クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

さぁ、お前の罪を数えろ、高岩

高岩は娘を安心させると、厨房の設置されている物の隙間を通り、車のアクセルを踏んで、緑色の巨人の元へと向かっていく。

高岩の車が巨人の足元へと激突し、巨人が苦痛に顔を歪めるのが見えた。
だが、すぐに巨人は自分の足を傷付けた車を睨み、その大きな拳を車に向かって叩き付けていく。
だが、巨人の拳は車から放たれる衝撃波によって弾かれてしまう。

恐らく、ビリビリという衝撃が迸ったに違いない。拳を打つ巨人の顔が歪んだ事を高岩は見逃さなかった。
高岩はそのままアクセルを踏み込む。同時にエンジンの音がバリバリと音を立てていく。
そのままの勢いで車は突入し、緑色の巨人の足の先端から甲の上を走っていく。

「グギャァァァァァァァ～！！！」

これこそ、絶叫。人間の先端は神経が通っている場所ともされ、先端に大きな攻撃が当たれば、先端を通し、攻撃が迸るとされる。
勇者であるのならば、絶対に取らないような卑劣な手法。
そして、鬼畜とも称される攻撃をこの寸借詐欺師は平然と行ったのである。

しかも、その顔には笑顔が映っている。
この男の人間性が消費期限が過ぎて食べられない饅頭のように腐っているその証拠ではないだろうか。
痛がる巨人に向かって、高岩は車の中からニヤニヤと笑い掛けながら言った。

「降伏したらどうだい？キミではここから抜け出す事はできないよ」

「た、高岩、貴様ぁぁぁぁぁ～！！！」

緑色の巨人は車に乗った高岩を鋭く睨む。青白い光で照らされ、憎悪の念を送られたとしても、高岩は痛くも痒くも感じなかったらしい。
高岩はこのままアクセルを踏み込み、そのまま緑色の巨人の足の皮を剥ぎ取ろうとしていく。

「お父さん！頑張れ！そんな奴に容赦する必要なんてないよ！そいつはお父さんを苦しめた悪い奴なんだからッ！」

この時の菜穂子の表情は嬉々としていた。とてもではないが、ヒロインの顔ではない。
まるで、よくある子供向け番組に登場する悪の女幹部のような邪悪な顔である。
盾の人の奴隷であった亜人の少女の方が余程、ヒロインをしている。そう思うのは筆者だけではあるまい。

そんな最低の無心男とその娘にいい加減、神も呆れ果てたに違いない。
運良く、ここで魔王軍の紅一点であるあの魔女が仕掛けた魔法が発動した。
なんと、緑色の巨人の全体から強い衝撃波が放たれていくではないか。

その衝撃波は高岩の運転する車が放つ衝撃波よりも強力であったらしく、足の甲に攻撃を繰り返していた車を後方へと跳ね飛ばす。
車の中で白目を剥いている高岩とは対照的に緑色の巨人から溢れんばかりの力が漲っていた。
緑色の巨人は掌を閉じたり、開いたりしながら、今の己が置かれた状況を確認していたが、事態を理解すると、背中を向けて、意識を取り戻し、車から降りてきた高岩に向かって緑色の巨人は人差し指を突き付けながら言ったのだった。

「さぁ、お前の罪を数えろ」