クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

決戦は日を改めて、その前に高岩よ、謝れ！

その日の戦いは双方の合意により中断され、セザルド、トライバー陣営はそれぞ死者や怪我人を回収し、一旦はその場を去っていく。
街側の陣営も大至急、怪我人の回収にあたり、街の病院へと入院させたのである。
高岩も今回ばかりは数ヶ月の入院となり、しばらくはベッドの上である。
だが、納得がいかないのは街の人々である。

連日のように高岩の入院している部屋へと詰め寄り、あの卑劣な攻撃を詰っていく。

「謝ってください！まずはッ！突然、勇者たちに攻撃を浴びせた事を謝ってくださいッ！」

だが、高岩は布団を被ったままそれを取ろうとしない。

「高岩さん。口あるじゃあないですかッ！なんとか言ってくださいよッ！」

だが、高岩はそれでも何も言おうとはしない。
それに苛立ったのか、冒険者の一人が攻撃を繰り出そうとするが、仲間の一人に止められ、慌てて引き下がる。
ここが病院である事も幸いしたのだろう。戦って他の患者に負担を仕掛ける事になる事も考慮したのだろう。

冒険者の一人は歯を軋ませながら、今にも高岩を殺しそうな視線で彼を睨みながら、病室から去っていく。
高岩はそれを見送ってから、上体を起こし、辺りを見渡す。
自身のベッドの真横の机上には新聞紙が置かれている。だが、読む気は起こらない。

そこに書かれているのは高岩へのバッシング記事ばかりであるからだ。
読む代わりに、高岩は新聞紙を丸めて、地面の上に放り投げる。

「クソ、オレはヒーローなんだぞ……オレの拳法であんな奴らは皆殺しにしてやる」

高岩が自分たちを責め立てる街の冒険者たちや住民たちに呪詛の言葉を唱えていると、扉が開き、今度は入院用の果物カゴと花束を持った義喜と菜穂子の姿。
二人は特に菜穂子は心配そうな顔をしており、彼女は病室に入るなり、慌てて高岩の元へと駆け寄り、彼の体にしがみついていく。

「お父さん！お父さん！可哀想にッ！こんなに戦ったのに、みんなにいじめられて……許せないッ！あいつら、本当に……」

敵もろとも味方を攻撃した父親を非難するのではなく、むしろ、非難する人たちを悪に見立てて攻撃するところ、親子共犯といわれるだけの事はある。
そんな理不尽な怒りの炎で瞳を燃やす菜穂子の手を高岩は優しく取り、自身のベッドの元へと引き寄せる。

「……ありがとう。菜穂子……思えば、昔から、オレを庇ってくれるのはお前ばかりだった。匿名掲示板でも実生活でも、お前はいつでもオレの味方だったなぁ」

「……あたしはいつだってお父さんの味方だもん」

菜穂子は両目から涙を流しながら、ベッドの上の高岩へと抱き掛かっていく。
そんな愛おしい娘の頭を高岩は優しく撫でていく。
そんな父娘の感動のタイミングに水を差したのは義喜である。
彼は言いにくそうな表情を浮かべながらも、やっとの思いで声を引き絞っていく。

「ところで、だ。親父……親父が怪我をさせた人たちの入院代をオレたちの手で払う事になってな。トライバーの分の賞金が丸ごと持っていかれちまった」

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ～！！」

高岩の絶叫が病室の中を迸っていく。