クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

魔王登場！けど、完全にどこかで見たあいつらじゃねーか！

「何ぃ？高岩一家なる冒険者の一行が我々の城の元へと向かって来ているだと？」

口元以外の顔の大部分を金色の鎧で隠し、更にはその下には近の鎧を纏い、その上には真っ黒なコートを掛けた魔王が報告に訪れた部下の一人に向かって尋ねる。
全てを聞き終わった魔王は手に持っていな黄金の杖を強く握り締め、声を震わせながら近くの部下に命じ、自身の精鋭の部下である四天王を招集する。
招集を受け、魔王軍の四天王が玉座の前に勢揃いしていく。

「魔王陛下！これは由々しき事態ですッ！ここは私の部下にお任せくださいますよう！」

そう発言したのは軽やかな身のこなしが得意技とされるトカゲのような緑色の肌をした小柄な幹部である。

「貴様の部下などでは足止めにもならんわ。こちらに向かって来る勇者の高岩なる人物は既に我らが四天王を除く幹部全員を仕留めている危険人物……そのような危険人物を相手に、此奴の弱い部下など向かわせても、勝てますでしょうか？ここは、由緒正しき魔族の血を引く、私の軍にお任せくださいますよう」

彼は人間でいうところの貴族の身分に産まれた魔物である。その証拠に着用している服も貴族が着るような派手な服に胸元には煌びやかな勲章を幾つも下げている。

「どうかな？陛下、ここは私の部下にお任せくだせぇ。なんなら、オレの部下の方がこいつら二人よりもいい活躍ができますぜ」

全身をメタリックに覆ったゴーレムと称されるこの人型の魔物は魔王軍の四天王の中でも指折りの実力者として準えられる事の多い幹部である。
異界の技術を持って改造されたこの男はしばしば青色のサイクロプスと称される事も多い。
魔王自身もこの男やこの男の部下の素材が気になるのだが、その答えははぐらせられるばかりである。

「ぬるいわね。あなたたち……既に高岩なる者はあたしの部下が始末に向かったわ」

澄ました顔で告げるのはインキュバスを連想させる翼を背中に生やした妙齢の美しい女性である。
彼女は魔王の寵臣とも称される存在であり、しばしば魔王から『同志』と称される事も多い人物である。
そんな彼女だからこそ、魔王は口元を三日月の型に歪めたのだろう。

彼はそのまま上機嫌で黄金の杖の先端を彼女に向けて魔王らしく厳かな声で告げた。

「よろしい。お前の手下の力をもって、必ず高岩一家なる冒険者たちを始末するのだッ！」

「ハッ！」

彼女は恭しく頭を下げると、そのまま魔王の玉座の前から去っていく。
得意そうな顔を浮かべて玉座の前を去っていく彼女を青白い光を秘めた瞳で睨むのは四天王の他の三人。
この時、魔王は知らなかった。この時に彼女に単独の作戦を許可した事により、四天王の間に重大な亀裂が入ってしまったという事を。