クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

戦え！高岩！くれぐれも、逃げたりとかするなよ！

「ま、待ってくれ……そ、そのなんだ。オレは歌がうまいッ！見逃してくれたら、お前のために何か好きな曲を歌ってやろう？何がいい？イッツアロンg」

「そんなもの聴きたくもない。オレが欲しいのは貴様の命だけだ。トライバーを殺したお前をオレは絶対に許さないからな」

「や、やめてください！その、今まで倒してしまったのは本当に申し訳ありません！」

高岩は咄嗟に土下座を行う。セザルドはこの見苦しい土下座を見て、鼻息を鳴らしたが、彼はこの時、気が付いていなかった。
この土下座こそが高岩の最大の防御技であるという事に。
セザルドが土下座を行う高岩に向かって拳を叩き付けようとしたのだが、その拳はいとも容易く弾かれてしまう。

「な、なんだと！？」

予想外の出来事が起き、たじろぐセザルドの顎を土下座から起き上がった高岩は容赦なく叩いていく。
顎に強烈な一撃を喰らい、セザルドは足をふらつかせてしまう。

「見たかッ！これが、オレのバリアハンドだッ！魔王軍の幹部めッ！覚悟しろッ！」

「こ、このクズめ……」

恐らく、今の彼の両目には無数の見えない星が見えているに違いない。
だが、高岩は容赦せずに借り物ハンドを用いて、彼から拳法を借りパクする。
セザルドは元々、四天王を従えるほどの強い力と技量とを併せ持つ拳法家。

その拳法の技術を高岩はチートにより、借りパクし、なんと、セザルドと互角に渡り合っているではないか。
セザルドは借りパクにより、自身の技を真似されたという事実に憤りを隠し切れないらしい。

「高岩ぁぁぁぁぁ～！！」

絶叫を上げて、高岩の元へと殴り掛かっていく。
だが、高岩は動じない。腕を組みながらふてぶてしい笑みを浮かべながら言った。

「バカめッ！怒りに我を忘れるとはッ！拳法家が一番してはいけない事だぞッ！」

高岩はセザルドの腕を絡め取り、そのまま彼を地面へと投げ飛ばす。
柔道技である。高岩はかつて自衛隊に所属していた際にこの技をモノにしたに違いない。
セザルドが慌てて起き上がろうとするところに、高岩はナイフハンドからナイフを発射していく。

セザルドにナイフが向かっていく途中、真横から像の形をした怪物がその長い鼻から光の弾丸を放射し、高岩のナイフを地面の上へと落としていく。

「……感謝する。助けられた事は事実だからな」

セザルドは部下に例の言葉を述べた後にもう一度、高岩の元へと向かっていく。
どうやら、部下に助けられた事により、冷静さを取り戻したらしい。
お陰で、高岩はこの後の対処法を練らなくてはならなかった。