女の剣を交わす。

「……危なかった。コマ○ドーのような訓練を受けていなければ即死だったな」
「あなたが何を喋っているのかはわからないけど、今、死ねなかった事は残念に思うべきねッ！」

少女はもう一度、今度は大きく剣を振りかぶっていく。
今度は高岩の肩を掠ったらしい。高岩の顔が苦痛に歪むのが見えた。
だが、すぐに彼は立ち直り、今度は借り物ハンドを利用して、剣を借りパクし、亜人の少女を追い詰めていく。

肩を痛めているというのに、ここまでの剣の動きを見せるとは彼女も予想外であった。
暫くの間は互角の戦いを繰り広げていたのだが、そこにデーロが介入し、その頭突きを高岩の脇腹へと喰らわせ、ようやく戦況が一転したのだった。
高岩は頭突きを喰らってよろめいたところに、亜人の少女が目の前から剣を振っていく。

絶体絶命かと思われたものの、高岩は卑劣な手を用いて、この場を切り抜けた。
咄嗟に彼は足を突き出し、彼女の脛を蹴ったのだった。
先程とは立場が逆転し、横転して、追い詰められる亜人の少女。
それでも、高岩を睨むのは執念か、はたまた積りに積もった憎悪の念かはわからない。

「やめたまえ、それよりも、私と何処かへ行かんかね？」

「……ふざけているの？」

亜人の少女は両目を刀のように鋭く尖らせながら高岩を睨む。

「ふざけているも何も正気さ。私はね。それよりも、きみも態度に気を付けてもらおうかな？」

「ふざけるなッ！」

亜人の少女はその場から立ち上がろうとするが、立ち上がろうと踏ん張った手を高岩に蹴られて横転してしまう。

「大丈夫かね？さぁ、手を出しなさい」

「……尚弥様をあんな風にしたお前と付き合うくらいなら、ここで死んでやる」

「強がりはよくないぞ」

高岩が更に蹴りを喰らわせようとした時だ。横から再び小柄な天使のような少女が割って入り、高岩を再び横転させていく。
この時、高岩は起き上がる前に再度、二人にメールハンドから無心メールを頭の中へと流れ込ませていく。
あまりの多量のメールが流れ込むために、のたうち回っていく亜人の少女と天使のような小柄な少女。

「オレを馬鹿にしやがってッ！許さんぞ！正義の鉄拳を受けてみろッ！」

この男が正義というのならば、正義という言葉をとことんまでに突き詰めたくなる。
ここに断言しよう。カネの無心をする男に正義などない。
ナンパを断られた腹いせに相手に制裁を喰らわせようとするヒーローがどこにいるのだろう。