クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

高岩直人のペッコンペッコン作戦！

「で、だ。おれたち、このまま巨人に食い殺されていいのか？」

「いいわけないでしょ！」

「なら、お前なんで、あの時にあんなに煽りやがった！」

「お父さんが馬鹿にされたからだよ！そういうお兄ちゃんはお父さんが馬鹿にされて悔しくないの！？」

「その後にお前、無関係とかほざいてたじゃねーか！」

「それだけじゃないもん！あの後に不用心なお前が悪いって返す予定だったんだもん！」

「火に油を注ぐようなもんじゃねーか！何考えてんだッ！菜穂子！」

「あたし、悪くないもん！」

緑色の巨人の檻の中、縄に縛られていた二人の兄妹は不毛な言い争いを繰り広げていた。
父、高岩といえば牢屋の隅で震えるばかりで、二人の言い争いに加わる気すら起きていないらしい。

「どうするんだよ！？親父！？」

そんな父に嫌気が刺したのか、義喜は地面の上から起き上がり、高岩の元へと近寄っていく。
だが、高岩はブツブツと呟いたまま動こうとはしない。
その様子を見て思わずに溜息を吐く義喜。

今の彼の気分はブルーなどというものでは表せないだろう。
大きな鉛のような溜息が連鎖し、高岩も同じような溜息を吐いていく。
暫くは気まずい空気が漂っていたのだが、その空気に耐え切れなくなったのか、義喜が不意を突くように父親に尋ねた。

「親父、この後はどうするんだよ？あの巨人にみすみす食われちまうっていうのか？」

「無論、そんな事はさせんッ！オレは家族だけは守るって決めたんだッ！」

高岩は勇ましく声を震わせ、その場から立ち上がったのだが、その両足はどこか震えていた。

「お、お父さんに任せろ！よ、義喜！」

「めちゃくちゃ舌がもつれてんじゃねーかッ！」

義喜は人差し指を突き付けながら、容赦のない突っ込みを高岩に浴びせていく。

「ったく、でも、本当にどうするんだよ？このままだとオレら全員、あの巨人の夕飯だぜ」

義喜の真剣な顔を見て、高岩は暫く考え込んでいた。先程とは違うベクトルの沈黙が独房の中を漂っていく。
無限とも思える時間が流れた後に高岩がようやく口を開く。

「そうだッ！昔から悪い巨人の生贄になるのには美女と相場が決まっているッ！菜穂子！生贄になってくれ！」

「お、親父！？」

「お、お父さん！？」

流石の菜穂子も驚きを隠しきれなかったらしい。
だが、高岩は菜穂子を安心させるためか、顔に朗らかな笑みを浮かべながら、話を続けていく。

「案ずるな。菜穂子には囮の役をやってもらうだけだ。恐らくだがな……」

高岩は子供二人を集め、作戦会議を行なっていく。
その顔には前世で、金の無心を行っていた時のようなドス黒い笑みが浮かんでいるではないか。
まさしく、高岩直人はカネの心を持つ男である。

親子三人揃っての作戦会議が終了するのと同時に独房の扉が開き、緑色の巨人が姿を表す。
緑色の巨人は全員の縄を引っ張り、自身の厨房へと向かっていく。

「よし、厨房では手筈通りにな。義喜、菜穂子」

二人の子供は父親の問い掛けに同時に首を縦に動かす。