クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

娘を馬鹿にされたから、攻撃したんだよ。わかるか（威圧）

何人かが自衛隊で殺しの訓練を受けた高岩の剣幕に震える中で、最初に勇気を振り絞ったのは家人の少女である。

（ダメッ！あたしが怯えていたら、誰がルフ鳥さんの卵を守るのッ！）

亜人の少女は勇気を持って振り絞り、高岩に向かって一歩を踏み出す。
彼女や勇者一行がどうして、島の中に居たのか、どうして、ルフ鳥なる鳥の卵を懸命に守ろうとするのか、それは高岩一家が上陸する数日前へと遡る。
彼ら彼女らの乗る船は偶然にも嵐に遭遇し、島へと辿り着いたのだった。

亜人の少女と勇者の一行は疲弊しているところをルフ鳥に助けられたのだった。
柔らかい藁の上に寝かせられ、その上に果物まで用意されたのだ。
幸いにも、この心優しい亜人の少女はルフ鳥と心を交わし合い、二日も経てば、少女の一行とルフ鳥とはすっかりと仲良くなっていた。

その時にルフ鳥に深刻な顔で頼まれたのだ。

「えっ？遠いところに出かける？」

亜人の少女の問い掛けに対し、ルフ鳥は黙って首を縦へと動かす。
彼女が詳細を問うと、どうしても出産に必要なものを遠く離れた島へと取りに行かねばならないのだそうだ。
普段はあまりこの島に上陸する人や魔物はいないのだが、万一の事もあり、彼女たちに卵の番を依頼したのである。

少女の一行は高岩一家とは異なり、金きんの心を持つ素晴らしい人たちである。
お世話になったルフ鳥のために、彼女は番人を行う事になったのである。
お世話になったルフ鳥のためにも、そして、これから産まれる尊い命のために少女は負けられないのだ。

彼女は勇気を振り絞り、高岩に向かって切り掛かっていく。
それを皮切りに、他の仲間たちも臆するのをやめ、亜人の少女に続いて、高岩の元へと向かっていく。

「親父ッ！」

義喜の悲鳴が飛ぶ。だが、高岩は眉一つ動かさずに淡々と叫ぶばかりである。

「カモーン！メールハンド！無心メール発射！」

高岩が手袋を向けるのと同時に、亜人の少女の頭の中に高岩の無心メールが流れ込む。
全員が割れるような痛みを両手で抑え、地面の上で転がっていく。
そんな、勇者一行に高岩はニヤニヤといういやらしい笑みを見せる。

実に下劣である。流石はカネの心を持つ男というべきだろうか。

「どうしたんだね？諸君……オレを倒したいんじゃあないのかい？」

完全に悪役の台詞である。ヒーローの面影など今や高岩のどこを探してもない。
高岩は弱った亜人の少女の一行を見下ろしながら言った。
そんな高岩を亜人の少女は黙って睨んでいた。

「だ、黙れ！よくも、尚弥様を……お前だけは許せないッ！」

「尚弥くんが人の娘を豚呼ばわりしたからいけないんだよ。きみだって、豚呼ばわれりされたら嫌だろう？特にね、女性に豚と呼称するのはとてつもなく失礼な事なんだよ」

高岩はニヤニヤと馬鹿にしたような笑みを浮かべながら倒れている亜人の少女を見下ろしていたが、やがて、鋭い目付きで亜人の少女を睨むと、わざと声を低くし、威圧を含ませる喋り方で尋ねた。

「わかるか？」