クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

巨人の声は涙の声！強力卑劣怪人出現！

高岩直人は一応は自衛隊にて様々な訓練を受けていた身である。そのため、縄抜けの技くらいは知っていたとしてもおかしくはない。
実は彼は魔人に縄を与えられた際に、密かに縄の端を握り、いざという時に抜け出せるようにしておいたのである。
後はタイミングである。この事は表向きは一応、暗い顔をしている二人の子供にも伝えてある。

後はタイミング。巨人が隙を見せた時がその瞬間である。
恐らく、それは自分達を食べようとする一瞬。その瞬間こそが巨人が最も油断するだろう。
そのための囮役に菜穂子が居るのだ。菜穂子とあの緑色の巨人は捕まえる前に口論を交わしており、自分が巨人ならば、真っ先にその口答えをした人物を口にしたいと考える。

そして、その人物を食べようとした瞬間こそが最期なのだ。
厨房に着き、調理用の机の上に高岩一家を置くなり、巨人は菜穂子をその大きな手で掴み、口に含もうと試みる。
その瞬間に高岩は縄を解き、ミサイルハンドとナイフハンドの両方を用いて、巨人に向かって攻撃を喰らわせていく。

巨人は顔にミサイルとナイフの両方の攻撃を喰らった上に、ナイフを片目に喰らって、そのまま地面の上に横たわっていく。勿論、偶然ではない。意図して狙ったものである。
高岩は机の上から降りると、そのまま巨人の腕に掴まっていた菜穂子を助けに向かう。
高岩は愛娘を抱き抱えると、そのまま厨房の隅へと駆け出す。

義喜もそれに続いて、机の上から降り、高岩と合流し、厨房の隙間の中へと入り込む。
隙間を移動しながら、出口へと向かう姿はまさしく鼠そのもの。
高岩は生前に自分が『ドブネズミ』という罵倒を匿名掲示板で受けていた事を思い出す。

今は巨人から逃げるために、その鼠の真似事をしているのが皮肉に思えて仕方がない。
高岩がそんな事を考えていると、先程まで眠っていた巨人が起き上がり、辺り一面を許さんばかりの声で吠えていた。

「高岩ぁぁぁぁぁ～！！！どこだぁぁぁ～！！出てこいやぁぁぁ～！！隠れても無駄だぞ、必ずお前やお前たち親子を見つけ出して、駆逐してやるぞッ！」

（いや、それ巨人側の台詞じゃあないから！それに、あの有名レスラーも混じってるし！）

義喜は心中で密かに突っ込みを入れる。だが、巨人は相も変わらず某有名巨人漫画の主人公の台詞を口に出し続けていく。

「高岩ッ！今出て来れば、少しはマシな殺し方に変えてやるぞッ！出て来れば、オレはお前らがなるべく苦しんで死ぬように努力しなくても済むんだがなッ！」

（それも、巨人を駆逐する側の台詞じゃねーかッ！）

義喜は更に突っ込みを入れる。義喜は突っ込みを入れるの夢中であったが、対照的に菜穂子は全身を震わせているではないか。
それを見た高岩は菜穂子の肩を優しく叩いて言った。

「大丈夫だ。菜穂子……あんな奴はお父さんがこの世から消してやるからな」

それを聞いて肩を震わせるのを止める菜穂子。代わりに、公爵令嬢の時のようなにと懐っこくて優しい笑みを向ける。
この時の高岩は菜穂子に笑顔を返すように優しい笑顔を浮かべていた。